就労継続支援B型と家族の相談完全ガイド|家族の理解とサポートを得るために

はじめに

就労継続支援B型を利用する際、本人だけでなく家族も様々な悩みや不安を抱えることがあります。

「息子がB型に通い始めたが、このままで本当にいいのか」「娘の将来が心配で眠れない」「どこまで親が関わるべきか分からない」「家族として何をサポートすればいいのか」——家族ならではの悩みは尽きません。

また、利用する本人も「家族に理解してもらえない」「B型に通うことを反対されている」「親からのプレッシャーが辛い」といった家族関係の悩みを抱えていることがあります。

家族の理解と適切なサポートは、本人が安心してB型を利用し、成長していくために欠かせません。一方で、過度な干渉や期待は、本人の負担になることもあります。

本記事では、就労継続支援B型における家族の役割、よくある家族の悩みと対処法、家族が相談できる窓口、家族と本人の関係の築き方、そして実際の家族の声まで、詳しく解説していきます。

家族が抱える主な悩みと不安

将来への不安

経済的な自立 「工賃が月1〜2万円では、とても自立できない」「親亡き後、どうやって生活していくのか」という経済的な不安は、家族にとって最も大きな悩みの一つです。

生活の自立 「一人暮らしができるようになるのか」「結婚や家庭を持つことは可能なのか」といった生活面での自立への不安もあります。

親亡き後 「自分たちが亡くなった後、誰が面倒を見るのか」という切実な不安を抱える親御さんは多いです。

このままでいいのか 「B型でいいのか」「もっと頑張れば一般就労できるのではないか」という迷いがあります。

本人のペースへの焦り

同世代との比較 「友達は正社員で働いているのに」「兄弟は結婚して家庭を持っているのに」と、周囲と比較して焦りを感じます。

成長が見えない 「何年通っても変わらない」「いつまで同じことを続けるのか」と、成長の実感が得られないことへの焦りがあります。

低い工賃 「一生懸命働いても、こんなに少ないのか」と、工賃の低さに落胆することがあります。

どこまで関わるべきか分からない

過保護と自立のバランス 「どこまで手伝うべきか」「放っておくと何もしないが、手を出しすぎると依存する」というジレンマがあります。

事業所との関わり方 「親がどこまで事業所に口を出していいのか」「本人に任せるべきか、親が確認すべきか」と悩みます。

本人の意思の尊重 「本人は満足しているようだが、親としては不安」という場合、どう対応すべきか迷います。

周囲の目や理解不足

親戚や近所の目 「まだ働かないのか」「B型なんて行っても意味がない」といった周囲の無理解に傷つきます。

きょうだいとの関係 きょうだいから「なぜあの子ばかり」「自分は我慢しているのに」という不満が出ることもあります。

孤独感 同じ悩みを持つ人が周りにおらず、孤独を感じることがあります。

家族自身の生活への影響

経済的負担 本人を扶養し続けることで、家族の生活や老後資金に影響が出ることがあります。

時間的負担 通院の付き添い、手続きのサポートなどで、家族の時間が取られます。

精神的負担 常に本人のことを心配し、精神的に疲弊することがあります。

仕事への影響 本人のサポートのため、家族が仕事を制限したり退職したりすることもあります。

家族の適切な関わり方

本人の自主性を尊重する

決定権は本人にある 事業所選び、作業内容、通所日数などは、基本的に本人が決めることです。家族は情報提供やアドバイスはしても、最終決定は本人に任せましょう。

失敗する権利 本人が選んだ道で失敗しても、それは貴重な学びです。「だから言ったのに」ではなく、「次はどうする?」と一緒に考える姿勢が大切です。

小さな成功を認める 「週1日しか通えない」ではなく、「週1日通えている」と肯定的に捉えましょう。

過去と比較する 周囲と比較するのではなく、「1年前の本人」と比較して成長を認めましょう。

適度な距離感を保つ

見守る姿勢 常に監視するのではなく、困ったときに相談できる存在として見守ります。

本人の話を聞く 「こうしなさい」と指示するのではなく、「今日はどうだった?」と本人の話を聞く時間を作りましょう。

プライバシーの尊重 事業所での様子を根掘り葉掘り聞くのではなく、本人が話したいことだけを聞きます。

自分の時間も大切に 家族も自分の人生を楽しむことが大切です。本人のことばかり考えて疲弊しないよう、趣味や友人との時間を持ちましょう。

事業所との適切な連携

契約時の同席 本人が希望すれば、契約時や見学時に同席し、一緒に説明を聞くことができます。

個別支援計画の確認 個別支援計画の内容を家族も理解しておくと、家庭でのサポートがしやすくなります。

定期的な情報共有 事業所によっては、定期的に家族面談を設けているところもあります。積極的に参加しましょう。

緊急時の連絡 体調不良や事故など、緊急時の連絡方法を確認しておきます。

適度な距離 事業所に頻繁に連絡したり、過度に要望を出したりするのは避けましょう。信頼して任せることも大切です。

経済的なサポート

現実的な計画 「親亡き後」を見据えて、障害年金、成年後見制度、グループホーム、信託など、具体的な準備を進めましょう。

本人の工賃の使い道 少額でも、本人が自分で稼いだお金をどう使うかは本人に任せましょう。ただし、金銭管理が難しい場合は、一緒に計画を立てます。

家計への貢献 工賃の一部を家計に入れてもらうことで、「家族の一員として貢献している」という実感を持ってもらうこともできます(強制ではありません)。

精神的なサポート

無条件の受容 「B型に通っている」ことを否定せず、「今はこれでいい」と受け入れます。

焦らせない 「早く一般就労しなさい」「もっと頑張りなさい」というプレッシャーは逆効果です。

成長を待つ 成長には時間がかかります。長い目で見守る忍耐が必要です。

安心できる居場所 家が本人にとって安心できる場所であることが、何より大切です。

家族が相談できる窓口

相談支援事業所

役割 サービス等利用計画を作成する専門機関です。本人だけでなく、家族の相談にも応じてくれます。

相談できる内容

  • 事業所の選び方
  • 本人への関わり方
  • 家族の不安や悩み
  • 他のサービスとの組み合わせ
  • 将来の計画

相談方法 本人が利用している相談支援事業所に、家族から直接連絡して相談できます。

市区町村の障害福祉窓口

役割 障害福祉サービス全般の相談窓口です。

相談できる内容

  • 福祉サービスの制度
  • 受給者証の手続き
  • 経済的支援(手当、年金など)
  • 住まいの相談(グループホームなど)

相談方法 市区町村の福祉課、障害福祉課などに電話または訪問します。

基幹相談支援センター

役割 各市区町村に設置されている、障害者の総合相談窓口です。

相談できる内容

  • あらゆる障害福祉に関する相談
  • 緊急時の対応
  • 他の専門機関への紹介

メリット どんな相談でも受け付けてくれ、適切な窓口につないでくれます。

障害者就業・生活支援センター

役割 障害のある方の就労と生活を一体的に支援する機関です。

相談できる内容

  • 就労に関する相談
  • 生活面の相談
  • 一般就労への移行支援
  • 職場定着支援

家族も相談できる 本人だけでなく、家族からの相談も受け付けています。

家族会・当事者会

役割 同じ悩みを持つ家族が集まり、情報交換や支え合いをする場です。

メリット

  • 同じ立場の家族と話せる
  • 孤独感が軽減される
  • 具体的な情報や経験が聞ける
  • 親亡き後の準備について学べる

探し方

  • 市区町村の障害福祉窓口で紹介してもらう
  • インターネットで検索(例  「○○市 精神障害 家族会」)
  • 事業所や相談支援事業所で情報を得る

医療機関

主治医 本人の主治医に、家族から相談することもできます(本人の了承を得て)。

精神保健福祉士(PSW) 病院やクリニックに配置されている精神保健福祉士に相談できます。

家族のためのカウンセリング 家族自身がストレスを抱えている場合、家族がカウンセリングを受けることも有効です。

弁護士・行政書士・社会福祉士

成年後見制度 判断能力が不十分な場合、成年後見制度の利用を検討します。弁護士、司法書士、社会福祉士などに相談できます。

遺言・信託 親亡き後の財産管理について、弁護士や信託銀行に相談できます。

オンラインコミュニティ

SNS・掲示板 同じ悩みを持つ家族のオンラインコミュニティもあります。匿名で相談できる安心感があります。

注意点 情報の信頼性を確認し、個人情報の取り扱いに注意しましょう。

家族が本人を支えるための具体的方法

日常生活でのサポート

生活リズムの維持

  • 一緒に早寝早起きの習慣を作る
  • 朝食を一緒に食べる
  • 通所の準備を手伝う(最初だけ、徐々に減らす)

健康管理

  • 服薬のリマインド(本人が忘れやすい場合)
  • 通院の付き添い(必要に応じて)
  • 栄養バランスの良い食事を用意する

金銭管理のサポート

  • 一緒に家計簿をつける
  • 貯金の目標を立てる
  • 計画的な使い方を一緒に考える

コミュニケーションの工夫

否定しない 「それは違う」「あなたは間違っている」ではなく、「そう感じているんだね」と受け止めます。

比較しない 「○○さんは」「お兄ちゃんは」という比較は避けましょう。

具体的に褒める 「偉いね」ではなく、「今日も通所できたね」「洗濯物をたたんでくれてありがとう」と具体的に認めます。

押し付けない 「こうしなさい」ではなく、「どうしたい?」と本人の意思を聞きます。

聞く姿勢 話を最後まで聞き、途中で遮らないようにします。

家族自身のケア

自分を責めない 「育て方が悪かったのか」「自分のせいか」と自分を責める必要はありません。

完璧を求めない 「良い親」「理想的な家族」である必要はありません。失敗しても大丈夫です。

息抜きを持つ 家族も自分の時間、趣味、友人との交流を大切にしましょう。

専門家に頼る 一人で抱え込まず、相談窓口や家族会、カウンセリングなどを活用しましょう。

きょうだいへの配慮 本人だけでなく、きょうだいの気持ちにも目を向けましょう。

本人が家族に理解してほしいこと

家族の立場だけでなく、本人の視点も理解することが大切です。

焦らせないでほしい

「早く一般就労しなさい」「もっと頑張りなさい」というプレッシャーは、本人を追い詰めます。今のペースを認めてほしいのです。

比較しないでほしい

「友達は」「兄弟は」という比較は、自己肯定感を下げます。「あなたはあなた」として見てほしいのです。

小さな成長を認めてほしい

「たったこれだけ」ではなく、小さな一歩を認めてほしいのです。

自分で決めさせてほしい

親が全て決めるのではなく、自分で選択する機会がほしいのです。

信じてほしい

「どうせ無理」ではなく、「あなたならできる」と信じてほしいのです。

一人の大人として扱ってほしい

子ども扱いではなく、一人の大人として尊重してほしいのです。

話を聞いてほしい

アドバイスよりも、まずは話を聞いてほしいのです。

よくある質問

Q1   本人がB型に通うことを家族として反対すべきですか?

本人が希望しているなら、まずは尊重してみましょう。B型は「終着点」ではなく、「通過点」として活用できます。反対するのではなく、一緒に目標を設定して見守る姿勢が大切です。

Q2   工賃が少なすぎて、将来が不安です。

工賃だけで自立するのは確かに難しいですが、障害年金、家族の支援、グループホーム、成年後見制度などを組み合わせることで、親亡き後の生活設計は可能です。相談支援事業所や市区町村の窓口で、具体的な計画を立てましょう。

Q3   何年もB型に通っているのに、一般就労に移行する気配がありません。

本人が満足して通えているなら、それも一つの答えです。無理に一般就労を目指す必要はありません。ただし、本人が希望しているのに機会がないなら、就労移行支援の利用を検討しましょう。

Q4   親として、どこまで事業所に関わっていいですか?

契約時や見学時の同席、定期的な家族面談への参加などは問題ありません。ただし、日常的に事業所に連絡したり、過度に要望を出したりするのは避けましょう。本人と事業所の関係を尊重することが大切です。

Q5   本人が事業所で問題を起こしているようです。家族として何をすべきですか?

まず事業所から話を聞き、状況を把握しましょう。そして、本人の話も聞きます。事業所、本人、家族の三者で話し合い、解決策を探ります。必要に応じて、相談支援専門員や主治医にも相談しましょう。

Q6   きょうだいが「なぜあの子ばかり」と不満を言います。

きょうだいの気持ちも理解し、個別に話を聞く時間を作りましょう。「あなたも大切」ということを伝え、きょうだいだけのための時間も作ります。きょうだい支援の会などもあるので、活用を検討しましょう。

Q7   親亡き後が心配で、毎日不安です。

一人で抱え込まず、具体的な準備を始めましょう。成年後見制度、遺言、信託、グループホームなどについて、専門家に相談します。計画を立てることで、不安は軽減されます。

Q8   本人が「辞めたい」と言い出しました。どうすべきですか?

まず理由を聞きましょう。人間関係、作業内容、体調など、原因によって対応が変わります。すぐに辞めさせるのではなく、事業所や相談支援専門員と相談し、改善策を探ります。それでも難しければ、別の事業所への移行を検討します。

Q9   家族が疲れ果てています。どうすればいいですか?

家族自身がカウンセリングを受ける、家族会に参加する、レスパイト(短期入所)を利用するなど、家族のケアも大切です。一人で抱え込まず、助けを求めることは恥ずかしいことではありません。

Q10   本人と家族の意見が対立しています。

第三者(相談支援専門員、主治医、事業所のスタッフなど)を交えて話し合うと、冷静に話せることがあります。お互いの気持ちを伝え合い、妥協点を探りましょう。

家族の体験談

AIさん(50代、母親)

「息子(30代)がうつ病でB型に通い始めて3年です。最初は『B型なんて』と正直、落胆しました。同級生は結婚して子どももいるのに、と比較して苦しみました。

でも、家族会で他の親御さんの話を聞いて、考えが変わりました。『今、息子が笑顔で通えていることが何より大切』と思えるようになりました。

週3日、自分のペースで通い、小さな工賃でも自分で稼いだお金で好きなものを買う息子を見て、『これでいいんだ』と思えるようになりました」

AJさん(60代、父親)

「娘(40代)が統合失調症でB型に通っています。『親亡き後』のことが心配で、夜も眠れませんでした。

相談支援事業所で、成年後見制度やグループホーム、信託などについて教えてもらい、具体的な計画を立て始めました。すると不安が少し軽くなりました。

『完璧な準備』はできないかもしれませんが、『できる範囲で準備する』ことで、前を向けるようになりました」

AKさん(40代、姉)

「弟(30代)が発達障害でB型に通っています。親が高齢で、実質的に私がサポートしています。

最初は『なぜ私が』と思うこともありましたが、きょうだい支援の会に参加して、同じ立場の人と話すことで救われました。

今は弟のペースを尊重しつつ、自分の生活も大切にするバランスを心がけています」

ALさん(70代、母親)

「息子(50代)が長年B型に通っています。私も高齢になり、いつまでサポートできるか不安です。

最近、息子がグループホームに入居しました。最初は寂しかったですが、息子が自立した生活を送っている姿を見て、『これで良かった』と思っています。

親は永遠に子どもを守れません。手を離すことも、愛情の一つだと学びました」

まとめ

就労継続支援B型における家族の役割は、「見守り、支え、信じる」ことです。

過度に干渉せず、かといって放置せず、適度な距離感を保ちながら、本人の自主性を尊重することが大切です。

家族の不安や悩みは、一人で抱え込まず、相談支援事業所、市区町村の窓口、家族会、医療機関など、様々な窓口を活用しましょう。同じ悩みを持つ家族と話すことで、孤独感が軽減され、具体的なヒントも得られます。

「親亡き後」の不安は、具体的な準備を始めることで軽減されます。成年後見制度、グループホーム、信託など、専門家に相談しながら、できることから始めましょう。

そして何より大切なのは、家族自身が自分の人生を楽しむことです。家族が笑顔でいることが、本人にとっても最大の支えになります。

本人のペースを信じて、長い目で見守っていきましょう。焦らず、一歩ずつ、前に進んでいけば大丈夫です。

家族として、本人を支えるあなたを、心から応援しています。

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