孤独・孤立対策推進法と2026年の補助金活用で広がる支援の輪

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孤独や孤立は、現代社会において誰もが直面する可能性のある問題です。一人暮らしの高齢者、子育てに悩む親、職場で孤立する若者、ひきこもり状態にある中高年など、孤独・孤立は世代や立場を問わず広がっています。

こうした状況を受けて、2024年4月に「孤独・孤立対策推進法」が施行され、国と地方公共団体が連携して総合的な対策を進める法的枠組みが整いました。2026年に入り、法律に基づく具体的な施策や補助金、官民連携の取り組みが各地で本格化しています。

この記事では、孤独・孤立対策推進法の概要、2026年の最新動向、活用できる補助金や支援事業、地方自治体の取り組み、対象団体と申請のポイント、これからの社会のあり方について詳しく解説します。地域で支援活動を行う団体、自治体担当者、関心のある市民にとっての参考にしてください。

孤独・孤立対策推進法の概要と成立の背景

まず、この法律がどのようなものかを押さえておきましょう。

日常生活や社会生活の中で孤独を感じたり、社会から孤立していることで心身に有害な影響を受けている人、また、その家族への支援に関する法律のこと。2024年5月に成立し、6月に公布されました。孤独・孤立対策をめぐっては、2021年に孤独・孤立対策専門の大臣が任命され、内閣官房に孤独・孤立対策担当室が新設されました。孤独・孤立対策推進法は、そうした流れの中で、対策の基本理念、国や地方公共団体の責務、基本的施策、推進体制を定めるためにつくられました。この法律により、内閣総理大臣を本部長とし、全閣僚により構成される「孤独・孤立対策推進本部」を対策担当室とは別に設置。孤独・孤立対策の重点計画の作成を主な役割として、「孤独・孤立に悩む人を誰ひとり取り残さない社会」、「相互に支え合い、人と人との『つながり』が生まれる社会」を目指し、施策の検討などを進めています。

社会環境の変化による人と人との「つながり」の希薄化、単身世帯や単身構成世帯の増加による孤独・孤立の問題の深刻化を背景に、(1)孤独・孤立双方への社会全体での対応、(2)当事者や家族等の立場に立った政策の推進、(3)人と人との「つながり」を実感できるための施策の推進を基本理念とした「孤独・孤立対策推進法」が成立し、令和6年4月1日から施行されました。

法律の成立は2023年(令和5年)5月31日、施行は2024年(令和6年)4月1日です。コロナ禍を経験した日本社会で、人と人とのつながりが希薄化し、孤独・孤立の問題が深刻化したことが、法律制定の大きな背景となっています。

孤独と孤立は似ているようで異なる概念です。一般に、「孤独」は主観的概念で、ひとりぼっちと感じる精神的な状態を指し、寂しいことという感情を含めて用いられることがあります。「孤立」は客観的概念であり、社会とのつながりや助けのない又は少ない状態を指します。社会とのつながりが少なく「孤立」しており、不安や悩み、寂しさを抱えて「孤独」である場合があります。

孤独は心の中の感覚、孤立は社会的な状態という違いがあります。両者は重なることも多いですが、別々に発生することもあります。客観的には人と関わっているけれど孤独を感じる人、人との関わりが少ないけれど孤独感はない人など、多様な状態があり、それぞれに応じた支援が必要となります。

法律の基本理念と国・地方の責務

この法律の目的は、社会の変化により個人と社会及び他者との関わりが希薄になる中で、日常生活若しくは社会生活において孤独を覚えることにより、又は社会から孤立していることにより心身に有害な影響を受けている状態(以下「孤独・孤立の状態」という。)にある者の問題が深刻な状況にあることを踏まえ、孤独・孤立の状態となることの予防、孤独・孤立の状態にある者への迅速かつ適切な支援その他孤独・孤立の状態から脱却することに資する取組(以下「孤独・孤立対策」という。)について、その基本理念、国等の責務及び施策の基本となる事項を定めるとともに、孤独・孤立対策推進本部を設置すること等により、他の関係法律による施策と相まって、総合的な孤独・孤立対策に関する施策を推進することを目的とする。

法律は3つの基本理念を掲げています。1つ目は、孤独・孤立は人生のあらゆる段階で誰にでも生じ得るものであり、社会全体の課題であるという認識です。2つ目は、当事者やその家族の立場に立って、状況に応じた継続的な支援を行うことです。3つ目は、当事者の意向に沿って、社会や他者との関わりを通じて孤独・孤立から脱却できるようにすることです。

第三条 国は、基本理念にのっとり、孤独・孤立対策に関する施策を策定し、及び実施する責務を有します。第四条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、孤独・孤立対策に関し、国及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その区域内における当事者等の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有します。第五条 国民は、孤独・孤立の状態にある者に対する関心と理解を深めるとともに、国及び地方公共団体が実施する孤独・孤立対策に関する施策に協力するよう努めるものとします。

国と地方公共団体には、それぞれ施策を策定し実施する法的な責務が定められました。地方自治体は地域の実情に応じた施策を作る義務があり、国は基本的な方針を示しつつ、地方の取り組みを支援する役割を担います。国民にも、孤独・孤立への関心と理解を深め、施策に協力する努力義務が課されています。

孤独・孤立対策推進本部と重点計画

法律に基づき、国レベルの推進体制が整備されました。

第八条 孤独・孤立対策推進本部は、孤独・孤立対策に関する施策の推進を図るための重点計画(以下この条及び第二十一条第一項第一号において「孤独・孤立対策重点計画」という。)を作成しなければならない。2 孤独・孤立対策重点計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。一 孤独・孤立対策に関する施策についての基本的な方針、二 孤独・孤立対策に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策、三 前二号に掲げるもののほか、孤独・孤立対策に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項。

内閣総理大臣を本部長とし、全閣僚で構成される「孤独・孤立対策推進本部」が中核的な役割を担います。この本部が「孤独・孤立対策重点計画」を作成し、国全体としての政策の方向性を示します。

孤独・孤立対策の重点計画では、「毎年度を基本としつつ必要に応じて、本重点計画全般の見直しの検討を行う」こととされています。

重点計画は固定的なものではなく、毎年度見直しが行われる動的な計画です。社会情勢の変化、新たな課題の発生、これまでの取り組みの成果などを踏まえて、継続的にアップデートされていく仕組みとなっています。

2026年の最新動向

法律施行から2年が経過した2026年、孤独・孤立対策の取り組みは新たな段階に入っています。

2026年4月16日 第8回 孤独・孤立対策の在り方に関する有識者会議を開催しました。2026年4月14日 令和7年孤立死者数の推計についてを公表しました。2026年4月14日 孤独・孤立の実態把握に関する全国調査の結果を公表しました。2026年3月31日 第7回 孤独・孤立対策の在り方に関する有識者会議を開催しました。2026年3月19日 孤独・孤立対策推進会議(第4回)を開催しました。

2026年4月時点では、有識者会議が継続的に開催され、政策の検討が深められています。注目すべきは、2026年4月14日に公表された令和7年孤立死者数の推計と、孤独・孤立の実態把握に関する全国調査の結果です。これらの調査結果は、現状の課題を可視化し、これからの政策の方向性を示す重要な根拠となります。

孤立死は、家族や社会から切り離された状態で亡くなり、長期間発見されないケースを指します。日本社会で深刻化しているこの問題への対応は、孤独・孤立対策の重要な柱の一つです。実態把握を通じて、どのような層がどのように孤立死に至るのかを明らかにし、予防策を講じる取り組みが進んでいます。

2026年3月9日 孤独・孤立対策推進室 公式Instagramを開設しました。2025年12月15日 孤独・孤立対策に取り組もうとしている地方公共団体担当者へのアドバイスを掲載しました。

SNSを活用した情報発信も強化されています。Instagram、X(旧Twitter)、Facebook、YouTubeなど、複数のプラットフォームで内閣府が情報を発信し、若年層も含めた広い世代へのアプローチを試みています。地方自治体担当者向けのアドバイスの公表など、現場で動く人々を支援する取り組みも進められています。

地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム推進事業

国の重要施策の一つが、「地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム推進事業」です。

北海道では、「地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム推進事業」の一環として、孤独や孤立に悩む人が、行政の支援施策や支援を行う民間団体にアクセスしやすくなるように、支援制度や支援を行う民間団体等の情報の一元化に取り組みました。一般社団法人北海道ねっとわーく(以前は特定非営利活動法人コミュニティワーク研究実践センター)が運営する「北海道支援情報ナビ」において、支援制度や道内で支援活動に取組む民間団体に係る情報を一元化し、紹介します。

このプラットフォーム推進事業は、自治体と民間団体が連携して孤独・孤立対策に取り組む枠組みを支援するものです。行政だけでも、民間団体だけでも限界がある支援を、両者の協働によって効果的に進めることが狙いです。

北海道では、社会環境の変化による人と人との「つながり」の希薄化やコロナ禍における孤独・孤立の問題の顕在化、今後の更なる深刻化が懸念されることから、行政機関とNPO等支援団体が分野横断的に連携する場として「ほっかいどう孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム」を設立しました。

北海道の例は、こうした官民連携の代表的なケースです。行政機関とNPO等の支援団体が分野を横断して連携する場が設けられ、情報共有、連携支援、共同事業の実施などが行われています。同様の取り組みは、全国各地で広がっています。

プラットフォームの構築には国からの財政支援があり、自治体は補助金を活用して運営体制を整えることができます。地方版プラットフォームを設立した自治体は、内閣府の公式サイトに掲載され、参考事例として全国に共有されています。

補助金の対象事業と対象団体

孤独・孤立対策に関する補助金や支援事業には、いくつかの種類があります。

地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム推進事業の補助金は、自治体が官民連携の枠組みを構築・運営するための費用を支援するものです。プラットフォームの設立準備、構成団体間の連携会議の開催、共同で行う啓発活動、人材育成、情報共有システムの構築などに充てることができます。

NPO法人等への支援としては、子どもの居場所づくり、ひきこもり支援、孤立死防止、女性支援、若者支援、高齢者支援などの分野で、各種の補助金や委託事業があります。これらは厚生労働省、内閣府、こども家庭庁などの省庁が所管しており、それぞれの対象や要件が異なります。

地域の福祉活動を支援する補助金として、生活困窮者自立支援制度との連携も重要な柱です。孤独・孤立対策と生活困窮者自立支援制度との連携について(1/2)(令和6年6月24日府孤推第33号・社援地発0624第4号)が通知として発出されています。

孤独・孤立対策は単独で機能するものではなく、既存の福祉制度と連携することで効果を発揮します。生活困窮者自立支援制度との連携により、経済的な困窮と孤独・孤立を併せ持つ人々への包括的な支援が可能となります。

対象となる団体は多様です。NPO法人、社会福祉法人、一般社団法人、公益財団法人、市民活動団体、ボランティア団体、医療法人、宗教法人など、地域で支援活動を行う様々な主体が対象となり得ます。法人格のない任意団体でも、自治体の判断により補助の対象となるケースがあります。

自治体の取り組み事例

全国各地の自治体では、孤独・孤立対策の独自の取り組みが進められています。

兵庫県では、孤独・孤立対策推進法は、国及び地方において総合的な孤独・孤立対策に関する施策を推進するため、その基本理念や国等の責務、施策の基本となる事項、国及び地方の推進体制等について定めるものです。孤独・孤立は、人生のあらゆる場面で誰にでも起こり得るもので、社会全体で対応しなければならない問題です。孤独・孤立対策に関する施策の周知や、孤独・孤立対策の連携体制を推進するための会議を開催していきます。

兵庫県では、関係機関の連携体制を強化するための会議を定期的に開催し、施策の周知も積極的に進めています。地域内の支援団体と行政が一体となった取り組みが特徴的です。

東京都、大阪府、福岡県、神奈川県など、大都市圏でも官民連携の取り組みが広がっています。一人暮らし高齢者の見守り、若者の居場所づくり、ひきこもり支援、子育て中の親の交流場所など、地域ニーズに応じた多様な事業が展開されています。

中山間地域や離島では、地理的な条件もあって孤独・孤立のリスクが高い傾向があります。こうした地域では、訪問型の支援、移動カフェ、買い物同行、IT活用による遠隔つながりサポートなど、地域の特性に合わせた工夫が見られます。

地域の特性を活かした取り組みとして、地縁組織との連携、商店街の活用、寺社や教会など宗教施設の協力、地元企業のCSR活動との連動など、多様なステークホルダーが参加する形が広がっています。

補助金活用のポイントと申請の流れ

補助金を活用したい団体や自治体担当者にとって、申請のポイントを押さえることが重要です。

最初のステップは、自分の活動や計画が、どの補助金や支援事業の対象となるかを把握することです。内閣府孤独・孤立対策推進室のウェブサイト、各省庁の公募情報、自治体のホームページなどを定期的にチェックすることが基本となります。

事業計画の明確化が、採択を左右する重要な要素です。何を解決したいのか、どのような対象に何を提供するのか、どのような成果を目指すのか、関係機関とどう連携するのかを、具体的に整理することが求められます。漠然とした計画ではなく、地域の実情とニーズに基づいた具体的な提案が高く評価されます。

地域連携の体制づくりも欠かせません。一つの団体だけで完結する事業よりも、複数の団体や行政との連携がある事業の方が、実効性と継続性が高いと評価される傾向があります。準備段階から関係者との対話を進め、合意形成を図ることが大切です。

予算と執行計画の妥当性も審査されます。事業に必要な経費を適切に見積もり、補助金の使途を明確にすることが求められます。人件費、事業費、間接経費などのバランスにも配慮が必要です。

成果指標の設定と評価方法も重要です。事業の成果をどう測るか、利用者満足度、参加人数、課題解決の状況、地域への波及効果などを、定量・定性の両面から評価する仕組みを盛り込むと、説得力のある計画となります。

実施期間中の報告と最終報告書の提出も、補助金事業の重要な要件です。計画通りに事業が進められているか、目標が達成されているか、課題は何かなどを定期的に報告し、次年度以降の計画にも反映させていく姿勢が求められます。

民間団体や企業の役割

孤独・孤立対策は、行政だけで完結するものではなく、民間の力が不可欠です。

NPO法人や社会福祉法人は、地域に根ざした活動を通じて、行政の手が届きにくい層への支援を提供します。子ども食堂、ひきこもり支援、女性のための居場所、高齢者カフェ、外国人支援など、多様な領域で専門性を発揮しています。

企業のCSR活動やSDGs取り組みの一環として、孤独・孤立対策に参加する動きも広がっています。社員ボランティアの派遣、自社施設の地域開放、寄付や物資提供、専門技術の提供など、企業ならではの貢献の形があります。

地域の自治会、町内会、老人クラブ、子ども会などの伝統的な組織も、依然として重要な役割を担っています。日常的な見守り、声かけ、地域行事の運営など、人と人とのつながりを直接生み出す活動の担い手です。

宗教団体、学校、医療機関、商店街なども、それぞれの強みを活かして孤独・孤立対策に関わることができます。寺社や教会の集まり、学校の地域開放、医療機関での相談対応、商店街でのイベント開催など、日常生活の中で自然に人とつながる機会が、孤独・孤立を防ぐ基盤となります。

個人レベルでの取り組みも大切です。近所の挨拶、声かけ、ちょっとした見守りなど、特別なことではなく日常の中の小さな行動が、孤独・孤立の予防につながります。法律や制度を知ることで、必要なときに支援を求めたり、誰かに支援を紹介したりすることができるようになります。

当事者と家族への支援の実際

孤独・孤立対策で最も重要なのは、当事者と家族への直接的な支援です。

電話相談やオンライン相談は、家から出られない人や対面が難しい人にとって重要な入り口です。よりそいホットライン、いのちの電話、自殺防止のいのちの電話、若者向けLINE相談など、24時間体制や匿名で利用できる相談窓口が整備されています。

居場所づくりは、孤独・孤立から脱却するための継続的な取り組みです。子ども食堂、地域カフェ、ひきこもり当事者会、認知症カフェ、若者の居場所など、多様な対象に向けた居場所が各地で運営されています。

アウトリーチ型の支援も重要な手法です。困っている人が自ら助けを求めるのが難しいケースは多く、支援者の側から訪問したり、声をかけたりする活動が、孤立した人とのつながりを生み出します。民生委員、生活支援コーディネーター、保健師、訪問看護師など、地域で活動する専門職の役割は大きなものがあります。

家族への支援も忘れてはなりません。当事者を支える家族が孤立してしまうことも多く、家族会、ピアサポート、レスパイトケアなど、家族のための支援体制も必要です。8050問題(80代の親が50代のひきこもりの子を支える状況)、ヤングケアラー、ビジネスケアラーなど、家族の中での孤立も深刻な課題となっています。

孤独・孤立対策で広がる新たな支援の形

近年、新しいタイプの支援活動も広がっています。

オンラインを活用した居場所づくりは、コロナ禍を契機に拡大しました。Zoomを使った定期的な集まり、LINEオープンチャット、SNS上のコミュニティなど、地理的な制約を超えてつながる場が生まれています。外出が難しい人、地方在住で対面の場が少ない人、特定のテーマで仲間を見つけたい人にとって、有用な選択肢となっています。

世代を超えた交流の場も注目されています。高齢者と若者が一緒に活動する場、子どもと地域の大人が交流する場、外国人と日本人が出会う場など、異なる立場の人々が交わることで、新たなつながりと相互理解が生まれます。

専門的なテーマでのつながりも有効です。難病当事者の会、性的マイノリティのコミュニティ、依存症からの回復を目指すグループ、災害被災者の互助会など、共通する経験を持つ人々が集まる場は、深いつながりを生み出します。

自然や芸術を介したつながりも、孤独・孤立対策の手段として広がっています。園芸、農業体験、スポーツ、音楽、絵画、ダンスなどの活動を通じて、言葉だけではない関わりが生まれ、人とのつながりが深まります。

ICTを活用したつながりサポートも進んでいます。AIによる対話システム、見守りセンサー、IoT機器を使った安否確認、ビデオ通話による遠隔交流など、テクノロジーが人と人とのつながりを支える時代となっています。

政策の課題とこれからの方向性

孤独・孤立対策は、まだ発展途上にある政策分野です。多くの課題が指摘されています。

実態把握の難しさは大きな課題です。孤独・孤立は当事者が自ら声を上げにくい問題であり、表に出ない数字や声を捉えることが困難です。アウトリーチ型の調査、複数の指標を組み合わせた把握、当事者参画型の調査設計などが求められています。

支援の質の確保も重要なテーマです。支援者の専門性向上、研修体制の整備、スーパーバイズの仕組み、支援者自身のメンタルヘルスケアなど、支援を支える基盤づくりが必要です。

地域格差の問題もあります。先進的な取り組みを行う自治体と、まだ動き出せていない自治体の差が広がる中で、すべての地域で必要な支援が受けられる体制をどう作るかが問われています。

制度の縦割りを超えた連携の難しさも継続的な課題です。福祉、医療、教育、雇用、住宅、子ども関連の各制度が、それぞれの法律や予算の枠組みで動く中で、当事者を中心とした包括的な支援をどう実現するかは、行政運営上の大きなテーマです。

民間団体の財政基盤の脆弱性も問題です。多くのNPO法人や市民団体は、不安定な資金調達の中で活動を続けており、補助金の継続性、寄付文化の醸成、活動の評価と発信、人材確保などの課題を抱えています。

これからの方向性としては、当事者参画の徹底、エビデンスに基づく政策、地域ごとの柔軟な対応、テクノロジーの活用、国際的な経験からの学びなどが重要となります。世界的にも孤独・孤立は共通の課題となっており、英国の孤独担当大臣の取り組みなど、海外の事例も参考にしながら、日本に合った支援のあり方を作っていく必要があります。

私たち一人ひとりにできること

孤独・孤立対策は、政策や制度だけの問題ではなく、私たち一人ひとりの日常の行動から始まります。

近所の人への挨拶、ちょっとした声かけ、困っている人への気遣いなど、特別なことではない日常の小さな行動が、地域の中の見えない孤立を防ぐ基盤となります。隣人がしばらく見当たらないことに気づく感覚、子育て中の親に声をかける気軽さ、高齢者の様子を気にかける視線など、小さな関心が大きな違いを生みます。

自分自身が支援を求める姿勢も大切です。孤独や孤立を感じたとき、それを恥じる必要はありません。よりそいホットライン、地域包括支援センター、自治体の相談窓口、NPOの支援など、利用できる資源は多くあります。「困ったときはお互い様」という発想で、必要なときには遠慮なく支援を求めることが、自分自身と社会全体の健康につながります。

ボランティア活動への参加も、有意義な選択肢です。地域の支援団体、子ども食堂、高齢者見守り、災害時のボランティアなど、関心のある分野で参加できる場は数多くあります。支援する側として活動することは、自分自身の充実感、新たなつながり、社会への貢献など、多面的な価値をもたらします。

正しい知識を持つことも重要です。孤独・孤立に関する誤解や偏見、特に「自己責任」という単純化された見方は、実際の支援を妨げる要因となります。誰にでも起こり得る課題として、社会全体で支え合う視点を持つことが、健全な社会の基盤となります。

選挙や政策議論への参加も、市民としての大切な役割です。孤独・孤立対策にどう取り組む候補者なのか、どのような政策を提案する政党なのかを見極め、自分の声を反映させていく姿勢が、政策をより良いものにしていきます。

一人も取り残さない社会を目指して

孤独・孤立対策推進法と各種の補助金、官民連携の取り組みは、「孤独・孤立に悩む人を誰ひとり取り残さない社会」「相互に支え合い、人と人との『つながり』が生まれる社会」の実現を目指す壮大な挑戦です。

法律ができたこと、推進体制が整ったこと、補助金や支援事業が用意されたことは、大きな前進です。しかし、これらの仕組みが本当に活かされるかどうかは、現場で動く支援者、自治体担当者、当事者と家族、そして地域に住む一人ひとりの市民にかかっています。

孤独・孤立は決して他人事ではありません。今は元気でつながりがある人も、人生のどこかで孤独や孤立を経験する可能性があります。家族の死別、病気、失業、引っ越し、定年退職、子どもの独立、離婚、災害など、人生の転機は誰にでも訪れ、そのたびに人とのつながりが大きく変化します。

そうしたとき、社会的なセーフティネットが機能していること、必要なときに助けを求められる仕組みがあること、地域に支え合いの文化があることが、私たち全員の安心につながります。今支援を必要としていない人も、将来の自分のため、家族のため、子どもや孫の世代のためにも、孤独・孤立対策の充実を支援することは意義のある行動です。

2026年は、孤独・孤立対策推進法の施行から3年目に入る重要な節目の年です。これまでの取り組みの成果を検証し、課題を整理し、次のステージへと進化させていく段階です。実態調査の結果、補助金事業の効果、官民連携の進展、地方自治体の取り組みなど、さまざまな情報を踏まえて、政策はさらに洗練されていきます。

支援を必要としている当事者と家族、現場で活動する支援者、施策を進める行政担当者、関心を持つ市民、それぞれの立場でできることを積み重ねていくことが、孤独・孤立のない社会への道です。難しい課題ではありますが、一人ひとりの小さな関心と行動が大きな流れとなり、必ず社会を変えていきます。

孤独や孤立を感じている方が、勇気を持って一歩を踏み出せる社会、支援を求めることを恥じる必要のない社会、誰もが自分の居場所を見つけられる社会を、共に作っていきましょう。法律と制度は道具です。それを活かすのは、私たち一人ひとりの心と行動です。2026年からのこれからの時代を、つながりを大切にする社会を目指して、共に歩んでいきたいものです。

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