発達障害かも?大人の発達障害 気づきから診断・支援までの完全ガイド

「生きづらさの原因が分からない」「子どもの頃から人と違う気がする」「もしかして発達障害?」大人になってから発達障害の可能性に気づく人が増えています。子どもの頃は見過ごされ、大人になって仕事や人間関係でつまずいて初めて「もしかして」と気づくケースが多いのです。本記事では、大人の発達障害の特徴、セルフチェック、診断の受け方、利用できる支援、そして自分らしく生きるための工夫を詳しく解説します。

発達障害とは

まず、発達障害の基本を理解しましょう。

発達障害の定義

発達障害とは、生まれつきの脳機能の特性により、認知、コミュニケーション、行動、学習などに困難が生じる状態です。

「障害」という言葉が使われますが、「個性の一つ」「脳の特性」として捉える視点も広がっています。

主な発達障害の種類

発達障害は、大きく以下の3つに分類されます。

1. ASD(自閉スペクトラム症/Autism Spectrum Disorder)

旧称:自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害

主な特性

  • 対人コミュニケーションの困難
  • 社会性の困難
  • 限定的・反復的な行動や興味
  • 感覚過敏・感覚鈍麻
  • こだわりの強さ
  • 予測不能な変化への不安

2. ADHD(注意欠如・多動症/Attention Deficit Hyperactivity Disorder)

主な特性

  • 不注意:集中できない、忘れっぽい、ミスが多い、物をなくす
  • 多動性:じっとしていられない、落ち着きがない
  • 衝動性:思いついたらすぐ行動、待てない、考えずに発言

大人のADHDでは、多動性は目立たなくなることが多く、不注意が主な問題になります。

3. LD(学習障害/Learning Disabilities)/SLD(限局性学習症)

知的発達に遅れはないが、「読む」「書く」「計算する」など、特定の学習に著しい困難がある状態です。

  • ディスレクシア(読字障害):文字を読むことが困難
  • ディスグラフィア(書字障害):文字を書くことが困難
  • ディスカリキュリア(算数障害):計算や数の概念が困難

併存・重複

複数の発達障害が併存することも多く、ASD+ADHD、ADHD+LDなどの組み合わせがあります。

スペクトラム(連続体)の概念

発達障害は、「ある・ない」の二分ではなく、グラデーション(連続体)として捉えられます。

誰もが多少の特性を持っており、それが日常生活に著しい困難をもたらす程度に達した場合に「障害」と診断されます。

大人になって気づく理由

なぜ子どもの頃に気づかれず、大人になってから気づくのでしょうか。

1. 軽度・境界域だった

特性が軽度で、子どもの頃は家族や学校のサポートにより、何とか適応できていた。

2. 知的能力が高かった

知的能力や努力でカバーし、学校では問題なく過ごせていた。しかし、社会に出て複雑な対人関係や業務に直面し、困難が顕在化した。

3. 昔は認知度が低かった

20年、30年前は発達障害の認知度が低く、「ちょっと変わった子」「わがまま」「努力不足」と誤解されていた。

4. 女性は見過ごされやすい

女性のASDやADHDは、男性より症状が目立ちにくく、「おとなしい子」「夢見がちな子」と見過ごされやすい傾向があります。

5. 環境が変わった

就職、転職、結婚、出産など、環境や役割が変わることで、それまで隠れていた困難が表面化した。

6. 二次障害が先に現れた

発達障害そのものではなく、うつ病、不安障害、適応障害などの二次障害が先に現れ、その背景に発達障害があると後から分かった。

大人の発達障害の特徴とセルフチェック

以下のチェックリストで、発達障害の可能性を確認できます。

ただし、これはあくまで目安であり、確定診断には専門医の診察が必要です。

ASD(自閉スペクトラム症)のチェックリスト

コミュニケーションの困難

□ 雑談が苦手、何を話せば良いか分からない □ 比喩や皮肉、暗黙の了解が理解できない □ 言葉を文字通りに受け取ってしまう □ 相手の表情や声のトーンから感情を読み取るのが苦手 □ 一方的に話してしまう、会話のキャッチボールができない □ 冗談が通じない、または冗談と本気の区別がつかない □ 敬語やTPOに合わせた言葉遣いが難しい

社会性の困難

□ 人の気持ちを推測するのが苦手 □ 「空気を読む」ことができない □ 集団行動が苦手 □ 暗黙のルールが分からない □ 社交的な場が苦痛(飲み会、パーティーなど) □ 友人関係を維持するのが難しい □ アイコンタクトが苦手

こだわり・興味の限定

□ 特定の分野への強い興味(オタク気質) □ ルーティンやこだわりが強い □ 予定外のことが起こるとパニックになる □ 変化が苦手 □ 同じ服、同じ食べ物を好む □ 細部にこだわる、全体が見えない

感覚の特異性

□ 音、光、匂い、触覚に敏感(または鈍感) □ 特定の音が耐えられない □ タグやチクチクする服が着られない □ 偏食がある □ 痛みに鈍感(または過敏)

ADHD(注意欠如・多動症)のチェックリスト

不注意

□ 仕事や家事でケアレスミスが多い □ 注意を持続するのが難しい □ 話を聞いていないように見える □ 指示に従えない、最後までやり遂げられない □ 計画を立てるのが苦手、段取りが悪い □ 先延ばしにしてしまう □ 物をよくなくす(鍵、財布、スマホなど) □ 忘れっぽい、約束を忘れる □ すぐに気が散る

多動性(大人では目立ちにくい)

□ 落ち着きがない、ソワソワする □ 貧乏ゆすりをする □ じっと座っていられない □ 静かにすることが難しい □ 常に何かしていないと落ち着かない

衝動性

□ 思いついたらすぐ行動してしまう □ 順番を待つのが苦手 □ 人の話を遮って話してしまう □ 衝動買いが多い □ 感情のコントロールが難しい(すぐにキレる、泣くなど) □ 考えずに発言して後悔する

LD(学習障害)のチェックリスト

□ 文字を読むのが遅い、読み間違える □ 文章の理解が難しい □ 文字を書くのが苦手、誤字脱字が多い □ 計算が苦手、お釣りの計算ができない □ 数字の概念が理解しにくい □ 時計が読めない、時間の管理が苦手

判定の目安

ASD、ADHD、LDそれぞれで5個以上該当し、日常生活や仕事に支障が出ている場合、発達障害の可能性があります。

ただし、自己診断は危険です。専門医の診察を受けてください。

大人の発達障害がもたらす困難

発達障害の特性により、以下のような困難が生じます。

1. 仕事上の困難

ASDの場合

  • コミュニケーションがうまくいかず、誤解やトラブルが多い
  • チームワークが苦手
  • 暗黙のルールが分からず、「常識がない」と言われる
  • マルチタスクができない
  • 変化への対応が難しい
  • 感覚過敏で職場環境(音、光、匂いなど)が辛い

ADHDの場合

  • ケアレスミスが多い
  • 締め切りを守れない
  • 書類や物をなくす
  • 時間管理ができない、遅刻が多い
  • 集中が続かない
  • 衝動的な発言や行動でトラブル
  • 優先順位がつけられない

LDの場合

  • 書類作成が困難
  • メールや報告書の作成に時間がかかる
  • 数字の処理が苦手(経理、会計など)

2. 人間関係の困難

空気が読めない、コミュニケーションのズレ、友人ができない・維持できない、孤立する、いじめやハラスメントの対象になりやすい、恋愛や結婚生活がうまくいかない、といった問題です。

3. 日常生活の困難

家事ができない、片付けられない、お金の管理ができない、生活リズムが乱れる、忘れ物が多い、約束を忘れる、といった日常的な困難です。

4. 二次障害

発達障害そのものではなく、困難や失敗体験の積み重ねにより、二次的に以下の問題が生じます。

  • 精神疾患:うつ病、適応障害、不安障害、パニック障害、依存症(アルコール、ギャンブル、薬物)
  • 自己肯定感の低下:「自分はダメだ」「何をやってもうまくいかない」
  • 引きこもり・ニート:社会参加が困難になる
  • 対人恐怖:失敗経験から人間関係を避けるようになる

二次障害を防ぐためにも、早期の気づきと適切な支援が重要です。

診断を受けるべきか

「診断を受けるべきか迷っている」という方へ。

診断を受けるメリット

1. 生きづらさの原因が分かる

「自分が悪いのではなく、脳の特性だった」と理解することで、自己否定から解放されます。

2. 適切な対処法が見つかる

自分の特性を理解することで、困難への具体的な対処法が見つかります。

3. 支援が受けられる

診断があれば、障害福祉サービス、就労支援、医療サービスなどが利用しやすくなります。

4. 周囲の理解が得られる

家族、職場、友人に説明しやすくなり、理解や配慮を得やすくなります。

5. 自己理解・自己受容が深まる

「こういう特性を持った自分」を理解し、受け入れることができます。

診断を受けるデメリット・懸念

1. ラベリング(レッテル貼り)

「障害者」というラベルに抵抗感がある、自分を「障害者」と認めたくない、という気持ちです。

ただし、診断は「理解と支援のためのツール」であり、あなたの価値を下げるものではありません。

2. 就職・保険への影響

一部の職種(自衛隊、警察など)では制限がある場合があります。

生命保険や住宅ローンで不利になる可能性もあります。

ただし、多くの場合、診断があっても大きな制限はありません。

3. 診断の難しさ

大人の発達障害の診断は難しく、医師によって見解が分かれることもあります。

4. 診断がつかない可能性

「グレーゾーン」と言われ、診断基準を満たさないが特性はある、という場合もあります。

判断の基準

日常生活や仕事に著しい支障があり、自分一人では対処が難しい場合、診断を受けることをお勧めします。

診断がつかなくても、「発達障害的な特性がある」と理解し、対処法を学ぶことは有益です。

診断の受け方

診断を受けたい場合の手順です。

1. 医療機関を探す

何科を受診するか

心療内科、精神科で、「大人の発達障害の診断ができる」と明記している医療機関を選びます。

すべての精神科で発達障害の診断ができるわけではないため、事前に確認が必要です。

探し方

  • インターネットで「地域名 大人の発達障害 診断」で検索
  • 発達障害者支援センターに相談
  • かかりつけ医に紹介してもらう

注意点

大人の発達障害の診断ができる医療機関は限られており、初診まで数か月待つこともあります。

2. 予約・初診

電話やネットで予約します。初診時には、以下を準備します。

  • 健康保険証
  • お薬手帳(服薬している場合)
  • 困っていることのメモ
  • 子どもの頃のエピソード(通知表、母子手帳など)

3. 問診

医師との面談で、現在の困りごと、子どもの頃の様子、生育歴、家族歴などを詳しく聞かれます。

正直に、具体的に話すことが大切です。

4. 心理検査

発達障害の診断には、心理検査が用いられることが多いです。

WAIS-IV(ウェクスラー成人知能検査)

知能検査で、言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度の4つの指標を測定します。

得意・不得意の凹凸が分かり、発達障害の特性が見えます。

ADOS-2、AQ(自閉症スペクトラム指数)

ASDの診断に用いられる検査です。

CAARS(成人ADHD評価尺度)

ADHDの評価に用いられます。

5. 診断

問診と心理検査の結果を総合的に判断し、診断が下されます。

診断名(ASD、ADHD、LDなど)、特性の説明、今後の対処法や治療方針が説明されます。

6. 費用

保険適用で、初診料+心理検査で、合計1万円〜3万円程度です(3割負担の場合)。

自立支援医療制度を利用すれば、1割負担に軽減できます。

診断後の治療・支援

診断後、どのような治療や支援が受けられるのでしょうか。

1. 薬物療法

ADHDの場合

コンサータ、ストラテラ、インチュニブなどの薬により、不注意、多動性、衝動性が改善します。

効果は個人差がありますが、多くの人で「霧が晴れたよう」「人生が変わった」という劇的な改善が見られます。

ASDの場合

ASD自体を治す薬はありませんが、併存する不安、うつ、こだわりなどに対して、抗不安薬、抗うつ薬などが処方されることがあります。

2. 心理療法・カウンセリング

認知行動療法(CBT)

歪んだ思考パターンを修正し、適切な行動を学びます。

ソーシャルスキルトレーニング(SST)

対人コミュニケーションスキルを訓練します。

ペアレント・トレーニング

子育て中の発達障害の親向けに、子どもへの関わり方を学びます。

3. 障害福祉サービス

精神障害者保健福祉手帳

診断を受けることで、精神障害者保健福祉手帳を申請できます(任意)。

等級は2級または3級が多いです。

手帳のメリット

  • 障害者雇用枠での就職
  • 税金の控除・減免
  • 公共交通機関の割引
  • 各種サービスの割引

手帳のデメリット

  • 「障害者」というラベル
  • 一部の職種での制限

障害者雇用

手帳があれば、障害者雇用枠で就職できます。

企業側に配慮義務があり、無理のない働き方ができます。

就労移行支援

一般就労を目指すための訓練施設です(利用期間2年)。

ビジネスマナー、パソコンスキル、コミュニケーション訓練、企業実習などが受けられます。

就労継続支援A型・B型

雇用契約を結んで働くA型、雇用契約なしで自分のペースで働けるB型があります。

就労定着支援

就職後、職場に定着できるよう支援するサービスです(最長3年間)。

4. 発達障害者支援センター

各都道府県・政令指定都市に設置されており、相談、情報提供、就労支援などを行っています。

5. 自助グループ・ピアサポート

同じ発達障害の当事者同士の集まりで、体験を共有し、支え合います。

発達障害と上手に付き合う工夫

診断の有無にかかわらず、特性と上手に付き合う工夫です。

1. 自己理解を深める

自分の得意・不得意、特性、困りやすいポイントを理解します。

「自分の取扱説明書」を作るイメージです。

2. 環境調整

特性に合った環境を選びます。

仕事選び

ASD向き:ルーティンワーク、一人でできる仕事、専門性が活かせる仕事(プログラマー、研究者、データアナリストなど)

ADHD向き:変化がある仕事、短期集中型、クリエイティブな仕事(デザイナー、営業、起業家など)

避けたい:マルチタスク、高度な対人スキルが必要、感覚刺激が強い環境

3. 対処法・ライフハック

ASD向け

  • スケジュールを可視化する
  • コミュニケーションはメールやチャットを活用
  • 曖昧な指示は具体的に確認する
  • 感覚過敏対策(ノイズキャンセリングイヤホン、サングラス、肌触りの良い服)

ADHD向け

  • 外部記憶を活用:スマホのリマインダー、カレンダー、ToDoアプリ
  • 視覚化:メモ、付箋、ホワイトボード
  • 物の定位置を決める:鍵、財布、スマホの置き場所を固定
  • タイマーを使う:ポモドーロテクニック(25分集中+5分休憩)
  • 締め切りを前倒し:本当の締め切りより早く設定
  • 一つずつやる:マルチタスクを避ける

4. 強みを活かす

発達障害には、困難だけでなく、強みもあります。

ASDの強み

  • 集中力、こだわり、専門性、正確性、ルールを守る、論理的思考、記憶力

ADHDの強み

  • 創造性、発想力、行動力、興味のあることへの過集中、臨機応変さ

これらの強みを活かせる場所を見つけましょう。

5. 周囲に伝える

信頼できる人(上司、同僚、家族、友人)には、自分の特性を説明し、理解と配慮を求めます。

6. 無理をしない

「普通」になろうと無理をせず、自分のペースで、自分らしく生きることが大切です。

まとめ

大人の発達障害は、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)の3つに大別されます。

子どもの頃は軽度で見過ごされ、大人になって仕事や人間関係でつまずいて初めて気づくケースが多くあります。

セルフチェックで複数の項目に該当し、日常生活に支障がある場合、発達障害の可能性があります。診断を受けることで、生きづらさの原因が分かり、適切な対処法や支援が得られます。

診断を受けたい場合は、大人の発達障害の診断ができる心療内科・精神科を受診し、問診と心理検査を受けます。

診断後は、薬物療法(特にADHDで有効)、心理療法、障害福祉サービス(精神障害者保健福祉手帳、障害者雇用、就労支援など)が利用できます。

発達障害と上手に付き合うには、自己理解を深め、環境を調整し、対処法を工夫し、強みを活かし、周囲に伝え、無理をしないことが大切です。

発達障害は、「治す」ものではなく、「特性を理解し、上手に付き合う」ものです。診断の有無にかかわらず、自分らしく生きる道は必ずあります。

一人で抱え込まず、専門家や支援機関の力を借りながら、自分に合った生き方を見つけていきましょう。あなたには、自分らしく生きる権利があります。

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