「人の話を聞くのが好き」「誰かの役に立ちたい」そんな思いから、心理カウンセラーという職業に興味を持つ方は多いのではないでしょうか。しかし、実際にこの仕事に向いているのはどんな人なのか、自分に適性があるのか、不安に感じることもあると思います。この記事では、心理カウンセラーに向いている人の特徴、必要なスキル、そして逆に向いていない人の傾向についても、わかりやすく解説していきます。
心理カウンセラーとは?
心理カウンセラーは、心の悩みや問題を抱える人に対して、専門的な知識と技法を用いて支援する専門職です。
カウンセリングを通じて、クライエント(相談者)が自分自身の問題を理解し、解決の糸口を見つけられるようサポートします。アドバイスを与えるだけでなく、クライエントが自ら答えを見出せるよう導くことが重要な役割です。
心理カウンセラーには、臨床心理士、公認心理師などの国家資格や、民間資格を持つ人が含まれます。活躍の場は、病院、学校、企業、福祉施設、独立開業など多岐にわたります。
心理カウンセラーに向いている人の特徴
心理カウンセラーに向いている人には、いくつかの共通した特徴があります。
1. 人の話を丁寧に聴ける人
心理カウンセラーの最も重要なスキルは「傾聴」です。相手の話を、批判や評価をせず、じっくりと聴くことができる人が向いています。
具体的には
- 相手の話を途中で遮らない
- 自分の意見を押し付けない
- 言葉だけでなく、表情や雰囲気も感じ取れる
- 沈黙にも耐えられる
- 相手のペースに合わせられる
ただ聞くだけでなく、相手が「理解してもらえた」と感じられるような聴き方ができることが大切です。
2. 共感力がある人
クライエントの気持ちに寄り添い、共感できることは、信頼関係を築く上で不可欠です。
ただし、共感と同情は違います。共感は相手の気持ちを理解すること、同情は相手に感情移入しすぎることです。カウンセラーには、適度な距離感を保ちながら共感する力が求められます。
例えば
- 「辛かったですね」と相手の感情を受け止める
- 相手の立場に立って考えられる
- 自分の価値観を押し付けず、相手の世界観を尊重する
3. 冷静で客観的に物事を見られる人
クライエントの話に感情移入しすぎず、冷静に状況を分析できる力も必要です。
感情と理性のバランスを取り、クライエントの問題を客観的に捉え、適切な方向に導くことが求められます。
具体的には
- 感情的にならず、落ち着いて対応できる
- 複雑な状況を整理して理解できる
- 多角的な視点から物事を見られる
4. 忍耐強い人
カウンセリングは一朝一夕に結果が出るものではありません。クライエントの変化には時間がかかり、同じ話を何度も聞くこともあります。
また、クライエントが心を開くまでに時間がかかったり、治療がうまく進まなかったりすることもあります。そんなときでも、諦めずに粘り強く向き合える忍耐力が必要です。
具体的には
- 短期的な成果を求めすぎない
- クライエントのペースを尊重できる
- 繰り返しの作業にも根気よく取り組める
- すぐに結果が出なくても焦らない
5. 自己理解が深い人
カウンセラーには、自分自身をよく知っていることが求められます。自分の感情、価値観、弱点、癖などを理解していないと、それがカウンセリングに悪影響を与えることがあります。
具体的には
- 自分の感情をコントロールできる
- 自分の偏見や先入観に気づいている
- 自分の限界を知っている
- 自己分析ができる
カウンセラー自身が定期的にスーパービジョン(指導・助言を受けること)やカウンセリングを受けることも大切です。
6. 学び続ける姿勢がある人
心理学やカウンセリングの分野は常に進歩しています。新しい理論や技法を学び続ける好奇心と向上心が必要です。
また、資格取得後も、研修や勉強会に参加して、スキルを磨き続けることが求められます。
具体的には
- 本や論文を読むのが好き
- 新しい知識を吸収することに喜びを感じる
- 自分のスキル向上に積極的
- 失敗から学べる
7. 倫理観がしっかりしている人
カウンセラーは、クライエントの秘密を守る守秘義務や、倫理規定を厳守する必要があります。
また、クライエントとの適切な距離感を保ち、立場を利用して個人的な利益を得るようなことがあってはなりません。
具体的には
- 誠実で正直
- 秘密を守れる
- 公平で中立的
- 責任感が強い
8. ストレス耐性がある人
カウンセラーは、毎日のように人の悩みや苦しみに接します。時には自殺念慮のあるクライエントや、攻撃的なクライエントと向き合うこともあります。
こうした状況に直面しても、自分自身のメンタルヘルスを保てるストレス耐性が必要です。
具体的には
- ストレス発散方法を持っている
- 適度に仕事と距離を置ける
- 自分のケアを怠らない
- 感情の切り替えができる
9. 柔軟性がある人
クライエント一人ひとりが異なる背景や問題を抱えており、マニュアル通りにはいきません。状況に応じて、柔軟にアプローチを変えられる力が求められます。
具体的には
- 固定観念にとらわれない
- 臨機応変に対応できる
- 多様な価値観を受け入れられる
- 予想外の展開にも対応できる
10. 人間に対する深い関心がある人
単に「人の役に立ちたい」というだけでなく、人間という存在そのものに深い興味や好奇心がある人が向いています。
具体的には
- 人の心の動きに興味がある
- 人間の多様性を面白いと感じる
- 「なぜこの人はこう考えるのか」と考えるのが好き
- 人の成長を見ることに喜びを感じる
心理カウンセラーに必要なスキル
向いている性格や特性に加えて、カウンセラーとして身につけるべきスキルがあります。
1. 傾聴スキル
相手の話を、批判せず、評価せず、アドバイスせず、ただ聴くスキルです。積極的傾聴(アクティブリスニング)とも呼ばれます。
2. 共感的理解
相手の気持ちを理解し、それを言葉で伝えるスキルです。「あなたは今、こんな気持ちなんですね」と返すことで、クライエントは理解されたと感じます。
3. 質問力
適切な質問によって、クライエントの自己理解を深めたり、新しい視点を提供したりするスキルです。
オープンクエスチョン(開かれた質問)とクローズドクエスチョン(はい/いいえで答えられる質問)を使い分けます。
4. 観察力
クライエントの表情、声のトーン、姿勢、話し方などから、言葉にならない感情を読み取るスキルです。
5. 要約・明確化スキル
クライエントの話をまとめたり、混乱している考えを整理したりするスキルです。
6. 心理アセスメント能力
クライエントの状態を適切に評価し、必要な支援を判断する能力です。心理検査の実施や解釈も含まれます。
7. 危機介入スキル
自殺念慮や暴力のリスクがあるクライエントに対して、適切に対応するスキルです。
8. コミュニケーション能力
クライエントだけでなく、医師、他の専門家、家族などと連携するためのコミュニケーション能力も必要です。
心理カウンセラーに向いていない人
逆に、心理カウンセラーに向いていない傾向もあります。
1. 自分の意見を押し付けたい人
「こうすべきだ」「私ならこうする」と、自分の価値観や意見を押し付けたくなる人は向いていません。
カウンセリングは、クライエントが自分で答えを見つけるプロセスです。
2. 承認欲求が強すぎる人
「感謝されたい」「頼られたい」という気持ちが強すぎると、クライエントを依存させてしまったり、自分が疲弊したりします。
3. 感情移入しすぎる人
クライエントの悩みを自分のことのように感じてしまい、一緒に落ち込んだり、夜も眠れなくなったりする人は、バーンアウト(燃え尽き症候群)のリスクが高いです。
4. 短気な人
クライエントの変化には時間がかかります。すぐに結果を求めたり、クライエントが変わらないことにイライラしたりする人は向いていません。
5. 自己開示しすぎる人
カウンセリングの主役はクライエントです。「私もこんな経験があって…」と自分の話ばかりする人は向いていません。
6. 白黒思考が強い人
「正しい/間違い」「良い/悪い」と二極化して考える傾向が強い人は、クライエントの多様な価値観を受け入れることが難しいでしょう。
7. ストレス耐性が低すぎる人
日常的に人の悩みを聞く仕事なので、ストレス耐性が極端に低いと、自分自身が病んでしまいます。
8. 守秘義務を守れない人
「ちょっとだけなら」と秘密を漏らしてしまう人は、絶対にカウンセラーになるべきではありません。
「自分もメンタルの問題を抱えている」場合は?
「自分自身が過去にうつ病だった」「今も不安を抱えている」という人が、カウンセラーを目指すことはあるでしょうか?
経験は強みになることもある
自分自身が心の問題を経験したことは、クライエントの気持ちを理解する上で強みになることがあります。実際、自身の経験がきっかけでカウンセラーを目指す人は少なくありません。
ただし、条件がある
以下の条件を満たしていることが重要です。
自分の問題が解決済み、またはコントロールできている
現在進行形で深刻な問題を抱えている状態では、カウンセラーとして他者を支援することは困難です。
自分の経験を客観視できる
自分の経験に囚われすぎず、「この人とは違う」と客観的に見られることが必要です。
自分の感情をコントロールできる
クライエントの話が自分のトラウマを刺激しても、冷静に対応できることが求められます。
定期的にスーパービジョンを受ける
自分自身のメンタルヘルスを保つために、定期的に専門家の助言を受けることが大切です。
心理カウンセラーになるには
心理カウンセラーに向いていると感じたら、次は具体的なステップを知っておきましょう。
1. 必要な資格
国家資格
- 公認心理師 – 2017年に創設された心理職唯一の国家資格
- 臨床心理士 – 日本臨床心理士資格認定協会の認定資格(国家資格ではないが高い信頼性)
民間資格
- 認定心理士
- 産業カウンセラー
- キャリアコンサルタント
- その他多数の民間資格
国家資格や臨床心理士を目指す場合、大学や大学院での専門教育が必要です。
2. 学習ルート
公認心理師になるルート
- 指定の大学で心理学を学ぶ(4年)
- 指定の大学院で学ぶ(2年)または指定の施設で実務経験(2年)
- 国家試験に合格
臨床心理士になるルート
- 大学で心理学を学ぶ(4年)
- 指定の大学院で学ぶ(2年)
- 資格試験に合格
民間資格の場合 資格によって要件が異なりますが、通信講座や短期講座で取得できるものもあります。
3. 実務経験を積む
資格取得後も、実際の現場で経験を積み、スキルを磨き続けることが重要です。
適性を確かめる方法
「自分に向いているか分からない」という場合、以下の方法で確かめることができます。
1. ボランティアで傾聴活動をしてみる
傾聴ボランティアや電話相談のボランティアに参加して、実際に人の話を聴く経験をしてみましょう。
2. カウンセリングを受けてみる
自分がクライエントとしてカウンセリングを受けることで、カウンセラーの仕事を内側から理解できます。
3. 本を読んで学ぶ
カウンセリングに関する本を読んで、この仕事の内容や求められるものを理解しましょう。
4. オープンキャンパスや説明会に参加する
大学や養成機関のオープンキャンパスや説明会に参加して、話を聞いてみましょう。
5. 現役のカウンセラーに話を聞く
可能であれば、現役のカウンセラーに話を聞き、仕事の実際を知りましょう。
よくある質問(FAQ)
Q 心理学を学んでいないとカウンセラーになれない?
A 公認心理師や臨床心理士を目指す場合は、大学・大学院での専門教育が必須です。ただし、民間資格の中には、通信講座などで取得できるものもあります。ただし、専門性の高いカウンセリングを行うには、しっかりとした教育が不可欠です。
Q 年齢制限はある?
A 年齢制限はありません。30代、40代から学び直してカウンセラーになる人もいます。むしろ、人生経験が豊かな方が、クライエントの気持ちを理解しやすいこともあります。
Q 内向的な性格でもなれる?
A はい、なれます。むしろ、内向的で静かに人の話を聴ける人の方が向いていることもあります。「人前で話すのが得意」である必要はありません。
Q 稼げる仕事?
A 働く場所や雇用形態によって大きく異なります。病院や企業の常勤職員であれば安定した収入が得られますが、独立開業の場合は不安定なこともあります。「稼ぐこと」よりも「人を支援したい」という動機が重要です。
Q カウンセラー自身がカウンセリングを受けるべき?
A はい、多くのカウンセラーが、自分自身もカウンセリングやスーパービジョンを受けています。自己理解を深め、バーンアウトを防ぐためにも重要です。
まとめ
心理カウンセラーに向いている人は、以下のような特徴を持っています。
- 人の話を丁寧に聴ける
- 共感力がある
- 冷静で客観的
- 忍耐強い
- 自己理解が深い
- 学び続ける姿勢がある
- 倫理観がしっかりしている
- ストレス耐性がある
- 柔軟性がある
- 人間に対する深い関心がある
一方で、自分の意見を押し付けたい、承認欲求が強すぎる、感情移入しすぎるといった傾向がある人は、カウンセラーとして働く上で困難を感じる可能性があります。
ただし、「完璧な人」である必要はありません。カウンセラーも人間であり、弱点や課題を抱えています。大切なのは、自分の特性を理解し、学び続け、成長し続ける姿勢です。
心理カウンセラーという仕事に興味があるなら、まずはボランティアや学習を通じて、自分の適性を確かめてみましょう。人の心に寄り添い、その人が自分らしく生きられるようサポートする。そんなやりがいのある仕事です。

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