障がい者の転職と合理的配慮、甘えと言われないラインを考える

絶対に読むべき必読記事

職場で合理的配慮を求めるとき、「これは配慮として認められるのか」「周囲から甘えだと思われないだろうか」と不安になる人は少なくありません。

特に、過去の職場で配慮を求めた際に否定的な反応をされた経験があると、新しい職場でも同じことが起こるのではないかと考え、必要な配慮を伝えられなくなることがあります。

しかし、合理的配慮は単なる好意や特別扱いではありません。障害のある人が、障害のない人と同じように働く機会を確保し、能力を発揮するために必要な調整です。

この記事では、合理的配慮の法的な位置づけ、「甘え」との違い、転職時に伝えておきたい配慮事項、企業との話し合いを進めるポイントまで、わかりやすく整理します。

なお、合理的配慮の内容は障害特性や職場環境によって異なります。個別のケースでは、主治医、ジョブコーチ、就労移行支援事業所、ハローワークなどの支援機関に相談しながら進めると安心です。

1.合理的配慮は「甘え」ではなく、働くための環境調整

まず知っておきたいのは、合理的配慮と「甘え」は同じものではないということです。

雇用分野では、障害者雇用促進法により、事業主に合理的配慮の提供が求められています。募集・採用時には、障害の特性によって生じる支障を改善するための必要な措置を講じることが求められ、採用後も、能力を発揮するうえで支障となる事情を改善するための措置が対象になります。

ただし、企業に過重な負担を及ぼす場合は例外です。

ここで大切なのは、「配慮を求めたら何でも認められる」という意味ではないことです。障害による困難と業務との関係を整理し、本人と企業が話し合いながら、実現可能な方法を探していくことが基本になります。

つまり、合理的配慮のポイントは「特別扱いを受けること」ではなく、「障害によって生じる働きにくさを減らし、仕事を続けやすくすること」です。

2.「甘え」と合理的配慮を分ける3つの視点

では、どこまでが合理的配慮なのでしょうか。

一つ目は、障害特性との関連性です。

例えば、精神障害による疲労や集中のしづらさがあるため休憩の取り方を工夫する、聴覚障害があるため指示を文字でも伝える、身体障害があるため移動しやすい環境を整える、といった対応は、障害による支障を軽減するための調整です。

二つ目は、業務との関連性です。

「何となく楽にしてほしい」という希望ではなく、「この配慮があると、この業務を安定して遂行できる」という形で説明できると、企業側にも伝わりやすくなります。

三つ目は、実現可能性です。

企業には、事業への影響、実現の難しさ、費用や負担、企業規模、財務状況、公的支援の有無などを踏まえて「過重な負担」に当たるかを個別に判断することが求められています。

したがって、「配慮をお願いすること自体が甘え」なのではありません。重要なのは、障害による困難を改善するために必要な調整なのか、そしてどのような方法なら実現できるのかを話し合うことです。

3.転職時に認められやすい合理的配慮の例

合理的配慮は、障害の種類だけで一律に決まるものではありません。本人の状態と仕事内容を踏まえて個別に考えます。

例えば、次のような配慮があります。

・通院日の休暇や勤務時間の調整
・時差出勤や短時間勤務
・テレワークなど働き方の工夫
・業務量や業務手順の調整
・優先順位を明確にした指示
・口頭だけでなくメールやチャットで指示する
・業務指示を文書化する
・定期的な面談や相談時間を設ける
・静かな席や休憩場所を確保する
・移動や設備利用に関する環境調整
・採用面接や試験時の方法を工夫する

これらはあくまで例です。合理的配慮は個別性が高く、具体的な措置は障害の状態や職場の状況によって異なります。

そのため、「この配慮は他社で認められたから必ず認められる」と考えるのではなく、自分の仕事内容に合わせて必要性を説明することが重要です。

4.配慮を求めるときは「できないこと」だけを伝えない

転職活動で合理的配慮を伝えるとき、苦手なことだけを並べると、採用担当者が「仕事を任せられるだろうか」と不安を感じることがあります。

そこでおすすめなのが、「困っていること」「必要な配慮」「できること」の3点セットで伝える方法です。

例えば、

「長時間の連続作業では集中が落ちやすいため、1時間に一度短い休憩を取れると安定して作業できます。通常のPC入力やデータ整理は問題なく行えます」

という伝え方です。

これなら、配慮の必要性だけでなく、配慮があればどのように仕事へ貢献できるのかも伝えられます。

合理的配慮は、仕事を免除してもらうためだけの仕組みではありません。本人が能力を発揮できる条件を整えることが目的です。

5.「配慮事項リスト」を作って転職前に整理する

転職前には、自分に必要な配慮を一度書き出しておくと便利です。

おすすめは、次の5項目です。

①困っている場面
②障害特性との関係
③必要な配慮
④配慮があればできる仕事
⑤代替案

例えば「電話対応が難しい」だけではなく、「聴覚上の理由で電話内容を正確に聞き取ることが難しいため、メールやチャット中心の連絡であれば安定して対応できる」と整理します。

さらに、「電話対応が難しい場合は、一次受付を別の方法にして、必要な内容をチャットで受け取る」といった代替案まで用意すると、話し合いが進みやすくなります。

なお、合理的配慮の対象は、障害者雇用率制度の対象範囲と完全に同じではありません。厚生労働省のQ&Aでは、合理的配慮の対象となる障害者を、障害者手帳の有無や週の所定労働時間だけで限定していないと整理しています。自分に手帳がないから配慮を求められない、と決めつけず、仕事上どのような支障があるのかを整理して相談することが大切です。

主治医の診断書や意見書、支援機関からの情報などを活用する方法もあります。ただし、医学的な情報をすべて企業に伝える必要があるとは限りません。仕事に関係する情報を、必要な範囲で整理して伝えることが大切です。

6.企業から「難しい」と言われたときの考え方

合理的配慮を求めても、企業から「その方法は難しい」と言われることがあります。

このとき、すぐに「自分はわがままなのだ」と考える必要はありません。

企業側が過重な負担と判断した場合でも、合理的配慮について話し合い、可能な範囲で別の方法を検討することが重要です。

例えば、完全なテレワークが難しい場合に時差出勤を検討する、専用設備の設置が難しい場合に既存設備を工夫するなど、同じ目的を別の方法で実現できないか考えます。

希望した配慮が難しい場合でも、本人との話し合いを踏まえ、過重な負担にならない範囲で別の合理的配慮を検討する考え方が示されています。

大切なのは、「認めるか、認めないか」の二択だけにしないことです。

7.「甘え」と言われたときは一人で抱え込まない

もし合理的配慮を求めたことで、「甘えではないか」「他の社員はそんなことを言わない」といった言葉を受けた場合は、一人で抱え込まないようにしましょう。

まずは、人事担当者や社内の相談窓口など、別の担当者に相談する方法があります。

また、就労支援機関やジョブコーチなど第三者に入ってもらうことで、本人と企業だけでは整理しにくい問題を話し合いやすくなることがあります。

採用後の職場だけでなく、転職活動の段階から支援機関を活用することも有効です。

もし話し合いが進まず、必要な配慮が継続的に得られない場合には、その職場に無理に適応し続けるのではなく、転職を含めて環境を見直すことも選択肢になります。

「配慮を求める自分が悪い」と考える必要はありません。職場との相性を見極めることも、長く働くためには大切な判断です。

まとめ

障がい者の転職で合理的配慮を求めることは、甘えでもわがままでもありません。

雇用分野では、障害者雇用促進法に基づき、事業主に合理的配慮の提供が求められています。一方で、企業に過重な負担を及ぼす場合は対象外となるため、本人と企業が話し合いながら、実現可能な方法を探すことが基本です。

配慮を求めるときは、「困っていること」だけを伝えるのではなく、「なぜ困るのか」「どのような配慮が必要なのか」「配慮があれば何ができるのか」まで整理しておくと、建設的な話し合いにつながります。

特に転職前には、自分に必要な配慮をリスト化し、優先順位をつけておくことがおすすめです。

合理的配慮の目的は、仕事を免除してもらうことではありません。障害によって生じる働きにくさを減らし、自分の能力を発揮しながら長く働ける環境をつくることです。

過去に配慮を否定された経験があっても、それだけで「自分は配慮を求めてはいけない」と考える必要はありません。

主治医、ジョブコーチ、就労移行支援事業所、ハローワークなどの支援機関も活用しながら、自分に合った職場と働き方を探していきましょう。

合理的配慮は、自分らしく働き続けるための大切な仕組みです。必要な配慮を整理し、できることと一緒に伝えることで、企業とのより良いマッチングにつなげていきましょう。

いろとりどり編集部

この記事の監修・運営

就労継続支援B型 いろとりどり編集部

当メディアは、障がいを持つライターたちが自ら発信する、障がい者のための転職・就労支援情報メディアです。現役の就労継続支援B型事業所「いろとりどり」が福祉の現場視点から、信頼できる正確な就労ノウハウやリアルな体験談をお届けしています。

📍 住所:〒230-0001 神奈川県横浜市鶴見区矢向3丁目15−11 五月建設ビル 3F

関連記事