障がい者転職を検討中の方必読!
絶対に読むべき必読記事
1. パーソナリティ障害の基本的理解
パーソナリティ障害とは、その人の考え方、感じ方、行動パターンなどが、文化的に期待される範囲から大きく偏っており、その傾向が長期間続くことで、本人や周囲の人に苦痛が生じたり、日常生活や人間関係に支障が生じたりする状態を指します。
パーソナリティとは、その人らしさを形作る、物事の捉え方、感情の持ち方、人との関わり方などの持続的なパターンのことです。誰にでも個性や癖がありますが、パーソナリティ障害では、その傾向が極端になり、柔軟に対応することが難しくなることで、社会生活に大きな支障をきたすことがあります。こうした特徴は、本人の意思の弱さや性格だけで簡単に説明できるものではありません。
重要なのは、パーソナリティ障害は「性格が悪い」「わがまま」といった道徳的な問題ではなく、適切な支援や治療の対象となる医学的な疾患であるという点です。本人の努力や意思だけで変えることが難しい場合もあり、本人の困りごとや生活上の支障に合わせた治療とサポートが大切です。
この記事では、パーソナリティ障害の種類、それぞれの特徴、原因、治療方法、そして周囲ができるサポートについて、詳しく解説していきます。
2. パーソナリティ障害の分類
パーソナリティ障害は、DSM-5(アメリカ精神医学会の診断基準)において、10の類型に分類されています。これらは特徴の共通点から、A群、B群、C群の3つのグループに大きく分けられます。
A群(奇妙で風変わりに見えるタイプ)
A群は、他者から見ると奇妙で風変わりに映ることのある、独特な考え方や行動パターンを特徴とします。
妄想性パーソナリティ障害は、他者に対する広範な不信感や猜疑心を特徴とします。他人の言動や動機を悪意のあるものと受け取りやすく、裏切られたり利用されたりすることへの強い警戒心を抱くことがあります。
スキゾイドパーソナリティ障害は、社会的な関係への関心の乏しさや感情表現の少なさを特徴とします。一人で過ごすことを好み、親密な関係を強く求めない傾向があります。
統合失調型パーソナリティ障害は、親密な関係における強い不安、独特な考え方や知覚体験、風変わりな行動などを特徴とします。魔術的思考や独特な信念を持つこともあります。
B群(感情的で変化が大きいタイプ)
B群は、感情の変化が大きく、衝動的で、周囲からは劇的・予測しにくいと受け取られることのある行動を特徴とします。
反社会性パーソナリティ障害は、他者の権利や社会的なルールを軽視・侵害する行動パターンを特徴とします。法律や社会規範を守らない行動や、衝動的・攻撃的な行動が見られることがあります。
境界性パーソナリティ障害は、対人関係、自己イメージ、感情が不安定になりやすく、衝動的な行動が見られることを特徴とします。見捨てられることへの強い恐れを感じることもあります。
演技性パーソナリティ障害は、強い情緒性と、周囲からの注目を集めようとする行動を特徴とします。人からの関心や承認を強く求める傾向が見られることがあります。
自己愛性パーソナリティ障害は、誇大な自己評価、賞賛されたいという強い欲求、他者への共感の難しさなどを特徴とします。自分が特別な存在であると感じたり、周囲から特別に扱われることを期待したりすることがあります。
C群(不安で恐怖が強いタイプ)
C群は、不安や恐れが強く、人との関係や日常生活の中で強い緊張を感じやすいことを特徴とします。依存的な傾向や、完璧さ・秩序への強いこだわりが見られることもあります。
回避性パーソナリティ障害は、社会的な場面での強い緊張、不適切感、否定的な評価に対する過敏さを特徴とします。批判や拒絶を恐れ、傷つくことを避けるために、人との関わりや社会的な場面を避けることがあります。
依存性パーソナリティ障害は、人から世話をしてもらいたいという強い欲求と、他者に頼ることが多く、自分で決めることが難しい傾向を特徴とします。一人になることへの強い不安を感じることがあります。
強迫性パーソナリティ障害は、秩序、完璧主義、物事を自分でコントロールすることへの強いこだわりを特徴とします。細かな規則や手順にこだわることで、かえって柔軟性や効率性が損なわれることがあります。
なお、これらのA・B・C群は、それぞれの特徴を理解しやすくするための分類であり、実際の診断では一つの類型だけではなく、複数の特徴が重なって見られることもあります。
3. 主なパーソナリティ障害の詳細
それぞれのパーソナリティ障害について、より詳しく見ていきましょう。
境界性パーソナリティ障害(BPD)
境界性パーソナリティ障害は、パーソナリティ障害の中でも研究が比較的進んでおり、弁証法的行動療法(DBT)など、効果が認められている治療法があります。
主な特徴として、対人関係の不安定さがあります。相手を理想化したかと思うと、強い失望から急に否定的に捉えるなど、評価が大きく変化することがあります。見捨てられることへの強い不安から、関係をつなぎとめようと懸命になることがあります。
感情の不安定さも顕著です。気分が数時間から数日で大きく変化し、強い怒り、不安、抑うつなどを経験することがあります。感情の調整が難しく、対人関係などの出来事をきっかけに、気持ちが急激に揺れ動くことがあります。
衝動性も特徴の一つで、浪費、過食、薬物使用、無謀な運転、無計画な性行為など、自分を傷つける可能性のある衝動的な行動が見られることがあります。自傷行為や自殺行動が見られることもあるため、本人の苦痛を軽視せず、必要に応じて早めに専門的な支援につなげることが大切です。
自己像が不安定で、「自分とは何者か」「何をしたいのか」が定まらず、変化することがあります。慢性的な空虚感に悩まされることもあります。
自己愛性パーソナリティ障害(NPD)
自己愛性パーソナリティ障害は、誇大な自己イメージ、賞賛されたいという強い欲求、他者への共感の難しさなどを特徴とします。
主な特徴として、誇大な自己重要感があります。自分の能力や業績を実際以上に評価し、十分な達成がなくても優れていると認められることを期待する場合があります。
限りない成功、権力、才気、美しさ、理想的な愛などの空想にとらわれることがあります。自分は特別な存在であり、地位の高い人々や特別な環境と関わるべきだと考えることもあります。
過剰な賞賛を求め、特権意識を持ち、特別扱いされることを当然と考えることがあります。共感性の面で困難があり、他者の感情やニーズを理解したり、それに応じたりすることが難しい場合があります。
他者を嫉妬したり、他者が自分を嫉妬していると感じたりすることがあります。傲慢で尊大な態度や行動が見られることもあります。
ただし、表面上の自信とは裏腹に、自尊心を保つことに難しさを抱え、批判や否定的な評価に強く傷つくことがあります。
回避性パーソナリティ障害(AvPD)
回避性パーソナリティ障害は、拒絶や批判、恥をかくことへの強い恐れを特徴とします。
主な特徴として、批判や拒絶を恐れて、対人接触を伴う職業上の活動などを避けることがあります。自分が好かれていると確信できなければ、人と関わることをためらう場合があります。
恥をかくことや否定的に評価されることを恐れて、親密な関係でも遠慮がちになります。社会的な状況で、批判されたり拒絶されたりすることに強くとらわれることがあります。
自分は社会的に不適切である、人間として劣っている、魅力がないと感じることがあります。恥ずかしい思いをするかもしれないため、新しい活動を始めたり、個人的なリスクを取ったりすることにも強く慎重になることがあります。
社交不安症と症状が重なる部分がありますが、回避性パーソナリティ障害では、こうした不安や回避がより広い人間関係や生活全般に及ぶことがあります。
依存性パーソナリティ障害(DPD)
依存性パーソナリティ障害は、人から世話をしてもらいたいという強い欲求と、それに伴う従属的な行動を特徴とします。
主な特徴として、日常的な決断について、他者からの過度な助言や保証がなければ決めることが難しくなることがあります。生活の重要な場面で、他者に責任を担ってもらいたいと感じることがあります。
支持や承認を失うことを恐れて、他者に反対意見を述べることが難しくなる場合があります。自分一人では物事を始めたり、やり遂げたりすることに自信を持てないこともあります。
世話をしてもらうために、自分にとって不快なことでも受け入れてしまうことがあります。一人でいると、無力感や強い不安を感じることがあります。
親密な関係が終わると、安心できる相手を求めて別の関係を急いで築こうとすることがあります。自分で自分の世話をしなければならなくなることへの恐れを抱える場合があります。
強迫性パーソナリティ障害(OCPD)
強迫性パーソナリティ障害は、秩序、完璧主義、統制への強いこだわりを特徴とします。強迫症(OCD)とは異なる疾患であり、OCPDでは「こうあるべき」という考え方や物事の進め方へのこだわりが、生活や人間関係に影響することがあります。
主な特徴として、細部、規則、順序、構成、予定などに強くこだわり、活動の本来の目的が見失われることがあります。課題を完成させることよりも完璧さを優先し、結果として完成が遅れることもあります。
娯楽や友人関係を犠牲にして、仕事や生産性に過度に没頭することがあります。道徳、倫理、価値観について、過度に誠実で融通が利かない場合があります。
感情的な価値がそれほどない物でも、使い古した物や不要になった物を捨てられないことがあります。他者に自分のやり方に従わせようとし、仕事を任せることが難しい場合もあります。
自分にも他者にも、お金の使い方について慎重すぎる、あるいは出し惜しみするような態度を示すことがあります。柔軟に考え方を変えることが難しく、頑固さとして表れることもあります。
4. パーソナリティ障害の原因
パーソナリティ障害の原因は一つに限らず、生まれ持った特性と、成長過程での環境や体験など、複数の要因が複雑に影響し合って発症すると考えられています。
遺伝的要因
双子研究や家族研究などから、パーソナリティ障害には遺伝的な要因が関与していることが示されています。特定のパーソナリティ特性である衝動性や情緒の不安定さ、神経質さなどは、遺伝の影響を受けることがあります。
ただし、遺伝的要因だけで発症するわけではなく、生まれ持った気質と、その後の環境との相互作用が重要と考えられています。
生物学的要因
脳の構造や機能、神経伝達物質の働きなどの生物学的要因も関係していると考えられています。例えば、境界性パーソナリティ障害では、感情の調節に関わる脳の働きの違いなどが報告されています。
セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の働きも、衝動性や感情の不安定さなどと関連すると考えられています。ただし、これらだけでパーソナリティ障害の発症を説明できるわけではありません。
環境要因
幼少期の環境や体験は、パーソナリティの形成に大きな影響を与えます。
虐待やネグレクトを経験した人では、パーソナリティ障害の発症リスクが高まることが知られています。身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネグレクトなど、さまざまな体験が関係することがあります。
不安定な養育環境、親の精神疾患、家族内の葛藤なども、リスク要因の一つとされています。過保護や過干渉、反対に十分な養育を受けられない環境なども、影響を及ぼす可能性があります。
心理社会的要因
幼少期の愛着形成や対人関係での経験が、後のパーソナリティの形成に影響することがあります。安心できる人との関係を築きにくかった経験は、その後の人との関わり方や自分自身の捉え方に影響する場合があります。
トラウマ体験、いじめ、重大な喪失体験なども、発症に関与することがあります。思春期の心理的な葛藤やアイデンティティの形成における困難も、要因の一つと考えられています。
相互作用モデル
現在では、遺伝的な素因だけでなく、環境要因やさまざまな体験が重なり合って発症に至るという考え方が重視されています。生まれ持った気質的な特徴がある人が、成長過程でさまざまな環境や対人関係の影響を受けることで、パーソナリティの特徴がより強く現れ、生活上の困難につながることがあると考えられています。
5. パーソナリティ障害の診断
パーソナリティ障害の診断は、精神科医などの医療専門家が、本人の症状や生活への影響を丁寧に確認しながら行います。診断には慎重な評価が必要です。
診断基準
パーソナリティ障害と診断されるためには、以下のような基準を満たす必要があります。
認知、感情、対人関係、衝動のコントロールなどの領域において、文化的に期待される範囲から著しく偏った、持続的な内的体験や行動のパターンを示すこと。
この偏った行動パターンが柔軟性に欠け、さまざまな個人的・社会的な状況に広く見られること。
この偏った行動パターンによって、本人に大きな苦痛が生じたり、社会生活や仕事、その他の重要な場面で支障が生じたりしていること。
このパターンが安定して長期間続いており、その始まりが少なくとも青年期または成人期早期までさかのぼることができること。
他の精神疾患によるものとして十分に説明できず、また、薬物やその他の物質、身体的な病気の影響だけによるものではないこと。
診断の難しさ
パーソナリティ障害の診断には、いくつかの難しさがあります。
症状が他の精神疾患(うつ病、不安症、物質使用障害など)と重なることが多く、区別が難しい場合があります。また、複数のパーソナリティ障害の特徴を併せ持つこともあります。
症状が長期間続いているため、本人がそれを「自分の性格の一部」と捉えており、困りごとの原因だと気づいていないこともあります。このため、診断や相談につながるまでに時間がかかる場合があります。
また、医療者側の偏見やスティグマ(病気や障害に対する否定的な見方)も、適切な診断や支援につながるうえでの妨げとなることがあります。診断は本人を決めつけるためのものではなく、困りごとを整理し、必要な支援や治療につなげるためのものです。
評価方法
診断には、詳細な面接、生育歴の聴取、行動の観察などが用いられます。必要に応じて、構造化面接や心理検査を補助的に使用することもあります。
家族や周囲の人から得られる情報も、診断の参考になります。本人が自覚している困りごとと、周囲から見た様子が異なる場合があるためです。そのため、本人の話を尊重しながら、さまざまな情報を組み合わせて判断することが大切です。
6. パーソナリティ障害の治療
パーソナリティ障害は、かつては治療が難しいと考えられていましたが、現在ではさまざまな治療法が開発され、症状を和らげたり、生活上の困りごとを減らしたりすることが期待できるようになっています。特に境界性パーソナリティ障害では、複数の心理療法について効果が確認されています。
心理療法
パーソナリティ障害の治療では、心理療法が中心的な役割を担います。
弁証法的行動療法(DBT)は、境界性パーソナリティ障害に対して効果が確認されている心理療法の一つです。マインドフルネス、苦悩への対処、感情の調整、対人関係のスキルという4つの領域を学びます。
個人セラピー、スキルトレーニング、電話などを用いた相談、治療者同士のサポートチームという要素を組み合わせて行われることがあります。
メンタライゼーションに基づく治療(MBT)も、境界性パーソナリティ障害に用いられます。自分や相手の気持ちや考えを理解し、その背景を考える力(メンタライゼーション)を高めることを目指します。
スキーマ療法は、幼少期などに形成された、物事の捉え方や感情、行動のパターン(スキーマ)に注目し、より柔軟な捉え方や対処方法を身につけていく治療法です。さまざまなパーソナリティ障害に用いられることがあります。
認知行動療法(CBT)は、不適応的な思考や行動のパターンに気づき、より役立つ考え方や行動に変えていくことを目指します。回避性パーソナリティ障害などにも用いられます。
精神力動的精神療法は、心の中にある葛藤や、人との関係の中で繰り返されるパターンなどを理解し、自己理解を深めることを目指します。治療者との継続的な関係を通して、少しずつ変化を促していきます。
薬物療法
パーソナリティ障害そのものを直接治す薬はありませんが、併存するうつ症状や不安などの症状に対して、薬物が使用されることがあります。
うつ症状や不安症状に対して、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬が使用されることがあります。
衝動性や攻撃性、気分の不安定さなどに対して、気分安定薬や一部の抗精神病薬が検討されることもあります。ただし、薬の種類や使用方法は症状や併存する疾患によって異なります。
薬物療法は補助的に用いられることが多く、特に境界性パーソナリティ障害では、心理療法を中心に、必要に応じて薬物療法を組み合わせることが推奨されています。
グループ療法
同じような悩みを抱える人とともに治療を受けることで、対人関係のスキルを学び、孤独感を和らげられることがあります。スキルトレーニングや、参加者同士で経験を共有する機会が設けられることもあります。
入院治療
自傷行為や自殺企図のリスクが高い場合、症状が重い場合、外来での治療だけでは十分な対応が難しい場合などに、入院治療が検討されることがあります。
入院によって、安全を確保しながら、必要な治療や支援を集中的に受けられる環境を整えることができます。
治療の期間と目標
パーソナリティ障害の治療は、長期間にわたることがあります。ただし、「何年も治療を続けなければならない」と一律に決まっているわけではなく、症状や生活上の困りごと、本人の目標に応じて治療期間は異なります。
治療の目標は、パーソナリティそのものを完全に変えることではなく、苦痛を軽減し、自分に合った対処方法を身につけ、人間関係や社会生活をより安定させていくことです。
完璧になることを目指すのではなく、自分らしさを保ちながら、以前よりも過ごしやすい生活を送れるようになることが大切な目標となります。
7. パーソナリティ障害とともに生きる
パーソナリティ障害と診断されても、適切な治療や周囲のサポートを受けながら、自分らしく充実した生活を送ることは可能です。
セルフケアの重要性
治療に加えて、日常生活でのセルフケアも、心身の安定を保つうえで大切です。
規則正しい生活リズムを保ち、十分な睡眠を取ることが基本です。バランスの取れた食事や無理のない運動も、心身の安定に役立ちます。
アルコールや薬物に頼りすぎないことも大切です。一時的に気分が楽になったように感じても、長期的には心身の状態に悪影響を及ぼすことがあります。
ストレスへの対処法を身につけることも役立ちます。深呼吸、マインドフルネス、リラクゼーションなど、自分に合った方法を無理のない範囲で取り入れてみましょう。
対人関係の築き方
パーソナリティ障害では、対人関係に難しさを抱えることがあります。以下のような点を意識することで、人との関係が少しずつ安定することがあります。
コミュニケーションの方法を学び、実践することが大切です。自分の気持ちや希望を伝える方法や、相手の話に耳を傾ける方法を身につけていきましょう。
境界線(バウンダリー)を理解し、適切に設定することも重要です。「自分ができること」と「相手の責任」を分けて考えることで、無理のない関係を築きやすくなります。
完璧な関係を求めすぎず、無理のない関係性を大切にしましょう。誰にでも得意・不得意があり、人間関係にも良い時期と難しい時期があることを受け入れることが、関係を長く保つ助けになることがあります。
危機対応計画
衝動的な行動や自傷行為のリスクがある場合は、あらかじめ危機対応計画を立てておくことが役立ちます。
危機的な状況になったときに連絡できる人のリスト、気持ちを落ち着けるために使える対処法、利用できる医療機関や支援機関の連絡先などを用意しておきます。
治療者と一緒に計画を立て、本人が望む範囲で信頼できる人と共有しておくと、つらい状況になったときにも一人で抱え込まずにすみます。「危機になってから考える」のではなく、落ち着いているときに準備しておくことがポイントです。
支援資源の活用
医療機関での治療だけでなく、さまざまな支援資源を活用することができます。
自助グループやピアサポートグループに参加することで、似た経験をした人とつながり、孤独感が和らぐことがあります。「自分だけが抱えている悩みではない」と感じられることが、支えになる場合もあります。
精神保健福祉センター、保健所、障害者就労支援機関など、地域の支援機関も利用できます。必要に応じて、医療機関と地域の支援機関を組み合わせながら、自分に合った支援を探していくことが大切です。
8. 周囲ができるサポート
パーソナリティ障害を持つ人の家族や友人、同僚にも、できることがあります。本人だけでなく、支える側も無理をしすぎないことが大切です。
理解と受容
まず、パーソナリティ障害が医学的な疾患であり、本人の意思や努力だけで変えることは容易ではないことを理解することが大切です。性格の問題や甘えとして片付けず、支援が必要な状態として受け止めましょう。
本人を責めたり批判したりするのではなく、本人なりの苦しさや困難を抱えていることに目を向けることが大切です。症状の背景には、本人自身も言葉にしにくい不安や生きづらさが隠れていることがあります。
適切な境界線の設定
サポートすることは大切ですが、自分自身の心身の健康を犠牲にする必要はありません。適切な境界線を設定し、無理のない範囲でサポートしましょう。
相手の要求をすべて受け入れる必要はありません。できることとできないことを明確にし、一貫した態度を保つことが重要です。境界線は相手を突き放すためではなく、本人と支える側の双方を守るためのものと考えると分かりやすいでしょう。
感情的にならない
激しい感情表現や衝動的な行動に巻き込まれたとき、こちらも感情的になってしまいがちですが、できるだけ冷静さを保つことが大切です。
感情的なやり取りが続くと、状況がさらに不安定になることがあります。落ち着いた態度で、明確で一貫したコミュニケーションを心がけましょう。
専門家の助けを勧める
症状が深刻な場合や、自分だけでは対処しきれない場合は、専門家の助けを求めることを勧めましょう。
ただし、強制するのではなく、本人の意思を尊重しながら提案することが大切です。家族だけで抱え込まず、精神科や心療内科などの医療機関、地域の相談支援機関に相談することも選択肢の一つです。
自分自身のケア
パーソナリティ障害を持つ人の家族や友人は、大きなストレスを抱えることがあります。支える側が疲れ切ってしまわないよう、自分自身のケアも忘れずに行いましょう。
家族会や支援者向けのグループ、カウンセリングなどを利用することも検討しましょう。身近な人だけで抱え込まず、第三者に相談することは、支える側の負担を軽くし、より安定した関わりにつながります。
9. パーソナリティ障害に関する誤解
パーソナリティ障害については、病気の特徴が十分に知られていないことから、さまざまな誤解や偏見が存在します。
誤解1:「治らない病気だ」
かつてはそう考えられることもありましたが、現在では、適切な治療や支援によって症状の改善が期待できることが分かっています。特に境界性パーソナリティ障害では、時間の経過とともに診断上の特徴や症状が軽減する人も多いことが報告されています。
誤解2:「本人の性格の問題だ」
パーソナリティ障害は医学的な疾患であり、単なる性格の問題ではありません。遺伝的な要因や環境、これまでの体験などが複雑に関係して発症すると考えられています。本人の努力不足や意志の弱さだけで説明できるものではありません。
誤解3:「わがままで操作的だ」
一見するとそのように見える行動も、強い不安や苦痛に対処しようとする中で生じていることがあります。 必ずしも意図的に他者を困らせようとしているわけではなく、本人自身も自分の行動をうまくコントロールできず、苦しんでいる場合があります。こうした誤解や否定的な見方は、本人が支援につながることを難しくする要因にもなります。
誤解4:「危険な人だ」
パーソナリティ障害があるからといって、その人が危険な人物だと決めつけることはできません。 一部のタイプや併存する問題によっては、衝動性や攻撃性などへの配慮が必要な場合もありますが、パーソナリティ障害を一括りにして「危険」と考えるのは適切ではありません。特に境界性パーソナリティ障害では、自分自身を傷つける行動が問題となることもあります。
誤解5:「子どもには診断できない」
パーソナリティ障害は、通常は成人期に診断されることが多いものの、思春期にも持続的な特徴を慎重に評価し、診断や支援につなげる場合があります。 ただし、成長過程では性格や対人関係が大きく変化する時期でもあるため、一時的な行動だけで判断せず、長期的な経過を丁寧に見ていくことが大切です。
10. まとめ:回復への道のり
パーソナリティ障害は、自分自身や周囲の人、物事の捉え方、感じ方、行動パターンなどに特徴があり、それが長く続くことで、本人や周囲の人に苦痛や生活上の困難をもたらす状態です。DSM-5-TRでは10のタイプに分類され、それぞれ異なる特徴を持ちます。
原因は一つではなく、遺伝的要因、生物学的要因、環境要因、心理社会的要因などが複雑に関係しています。幼少期の体験がパーソナリティの形成に影響することもありますが、特定の体験だけでパーソナリティ障害の発症が決まるわけではありません。同じような体験をしても、その後の影響は人によって異なります。
治療には、弁証法的行動療法、メンタライゼーションに基づく治療、スキーマ療法、認知行動療法など、さまざまな心理療法があります。どの治療が適しているかは、症状や生活上の困りごと、本人の希望などによって異なります。薬物療法は、パーソナリティ障害そのものを直接治すというより、併存するうつ症状や不安など、特定の症状や併存する精神疾患に対して補助的に用いられることがあります。
パーソナリティ障害は、かつては治療が難しいと考えられていた時期もありましたが、現在では適切な治療や支援によって、症状を和らげ、日常生活や人間関係の改善を目指すことができます。治療には時間がかかることもありますが、特に境界性パーソナリティ障害では、時間の経過とともに症状が軽減し、診断基準を満たさなくなる人も少なくないことが分かっています。
重要なのは、困っていることがあるときに、一人で抱え込まず、必要に応じて専門家の助けを求めることです。精神科や心療内科などで相談でき、必要に応じて心理職などと連携して支援を受けることもあります。また、本人だけでなく、家族や身近な人も、本人への理解を深めたり、自分自身の負担について相談したりしながら関わっていくことが大切です。家族が適切な知識や対応方法を学ぶことが、本人を支えるうえで役立つ場合もあります。
パーソナリティ障害があっても、治療を受け、セルフケアに取り組み、周囲の支援を活用することで、自分らしい生活や、より安定した人間関係を少しずつ取り戻していくことは可能です。診断は人生の終わりを意味するものではなく、これまで困っていたことを整理し、よりよい生活に向けて支援につながる一つのきっかけにもなります。回復のペースや道のりは人それぞれです。焦らず、自分のペースで、一歩ずつ進んでいくことが大切です。

