はじめに:見学で断られる不安
就労継続支援B型事業所の利用を検討する際、最初のステップが「見学」です。しかし、「見学を申し込んだら断られるのではないか」「どう連絡すればいいか分からない」「見学に行ったら、その場で利用を決めなければいけないのではないか」「断られたらどうしよう」という不安を抱えている方は少なくありません。
特に、過去に何かを断られた経験がある方、社交不安がある方、電話が苦手な方、自己肯定感が低い方は、「見学を申し込むこと」自体が大きなハードルになります。「自分のような者が見学に行ってもいいのだろうか」「迷惑ではないだろうか」「どうせ断られる」と、最初の一歩を踏み出せずにいる方もいます。
また、見学に行った後の不安もあります。「見学したら、必ず利用しなければいけないのではないか」「その場で決断を迫られるのではないか」「断ったら失礼ではないか」「複数の事業所を見学してもいいのか」など、見学後の対応についても悩んでいる方が多いです。
しかし、実際には、B型事業所の見学はほとんどの場合、断られることはありません。むしろ、事業所側は見学を歓迎しています。そして、見学したからといって、必ず利用しなければいけないわけでもありません。見学は、「事業所を知る機会」であり、「自分に合うか確かめる機会」であり、「お互いを知る機会」なのです。
本記事では、見学が断られることがほとんどない理由、見学を申し込む方法、見学の予約電話のかけ方、見学当日の流れと注意点、見学後の対応、断られた場合の対処法、そして見学に関するよくある質問について、詳しく解説していきます。見学に不安を感じている方、これから見学を申し込む方、ご家族や支援者の方々にとって、実践的な情報となれば幸いです。
見学が断られることがほとんどない理由
まず、なぜB型事業所の見学が断られることがほとんどないのか、理解しましょう。
事業所にとって見学はメリット
利用者を増やしたい B型事業所は、利用者がいないと運営できません。利用者を増やしたいと考えているため、見学希望者は歓迎されます。
見学に来てくれることは、事業所にとって「利用してくれるかもしれない」チャンスなのです。
見学は当然の権利
選ぶ権利 利用者には、「どの事業所を選ぶか」という権利があります。そのためには、見学して実際の雰囲気を確かめることが必要です。
見学は、利用者の当然の権利であり、事業所はそれに応える義務があります。
制度上、見学は推奨されている
情報提供の義務 障害福祉サービスの制度上、事業所は利用希望者に対して適切な情報提供をすることが求められています。見学はその一環です。
事業所も見られることに慣れている
日常的なこと 多くのB型事業所は、頻繁に見学希望者を受け入れています。月に数回、多い事業所では週に何度も見学があります。
事業所にとって、見学対応は日常的なことです。
見学を断る理由がほとんどない
断る理由は限定的 見学を断る理由は、非常に限定的です。
見学が断られる可能性がある場合:
- 定員が満員で、長期間空きが出る見込みがない
- 事業所の都合が悪い日時を指定された(その場合、別の日時を提案される)
- 事業所が休業中(年末年始、お盆など)
- 事業所のサービス対象外(例:重度の医療的ケアが必要で、対応できない)
これらの場合でも、完全に断られるのではなく、「別の日時なら可能」「別の事業所を紹介」などの代替案が提示されることが多いです。
見学拒否は問題
健全な事業所なら拒否しない もし、正当な理由なく見学を拒否する事業所があったら、それは逆に「問題のある事業所」の可能性があります。
健全な事業所は、見学を歓迎します。
見学を申し込む方法
見学は、どのように申し込めばよいでしょうか。
申し込み方法の種類
電話
最も一般的 電話で直接事業所に連絡する方法が最も一般的です。
メリット:
- すぐに日程が決まる
- 質問もその場でできる
デメリット:
- 電話が苦手な人には負担
- 緊張する
メール・問い合わせフォーム
電話が苦手な方に 事業所のホームページにメールアドレスや問い合わせフォームがある場合、メールで申し込むこともできます。
メリット:
- 電話が苦手でも大丈夫
- 文章を考える時間がある
- 記録が残る
デメリット:
- 返信に時間がかかることがある
- やり取りが何度も必要になることがある
相談支援事業所を通じて
サポートを受けられる 相談支援事業所の相談支援専門員に、「○○事業所の見学を申し込みたい」と伝えると、代わりに連絡してくれたり、同行してくれたりします。
メリット:
- 専門家のサポートを受けられる
- 同行してもらえる
- 自分で連絡しなくていい
デメリット:
- 相談支援事業所との契約が必要
市区町村の窓口を通じて
公的なサポート 市区町村の障がい福祉担当窓口に相談すると、事業所を紹介してくれたり、見学の調整をしてくれたりすることもあります。
どの方法を選ぶか
自分に合った方法を
- 電話が苦手でない → 電話
- 電話が苦手 → メール、または相談支援事業所を通じて
- 一人で不安 → 相談支援事業所を通じて、同行してもらう
見学の予約電話のかけ方
電話で見学を申し込む場合の、具体的な方法です。
事前準備
落ち着ける時間帯を選ぶ
自分の調子が良い時 体調や精神状態が良い時間帯を選びましょう。朝が苦手なら午後に、午後が不調なら午前中に。
事業所の都合を考える
忙しくない時間帯
- 避けるべき時間帯:始業直後(9時前後)、昼休み(12時〜13時)、終業前(16時以降)
- おすすめの時間帯:10時〜11時半、14時〜15時半
台本を用意する
何を言うか書いておく 電話で話す内容を、紙に書いておきましょう。緊張して忘れても、読めば大丈夫です。
台本の例:
もしもし、就労継続支援B型事業所の見学について
お伺いしたいのですが、担当の方はいらっしゃいますか?
(担当者に代わったら)
はじめまして、○○と申します。
そちらの事業所の利用を検討しておりまして、
見学させていただきたいのですが、可能でしょうか?
(可能と言われたら)
ありがとうございます。
いつ頃でしたら、見学できますでしょうか?
(日時を提案されたら)
はい、△月△日の○時で大丈夫です。
当日は何か持っていくものはありますか?
(確認したら)
分かりました。では、△月△日の○時に
お伺いいたします。よろしくお願いいたします。
失礼いたします。
質問リストも用意
聞きたいことをメモ 見学の予約と一緒に、いくつか質問したいことがあれば、リストにしておきましょう。
紙とペンを用意
メモを取る 日時、持ち物、場所などをメモできるよう、紙とペンを用意しておきましょう。
深呼吸
リラックス 電話をかける前に、深呼吸を数回して、リラックスしましょう。
電話での会話の流れ
最初の挨拶
丁寧に 「もしもし、就労継続支援B型事業所の見学についてお伺いしたいのですが」
または
「お忙しいところ恐れ入ります。見学についてお伺いしたいのですが」
担当者に代わってもらう
見学担当者 受付の人が出た場合、「見学の担当の方はいらっしゃいますか」と聞きましょう。
担当者がいない場合、「何時頃でしたらいらっしゃいますか」と聞いて、改めてかけ直します。
見学の希望を伝える
簡潔に 「そちらの事業所の利用を検討しておりまして、見学させていただきたいのですが、可能でしょうか」
ほぼ100%、「はい、可能です」と言われます。
日時の調整
相手の提案を聞く 「いつ頃がよろしいでしょうか」と聞くと、事業所側から候補日を提案してくれます。
自分の都合が良い日があれば、「○月○日頃は可能でしょうか」と提案してもOKです。
確認事項
メモを取りながら
- 日時
- 場所(住所、最寄り駅、目印など)
- 持ち物(特に指定がなければ、筆記用具程度)
- 所要時間(通常1〜2時間程度)
- 同伴者の可否(家族や相談支援専門員と一緒に行きたい場合)
最後の挨拶
感謝を伝える 「ありがとうございます。では、○月○日○時にお伺いいたします。よろしくお願いいたします」
電話が苦手な場合の対処法
家族に代わりに電話してもらう
サポートを受ける 家族に代わりに電話してもらうことも可能です。
「息子/娘が利用を検討しておりまして、見学をお願いしたいのですが」
スマホのスピーカーモードで一緒に聞く
サポートを受けながら自分で話す 家族にそばにいてもらい、スピーカーモードにして一緒に聞いてもらいながら、自分で話す方法もあります。
何度か練習する
ロールプレイ 家族や友人に相手役をしてもらって、何度か電話の練習をすると、本番で緊張が減ります。
メールに切り替える
無理しない どうしても電話が無理な場合は、メールや相談支援事業所を通じての申し込みに切り替えましょう。
見学当日の流れと注意点
見学当日は、どのような流れになるのでしょうか。
事前準備
服装
清潔感があればOK 特別なドレスコードはありません。清潔感のある普段着で大丈夫です。
- スーツは不要
- ジーンズやTシャツでもOK
- あまりに派手すぎる服装は避ける
- 清潔であること
持ち物
指定されたもの+α
- 事業所から指定された持ち物
- 筆記用具(メモを取るため)
- 質問リスト
- 受給者証(持っている場合、持っていなくてもOK)
- 障害者手帳(持っている場合、持っていなくてもOK)
時間に余裕を持つ
遅刻しない 初めての場所は迷うこともあるので、10〜15分前には到着するようにしましょう。
早く着きすぎた場合は、近くで時間を潰してから行きます。
緊張対策
リラックス方法
- 深呼吸
- 好きな音楽を聴く
- 「見学は気軽なもの」と自分に言い聞かせる
- 「断られない」と確信する
見学の流れ(一般的な例)
到着・受付(5分)
挨拶 事業所に到着したら、受付で「見学で伺いました、○○です」と伝えます。
待合室などで少し待つこともあります。
担当者との挨拶(5分)
自己紹介 担当者(施設長、サービス管理責任者、スタッフなど)が挨拶に来ます。
簡単な自己紹介を求められることもありますが、名前と「利用を検討しています」程度で十分です。
事業所の説明(10〜20分)
概要を聞く
- 事業所の理念、方針
- 作業内容
- 1日の流れ
- 利用条件(通所日数、時間など)
- 工賃
- 支援内容
- その他
パンフレットや資料をもらえることもあります。
施設内の見学(20〜30分)
実際に見て回る 担当者に案内されて、施設内を見学します。
- 作業スペース
- 休憩室
- トイレ
- その他の設備
作業中の様子も見せてもらえます。
質疑応答(10〜20分)
質問する機会 説明や見学の後、質問の時間が設けられます。
事前に用意した質問リストを見ながら、聞きたいことを聞きましょう。
「特にありません」と言っても大丈夫です。
今後の流れの説明(5〜10分)
次のステップ
- 体験利用について
- 申し込み方法
- 受給者証の取得方法(持っていない場合)
- その他
終了・挨拶(5分)
感謝を伝える 「本日はありがとうございました」と挨拶して、終了です。
全体の所要時間: 1〜2時間程度
見学時の注意点
遠慮せず質問する
知りたいことは聞く 分からないこと、気になることは、遠慮せず質問しましょう。
質問することは、決して失礼ではありません。
メモを取る
記録する 複数の事業所を見学すると、記憶が混ざります。メモを取りましょう。
写真撮影は許可を得る
勝手に撮らない 写真を撮りたい場合は、必ず許可を得ましょう。利用者のプライバシーの関係で、撮影NGの場合もあります。
正直に話す
隠さない 障がいの状態、困っていること、希望などは、正直に話しましょう。
隠すと、後で困ることになります。
「まだ決めていません」と言ってOK
即決しなくていい 見学の最後に「いかがですか」と聞かれても、「まだ他も見てから決めたいです」「検討させてください」と言って大丈夫です。
直感を大切に
第一印象 建物に入った瞬間の第一印象、全体の雰囲気、「ここで過ごしたい」と思えるかどうか、直感も大切にしましょう。
見学後の対応
見学が終わった後、どう対応すればよいでしょうか。
その場で決めなくていい
検討期間をもらう 見学の最後に「どうしますか」と聞かれても、その場で決める必要はありません。
「他の事業所も見てから決めたいです」 「家族と相談してから決めます」 「少し考えてから連絡します」
と言って大丈夫です。
複数の事業所を見学してOK
比較することは当然 一つだけでなく、3〜5ヶ所の事業所を見学して比較することは、むしろ推奨されます。
「他も見ます」と言うことは、全く失礼ではありません。
体験利用を申し込む
実際に作業してみる 見学だけでなく、体験利用(数日間実際に作業をする)をすることをおすすめします。
見学時に「体験利用もお願いできますか」と聞いてみましょう。
お礼の連絡は不要
義務ではない 見学後、特にお礼の連絡をする義務はありません。
ただし、丁寧にしたい場合は、「本日はありがとうございました」とメールや電話をしてもOKです。
利用する場合の連絡
決めたら早めに その事業所を利用すると決めたら、早めに連絡しましょう。
「先日見学させていただいた○○です。利用させていただきたいので、手続きについて教えてください」
利用しない場合の連絡
断ってもOK 見学したけれど利用しないと決めた場合、特に連絡する義務はありません。
ただし、丁寧にしたい場合は、「検討の結果、今回は見送らせていただきます。ありがとうございました」と連絡してもOKです。
断ることは、全く失礼ではありません。
断られた場合の対処法
万が一、見学を断られた場合、どうすればよいでしょうか。
理由を確認する
なぜ断られたか 「申し訳ありませんが、なぜ見学できないのか教えていただけますか」と丁寧に聞いてみましょう。
代替案を提案される場合
別の日時 「その日は都合が悪いのですが、別の日ならいかがですか」と提案されることが多いです。
定員満員の場合
空き待ち 「現在定員満員で、しばらく空きが出る見込みがありません」と言われた場合、
- 「空きが出たら連絡いただけますか」と聞く
- 別の事業所を探す
サービス対象外の場合
他の事業所を紹介してもらう 「当事業所では対応が難しいのですが、○○事業所なら対応できるかもしれません」と紹介してもらえることもあります。
正当な理由なく断られた場合
問題のある事業所 正当な理由なく見学を拒否する事業所は、問題がある可能性があります。
- 市区町村の障がい福祉担当窓口に相談する
- 相談支援事業所に相談する
- その事業所は候補から外し、別の事業所を探す
自分を責めない
あなたのせいではない 見学を断られても、あなたのせいではありません。事業所側の都合や状況によるものです。
見学に関するよくある質問
Q1: 見学は無料ですか?
A: 無料です 見学に費用はかかりません。交通費は自己負担ですが、見学自体は無料です。
Q2: 一人で行かなければいけませんか?
A: 同伴者OKです 家族や相談支援専門員と一緒に行くことができます。見学予約の際に「家族と一緒に行きたいのですが」と伝えましょう。
Q3: 受給者証がなくても見学できますか?
A: 見学できます 受給者証がなくても見学は可能です。見学してから、受給者証の申請をする流れが一般的です。
Q4: 何ヶ所も見学してもいいですか?
A: 問題ありません 3〜5ヶ所、あるいはそれ以上見学して比較することは、むしろ推奨されます。
Q5: 見学したら必ず利用しなければいけませんか?
A: 利用しなくても大丈夫 見学したからといって、必ず利用する義務はありません。見学して合わないと思ったら、利用しなくてOKです。
Q6: 見学の予約なしで突然行ってもいいですか?
A: 事前予約が望ましい 突然行っても対応してもらえないことがあるので、事前に予約することをおすすめします。
Q7: 見学は何回でもできますか?
A: 基本的にできます 一度見学して、「もう一度見たい」と思ったら、再度見学をお願いすることもできます。
Q8: 見学と体験利用は別ですか?
A: 別です 見学は施設を見るだけ、体験利用は実際に数日間作業をします。見学の後に体験利用をするのが一般的です。
Q9: 見学時に履歴書や診断書は必要ですか?
A: 不要です 見学時には特に書類は必要ありません。実際に利用を決めてから、契約時に必要な書類を提出します。
Q10: 緊張して何も話せないかもしれません
A: 大丈夫です 担当者が丁寧に説明してくれますし、質問も「特にありません」と言ってOKです。無理に話す必要はありません。
まとめ:見学は気軽に、そして積極的に
就労継続支援B型事業所の見学は、ほとんどの場合断られることはありません。事業所にとって見学はメリットであり、見学は利用者の当然の権利であり、制度上も推奨されています。断られる理由は非常に限定的で、健全な事業所なら見学を歓迎します。
見学の申し込みは、電話、メール、相談支援事業所を通じて、市区町村の窓口を通じてなど、様々な方法があります。電話が苦手な方は、メールや相談支援事業所を活用しましょう。
電話で申し込む場合は、事前に台本を用意し、落ち着ける時間帯を選び、事業所の都合を考えて、深呼吸してからかけましょう。電話での会話は「見学したい」と伝えるだけでOKです。
見学当日は、清潔感のある普段着で、筆記用具と質問リストを持って、時間に余裕を持って行きましょう。見学の流れは、受付→説明→施設見学→質疑応答→今後の説明で、1〜2時間程度です。遠慮せず質問し、メモを取り、正直に話し、直感も大切にしましょう。
見学後は、その場で決めなくてOK、複数の事業所を見学してOK、体験利用を申し込むことをおすすめします。お礼の連絡は義務ではなく、利用しない場合も断って大丈夫です。
万が一断られた場合は、理由を確認し、代替案を聞き、別の事業所を探しましょう。自分を責める必要はありません。
見学は無料、同伴者OK、受給者証なしでもOK、何ヶ所も見学OK、見学したからといって利用義務なし、です。
見学は、事業所を知り、自分に合うか確かめる大切な機会です。「断られるかも」という不安を手放して、気軽に、そして積極的に見学に行ってください。見学することで、あなたに合った事業所が必ず見つかります。応援しています。

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