「何度注意されても同じミスを繰り返してしまう」「周りの人は簡単にできることが、自分だけできない」「頑張っているのに仕事がうまくいかない」こんな悩みを抱えている方の中には、実は発達障害の特性が影響しているケースがあります。この記事では、発達障害によって仕事が困難になる特徴、単なる「仕事ができない」との違い、そして対処法について詳しく解説していきます。
発達障害とは
発達障害は、脳の発達の偏りによって、コミュニケーション、社会性、注意力、行動などに特性が現れる状態です。
主な発達障害の種類
ASD(自閉スペクトラム症)
コミュニケーションや社会性の困難、こだわりの強さ、感覚過敏などが特徴です。
ADHD(注意欠如・多動症)
不注意、衝動性、多動性が特徴です。大人になると多動性は目立たなくなることが多いです。
LD(学習障害)
知的能力は平均的なのに、読み書き、計算など特定の学習に困難がある状態です。
大人の発達障害
子どもの頃から特性はありますが、軽度の場合や周囲のサポートがあった場合、大人になるまで気づかれないことがあります。
社会人になって求められる能力(マルチタスク、柔軟な対応、複雑な人間関係など)が複雑になり、初めて困難が表面化するケースが多いです。
発達障害による「仕事ができない」特徴
発達障害の特性によって、どのような仕事上の困難が生じるのでしょうか。
ADHD傾向による困難
1. ケアレスミスが多い
特徴
- 何度注意されても同じミスを繰り返す
- 書類の誤字脱字、数字の転記ミスが頻繁
- 見落としが多い
- 確認しても見逃す
なぜ起こるか 注意の持続が難しく、細部に注意を向け続けることができません。
2. 締め切りを守れない
特徴
- 期限ギリギリまで手をつけない
- 締め切りを忘れる
- 時間の見積もりができない
- 「まだ時間がある」と油断する
なぜ起こるか 時間感覚が乏しく、先の予定を具体的にイメージできません。
3. 物をなくす、忘れる
特徴
- 鍵、財布、スマホをよくなくす
- 重要な書類を紛失する
- 約束を忘れる
- 何をしにきたか忘れる
なぜ起こるか 作業記憶(ワーキングメモリ)の容量が小さく、情報を保持しにくいです。
4. 整理整頓ができない
特徴
- デスクが常に散らかっている
- 書類が整理できない
- どこに何があるか分からない
- 片付けてもすぐに散らかる
なぜ起こるか 物の管理や分類が苦手で、優先順位をつけられません。
5. 優先順位がつけられない
特徴
- 何から手をつければいいか分からない
- 重要でないことに時間をかけてしまう
- 緊急性の判断ができない
- すべて同じレベルで処理しようとする
なぜ起こるか 実行機能(計画、優先順位付け、実行)に困難があります。
6. マルチタスクができない
特徴
- 複数のタスクを同時に進められない
- 一つのことに集中すると他が見えなくなる
- 電話しながらメモが取れない
- 頭が混乱する
なぜ起こるか 注意を複数に分散させることが困難です。
7. 衝動的な行動
特徴
- 思ったことをすぐ口に出してしまう
- 会議で人の話を遮る
- よく考えずに行動する
- 後先考えない決断をする
なぜ起こるか 衝動をコントロールする機能が弱いです。
8. 集中力にムラがある
特徴
- 興味のあることには過集中する
- 興味のないことは全く集中できない
- 会議中にぼーっとしてしまう
- 締め切り直前だけ集中できる
なぜ起こるか 注意のコントロールが難しく、自分の意思で集中を調整できません。
ASD傾向による困難
1. コミュニケーションの困難
特徴
- 言葉を文字通りに受け取る
- 冗談や皮肉が理解できない
- 指示が曖昧だと分からない
- 「適当に」「いい感じに」が理解できない
なぜ起こるか 文脈や暗黙の意味を読み取ることが苦手です。
2. 空気が読めない
特徴
- 場の雰囲気が分からない
- 相手が嫌がっているのに気づかない
- TPOに合わせた行動ができない
- 「今言うべきではない」が分からない
なぜ起こるか 社会的な文脈や他者の感情を読み取ることが困難です。
3. 予定変更に対応できない
特徴
- 急な予定変更でパニックになる
- いつもと違う手順だと混乱する
- 臨機応変な対応ができない
- マニュアル通りにしかできない
なぜ起こるか 予測可能性を重視し、変化に対する不安が強いです。
4. 暗黙のルールが理解できない
特徴
- 社内の「当たり前」が分からない
- 明文化されていないルールに気づかない
- 「言わなくても分かるでしょ」が分からない
- 服装や態度のTPOが理解できない
なぜ起こるか 明示されていないルールを察することが苦手です。
5. こだわりが強い
特徴
- 自分のやり方を変えられない
- 決まった手順でないと気が済まない
- 細部にこだわりすぎて進まない
- 完璧主義で時間がかかる
なぜ起こるか ルーティンへの固執や、柔軟性の欠如があります。
6. 感覚過敏
特徴
- オフィスの蛍光灯がまぶしすぎる
- 雑音が気になって集中できない
- 特定の音(キーボードの音など)が耐えられない
- 人混みで疲れ果てる
なぜ起こるか 感覚刺激への過敏性があります。
7. 雑談が苦手
特徴
- 「天気の話」など雑談の意味が分からない
- 何を話せばいいか分からない
- 仕事の話しかできない
- 休憩時間が苦痛
なぜ起こるか 社交的な会話の目的や流れが理解しにくいです。
LD傾向による困難
1. 読み書きの困難(読字障害・書字障害)
特徴
- 文章を読むのに時間がかかる
- 読み間違いが多い
- 文字を書くのが苦手
- メールの文章がまとまらない
なぜ起こるか 読み書きに関わる脳の機能に特性があります。
2. 計算の困難(算数障害)
特徴
- 暗算ができない
- 数字の桁を間違える
- お金の計算が苦手
- 見積もりや予算管理が困難
なぜ起こるか 数の概念や計算に関わる脳の機能に特性があります。
単なる「仕事ができない」との違い
発達障害による困難と、単なる経験不足やスキル不足との違いはどこにあるのでしょうか。
発達障害の可能性が高い場合
1. 子どもの頃からの特性
学生時代から同じような困難があった(忘れ物が多い、整理整頓が苦手、友達関係がうまくいかないなど)。
2. 努力しても改善しない
何度注意されても、頑張っても、同じ問題が繰り返される。
3. 特定の分野だけ極端に苦手
他のことはできるのに、特定のことだけができない(例:計算は得意だがコミュニケーションが苦手)。
4. 「なぜできないのか」が自分でも分からない
理屈では分かっているのに、実行できない。
5. 複数の場面で問題が起きる
職場だけでなく、家庭や日常生活でも同じ問題がある。
単なる経験不足・スキル不足の場合
1. 経験とともに改善する
教えられたり、経験を積んだりすることで、徐々にできるようになる。
2. 特定の職場だけの問題
前の職場では問題なかったのに、今の職場だけでうまくいかない。
3. ストレスや体調の影響
疲れているとき、ストレスが多いときだけ問題が出る。
4. 明確な原因がある
スキル不足、知識不足、教育不足など、原因が明確。
発達障害かもしれないと思ったら
「もしかして発達障害かも?」と思ったとき、どうすればいいのでしょうか。
1. 自己診断はしない
インターネットのチェックリストだけで判断せず、専門家の診断を受けましょう。
2. 専門医を受診する
受診先
- 精神科
- 心療内科
- 発達障害専門クリニック
診断の流れ
- 問診(現在の困りごと、子どもの頃の様子)
- 心理検査(WAIS-IVなど)
- 総合的な評価
3. 診断結果を受け止める
診断がついた場合も、つかなかった場合も、それは「終わり」ではなく「始まり」です。
診断は、適切なサポートを受けるための情報です。
4. 職場に伝えるかどうかは慎重に
診断を職場に伝えるかどうかは、あなた自身が決めることです。
伝えるメリット
- 合理的配慮を受けられる可能性がある
- 理解してもらえる
伝えるデメリット
- 偏見や差別を受ける可能性がある
- キャリアに影響する可能性がある
慎重に判断しましょう。
仕事を続けるための対処法
発達障害の特性があっても、工夫次第で仕事を続けることができます。
ADHD傾向への対処法
1. 外部記憶を活用する
- スマホのリマインダー機能を使う
- ToDoリストアプリを活用
- 重要なことはすぐメモする
- カレンダーに全部書く
2. 環境を整える
- デスクの上は最小限にする
- 物の定位置を決める
- 視覚的なリマインダー(付箋など)を使う
- 静かな環境で作業する
3. タスクを細分化する
- 大きなタスクを小さく分ける
- 一つずつ確実に終わらせる
- チェックリストを使う
4. 締め切りを前倒しにする
- 本来の締め切りの数日前を目標にする
- アラームで知らせる
5. ダブルチェックを仕組み化する
- 必ず誰かに確認してもらう
- チェックリストを使う
- 時間を置いてから見直す
ASD傾向への対処法
1. 明確な指示を求める
- 曖昧な指示は具体的に確認する
- 「いい感じに」→「具体的にどういう形でしょうか?」
- 指示を復唱して確認する
2. ルーティンを作る
- 毎日同じ手順で仕事を進める
- 変化を最小限にする
- 予定変更は早めに知らせてもらう
3. コミュニケーションのパターンを学ぶ
- 挨拶の定型文を覚える
- よくある質問の答えを用意しておく
- 雑談のテンプレートを持つ
4. 感覚過敏への対策
- ノイズキャンセリングイヤホンを使う
- サングラスをかける(可能なら)
- 刺激の少ない環境を選ぶ
5. 視覚的な情報を活用する
- 口頭の指示は必ずメモする
- マニュアルを作ってもらう
- フローチャートで理解する
共通の対処法
1. 自分の特性を理解する
得意なこと、苦手なことを把握し、苦手なことには対策を立てます。
2. 得意分野を活かす
苦手を克服するより、得意を伸ばす方が効果的です。
3. 休息を取る
定期的に休憩し、オーバーワークにならないようにします。
4. サポートを受ける
一人で抱え込まず、周囲のサポートを受けましょう。
5. 適職を探す
どうしても今の仕事が合わない場合、転職や配置転換も選択肢です。
職場での合理的配慮
発達障害があることを職場に伝えた場合、合理的配慮を求めることができます。
合理的配慮の例
ADHD
- 静かな環境での作業
- 口頭指示を文書化してもらう
- 定期的な進捗確認
- 締め切りのリマインド
ASD
- 業務マニュアルの作成
- 明確な指示
- 予定変更の事前通知
- 感覚過敏への配慮(照明、音など)
ただし、合理的配慮は「業務の本質を変えない範囲で」「過度な負担にならない範囲で」行われるものです。
よくある質問(FAQ)
Q 発達障害があると、仕事はできないの?
A いいえ、適切な環境とサポートがあれば、十分に仕事ができます。実際、多くの発達障害の人が社会で活躍しています。
Q 診断を受けるべき?
A 日常生活に支障があるなら、受けることをおすすめします。診断は、適切なサポートを受けるための第一歩です。
Q 職場に伝えた方がいい?
A 一概には言えません。理解のある職場なら伝えることでサポートを得られますが、偏見のある職場では不利益を被る可能性もあります。慎重に判断してください。
Q 障害者手帳を取得した方がいい?
A 障害者雇用枠での就職を希望する場合や、福祉サービスを利用したい場合は取得を検討しましょう。ただし、取得は義務ではありません。
Q 薬物療法は必要?
A ADHDの場合、薬物療法が効果的なことがあります。ただし、すべての人に必要なわけではなく、医師と相談して決めます。
Q 完治する?
A 発達障害は「治る」ものではなく、生まれつきの特性です。ただし、適切な対処法を身につけることで、困難を軽減し、自分らしく生きることができます。
まとめ
「仕事ができない」原因が発達障害である可能性はあります。
発達障害による仕事の困難の特徴
ADHD傾向 ケアレスミス、締め切りを守れない、物をなくす、整理整頓ができない、優先順位がつけられない、マルチタスクができない
ASD傾向 コミュニケーションの困難、空気が読めない、予定変更に対応できない、暗黙のルールが理解できない、こだわりが強い、感覚過敏
見分けるポイント
- 子どもの頃からの特性
- 努力しても改善しない
- 特定の分野だけ極端に苦手
- 複数の場面で問題が起きる
対処法
- 専門医の診断を受ける
- 自分の特性を理解する
- 外部記憶、環境整備、タスクの細分化などの工夫
- 得意分野を活かす
- 必要に応じて職場に合理的配慮を求める
大切なこと
- 発達障害があっても、適切なサポートと工夫で仕事はできる
- 診断は「終わり」ではなく「始まり」
- 一人で抱え込まず、サポートを受ける
- 自分を責めない
「仕事ができない自分はダメだ」と自分を責める必要はありません。もしかしたら、それは発達障害の特性によるものかもしれません。
専門家に相談し、自分の特性を理解し、適切な対処法を見つけることで、あなたらしく働くことができるようになります。
一人で悩まず、まずは相談してみましょう。必ず道は開けます。

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