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「障害者雇用枠で入社したのに、毎日サービス残業を求められる」「定時で帰ろうとすると周囲の視線が冷たい」「残業代を申請するなと暗に言われる」「他の障害者社員も黙ってサービス残業している」など、障害者雇用枠でサービス残業を強いられている方は、想像以上に多くいらっしゃいます。サービス残業は、健常者にとっても違法行為ですが、障害者にとっては症状の悪化や離職につながる深刻な問題です。本記事では、障害者雇用でのサービス残業の実態、法的な問題、具体的な対処法について整理します。
サービス残業の基本
まず、サービス残業とは何かを確認しておきましょう。
サービス残業とは、労働時間として認識されているにもかかわらず、賃金が支払われない労働を指します。法律上は「賃金不払残業」と呼ばれ、明確な労働基準法違反となります。
労働基準法では、法定労働時間を超える労働、いわゆる残業に対しては、通常賃金の25パーセント以上の割増賃金を支払うことが義務付けられています。深夜労働や休日労働では、さらに高い割増率が適用されます。
つまり、残業をさせておきながら賃金を支払わないことは、明確に違法行為です。会社の規模、雇用形態、障害の有無に関係なく、サービス残業は許されません。
サービス残業が発生するパターンとして、定時後に業務を続けても残業申請を出さない、タイムカードを定時で打刻した後に業務を続ける、自宅に持ち帰って業務を行う、休日に業務メールに対応するなどがあります。
障害者雇用枠でのサービス残業の特殊性
障害者雇用枠でのサービス残業には、特殊な側面があります。
合理的配慮義務に反する行為であることが、最も大きな問題です。障害者雇用促進法では、事業主に対して合理的配慮の提供を義務付けています。残業を含む過剰な業務負担は、合理的配慮の不提供に該当する可能性があります。
体調悪化のリスクが、健常者よりも高い点も特殊です。精神疾患、慢性疾患、内部障害などのある方にとって、サービス残業は症状の悪化に直結します。短期間で休職や退職に追い込まれる可能性があります。
雇用率達成のためだけの採用との関連も指摘されます。実質的な業務がない、または逆に過剰な業務を押し付ける職場では、雇用率達成だけが目的化している可能性があります。
声を上げにくい立場の弱さも、問題を深刻化させます。「雇ってもらっているのだから」「障害者だから配慮されているのだから」と、不満を言えない雰囲気が作られていることがあります。
採用時の説明と異なるケースも多くあります。「残業はありません」「無理のない働き方ができます」と説明されて入社したのに、実際にはサービス残業を強いられるという事態は、深刻な信頼関係の問題です。
法的な位置づけ
サービス残業の法的な位置づけを理解しておきましょう。
労働基準法第37条では、時間外労働、休日労働、深夜労働に対する割増賃金の支払いが義務付けられています。これに違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
未払い賃金の請求権は、3年間有効です。過去3年分のサービス残業代を、後から請求することが可能です。証拠があれば、退職後でも請求できます。
合理的配慮義務違反は、障害者雇用促進法に違反します。改善命令、企業名の公表など、行政の対応の対象となる可能性があります。
健康障害が生じた場合、安全配慮義務違反として損害賠償請求の対象となります。労災認定を受けることも可能です。
労働基準監督署への申告は、労働者の権利として認められています。申告を理由に解雇するなどの不利益な扱いは、法律で禁止されています。
証拠を集める
サービス残業に対応するためには、証拠を集めることが第一歩です。
業務時間の記録を、自分でつけます。出勤時間、退勤時間、休憩時間、実際の業務時間を、毎日メモやアプリで記録します。タイムカードと実際の業務時間が異なる場合は、両方を記録します。
業務内容の記録も、有効な証拠となります。残業中に何の業務をしていたかを、メモや業務日報として残します。
メールやチャットの履歴を保存します。定時後の業務指示、休日のメール対応、業務に関するやり取りなど、文字として残るものを保存します。スクリーンショットを取る、自分のメールアドレスに転送するなどの方法で、後から確認できる形にしておきます。
同僚や上司の発言を記録します。「残業申請するな」「これくらいの残業は当たり前」といった発言を、メモや録音で残します。自分が参加している会話の録音は、相手の同意なく行っても証拠として有効とされる場合があります。
業務指示の文書も保管します。残業を指示する文書、業務量を示す資料など、客観的な証拠を集めます。
健康状態の記録も、補助的な証拠となります。サービス残業による体調悪化を、通院記録や日記で残しておきます。
これらの証拠は、後の交渉や法的手続きで重要な材料となります。
社内での対応
まず社内での対応を試みることも、選択肢の一つです。
直属の上司との対話から始めます。「残業代の申請について確認したいです」「定時で帰宅できる業務量にしていただきたいです」と、率直に伝えます。
人事部への相談も検討します。直属の上司で解決しない場合、人事担当者に状況を伝えます。会社全体の方針として残業代未払いが行われているのか、特定の部署の問題なのかを確認することも大切です。
産業医がいる場合、健康への影響を伝えます。「サービス残業によって体調が悪化しています」と、医学的な観点からの相談を求めます。
労働組合がある職場では、組合を通じて改善を求めることもできます。集団の力で交渉することで、個人での対話よりも効果的な解決が期待できます。
ジョブコーチや支援員がいる場合、職場との対話を支援してもらえます。
社内での対応は、状況の改善につながる可能性がある一方、職場の関係性が悪化するリスクもあります。慎重に判断しながら進めます。
外部機関への相談
社内での対応が難しい場合、外部機関への相談を検討します。
労働基準監督署が、最も直接的な相談先です。サービス残業の事実を申告することで、企業への調査や指導が行われます。匿名での相談も可能ですが、具体的な対応を求める場合は実名での相談が必要となります。
都道府県労働局の総合労働相談コーナーでも、相談できます。無料で相談でき、必要に応じて助言や指導、あっせんなどの解決手続きを案内してくれます。
ハローワークの障害者専門窓口や、地域障害者職業センターでも、状況を相談できます。直接的な法的対応ではありませんが、障害者雇用の観点からのアドバイスや、転職支援などにつなげてもらえます。
弁護士への相談も、有効な選択肢です。労働問題に詳しい弁護士は、未払い残業代の請求、損害賠償請求、訴訟など、法的な対応を支援してくれます。法テラスを通じて、収入が一定以下の方は無料法律相談を利用できます。
個人加入できるユニオン、いわゆる合同労組も相談先となります。一人で対抗できない問題でも、組合として団体交渉することで、解決の道が開けます。
NPO法人や労働相談団体も、相談窓口として活用できます。
未払い残業代の請求
サービス残業の対価として、未払い残業代を請求することが可能です。
請求方法として、まずは会社に対して書面で請求します。内容証明郵便を使うことで、請求した事実を明確に残せます。
会社が応じない場合、労働審判や訴訟に進みます。労働審判は、原則3回以内の期日で結論が出る迅速な手続きで、裁判よりも費用と時間が抑えられます。
請求できる期間は、原則として3年です。過去3年分のサービス残業代を遡って請求できます。
請求額の計算は、複雑になることがあります。基本給、各種手当、時間外労働、深夜労働、休日労働など、それぞれの割増率を考慮して計算します。弁護士に依頼することで、正確な金額を算出してもらえます。
退職後の請求も可能です。在職中は言い出しにくくても、退職後にまとめて請求することができます。
退職という選択肢
サービス残業が改善されない場合、退職も視野に入れる必要があります。
体調を守るための退職は、決して負けではありません。サービス残業によって症状が悪化し、長期的に働けなくなることの方が、はるかに深刻な問題です。
退職時には、未払い賃金、未消化の有給休暇、退職金などをすべて請求します。
ハローワークで「特定理由離職者」として認定される可能性があります。労働基準法違反、合理的配慮の不提供などを理由に、給付制限の短縮などのメリットが受けられる場合があります。
退職後の転職活動では、過去の経験を学びとして活かします。「前職で違法な労働環境を経験したため、今回はコンプライアンス重視の企業を選びたい」と前向きに語ることができます。
転職先を選ぶ際は、面接で残業について具体的に質問することが大切です。「平均的な残業時間は」「残業代は確実に支払われますか」「障害者雇用枠の方の残業状況は」など、率直に確認します。
まとめ
障害者雇用枠でのサービス残業は、合理的配慮義務違反と労働基準法違反の両方に該当する深刻な問題です。健常者よりも体調への影響が大きく、症状の悪化や離職につながる可能性が高いものです。証拠を集め、社内での対話、外部機関への相談、未払い残業代の請求、退職など、複数の選択肢があります。労働基準監督署、労働局、弁護士、労働組合、ハローワーク、地域障害者職業センターなど、相談できる窓口は複数あります。法テラスを利用すれば、収入が一定以下の方は無料法律相談を受けられます。サービス残業を当たり前と受け入れる必要はありません。自分の健康と権利を守るために、適切な行動を取っていきましょう。明るい未来は、必ずあなたの前に開かれています。
