就労継続支援B型でeスポーツ!新しい働き方と可能性を探る

はじめに

近年、障害のある方の就労支援の現場に、まったく新しい風が吹き込んでいます。それが「eスポーツ」を活用した就労継続支援B型事業所の登場です。ゲームというエンターテイメントが、障害のある方の社会参加や就労訓練の場として注目を集めているのです。

従来の就労継続支援B型事業所では、軽作業や手工芸、清掃業務などが中心でしたが、eスポーツという新しい選択肢は、特に若い世代やデジタルネイティブ世代の利用者にとって、これまでにない魅力的な活動の場となっています。

本記事では、就労継続支援B型事業所におけるeスポーツの取り組みについて、その特徴やメリット、実際の活動内容、そして利用を検討する際のポイントまで、詳しく解説していきます。

就労継続支援B型とは?基本を理解する

就労継続支援B型の概要

就労継続支援B型とは、障害者総合支援法に基づく福祉サービスの一つです。一般企業での就労が困難な障害のある方に対して、雇用契約を結ばずに就労の機会を提供し、生産活動を通じて知識や能力の向上を図ることを目的としています。

利用者は事業所と雇用契約を結ばないため、比較的自由度が高く、体調や障害の特性に応じて柔軟に働くことができます。作業に対しては「工賃」という形で報酬が支払われ、全国平均で月額1万6000円程度となっています。

対象となる方

就労継続支援B型の対象となるのは、以下のような方々です。

  • 就労経験があるが、年齢や体力面で一般企業での就労が困難になった方
  • 就労移行支援を利用したが、雇用に結びつかなかった方
  • 就労継続支援A型の利用が困難な方
  • 特別支援学校を卒業後、就職活動を行ったが雇用に至らなかった方

精神障害、知的障害、身体障害、発達障害など、さまざまな障害のある方が利用しています。

eスポーツとは?その可能性

eスポーツの定義

eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)とは、コンピューターゲームやビデオゲームを使った対戦競技のことを指します。世界的には巨大な市場となっており、プロプレイヤーが高額な賞金を獲得する大会も数多く開催されています。

日本でも近年、eスポーツへの関心が高まっており、2018年には日本eスポーツ連合が設立され、競技としての認知度が向上しています。

福祉分野でのeスポーツの注目点

eスポーツが福祉分野で注目される理由は以下の通りです。

身体的制約が少ない 車椅子を使用している方や、身体に障害のある方でも、手や指が動けば参加できます。特別な身体能力を必要としないため、多様な障害のある方が同じ土俵で活動できるのです。

若い世代へのアプローチ ゲームに親しんできた若い世代にとって、eスポーツは身近で興味を持ちやすい活動です。従来の就労支援では参加意欲が湧かなかった方も、eスポーツなら積極的に取り組める可能性があります。

多様なスキルの習得 eスポーツを通じて、反射神経、集中力、戦略的思考、チームワーク、コミュニケーション能力など、さまざまなスキルを身につけることができます。

社会性の育成 チーム戦では協調性が求められ、大会への参加を通じて目標設定や達成感を経験できます。オンラインでの交流により、社会とのつながりを感じることもできます。

就労継続支援B型でのeスポーツの活動内容

実際の取り組み例

eスポーツを取り入れた就労継続支援B型事業所では、以下のような活動が行われています。

ゲームプレイとトレーニング 利用者は様々なゲームタイトルに取り組みます。格闘ゲーム、パズルゲーム、スポーツゲーム、チーム対戦ゲームなど、個人の興味や能力に応じて選択できます。定期的なトレーニングを通じて、スキル向上を目指します。

大会への参加 地域のeスポーツ大会や、障害者向けのeスポーツイベントに参加します。目標を持って練習に取り組むことで、モチベーション向上につながります。

配信・動画制作 ゲームプレイの様子を配信したり、動画を編集してYouTubeなどに投稿したりする活動もあります。これにより、映像編集スキルやSNS運用のスキルも身につきます。

イベント企画・運営 事業所内での大会を企画したり、他の事業所との交流イベントを運営したりすることもあります。企画力や運営能力の向上が期待できます。

ゲーム関連の作業 ゲームのテストプレイ、攻略情報のまとめ、eスポーツ関連グッズの製作など、ゲームに関連した様々な作業を行う事業所もあります。

一日のスケジュール例

ある事業所での一日のスケジュールをご紹介します。

  • 9:30 利用開始・朝のミーティング
  • 10:00 個別トレーニング(各自でゲームプレイ)
  • 12:00 昼休憩
  • 13:00 チーム練習または動画編集作業
  • 15:00 休憩
  • 15:15 フリープレイまたは大会準備
  • 16:30 終わりのミーティング・振り返り
  • 17:00 利用終了

もちろん、体調や個人の状況に応じて、短時間の利用や休憩を多く取るなど、柔軟な対応がなされています。

eスポーツ型事業所のメリット

利用者にとってのメリット

興味・関心から始められる ゲームが好きという純粋な興味から活動を始められるため、参加へのハードルが低くなります。楽しみながら活動できることで、継続しやすいのです。

自己肯定感の向上 ゲームで上達したり、大会で成果を出したりすることで、達成感や自己肯定感を得られます。「できた」という経験の積み重ねは、自信につながります。

コミュニケーション能力の向上 チーム戦では仲間との連携が不可欠です。また、共通の趣味を持つ仲間との交流により、自然とコミュニケーション能力が育まれます。

デジタルスキルの習得 パソコンやゲーム機の操作、インターネットの活用、動画編集ソフトの使用など、現代社会で役立つデジタルスキルが身につきます。

将来の可能性 eスポーツ業界は成長産業であり、プロゲーマー、配信者、イベントスタッフ、ゲームテスターなど、関連する職業の選択肢も広がっています。

従来の作業との違い

従来の軽作業中心の事業所と比較して、eスポーツ型事業所には以下のような特徴があります。

創造性と戦略性 単純作業ではなく、戦略を考えたり、創意工夫したりする機会が多くあります。

即時フィードバック 作業の成果がすぐにゲームの結果として表れるため、自分の成長を実感しやすくなります。

世代を超えた共通言語 ゲームという共通の話題があることで、年齢や障害の種類を超えた交流が生まれやすくなります。

懸念点とその対応

よくある心配事

eスポーツを活用した就労支援には、いくつかの懸念点もあります。

ゲーム依存の心配 「ゲームばかりしていて大丈夫?」という声もあります。しかし、eスポーツ型事業所では、適切な時間管理や休憩の取り方、健康管理などもプログラムに組み込まれています。むしろ、ゲームを通じて自己管理能力を育てることを目指しています。

就労につながるのか eスポーツが一般就労にどうつながるのか疑問に思う方もいるでしょう。しかし、eスポーツを通じて身につくスキル—コミュニケーション能力、問題解決能力、デジタルスキル、チームワークなど—は、多くの職場で求められる能力です。

身体への影響 長時間のゲームプレイによる視力低下や姿勢の悪化を心配する声もあります。多くの事業所では、定期的な休憩、ストレッチの実施、適切な照明や姿勢の指導など、健康面への配慮がなされています。

事業所での対応策

多様なプログラム ゲームプレイだけでなく、動画編集、イベント企画、ビジネスマナー研修、体操やストレッチなど、バランスの取れたプログラムを提供しています。

個別支援計画 一人ひとりの目標や課題に応じた個別支援計画を作成し、単にゲームを楽しむだけでなく、将来の就労や生活の質向上につながる支援を行います。

専門スタッフの配置 福祉の専門知識を持つスタッフに加え、eスポーツやゲーム業界に詳しいスタッフを配置している事業所もあります。

利用を検討する際のポイント

事業所選びのチェックポイント

eスポーツ型の就労継続支援B型事業所を選ぶ際は、以下の点を確認しましょう。

設備と環境 ゲーミングPCやゲーム機、モニター、ヘッドセットなど、十分な設備が整っているか確認します。また、快適にプレイできる環境(照明、椅子、デスクの配置など)も重要です。

支援体制 スタッフの配置人数や専門性、個別支援の内容、医療機関との連携体制などを確認しましょう。

プログラムの内容 ゲームプレイ以外にどのような活動があるか、就労に向けた訓練はどのように行われるかを確認します。

実績と評判 利用者の声や就労移行の実績、地域での評判なども参考になります。

見学・体験 必ず見学や体験利用をして、雰囲気や活動内容を直接確認することをおすすめします。

利用開始までの流れ

  1. 相談・問い合わせ  事業所や市区町村の障害福祉窓口に相談します
  2. 見学・体験  実際に事業所を訪問し、雰囲気を確認します
  3. 利用申請  市区町村の窓口で障害福祉サービスの利用申請を行います
  4. 受給者証の交付  審査を経て、受給者証が交付されます
  5. 利用契約  事業所と利用契約を結びます
  6. 利用開始  個別支援計画を作成し、活動を始めます

eスポーツを通じた成長事例

Aさんのケース(20代男性・自閉スペクトラム症)

Aさんは人とのコミュニケーションが苦手で、学校卒業後は自宅に引きこもりがちでした。しかし、ゲームが好きだったことから、eスポーツ型の事業所を利用し始めました。

最初は一人でゲームをするだけでしたが、徐々にチーム戦に参加するようになり、仲間との連携を学びました。大会に向けて練習を重ねる中で、目標を持って取り組む経験もしました。

現在では、動画編集にも興味を持ち、事業所のYouTubeチャンネルの運営を任されるまでになっています。将来は映像関連の仕事に就きたいと、就労移行支援への移行も視野に入れています。

Bさんのケース(30代女性・うつ病)

Bさんは一般企業で働いていましたが、うつ病を発症し退職。自信を失い、再就職への不安を抱えていました。

医師の勧めでeスポーツ型事業所を利用し始め、リハビリの一環としてパズルゲームから始めました。少しずつ体調が安定し、他の利用者とも交流するようになりました。

ゲームを通じて「できた」という小さな成功体験を積み重ね、自己肯定感が回復。現在は週5日通所できるまでになり、パソコンスキルも向上したことで、事務職への再就職を目指して就労移行支援に移行する準備をしています。

よくある質問(FAQ)

Q1  ゲームが苦手でも利用できますか? A  はい、大丈夫です。多くの事業所では初心者向けのゲームや簡単な操作のゲームも用意しています。スタッフが丁寧にサポートしますので、ゲーム経験がない方でも安心して始められます。

Q2  工賃はどのくらいもらえますか? A  事業所や活動内容によって異なりますが、月額数千円から2万円程度が一般的です。eスポーツ型事業所の場合、動画配信の広告収入や大会の賞金などが工賃の原資になることもあります。

Q3  どんなゲームができますか? A  事業所によって異なりますが、格闘ゲーム、パズルゲーム、スポーツゲーム、レーシングゲーム、チーム対戦ゲームなど、多様なジャンルが用意されています。自分の好みや能力に合わせて選べます。

Q4  一般就労につながりますか? A  eスポーツを通じて身につけたスキルを活かし、ゲーム業界やIT業界、映像制作、イベント運営などの分野への就労を実現した方もいます。また、eスポーツを通じて得た自信やコミュニケーション能力は、どの職場でも役立ちます。

Q5  年齢制限はありますか? A  就労継続支援B型自体に年齢の上限はありませんが、事業所によって対象年齢を設定している場合があります。また、eスポーツ型事業所は比較的若い世代が多い傾向にありますが、年齢に関わらず利用できる事業所も増えています。

Q6  家族も見学できますか? A  はい、多くの事業所では家族の見学も歓迎しています。利用を検討する際は、ご家族と一緒に見学することをおすすめします。

おわりに

就労継続支援B型におけるeスポーツの取り組みは、障害のある方の新しい可能性を切り開く試みです。ゲームという身近なツールを活用することで、これまで就労支援に参加しづらかった方にも、活動の場を提供できるようになりました。

eスポーツを通じて得られるのは、単なるゲームスキルだけではありません。コミュニケーション能力、問題解決能力、チームワーク、目標達成力、デジタルスキルなど、現代社会で求められる多様な能力を育むことができます。

もちろん、eスポーツがすべての方に合うわけではありません。しかし、「ゲームが好き」「パソコンに興味がある」という方にとっては、楽しみながら成長できる魅力的な選択肢となるでしょう。

大切なのは、一人ひとりに合った支援の形を見つけることです。eスポーツ型事業所も、従来型の事業所も、それぞれに良さがあります。ご自身の興味や目標、体調に合わせて、最適な事業所を選んでください。

就労継続支援B型でのeスポーツという新しい取り組みが、一人でも多くの方の可能性を広げ、充実した日々につながることを願っています。まずは気軽に事業所に問い合わせて、見学や体験をしてみてはいかがでしょうか。新しい一歩が、あなたの未来を変えるきっかけになるかもしれません。

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