A型事業所の閉鎖ラッシュが2026年に続く原因は?制度変更と現場の実態

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就労継続支援A型事業所の閉鎖が全国で相次いでいます。2024年以降、多くの事業所が廃止や利用者の解雇に踏み切り、2025年から2026年にかけてもこの流れは続いています。

A型事業所を利用していた障がい者が突然職を失う事態が各地で発生し、社会問題として大きく取り上げられるようになりました。

なぜこれほどまでに閉鎖が続いているのか、背景には制度変更、経営環境の悪化、事業所運営の課題など複数の要因が絡み合っています。

ここでは、A型事業所の基本、閉鎖が続く原因、利用者への影響、今後の動向について解説していきます。

A型事業所の基本的な仕組み

就労継続支援A型事業所は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つです。一般企業での就労が困難な障がい者に、雇用契約を結んで就労の機会を提供する仕組みです。

利用者は事業所と雇用契約を結び、労働者として働きます。最低賃金が保障され、労働基準法や雇用保険などの労働関係法令の対象となります。

就労継続支援B型が工賃の支払いにとどまるのに対し、A型は給与として賃金を受け取れる点が大きな違いです。

事業所には、障害福祉サービスとしての側面と、雇用事業主としての側面の二つがあります。

国や自治体から障害福祉サービスの報酬を受け取りながら、利用者に賃金を支払って事業を運営します。生産活動から得られる収益と、公的な報酬を組み合わせて経営が成り立つ仕組みです。

全国のA型事業所数は2000年代以降急増し、多くの障がい者が雇用される場として機能してきました。

しかし、この急拡大の過程で、事業運営の質や経営の持続可能性に問題を抱える事業所も一部に存在しました。

2024年報酬改定の影響

A型事業所の閉鎖ラッシュの大きな引き金となったのが、2024年4月の障害福祉サービス報酬改定です。

報酬改定の大きな変更点は、基本報酬の算定方法が見直されたことです。

従来は利用者の平均労働時間に応じた報酬体系でしたが、改定後は「スコア方式」と呼ばれる新たな仕組みが導入されました。労働時間だけでなく、生産活動の収支状況、多様な働き方の実施、支援力向上、地域連携活動、経営改善計画の作成など、複数の評価項目を総合的に判定する方式です。

生産活動の収支が特に重視されるようになりました。生産活動の収益が、利用者に支払う賃金総額を下回っている事業所では、報酬が大きく減額される仕組みです。

これまで公的な報酬を原資に利用者の賃金を補填してきた事業所にとって、大きな方針転換となりました。

厚生労働省の資料によると、改定前の時点でA型事業所の約7割が生産活動収支で赤字となっていたとされます。これらの事業所の多くが、改定後の新しい基準では十分な報酬を得られなくなり、経営が立ち行かなくなる事態に直面しました。

利用者1人あたりの月額報酬が数万円単位で減額される事業所も珍しくなく、運営を続けるための経営改善が急務となりました。

小規模な事業所や収益性の低い生産活動を行っていた事業所では、改善に必要な資金や時間の余裕がなく、廃業を選ばざるを得ないケースが続出しています。

収益性の低い生産活動

A型事業所が閉鎖に追い込まれる背景には、多くの事業所が抱える生産活動の収益性の低さがあります。

主力となる生産活動は、軽作業、清掃、農作業、製菓、製造補助、データ入力、Webサイト制作など、多岐にわたります。

ただし、これらの業務の多くは受注単価が低く、利用者に最低賃金を支払うための十分な収益を確保するのが困難です。

最低賃金の引き上げも、事業所の経営を圧迫する要因となっています。

2024年10月には全国加重平均で時給1055円となり、毎年のように引き上げが続いています。賃金上昇分を生産活動の収益で賄えない事業所では、公的な報酬に依存せざるを得ない構造となっていました。

新型コロナウイルス感染症の影響も残っています。営業自粛や受注減少で大きな打撃を受けた事業所も多く、経営体力が回復しないまま報酬改定を迎えたケースが少なくありません。飲食業や観光関連の生産活動を行っていた事業所では、特に厳しい状況が続いていました。

営業力やマーケティング力の不足も、多くの事業所に共通する課題です。

福祉の専門性を持つ職員が中心となって運営される事業所では、ビジネスとしての収益化のノウハウが不足しがちです。企業向けの営業、新規顧客の開拓、商品の高付加価値化などに取り組めない事業所では、限られた受注で事業を続けることになります。

閉鎖事業所の数と規模

2024年以降のA型事業所の閉鎖数は、過去に例のない規模となっています。

厚生労働省の発表によると、2024年4月以降の半年間だけでも全国で数百を超える事業所が廃止や解雇に踏み切りました。利用者数で見ると、数千人規模の障がい者が職を失う事態となっています。

地域によって閉鎖の程度には差があります。

東京、大阪、愛知などの大都市圏では事業所数が多いため閉鎖数も多く、地方部では事業所数自体が少ないながらも、一つの事業所の閉鎖が地域に与える影響は大きくなっています。

閉鎖される事業所の傾向としては、設立から年数が浅い事業所、小規模な事業所、単一の業種に依存していた事業所などが多く見られます。

長年にわたって経営基盤を築いてきた事業所、複数の事業を展開している事業所、親会社が安定している事業所は、比較的影響を受けにくい傾向があります。

2026年に入ってもこの流れは続いており、経営改善の猶予期間が切れた事業所、新たな報酬体系での経営が軌道に乗らない事業所などが、追加的に廃業を決断するケースが報告されています。

利用者への深刻な影響

A型事業所の閉鎖は、利用者に深刻な影響を与えています。

突然の解雇通告を受ける利用者が相次いでいます。事業所から「来月で閉鎖します」「雇用を継続できません」と告げられ、次の就労先を見つけられないまま失業状態となる方が多く発生しています。障がいを抱えながらの転職活動は一般の労働者以上に困難で、精神的な負担が大きくなります。

経済的な影響も深刻です。A型事業所での賃金を生活の基盤としていた方にとって、突然の収入途絶は生活そのものを脅かします。貯蓄が少ない方、家族の扶養に入れない方は、生活保護の申請を余儀なくされるケースもあります。

次の就労先の確保が難しい現実もあります。閉鎖された事業所の利用者が一斉に就労先を探す状況では、他のA型事業所の定員にも限りがあるため、全員を受け入れることは困難です。

B型事業所への移行、一般就労への挑戦、就労移行支援事業所での再訓練など、選択肢を検討する必要がありますが、それぞれに課題があります。

メンタルヘルスへの影響も見過ごせません。これまで安定して働いていた環境を失うことで、うつ状態の悪化、不安の増大、自己肯定感の低下などを経験する方が多く出ています。特に精神障害のある方にとっては、大きなストレスとなります。

人間関係の喪失も心理的な負担となります。事業所で築いてきた同僚との関係、職員との信頼関係が一度に失われることで、社会的な孤立を感じる方もいます。

運営企業の姿勢への疑問

閉鎖ラッシュの背景には、一部の運営企業の姿勢への疑問も指摘されています。

報酬目当ての参入が問題視されてきました。A型事業所は公的な報酬が得られる事業であるため、福祉への理念よりもビジネスチャンスとして参入する事業者が一部存在していました。

生産活動の質や支援の充実よりも、利用者数の確保を優先する運営姿勢が指摘されてきました。

コンサルタント企業の介在も指摘されています。A型事業所の設立から運営までをパッケージで提供するコンサルタントが存在し、福祉の専門性がない事業者でも参入しやすい環境を作ってきました。

こうした仕組みで設立された事業所では、理念の希薄さや支援力の不足が課題となっていました。

経営不振時の対応にも問題のあるケースがあります。事業所の閉鎖を決定する際、利用者への十分な説明や次の就労先の確保支援を行わず、一方的に解雇を通告するケースが報告されています。雇用主としての責任、福祉サービス提供者としての責任の両方が問われる状況です。

一方で、誠実に運営してきた事業所も多く存在します。真摯に利用者の就労を支援し、生産活動の収益化に努力してきた事業所も、報酬改定の影響で経営が困難になっているケースがあります。運営者の姿勢だけに問題を帰することはできない、構造的な課題が存在しています。

B型事業所への移行の課題

閉鎖されたA型事業所の利用者の受け皿として、B型事業所への移行が進んでいます。

B型事業所は雇用契約を結ばず、工賃を受け取る形で働く場です。

労働時間や日数の制約がなく、体調に合わせて柔軟に通所できる特徴があります。A型と比較して利用のハードルが低く、閉鎖された事業所の利用者を受け入れる役割を担っています。

しかし、B型への移行には経済的な課題があります。B型事業所の工賃は月額平均で1万7000円程度と、A型の賃金と比較して大きく下がります。生活の維持が困難になるケースが多く、他の収入源との組み合わせが必要になります。

B型事業所も定員に限りがあります。閉鎖されたA型の利用者が一斉に移行を希望しても、すべての方を受け入れることは困難です。地域によっては空きがなく、通所できないケースも発生しています。

働く意欲が高い利用者にとって、B型への移行は心理的な後退感を伴うこともあります。

「A型で働けていたのに、B型に移ることになった」という感覚は、自己肯定感に影響する場合があります。

支援機関の対応

閉鎖事業所の利用者を支えるため、さまざまな支援機関が対応に追われています。

自治体の障害福祉担当窓口は、利用者からの相談への対応、次の就労先探しの支援、生活保護など他の制度の案内などを行っています。急増する相談件数への対応が課題となっています。

ハローワークの障害者専門窓口では、一般就労や別のA型事業所への紹介を進めています。A型事業所を利用していた方のスキルや経験を活かせる求人を探す取り組みが行われています。

就労移行支援事業所での再訓練も選択肢です。一般就労を目指して再度訓練を受ける道筋で、2年間の利用期間のなかで新たなスキル習得や就職活動を進められます。

相談支援事業所は、サービス利用計画の見直しを通じて、利用者に合った次の選択肢を一緒に考える役割を担っています。A型からB型、一般就労、就労移行支援など、個別の状況に応じた提案を行います。

障害者就業生活支援センターも、就労と生活の両面からの支援を提供しています。閉鎖による生活基盤の喪失への対応、メンタル面のサポート、長期的な就労計画の見直しなどに対応します。

今後の見通し

A型事業所を取り巻く状況の今後について、いくつかの動向が見えてきています。

2026年以降も経営改善の圧力は続く見込みです。新たな報酬体系のもとで生産活動の収支を改善できない事業所は、さらなる廃業の可能性があります。一方で、経営改善に成功した事業所、新しい事業モデルを構築した事業所は安定した運営を続けられる見通しです。

質の高い事業所への集約が進む可能性があります。利用者支援の充実、生産活動の収益性向上、地域連携の強化など、多面的な取り組みを進められる事業所が残り、運営の質や経営基盤が弱い事業所は淘汰されていく流れが続くと考えられます。

新たな事業モデルの模索も進んでいます。企業との連携による業務委託、農福連携、ICTを活用した新しい働き方、地域資源を活用した事業など、従来の枠にとらわれない取り組みが始まっています。

制度の見直しも議論されています。A型事業所のあり方、報酬体系、利用者保護の仕組みなどについて、厚生労働省や関係団体での検討が続いています。利用者の雇用を守りながら事業の持続可能性を確保する制度設計が求められています。

利用者や家族ができること

A型事業所を利用している方、利用を検討している方、家族の立場の方ができることを見ていきましょう。

現在利用している事業所の経営状況を把握することが大切です。生産活動の収支、新たな報酬体系での見通し、経営改善計画の内容などを、運営者や支援者に確認できる範囲で把握しておきましょう。

次の選択肢も検討しておくことで、万が一の事態に備えられます。別のA型事業所、B型事業所、就労移行支援事業所、一般就労など、複数の選択肢を念頭に置き、情報を集めておきます。

支援機関との関係を維持することも重要です。相談支援専門員、障害者就業生活支援センター、自治体の障害福祉担当窓口など、信頼できる相談相手を持っておくことで、変化が起きたときに迅速に対応できます。

事業所選びの段階では、運営の安定性や支援の質を重視することが大切です。設立年数、運営法人の信頼性、支援員の配置状況、生産活動の内容など、さまざまな視点から見極める姿勢が必要です。

まとめ

A型事業所の閉鎖ラッシュは、2024年の報酬改定を契機に2026年も継続しており、多くの利用者が影響を受けています。

生産活動収支の赤字、最低賃金の上昇、営業力の不足など、事業所が抱える構造的な課題が顕在化した結果です。閉鎖は利用者の生活、経済面、メンタルヘルスに大きな影響を与えており、B型事業所への移行や一般就労への挑戦など、次の選択肢を考える必要があります。

今後は運営の質や経営基盤がしっかりした事業所への集約が進む見込みで、利用者側も事業所選びの目を養うことが求められます。

支援機関との関係を維持し、複数の選択肢を持ちながら、自分に合った働き方を見つけていきましょう。

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