「もしかして自分は発達障害かもしれない」と思ったとき、診断を受けるべきかどうか悩む方は多いのではないでしょうか。「診断を受けたら何か変わるのか」「レッテルを貼られるだけではないか」「受けないほうが楽なのでは」さまざまな不安や疑問が頭をよぎると思います。この記事では、大人が発達障害の診断を受けることのメリットとデメリット、受けるべきかどうかの判断基準、そして診断を受ける際の流れについて、詳しく解説していきます。
大人の発達障害とは
発達障害は、脳の発達の特性によって、コミュニケーション、社会性、注意力、行動などに困難が生じる状態です。子どもの頃から症状はありますが、軽度の場合や周囲のサポートがあった場合、大人になるまで気づかれないことがあります。
主な発達障害
- ASD(自閉スペクトラム症) – コミュニケーションや社会性の困難、こだわりの強さ、感覚過敏など
- ADHD(注意欠如・多動症) – 不注意、衝動性、多動性(大人では落ち着きのなさとして現れる)
- LD(学習障害) – 読み書き、計算など特定の学習に困難
大人になってから気づく人が増えているのは、社会人になって求められる能力(マルチタスク、スケジュール管理、対人関係など)が複雑になり、困難が表面化するためです。
こんな人は診断を検討してみては?
以下のような困りごとが続いている場合、発達障害の可能性があります。
仕事面での困りごと
- ケアレスミスが多く、何度も同じミスを繰り返す
- 期限を守れない、スケジュール管理が苦手
- 忘れ物、なくし物が多い
- 複数のタスクを同時に進められない
- 指示を聞いても、すぐに忘れてしまう
- 集中力が続かない、または過集中してしまう
- 整理整頓ができず、デスクが常に散らかっている
- 優先順位がつけられない
対人関係での困りごと
- 人の気持ちが読み取れない
- 空気が読めないと言われる
- 会話がかみ合わない
- 言葉を文字通りに受け取ってしまう
- 暗黙のルールが理解できない
- 人と目を合わせるのが苦手
- 一方的に話してしまう
- 冗談が通じない
日常生活での困りごと
- 時間の感覚が乏しく、遅刻が多い
- 部屋が片付けられない
- 衝動買いをしてしまう
- 感情のコントロールが難しい
- 音や光、匂いに敏感すぎる
- 予定の変更に対応できず、パニックになる
- 興味のあることには没頭するが、興味のないことは全くできない
これらの困りごとが幼少期から続いており、複数の場面(仕事と家庭など)で見られ、日常生活に支障をきたしている場合、発達障害の可能性があります。
診断を受けるメリット
診断を受けることには、いくつかのメリットがあります。
1. 自分を理解できる
「なぜ自分はこんなに苦労するのか」「なぜ他の人と違うのか」という長年の疑問に答えが出ます。
「自分がダメな人間だから」ではなく、「脳の働き方が違うから」だと理解することで、自分を責めることが減ります。
2. 適切な治療やサポートを受けられる
診断がつくことで、以下のような治療や支援を受けられます。
薬物療法
ADHD治療薬(コンサータ、ストラテラなど)によって、注意力や衝動性が改善されることがあります。
心理療法
認知行動療法、社会スキルトレーニングなどによって、対処法を学べます。
カウンセリング
専門家に相談しながら、自分に合った生活の工夫を見つけられます。
3. 職場での配慮を受けられる
診断があれば、職場に合理的配慮を求めることができます。
- 業務内容の調整
- 静かな環境での作業
- 口頭ではなく文書での指示
- 定期的な面談でのサポート
障害者雇用枠での就職も選択肢の一つになります。
4. 障害者手帳や福祉サービスを利用できる
診断の程度によっては、精神障害者保健福祉手帳を取得できます。
手帳のメリット
- 医療費の助成
- 交通機関の割引
- 税金の控除
- 公共施設の利用料減免
- 障害福祉サービスの利用
5. 生活の工夫がしやすくなる
診断名がつくことで、同じ特性を持つ人たちの対処法を参考にできます。
本やインターネット、当事者会などで情報を得やすくなります。
6. 家族や周囲の理解が得られやすい
診断があることで、家族や友人、職場の人に説明しやすくなります。
「怠けている」「わがまま」ではなく、「発達障害という特性がある」と理解してもらえる可能性が高まります。
7. 自己肯定感が回復する
「自分はダメな人間だ」という思い込みから解放され、「これが自分なんだ」と受け入れられるようになります。
長年の苦労が、自分のせいではなかったと分かることで、心が軽くなる人も多いです。
8. 将来の計画が立てやすい
自分の特性を理解することで、向いている仕事や生活スタイルが見えてきます。
無理をせず、自分に合った人生を選択できるようになります。
診断を受けるデメリット・懸念点
一方で、診断を受けることへの懸念もあります。
1. 「障害者」というレッテルへの抵抗感
診断を受けることで、「自分は障害者なんだ」と認めることになります。
これに心理的な抵抗を感じる人は少なくありません。自己イメージが変わることへの不安があります。
2. 周囲の偏見や差別
診断を周囲に伝えた場合、偏見や差別を受ける可能性がゼロではありません。
- 職場で不当な扱いを受ける
- 結婚や恋愛で理解されない
- 友人関係が変わる
ただし、これらは相手の問題であり、診断そのもののデメリットではありません。
3. 診断がつかない可能性
検査を受けても、診断基準を満たさず、「発達障害ではない」と言われることがあります。
これは「困りごとが存在しない」という意味ではなく、「診断基準には当てはまらない」というだけです。グレーゾーンと呼ばれる状態です。
4. 時間とお金がかかる
診断のための検査や診察には、時間とお金がかかります。
- 初診の予約が数週間〜数か月待ちのこともある
- 複数回の通院が必要
- 検査費用や診察費用(保険適用でも数千円〜数万円)
5. 診断に依存しすぎる
診断がついたことで、「発達障害だから仕方ない」と思考停止してしまう人もいます。
診断はスタートであり、そこから自分に合った対処法を見つけていくことが大切です。
6. 家族や周囲との関係が変わる
診断を家族に伝えた場合、理解してもらえないことや、過保護になられることもあります。
また、「親の育て方が悪かったのか」と家族が自分を責めることもあります。
7. 診断書の影響
生命保険の加入、ローンの審査、特定の職種への就職などで、診断が影響する可能性があります。
ただし、現在は精神疾患への理解が進んでおり、以前ほど不利にならないケースも増えています。
診断を受けるべきかの判断基準
結局のところ、診断を受けるべきかどうかは、以下の点で判断できます。
受けた方がいい場合
1. 日常生活に明らかな支障がある
仕事がうまくいかない、人間関係が築けない、生活が回らないなど、困りごとが深刻な場合。
2. 「なぜ自分は…」と悩み続けている
自分を責め続けていて、答えが欲しいと感じている場合。
3. 適切な支援を受けたい
薬物療法、カウンセリング、職場での配慮など、具体的なサポートを受けたい場合。
4. 二次障害が出ている
うつ病、不安障害、依存症など、発達障害から派生する問題が起きている場合。
5. 障害者手帳や福祉サービスを利用したい
経済的な支援や福祉サービスが必要な場合。
6. 自分を理解して、前に進みたい
診断を受けることで、新しい人生をスタートさせたいと考えている場合。
受けなくてもいい場合
1. 困りごとがほとんどない
日常生活や仕事で特に問題を感じていない場合。
2. 自分なりの対処法が見つかっている
診断がなくても、工夫して生活できている場合。
3. 診断への強い抵抗感がある
診断を受けることで、かえってストレスになる場合。
4. 診断を受ける余裕がない
時間的、経済的に余裕がない場合。
グレーゾーンでも診断を受ける価値はある
「自分は軽度だから」「グレーゾーンだから」と思っている人でも、診断を受ける価値はあります。
診断がつかなくても、専門家に相談することで、対処法のアドバイスを受けられます。
診断を受ける流れ
実際に診断を受ける場合の流れを知っておきましょう。
1. 医療機関を選ぶ
受診先
- 精神科
- 心療内科
- 発達障害専門のクリニック
「大人の発達障害 診断」で検索するか、自治体の発達障害者支援センターに相談して、医療機関を紹介してもらえます。
2. 予約する
初診の予約を取ります。人気のあるクリニックは、数週間〜数か月待ちのこともあります。
3. 初診
医師が詳しく問診します。
- 現在の困りごと
- 子どもの頃の様子
- 学校や職場での状況
- 家族歴
子どもの頃の通知表やエピソードがあると、診断の参考になります。
4. 心理検査
必要に応じて、心理検査を受けます。
主な検査
- WAIS-IV(知能検査) – 知的能力のバランスを見る
- CAARS(ADHD評価尺度) – ADHDの症状を評価
- AQ(自閉症スペクトラム指数) – 自閉症特性を評価
検査は2〜3時間かかることがあります。
5. 診断
検査結果と問診をもとに、医師が総合的に診断します。
診断がつく場合もあれば、つかない場合もあります。
6. 治療・支援の開始
診断後、必要に応じて治療や支援が始まります。
- 薬物療法
- カウンセリング
- 生活指導
- 障害者手帳の申請サポート
費用の目安
初診料 3,000〜5,000円程度(保険適用3割負担) 心理検査 5,000〜10,000円程度(保険適用3割負担) 再診料 1,000〜3,000円程度
クリニックによって異なるため、事前に確認しましょう。
診断を受けないという選択肢
診断を受けることだけが正解ではありません。
診断なしでもできること
1. 自分の特性を理解する
発達障害の特性について学び、自分に当てはまる部分を理解することはできます。
2. 生活の工夫をする
診断がなくても、忘れ物防止のチェックリスト、スケジュール管理アプリ、整理整頓の工夫など、さまざまな対処法を試せます。
3. カウンセリングを受ける
診断がなくても、カウンセラーに相談することは可能です。
4. 自助グループに参加する
当事者会や支援グループには、診断がなくても参加できるものもあります。
「いつか診断を受ける」でもいい
今すぐ診断を受けなくても、「将来的に受けてもいいかな」と考えておくだけでも、選択肢が広がります。
状況が変わったり、困りごとが増したりしたら、その時に考えればいいのです。
よくある質問(FAQ)
Q 診断を受けたら、周囲に知られる?
A 医師には守秘義務があるため、あなたの同意なしに情報が漏れることはありません。会社や家族に伝えるかどうかは、あなた自身が決められます。
Q 診断を受けたら、一生薬を飲み続けなければならない?
A いいえ、必ずしも薬が必要なわけではありません。症状や希望に応じて、薬を使わない治療法もあります。薬を飲む場合も、必要がなくなれば減薬・中止できます。
Q 診断がつかなかったら、困りごとは解決しない?
A 診断がつかなくても、困りごとへの対処法は見つかります。グレーゾーンでも、カウンセリングや生活の工夫は有効です。
Q 診断を受けたら、仕事を辞めなければならない?
A いいえ、診断を受けたからといって、仕事を辞める必要はありません。むしろ、適切なサポートを受けることで、仕事を続けやすくなることが多いです。
Q 家族に反対されたら?
A 成人であれば、診断を受けるかどうかはあなた自身が決めることです。家族の理解を得られるのが理想ですが、最終的にはあなたの判断が優先されます。
Q 診断を受けたら、保険に入れなくなる?
A 以前ほど厳しくはなくなっていますが、加入できる保険が制限される可能性はあります。心配な場合は、保険に加入してから診断を受けるという選択肢もあります。
Q 子どもの頃の資料がない場合は?
A 通知表などがなくても、本人の記憶や家族からの聞き取りで診断できることがあります。資料がないことを理由に諦める必要はありません。
迷ったときに考えること
診断を受けるかどうか迷ったときは、以下の質問を自分にしてみてください。
- 今、困っていることは何か?
- 診断を受けることで、その困りごとは減りそうか?
- 診断を受けないことで、何が心配か?
- 診断を受けることで、何が心配か?
- 5年後、10年後の自分はどうなっていたいか?
答えを紙に書き出してみると、自分の気持ちが整理されます。
また、信頼できる人(家族、友人、カウンセラーなど)に相談してみるのもいいでしょう。
まとめ
大人の発達障害の診断を受けるかどうかは、個人の状況や価値観によって異なります。
診断を受けるメリット
- 自分を理解できる
- 適切な治療やサポートを受けられる
- 職場での配慮を求められる
- 障害者手帳や福祉サービスを利用できる
- 自己肯定感が回復する
診断を受けるデメリット・懸念点
- レッテルへの抵抗感
- 周囲の偏見の可能性
- 診断がつかない可能性
- 時間とお金がかかる
判断基準
日常生活に支障があり、適切な支援を受けたい、自分を理解したいと思うなら、診断を受ける価値があります。
一方、困りごとがほとんどない、自分なりの対処法が見つかっている、診断への強い抵抗感があるなら、急いで受ける必要はありません。
診断は、自分をより深く理解し、より生きやすくなるための「ツール」です。診断そのものが目的ではなく、「どう生きるか」が大切です。
迷ったら、まずは専門家に相談だけしてみる、という選択肢もあります。相談したからといって、必ず診断を受けなければならないわけではありません。
あなたが納得できる選択をすることが、何より大切です。焦らず、じっくり考えてみてください。

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