障害者の自立生活を阻む親なき後問題と成年後見制度の見直し

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障害のある子どもを持つ家族にとって、「親なき後」は避けて通れない大きな課題です。親が高齢になったり亡くなったりした後、住まい、金銭管理、契約、通院、福祉サービスの利用などを誰が支えるのか。元気なうちは家族で対応できても、将来まで同じ形を続けられるとは限りません。

こうした不安と深く関わる成年後見制度について、2026年に重要な法改正が成立しました。後見・保佐を廃止し、補助を中心とした仕組みに再構成する内容で、必要な支援を必要な範囲で利用する方向が打ち出されています。この記事では、親なき後問題の背景から成年後見制度の見直し、今からできる備えまで、分かりやすく整理します。

親なき後問題とはどのような課題か

親なき後問題とは障害のある子どもの生活を長年支えてきた親が高齢になったり亡くなったりした後子どもがどのように自立して生活していくかという課題を指します。
親が担ってきた金銭管理や契約手続き日常生活の見守りといった役割を誰が引き継ぐのかが明確でないまま親が亡くなってしまうケースは少なくありません。
きょうだいがいる場合でもきょうだい自身の生活があり親と同じように支援を担い続けることが難しい場合も多くあります。
このため成年後見制度やグループホームなどの福祉サービスをどう組み合わせて備えるかが多くの家族にとって重要なテーマとなっています。

第1章 親なき後問題とは

親なき後問題とは、障害のある人を長年支えてきた親が高齢になったり亡くなったりした後、本人の生活を誰が、どのように支えるのかという問題です。

特に課題になりやすいのが、生活全体を家族が担っているケースです。たとえば、銀行口座や年金の管理、家賃や光熱費の支払い、福祉サービスの契約、通院や服薬の確認、住まいの確保などがあります。

親が元気な間は「親がやれば済む」ことでも、親が病気になったり亡くなったりすると、急に支援の空白が生まれる可能性があります。きょうだいがいても、それぞれ仕事や家庭があり、同じ負担を引き継げるとは限りません。

そのため、親なき後対策では「誰か一人に任せる」のではなく、複数の支援先を組み合わせて生活を支える仕組みを作ることが重要です。

こうした課題は形式的な財産や身上の保護が優先され本人の意思が後回しになりがちだったことに起因すると指摘されています。
本人の権利を守るはずの制度がかえって本人の権利を制限してしまっているという批判は国連の障害者権利条約との関係でも問題視されてきた背景があります。
法制審議会はこうした構造的な問題を抜本的に見直すための要綱案を取りまとめ政府はこれをもとに民法改正案を閣議決定しました。
改正案はその後国会で審議され参議院本会議で可決成立しています。

第2章 成年後見制度が抱えてきた課題

成年後見制度は、判断能力が十分でない人を法律面から支える制度です。現行の法定後見制度には「後見・保佐・補助」の3類型があり、家庭裁判所が選任した後見人等が、財産管理や契約などを支援します。

一方で、制度を一度利用すると、本人の判断能力が回復しない限り利用を終了しにくいことや、本人が自分でできることまで支援者の関与が及ぶ場合があることなどが課題として指摘されてきました。

また、専門職が後見人等に選ばれた場合には報酬などの継続的な費用が発生することがあり、「必要な時だけ使いたい」という家族のニーズに制度が十分対応できていないという指摘もありました。

親なき後を考える家族にとっては、本人の生活を守りながら、本人の意思や自己決定もできるだけ尊重する仕組みが求められてきたのです。

第3章 2026年の成年後見制度改正で何が変わるのか

2026年6月17日、「民法等の一部を改正する法律」が成立し、6月24日に公布されました。今回の改正では、成年後見制度について後見と保佐を廃止し、補助の制度に一元化することが柱の一つとなっています。

改正後は、本人が必要とする支援の内容に応じて、補助人による代理や同意・取消しなどの仕組みを個別に設定する考え方が強くなります。法務省の概要でも、「必要とする支援の内容によって、利用する制度を選択する」方向が示されています。

さらに、必要がなくなった場合には、補助に関する審判を取り消せる仕組みも盛り込まれています。つまり、従来の一律的な支援ではなく、本人に必要な支援をできるだけ限定して組み合わせる方向へ制度を転換する改正といえます。

第4章 「必要な期間・必要な範囲」という考え方

今回の見直しで特に注目したいのが、「本人ができることまで支援する」のではなく、「本人だけでは難しい部分を支える」という発想です。

たとえば、家賃の契約だけ代理が必要、重要な財産処分について同意が必要など、支援が必要な場面を具体的に整理して制度を利用することが想定されています。

これは障害のある人の自立生活を考えるうえでも重要な視点です。支援とは、すべてを代わりに行うことではありません。本人が選び、決め、生活できる部分を残しながら、難しい部分だけ支えることが、自立生活の継続につながります。

ただし、改正後の制度がすべての親なき後問題を解決するわけではありません。成年後見制度は主に法律行為や財産管理などを支える仕組みであり、日常生活の見守り、外出支援、介護、住まいなどを包括的に提供する制度ではないからです。

第5章 施行はいつから?現在の利用者はどうなる?

今回の改正法は成立・公布されましたが、成年後見制度の見直し部分は、2026年6月24日の公布日から2年6か月を超えない範囲で、政令が定める日に施行されます。したがって、2026年9月時点では新制度はまだ施行されていません。

現在すでに成年後見制度を利用している人については、新制度への移行に関する経過措置などが重要になります。制度の具体的な取り扱いについては、今後示される政令や関係機関の情報を確認する必要があります。

「改正されたから、今すぐ現在の後見人を変更しなければならない」という意味ではありません。現在利用している家庭は、慌てて判断せず、家庭裁判所や専門職、相談支援機関などに確認しながら対応することが大切です。

第6章 親なき後に備えて今から整理したい5つのこと

親なき後の備えは、成年後見制度だけで考える必要はありません。次の5点を家族で整理しておくと、将来の支援につなげやすくなります。

①住まい
現在の自宅で暮らし続けるのか、グループホームなどへの入居を検討するのか、本人の希望を確認します。

②お金
預貯金、年金、障害福祉サービスの利用料、毎月の生活費などを整理し、誰がどこまで管理するのかを考えます。

③支援者
きょうだい、親族、相談支援専門員、福祉事業所など、親以外の支援者を少しずつ増やします。

④重要書類
年金、保険、障害者手帳、福祉サービス、銀行口座、契約書などを整理し、必要な情報が家族以外にも分かる状態にしておきます。

⑤本人の希望
どこで暮らしたいのか、お金をどう使いたいのか、誰に支援してほしいのかなど、本人の意思をできるだけ確認して記録します。

特に重要なのは、親が元気なうちに支援者との関係を作っておくことです。地域の基幹相談支援センターなどに早めに相談し、本人を中心とした支援体制を少しずつ整えていくことが、親なき後の生活を支える土台になります。

第7章 成年後見制度以外の選択肢も検討する

親なき後の備えでは、成年後見制度だけに頼る必要はありません。本人の判断能力が十分な段階では、任意後見制度を利用し、将来に備えてあらかじめ本人が選んだ人と契約しておく方法もあります。任意後見契約は公正証書で結び、本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所で任意後見監督人が選任されることで効力が生じます。

また、グループホームなどの居住支援、相談支援、日常生活自立支援事業など、生活面を支える制度もあります。

重要なのは、「財産管理」「契約」「住まい」「日常生活」「緊急時対応」を一つの制度だけで解決しようとしないことです。それぞれの役割を分け、本人に必要な支援を組み合わせることが、現実的な親なき後対策につながります。

まとめ

親なき後問題は、障害のある人本人だけでなく、家族全体にとって長期的に考える必要のある課題です。

2026年の民法改正では、成年後見制度について後見・保佐を廃止し、補助を中心に必要な支援を個別に設定する仕組みへ見直されました。制度の見直し部分は、公布から2年6か月を超えない範囲で政令が定める日に施行される予定です。

ただし、成年後見制度だけで親なき後の生活すべてを支えることはできません。住まい、金銭管理、福祉サービス、支援者、本人の希望などを早い段階から整理し、複数の制度や支援機関を組み合わせることが大切です。

親が元気なうちだからこそ、できる準備があります。本人の意思を中心に、家族だけで抱え込まない支援体制を少しずつ作っていきましょう。

いろとりどり編集部

この記事の監修・運営

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