A型事業所の閉鎖が増えている理由と利用者ができる対応

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2024年に入ってから、就労継続支援A型事業所の閉鎖が全国で相次ぎ、社会問題として大きく報道されました。 2024年3月から7月までのわずか5カ月間で全国329カ所のA型事業所が閉鎖し、約5000人の障害者が解雇または退職を余儀なくされたという事態は、過去最多の年間解雇記録を5カ月で突破する深刻な状況です。 A型事業所で働いている方、家族や知人にA型事業所の利用者がいる方、これから利用を考えている方にとって、この問題は他人事ではありません。 ここでは、A型事業所の閉鎖が相次いでいる背景や、利用者ができる対応、今後の見通しについて詳しく解説していきます。

A型事業所とは何か

まず、A型事業所がどのような福祉サービスなのかを整理しておきましょう。

就労継続支援A型事業所は、一般企業で働くことが難しい障害がある方に対して、雇用契約を結んで働く場を提供する障害福祉サービスです。 事業所と利用者が雇用契約を結ぶため、最低賃金以上の給料が保障され、社会保険にも加入できる仕組みになっています。

A型事業所と似たサービスにB型事業所がありますが、こちらは雇用契約を結ばず、利用者として作業に従事する形態です。 A型は最低賃金が適用される一方、B型は工賃という形で月数万円程度の支払いとなることが多く、収入面で大きな違いがあります。

A型事業所の運営は、利用者の作業による生産活動収入と、国からの給付金で成り立っています。 利用者の賃金は、原則として事業所の生産活動による収入から支払うことが求められており、給付金を賃金に充てることは認められていません。

A型事業所を利用する方は、一般就労が難しいが雇用契約を結んで働きたい方、いずれ一般就労を目指したい方、安定した収入を得ながら社会との接点を維持したい方などです。 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害など、さまざまな障害がある方が利用しています。

2024年に閉鎖が急増した経緯

A型事業所の閉鎖が急増したのは、2024年4月以降の動きです。

共同通信が都道府県、政令指定都市、中核市の計129自治体に行った調査によると、2024年3月から7月までの5カ月間で全国329カ所のA型事業所が閉鎖し、約5000人の障害者が解雇や退職を余儀なくされたことが明らかになりました。

厚生労働省の集計によると、2024年度にハローワークが把握した障害者の解雇者数は9312人で、これまで最多だった2001年度の4017人を大幅に上回る過去最多の水準となりました。 そのうち約8割にあたる7292人が就労継続支援A型事業所の利用者です。

この事態を受けて、全国社会就労センター協議会は2024年9月13日、厚生労働省に対して就労継続支援A型事業所の事業廃止と大規模解雇を受けて(お願い)という要望書を提出しました。 就労継続支援A型事業所の指定の在り方、指定基準を満たしていない事業所への対応、利用者の受け皿確保などについて、改善を求める内容となっています。

閉鎖した329カ所のうち、約4割強の事業所は最低賃金が反映されないB型事業所に移行したと報道されています。 A型からB型への転換により、利用者の収入が大幅に減少するケースも多く、生活への影響は深刻です。

閉鎖が急増した最大の理由

A型事業所の閉鎖がここまで増えた最大の理由は、2024年4月に実施された障害福祉サービス等報酬改定です。

この報酬改定では、A型事業所の評価に生産活動収支に基づくスコアリングシステムが導入されました。 生産活動収支が連続で赤字の事業所には大幅なマイナス点が適用され、それが基本報酬の引き下げにつながる仕組みとなっています。

具体的には、生産活動収支が連続でマイナスの場合、マイナス10点からマイナス20点と評価され、基本報酬が大きく減らされることになりました。 この厳しい評価により、これまで補助金頼みで経営してきた事業所は、収入が大幅に減少し、経営継続が困難な状況に追い込まれたのです。

報酬改定の背景には、悪しきA型と呼ばれる事業所を淘汰する狙いがあったとされています。 国からの補助金を目当てに参入し、障害者の自立支援よりも利益を優先する事業者を排除するための制度変更でした。

しかし、結果として真面目に運営していたものの結果が伴わなかった事業所も巻き込まれ、利用者の解雇という形でしわ寄せが及んでいます。

A型事業所の構造的な課題

報酬改定だけが原因ではなく、A型事業所には以前から構造的な課題が指摘されていました。

A型事業所は、障害者への支援と最低賃金を支払えるだけの収益確保という二つを同時に求められる、非常に難しい事業形態です。 障害がある方の働きやすさを優先すれば収益が上がりにくく、収益を追求すれば支援の質が下がるというジレンマが常にあります。

事業所の数が急速に増えたことも、課題の一つでした。 2010年代にかけてA型事業所は急増し、全国でおよそ4000カ所規模で推移しています。 地域によっては利用希望者より事業所の方が多く、定員割れになる事業所も少なくありません。

指定基準を満たしていない事業所が半数以上に上ることも、深刻な問題です。 令和5年3月末日時点で、指定基準を満たしていない事業所は50.7%となっていました。 平成29年4月の経営改善計画書提出に係る制度導入から7年が経過しても、半数以上が基準を満たせていない現実があります。

仕事の単価が低いことも、収益確保を難しくする要因です。 A型事業所が請け負う仕事は、清掃、軽作業、データ入力、簡単な製造作業など、単価の低い業務が中心です。 最低賃金を支払えるだけの収益を確保するのは、容易ではありません。

過去にも繰り返されてきた問題

実は、A型事業所の大量閉鎖は今回が初めてではありません。

2017年4月の指定基準見直しでは、生産活動収支から必要経費を引いた額が、利用者に支払う賃金の総額以上であることが求められるようになりました。 これにより、補助金で利用者の賃金を補填していた事業所は、経営改善計画の提出を求められることになりました。

2017年から2018年にかけて、岡山県倉敷市などで福祉事業所の突然の閉鎖と大量解雇が発生し、ニュースで大きく取り上げられました。 特に岡山県倉敷市では、全国6カ所に事業所を構えていた福祉事業者が突然閉鎖し、154人の利用者が一斉に解雇されるという衝撃的な事態が起きました。

2010年頃には、悪しきA型という言葉が広がり、福祉コンサルタントによって悪質なA型事業所を設立するモデルが全国に普及した時期もありました。 短時間雇用で簡単な作業を提供し、補助金の一部で障害者の最低賃金を払い、経費を切り詰めるビジネスモデルが問題視されたのです。

こうした過去の経緯を踏まえると、2024年の大量閉鎖は、A型事業所のあり方が再び問われる節目となっていると言えます。

利用者への影響

A型事業所の閉鎖は、利用者の生活に深刻な影響を及ぼしています。

突然の解雇通告に動揺する利用者の声は、報道で多く取り上げられています。 1カ月前に突然閉鎖を告げられ、次の仕事の見通しが立たないまま路頭に迷うケースが続出しました。 事業所側が次の就労先の調整を十分に行わないまま閉鎖するケースもあり、利用者が孤立する事態が起きています。

収入面の影響も深刻です。 A型からB型に移行した場合、月10万円以上の収入が月数万円に減少することもあります。 家賃や生活費を払えなくなるケースもあり、生活そのものが立ち行かなくなる方も少なくありません。

精神的な負担も大きな問題です。 ようやく見つけた働く場所を失うショック、次の仕事への不安、社会から取り残される感覚など、メンタルヘルスへの影響は計り知れません。 特に長く一つの事業所で働いてきた方ほど、変化への適応が難しい傾向があります。

社会とのつながりが断たれることも、深刻な影響です。 A型事業所は単なる職場ではなく、社会との接点や仲間とのつながりを提供する場でもあります。 それを失うことで、家から出る機会が減り、生活全般が悪化していくケースもあります。

厚生労働省の対応

事態を重く見た厚生労働省は、2024年以降さまざまな対応を進めています。

2024年10月28日、厚生労働省は障害者の就労継続支援A型事業所が廃止された際に留意すべき対応について整理し、自治体に事務連絡しました。 事業者には廃止により離職を余儀なくされた利用者に対し、必要なサービスを継続して提供できるよう関係者と調整する義務があることを明確化しています。

調整していない場合には、段階的に勧告、命令、指定取消ができるとされました。 これは、A型事業所が利用者を放置したまま閉鎖することを防ぐための措置です。

都道府県や指定都市などの指定権者は、関係機関や団体と協力して利用者の受け入れ先の調整に努めることが求められています。 利用者の居住する市町村とも連携して支援する体制が整備されつつあります。

廃止届のあったA型事業所名や運営事業名をハローワークなどに提供し、協力を求めることも進められています。 ハローワークが利用者の次の就労先を見つけるサポートに当たる仕組みです。

廃止に至らなくても課題を抱える事業者には、経営改善計画書に基づく指導や、工賃向上計画支援等事業の活用、中小企業庁が設置するよろず支援拠点の案内なども行われています。

利用者ができる対応

A型事業所の閉鎖に直面した、または閉鎖の可能性を感じている利用者ができる対応を見ていきましょう。

事業所側に状況を確認することが、まず大切です。 経営状況、今後の見通し、利用者への対応方針などを、できる範囲で確認しておきましょう。 不安があれば、相談支援専門員や家族と一緒に話を聞きに行くこともできます。

複数の相談窓口を活用することが重要です。 相談支援専門員、自治体の障害福祉担当窓口、ハローワーク、就労移行支援事業所、地域障害者職業センターなど、複数の機関に相談することで、自分に合った次のステップを見つけられます。

ハローワークでの求職活動も視野に入れましょう。 A型事業所だけでなく、一般企業の障害者雇用枠、特例子会社、他のA型事業所、B型事業所など、選択肢は複数あります。 ハローワークの専門援助部門で、自分の希望や能力に合った求人を探せます。

就労移行支援事業所の利用も選択肢の一つです。 一般企業への就職を目指す場合、就労移行支援事業所で必要なスキルやビジネスマナーを学びながら、就職活動を進めることができます。 最長2年間利用でき、原則無料または低額で利用可能です。

スキルアップの機会と捉える発想も大切です。 強制的な転換は辛いものですが、新しい働き方や仕事を考えるきっかけにもなり得ます。 パソコンスキル、資格取得、新しい分野への挑戦など、これまでとは違う道を検討してみる価値があります。

精神的なケアも忘れないでください。 突然の閉鎖と解雇は、大きな精神的ストレスとなります。 信頼できる人と話す、カウンセリングを受ける、必要に応じて医療機関を受診するなど、心のケアを大切にしましょう。

経済面の支援制度

A型事業所の閉鎖で収入が途絶えた場合に活用できる、経済面の支援制度を知っておきましょう。

雇用保険の失業給付が、最初に検討すべき選択肢です。 A型事業所は雇用契約を結んでいるため、雇用保険に加入していた場合、失業給付を受給できる可能性があります。 障害がある方は、就職困難者として一般の方より長く給付を受けられる仕組みもあります。

社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度も活用できます。 緊急小口資金として最大10万円、総合支援資金として月15万円程度を無利子または低利子で借りることができ、当面の生活費を確保できます。

住居確保給付金は、家賃の支払いに困っている方を支援する制度です。 原則3カ月、最長9カ月の家賃相当額が支給され、住居を失う前に活用できます。

障害年金を受給している方は、引き続き受給を続けながら次の仕事を探すことができます。 新たに障害年金の申請を検討する場合は、年金事務所で相談してみましょう。

生活そのものが成り立たない状況であれば、生活保護の申請も視野に入れるべきです。 A型事業所の閉鎖により収入が途絶えたという事情は、生活保護の申請理由として十分に認められるものです。

求職者支援制度は、雇用保険を受けられない方が職業訓練を受けながら月10万円の給付金を受け取れる制度です。 新しいスキルを身につけながら、生活費を確保できる仕組みとして活用できます。

一般就労への移行という選択肢

A型事業所の閉鎖を機に、一般就労への移行を考える方もいます。

法定雇用率の引き上げにより、一般企業での障害者雇用の機会は広がっています。 2024年4月から民間企業の法定雇用率は2.5%となり、2026年7月には2.7%へ引き上げられる予定です。 これに伴い、対象事業主の範囲も拡大しており、これまで雇用義務がなかった中小企業も新たに障害者を採用する必要が出てきています。

障害者雇用専門の転職エージェントは、一般就労への移行を支援してくれる存在です。 障害者雇用に積極的な企業の求人情報を多く扱っており、応募書類の書き方や面接対策など、専門的なサポートを受けられます。

特例子会社も選択肢の一つです。 親会社の実雇用率に算入できる障害者の雇用に特別な配慮をした子会社で、専門的な支援体制のもとで安定して働ける環境があります。

ジョブコーチ支援を利用することで、職場定着のサポートを受けながら一般就労に挑戦することもできます。 地域障害者職業センターのジョブコーチが、職場に訪問して本人と職場の両方をサポートしてくれます。

ただし、A型事業所で働いていた方が、すぐに一般就労できるわけではありません。 無理に一般就労を目指すのではなく、自分の能力や体調と相談しながら、段階的に進めていくことが大切です。

B型事業所への移行

A型事業所からB型事業所への移行も、現実的な選択肢の一つです。

B型事業所は、雇用契約を結ばない福祉サービスで、自分のペースで作業に取り組めるのが特徴です。 最低賃金の縛りがないため、月数千円から数万円の工賃となりますが、体調に合わせた柔軟な働き方が可能です。

A型事業所で続けて働くのが困難な場合、B型に移行することで、社会との接点を維持しながら自分のペースで活動できます。 一時的な休息の場として活用し、体調が回復してから再度一般就労や別のA型事業所を目指すこともできます。

ただし、収入面では大きく変わることを覚悟しておく必要があります。 B型の工賃だけでは生活が成り立たないため、障害年金や家族のサポート、その他の収入源と組み合わせる必要があります。

今後の見通し

A型事業所の今後の見通しはどうなるのでしょうか。

報酬改定の影響は今後も続くと予想されており、A型事業所の淘汰はさらに進む可能性があります。 収益力の弱い事業所は引き続き閉鎖や事業転換を迫られ、規模の経済が働く大手事業者や、付加価値の高い業務を提供できる事業者が残っていく流れと言えます。

業務の高度化が、生き残るためのカギとなっています。 単純作業だけでなく、Webデザイン、プログラミング、AI関連業務、コンテンツ制作など、付加価値の高い業務に取り組む事業所が増えています。 こうした事業所では、利用者の賃金も向上し、長期的に安定した運営が可能となっています。

A型事業所のあり方そのものを見直す議論も進んでいます。 障害者の支援と最低賃金の確保という二つの目標をどう両立させるか、補助金の在り方をどうするか、利用者の自立支援をどう進めるかなど、制度全体の検証が必要とされています。

利用者にとっては、A型事業所だけに依存しない複数の選択肢を持つことが、今後ますます重要になっていきます。 一般就労、特例子会社、A型、B型など、状況に応じて使い分けられる柔軟性が求められています。

まとめ

2024年4月の障害福祉サービス等報酬改定により、生産活動収支が赤字続きのA型事業所への報酬が大幅に引き下げられた結果、わずか5カ月で329カ所が閉鎖し、約5000人が解雇される事態となりました。 構造的な経営の難しさ、悪しきA型と呼ばれる問題のある事業所の淘汰、業務単価の低さなど、複合的な要因が背景にあります。 利用者は、相談支援専門員、ハローワーク、就労移行支援事業所などに早めに相談し、雇用保険、生活福祉資金、求職者支援制度、生活保護などの公的支援を活用しながら、次の働き方を見つけていくことが大切です。

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