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職場で受ける業務指示が複雑で理解しきれない、覚えきれない、相手の説明についていけないといった経験は、境界知能の方が日常的に直面する困難のひとつです。
定型発達の方が当然のように理解する内容が、自分には難しく感じられる、何度説明されてもピンとこない、理解できているか不安が残るといった状態は、業務遂行と職場での自信に大きな影響を与えます。
ここでは、境界知能と業務指示の理解の関係、自分なりの対処法、自分に合った働き方を見つける視点までをわかりやすく解説します。
なお、本記事は一般的な情報提供を目的としています。
具体的な状況に応じた判断は、主治医、就労移行支援事業所、地域障害者職業センター、障害者就業生活支援センターなど専門機関と相談しながら進めることをおすすめします。
境界知能とはどのような状態か
境界知能は、知能指数が一般的な範囲よりやや低いものの、知的障害の診断基準には該当しない状態を指す言葉です。
医学的には明確な診断名ではなく、心理検査の結果として知能指数がおおむね70から85程度の範囲にある状態を表現する用語として使われています。
境界知能の方の多くは、学校生活や日常生活で大きな問題を抱えずに過ごしてきた一方で、複雑な業務や抽象的な思考を求められる場面で困難を感じることがあります。
具体的な特性として、いくつかの傾向があります。
複雑な情報の処理が苦手な場合があります。
複数の指示を一度に受ける、抽象的な概念を理解する、長文の説明をまとめて把握するといった作業に時間がかかることがあります。
応用や臨機応変な対応が難しい場合があります。
決まった手順や指示には対応できても、状況に応じた判断、想定外の出来事への対処などに困難を感じることがあります。
学習に時間がかかることがあります。
新しい業務、新しいルール、新しいシステムなどを覚えるのに、他の人より時間が必要な場合があります。
文字や数字の処理に時間がかかる場合もあります。
書類の読み取り、計算、データ入力など、正確性が求められる作業で疲労を感じやすいことがあります。
これらの特性は、本人の努力不足や能力の問題ではなく、認知機能のひとつの傾向として理解されるべきものです。
境界知能の方は、知的障害の認定を受けていない場合が多く、療育手帳の取得対象とならないため、福祉的な支援を受けにくい現状があります。
業務指示の理解が困難になる場面
境界知能の方が業務指示の理解で困難を感じる場面には、いくつかのパターンがあります。
複数の指示を一度に受ける場面があります。
これとそれをやって、その後はこれをお願い、それからこの件もよろしくといった連続した指示を、すべて記憶し正確に実行することに困難を感じます。
抽象的な指示を受ける場面もあります。
いい感じにやっておいて、状況を見て対応してほしい、適切に判断してといった抽象的な表現は、具体的に何をすべきかが分からず戸惑います。
専門用語が多い説明も難しい場面です。
業界特有の用語、社内用語、略語などが多く使われる説明は、用語の理解に時間がかかり、内容全体を把握しきれないことがあります。
長時間の口頭説明も困難な場面です。
数十分にわたる会議や説明会で、内容を聞き続けながら理解し記憶することに大きな疲労を感じます。
質問しにくい雰囲気の場面もあります。
理解できなくても質問しにくい職場文化、説明を聞いた後すぐに作業を始めなければならない状況などでは、確認の機会を逃しがちです。
人によって指示の出し方が違う場面もあります。
複数の上司や先輩からそれぞれ違うやり方を教えられる、人によって優先順位が違うといった状況は、混乱を招きます。
急ぎの指示が連続する場面も困難です。
切迫した雰囲気の中で次々と指示を受けると、頭の整理が追いつかず、重要な情報を見落とすことがあります。
これらの場面で困難を感じることは、境界知能の方の自然な反応です。
自分を責めず、対処法を取り入れていくことが大切です。
業務での困難への基本的な対処法
業務指示の理解に困難を感じる場面で、自分なりに取り入れられる対処法を紹介します。
メモを取る習慣をつけましょう。
口頭での指示はその場でメモに書き取り、後から確認できるようにすることが基本です。
ノート、付箋、スマートフォンのメモアプリなど、自分が使いやすい方法を選びましょう。
具体的な内容に置き換えてもらいましょう。
抽象的な指示を受けたときは、具体的にはどのようにすればよいか教えてください、と率直に聞き返すことが大切です。
質問することを恐れない姿勢を持ちましょう。
理解できないことを質問することは、業務を正確に進めるために必要な行動です。
確認することは恥ずかしいことではなく、ミスを防ぐ大切なステップだと自分に許可しましょう。
復唱で確認する習慣をつけましょう。
指示を受けた後、自分の言葉で復唱し、確認することで、認識のずれを防げます。
確認のためにこのように理解しましたが合っていますかと聞き返す方法は、業務上も歓迎される姿勢です。
業務を文書化してもらいましょう。
口頭ではなくメールやチャット、業務マニュアルでの指示を依頼することで、後から何度でも確認できる形にできます。
優先順位を明確にしてもらいましょう。
複数の業務を抱えるときは、どれから取り組めばよいか、納期はいつまでかを具体的に聞くことで、判断の負担を減らせます。
業務の手順をマニュアル化しましょう。
繰り返しおこなう業務は、自分なりに手順を書き出し、見ながら作業することで、ミスを減らせます。
ひとつずつ確実に進める姿勢を持ちましょう。
複数の業務を同時に進めようとするのではなく、ひとつずつ確実に終わらせていく方法が、結果的に効率的な業務遂行につながります。
自分に合った業務の見つけ方
境界知能の方が業務指示の困難を抱えにくくするためには、自分の特性に合った業務を選ぶことも大切です。
ルーティン化された業務は、境界知能の方に向いている場合があります。
決まった手順を毎日繰り返す業務は、最初の習得期間さえ越えれば、安定して続けられることが多くあります。
データ入力、書類整理、清掃、洗濯、配送補助、軽作業などは、ルーティン化されやすい業務です。
業務範囲が明確な仕事も向いています。
何をどこまでやるかが明確に決まっている業務は、判断の負担が少なく、自分のペースで進められます。
ひとりで集中できる業務も合っている場合があります。
対人接触が少なく、自分の作業に集中できる環境では、業務指示の混乱が少なくなります。
製造業の組み立て作業、農作業、清掃、データ入力、倉庫業務などは、ひとりで集中できる業務の例です。
業務量が安定した仕事も適しています。
繁忙期と閑散期の差が大きい業務よりも、毎日同じくらいの業務量で進められる仕事のほうが、対応しやすい場合があります。
逆に、避けたほうがよい業務の特徴もあります。
複雑な判断が常に求められる業務、対人交渉が中心の業務、抽象的な企画や戦略立案、複数の業務を並行して進める必要がある業務などは、境界知能の方にとって負担が大きくなる傾向があります。
これらは絶対にできないわけではありませんが、自分の特性と相性が悪い場合があることを認識しておくと、職場選びに役立ちます。
自分の特性を知るための支援機関
自分の認知特性や向いている業務を客観的に把握するために、専門の支援機関の利用が有効です。
地域障害者職業センターでは、職業評価を受けられます。
心理検査、作業検査、面談などを通じて、自分の認知特性、得意な業務、苦手な業務、適した職場環境などを客観的に評価してもらえます。
無料で利用でき、結果をもとに今後の就労の方向性を一緒に考えてもらえます。
就労移行支援事業所では、最長2年間の就労準備プログラムを受けられます。
職業訓練、職場実習、自己理解の深化、就職活動の支援など、段階的にサポートを受けられる場として活用できます。
境界知能の方への理解がある事業所を選ぶことが大切です。
ハローワークの障がい者専門窓口でも、相談員に自分の状況を伝えることで、適した支援につなげてもらえます。
療育手帳の対象とならない境界知能の方でも、相談を受け付けてくれる窓口は数多くあります。
医療機関の心理検査も活用できます。
主治医や心療内科、精神科などで、知能検査を受けることで、自分の認知特性を客観的に把握できます。
これらの支援機関を組み合わせることで、自分に合った働き方を見つけやすくなります。
境界知能の方が利用できる支援
境界知能の方は、知的障害の認定を受けていない場合が多く、福祉的な支援を受けにくい現状があります。
ただし、いくつかの選択肢があります。
精神障害者保健福祉手帳の取得を検討する選択肢があります。
うつ症状、不安障害、適応障害など、二次的な精神疾患を抱えている場合は、精神障害者保健福祉手帳の対象となる可能性があります。
主治医と相談しながら判断しましょう。
発達障害の診断を受ける選択肢もあります。
境界知能と発達障害が併存する場合、発達障害として診断を受けることで、精神障害者保健福祉手帳の取得につながる場合があります。
療育手帳の再判定を申請する方法もあります。
過去に判定を受けて知的障害とされなかった方でも、生活状況の変化に応じて再度判定を受けることができる場合があります。
自治体ごとに運用が異なるため、お住まいの地域の障害福祉課に確認しましょう。
これらの手帳を取得することで、障害者雇用枠での応募、合理的配慮を受けながらの就労、各種支援制度の利用などが可能になります。
ただし、手帳の取得は本人の意思で判断するものであり、無理に取得を勧めるものではありません。
主治医や支援機関と相談しながら、自分にとって最善の選択を見つけていきましょう。
合理的配慮を求める方法
精神障害者保健福祉手帳や療育手帳を取得した場合、合理的配慮を求めることができます。
業務指示の文書化を依頼しましょう。
口頭ではなくメールやチャット、業務マニュアルでの指示があることで、自分のペースで理解できます。
ひとつずつの指示を依頼しましょう。
複数の業務を一度に伝えられるのではなく、ひとつずつ順に指示してもらうことで、混乱を防げます。
優先順位の明示を依頼しましょう。
何から取り組めばよいか、納期はいつまでかを具体的に伝えてもらうことで、判断の負担が軽減されます。
業務マニュアルの整備を依頼しましょう。
繰り返し行う業務の手順を、文書化してもらうことで、見ながら作業できます。
ジョブコーチの活用を依頼しましょう。
地域障害者職業センターのジョブコーチは、職場での業務遂行をサポートしてくれる専門家です。
職場との橋渡しをしてくれるため、業務指示の調整も期待できます。
定期面談の実施を依頼しましょう。
上司や人事担当者との定期的な面談を通じて、業務の状況、困っている点、改善点などを共有することで、長期就労を支えられます。
主治医の意見書を活用しましょう。
医学的な根拠を示すことで、合理的配慮の依頼に説得力が増します。
求人を見つける方法
境界知能の方が自分に合った求人を見つけるための方法を紹介します。
ハローワークの障がい者専門窓口は、最も身近で頼りになる相談先です。
地域の中堅企業や中小企業の求人を多く扱っており、ルーティン化された業務、業務範囲が明確な仕事などを紹介してもらえます。
就労移行支援事業所では、職場実習を通じて自分に合う職場を見つけられる場合があります。
事業所のスタッフが、自分の特性に合う企業を紹介してくれる場合もあります。
障がい者専門の転職エージェントも活用できます。
担当者に自分の特性を率直に伝えることで、その条件に合う求人を紹介してもらえる可能性があります。
特例子会社の求人も検討しましょう。
業務がマニュアル化されており、ジョブコーチや支援員がサポートしてくれる特例子会社は、境界知能の方に向いている職場が多くあります。
中小企業の求人にも視野を広げましょう。
もにす認定を受けている中小企業など、丁寧な受け入れ体制を持つ企業を探していきましょう。
公的機関や福祉法人、医療法人の事務職や軽作業も選択肢です。
安定した雇用と、配慮の整った環境を提供する場として、検討する価値があります。
就労継続支援A型やB型も視野に入れましょう。
一般就労が難しいと感じる場合、福祉的就労として就労継続支援を活用しながら、徐々にステップアップしていく道もあります。
応募する際のポイント
境界知能の方が応募する際のポイントを紹介します。
自分の特性を率直に伝えましょう。
複雑な指示の理解が苦手なこと、業務指示の文書化があると助かることなど、自分が必要とする配慮を具体的に伝えることが大切です。
自分の強みを明確にアピールしましょう。
ルーティン業務への忠実さ、丁寧な作業、業務への真面目な取り組み、長く続ける継続力など、境界知能の方の強みを具体的に伝えましょう。
これまでの経験を活かす視点で伝えましょう。
これまでの仕事や生活で身につけた経験を、応募する企業でどう活かせるかを具体的に伝えることが大切です。
業務内容との相性を確認しましょう。
応募する業務が、ルーティン化されているか、業務範囲が明確か、ひとりで集中できるかなどを、面接で具体的に質問することが大切です。
合理的配慮の希望を建設的に伝えましょう。
配慮を求めるだけでなく、自分が貢献できる役割をあわせて伝えることで、対等な対話を進められます。
長く働く意欲を強調しましょう。
ひとつの職場で長く貢献したいという意欲は、境界知能の方の強みのひとつです。
職場の雰囲気を確認しましょう。
質問しやすい職場文化、丁寧な指導が受けられる環境、ハラスメントへの対応が組織的にできているかなど、長く働ける環境かを判断する材料を集めましょう。
入社後に長く働き続けるための姿勢
入社後に長く働き続けるための姿勢を紹介します。
分からないことは早めに質問しましょう。
理解できないまま作業を進めるよりも、その場で質問することが、ミスを防ぎ、長期的な信頼を支えます。
メモと復唱を習慣にしましょう。
指示を受けたら必ずメモを取り、自分の言葉で復唱して確認することを、業務の基本動作にしましょう。
業務での貢献を継続しましょう。
担当業務に丁寧に取り組み、ルーティン業務を確実にこなすことが、職場での信頼を支えます。
合理的配慮を継続的に活用しましょう。
業務指示の文書化、優先順位の明示、業務マニュアル、ジョブコーチのサポートなど、長く働くための仕組みを継続的に活用しましょう。
定期面談を活用しましょう。
業務の状況、困っている点、改善できることなどを定期的に共有することで、長期的に働きやすい関係を維持できます。
主治医や支援機関とのつながりを保ちましょう。
健康面、心の状態、長期的なキャリアの相談など、専門家のサポートを継続的に受けることが大切です。
職場の人間関係を大切にしましょう。
すべての人と仲良くなる必要はありませんが、信頼できる同僚や上司を見つけることで、職場での安心感が高まります。
無理を続けないことも大切です。
業務量が多すぎる、配慮が得られない、職場での孤立が続くなどの状況では、配慮の見直し、配置転換、転職などを検討することが、自分を守る選択です。
自分を肯定する視点
境界知能の方が業務での困難を抱えながらも、自分を肯定する視点を持つことが大切です。
境界知能は、自分の能力や価値の問題ではありません。
認知機能のひとつの特性であり、自分に合った環境や業務を見つけることで、十分に活躍できます。
これまでの努力を認めましょう。
学校生活、社会人生活で、自分なりに工夫しながら歩んできたことは、それ自体が大きな成果です。
得意なことを大切にしましょう。
苦手なことに目を向けるよりも、自分が得意なこと、続けてこられたこと、信頼を得てきたことなど、肯定的な側面に意識を向けることが、自己肯定感を支えます。
自分のペースを尊重しましょう。
他人と同じスピードで進む必要はなく、自分のペースで確実に進むことが、長期的な成功につながります。
支援者とのつながりを大切にしましょう。
主治医、就労移行支援事業所、ハローワーク、ジョブコーチ、家族、信頼できる人など、頼れる相手は数多くいます。
ひとりで抱え込まず、つながりを活用していきましょう。
まとめ
境界知能を抱えながら働くなかで、複雑な業務指示が理解できないという困難は、本人の努力不足ではなく認知特性のひとつとして理解されるべきものです。
複数の指示、抽象的な表現、専門用語、長時間の口頭説明、質問しにくい雰囲気、人による指示の違い、急ぎの指示の連続など、困難を感じる場面はさまざまです。
メモを取る、具体化を依頼する、質問することを恐れない、復唱で確認する、業務を文書化してもらう、優先順位を明確にする、業務手順をマニュアル化する、ひとつずつ確実に進めるなど、基本的な対処法を取り入れましょう。
ルーティン化された業務、業務範囲が明確な仕事、ひとりで集中できる業務、業務量が安定した仕事など、自分に合った業務を選ぶ視点も大切です。
地域障害者職業センター、就労移行支援事業所、ハローワーク、医療機関の心理検査など、自分の特性を客観的に把握する支援機関を活用しましょう。
精神障害者保健福祉手帳、発達障害の診断、療育手帳の再判定など、支援につながる選択肢を主治医や支援機関と相談しながら検討することができます。
合理的配慮として、業務指示の文書化、ひとつずつの指示、優先順位の明示、業務マニュアルの整備、ジョブコーチの活用、定期面談、主治医の意見書の活用などを依頼できます。
ハローワーク、就労移行支援事業所、障がい者専門の転職エージェント、特例子会社、中小企業、公的機関や福祉法人、就労継続支援など、複数のルートで求人を探していきましょう。
応募時には、特性の率直な伝達、強みのアピール、経験の活用、業務内容との相性の確認、合理的配慮の建設的な伝達、長く働く意欲、職場の雰囲気の確認などを意識しましょう。
入社後は、早めの質問、メモと復唱の習慣、業務での継続的な貢献、合理的配慮の継続的な活用、定期面談、主治医や支援機関とのつながり、職場の人間関係を大切にしながら、無理を続けない姿勢で進めていきましょう。
境界知能は能力や価値の問題ではなく、認知特性のひとつであり、自分に合った環境を見つけることで活躍できます。
これまでの努力を認め、得意なことを大切にし、自分のペースを尊重し、支援者とのつながりを大切にしながら、自分らしい働き方への道を歩んでいきましょう。
なお、業務での困難でつらい状況が続く場合は、ひとりで抱え込まず専門機関に相談してください。
主治医、就労移行支援事業所、地域障害者職業センター、障害者就業生活支援センター、よりそいホットライン、こころの健康相談統一ダイヤルなど、頼れる相談先は数多くあります。
これまでの歩みも、これからの選択も、すべてあなたの大切な人生の一部です。
自分を大切にしながら、納得のいく働き方を実現していきましょう。
