障害者雇用で2030年に消える可能性のある仕事と新しい働き方

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AI技術の急速な発展により、多くの仕事が自動化される時代が到来しつつあります。

オックスフォード大学と野村総合研究所による2015年の試算では、日本の労働人口の49%が人工知能やロボットで代替可能になると発表され、マッキンゼーの調査では2030年までに既存業務のうち27%が自動化される可能性があると指摘されています。

こうした変化の中で、障害者雇用の現場ではどのような職種が消えていく可能性があるのか、これからどんな仕事が新しく生まれてくるのかは、障害がある方の将来設計に直結する重要な問題です。

ここでは、2030年に向けて障害者雇用で消える可能性のある仕事や、新たに生まれる職域、当事者が今から準備しておきたいことについて詳しく解説していきます。

障害者雇用の現状と職種の偏り

まず、現在の障害者雇用がどのような職種に集中しているのかを整理しておきましょう。

これまで障害者雇用で多く見られた職種には、データ入力、書類のスキャンや整理、郵便物の仕分け、清掃、軽作業、農作業、書類の発送業務などがあります。 これらは比較的単純で繰り返しの多い業務であり、障害特性に合わせて切り出しやすいという理由から、障害者雇用の中心的な仕事となってきました。

特例子会社では、印刷物の加工、社内メール便の配達、清掃、洗濯業務、農作業など、定型的な業務が中心となっているケースが多く見られます。 精神障害や発達障害のある方には、データ入力やデータ集計、書類のチェックなどが任されることが多い傾向です。

身体障害がある方には、事務職、受付業務、コールセンター業務など、座って行える仕事が多く割り当てられてきました。 知的障害がある方には、清掃、軽作業、製造ラインの単純作業などが中心となっていることが多いものです。

これらの職種は、長年にわたって障害者雇用の受け皿として機能してきましたが、AI技術や自動化の進展により、その多くが大きく変化する可能性があります。

2030年までに消える可能性が高い仕事

AI技術や自動化の進展により、2030年までに障害者雇用の現場で消える、または大きく縮小する可能性のある仕事を見ていきましょう。

データ入力業務は、最も影響を受けやすい職種の一つです。 OCR技術の精度向上、自動入力ツールの普及、AIによる文字認識の高度化により、人の手で行うデータ入力の必要性は大きく減少していくと予想されます。 特に定型的な書類からの転記作業は、ほぼ自動化される見通しです。

書類のスキャンや電子化業務も、影響を受ける職種です。 ドキュメントの自動分類、自動仕分けシステムの導入により、人手による作業は減少していきます。 クラウドサービスの普及で、紙の書類自体が減っていく流れも、この職種への影響を強めています。

電話による問い合わせ対応業務も変化の波にさらされています。 AIチャットボットや音声認識AIの精度向上により、定型的な問い合わせはAIで対応されるケースが増えています。 コールセンター業務に従事する障害者の働き方も、今後大きく変わる可能性があります。

製造業の単純作業も、ロボット技術の発展で代替が進んでいます。 組み立て、検品、梱包などの工程は、産業用ロボットや協働ロボットによる自動化が加速しています。 特例子会社などで行われている軽作業も、コスト面で自動化との競争を強いられる時代となっています。

郵便物の仕分けやメール便配達業務も、影響を受ける分野です。 ペーパーレス化の進展、自動仕分け機の普及、社内コミュニケーションの電子化により、人手による仕分けや配達の需要は減少していきます。

書類のチェックや確認業務も、AIによる代替が進んでいます。 契約書のレビュー、データの整合性チェック、誤字脱字の検出などは、AI技術が得意とする分野です。

これらの職種が完全に消えるわけではありませんが、規模が縮小したり、業務内容が大きく変わったりすることは避けられない流れとなっています。

なぜ障害者雇用の職種が影響を受けやすいのか

障害者雇用の職種がAIや自動化の影響を受けやすい背景には、いくつかの要因があります。

これまで障害者雇用で多く採用されてきた業務は、業務の切り出しによって生まれた定型的なタスクが中心です。 複雑な判断を必要としない、繰り返しの多い、明確なルールがある業務こそが、AIや自動化の最も得意とする領域です。

企業のコスト削減圧力も、自動化を推進する要因となっています。 人件費よりも自動化システムの導入コストの方が安くなれば、企業は自動化を選ぶ可能性が高まります。 特に大規模な業務量がある場合、自動化のメリットは大きくなります。

業務の標準化やマニュアル化が進んでいる業務ほど、AIによる学習や自動化が容易です。 皮肉なことに、障害者が働きやすいように整理された業務こそが、AIにとっても処理しやすい業務となっているのです。

新たに生まれる障害者雇用の可能性

一方で、AI時代の到来は障害者雇用にとって脅威だけでなく、新たな機会も生み出しています。

生成AI関連の業務は、今後大きく拡大することが見込まれています。 国内の生成AI市場は2024年に1016億円に達し、2028年には8028億円、2030年には1兆7774億円に拡大すると予測されています。 市場拡大に伴い、AIを扱える人材の需要は急速に高まっており、障害者雇用でもAI関連業務の職域開発が進められています。

AIアプリ開発エンジニアという新しい職種も生まれてきています。 ある特例子会社では、未経験の障害者をAIアプリ開発エンジニアとして育成する取り組みを始めており、池袋に専門の事業所を開設しています。 プログラミングやIT分野は、身体障害があってもパソコンでの作業が可能であり、テレワークとの相性も良いため、障害者雇用の新たな受け皿として期待されています。

AIのトレーニングデータ作成業務も、新たな職域として注目されています。 画像のラベリング、テキストのアノテーション、AIの回答品質チェックなど、AIを育てるための業務には人間の細やかな判断が必要です。 集中力が高い、几帳面な作業が得意といった特性を持つ障害者の方々が活躍できる分野となる可能性があります。

クリエイティブな業務も、AI時代に注目される分野です。 Webデザイン、グラフィックデザイン、動画編集、コンテンツ制作などは、AIで効率化される一方で、人間の創造性や感性が引き続き重要となります。 障害特性を活かした独自の視点や表現力が、価値ある才能として認められる時代となりつつあります。

ソフトウェアテストの分野も、障害者雇用との親和性が高い分野です。 細部への注意力、繰り返し作業への耐性、正確性などが求められる業務であり、自閉スペクトラム症などの特性を強みとして活かせる可能性があります。

サポート業務やコミュニケーション業務も、AI時代にこそ価値が高まる分野です。 AIには代替できない人間ならではの共感、励まし、寄り添いといった要素を含む業務は、引き続き人間が担う必要があります。 ピアサポート、当事者の視点を活かした相談業務など、障害者ならではの強みを発揮できる職種も広がってきています。

デジタルスキルが鍵となる時代

2030年に向けて、障害者雇用で活躍するためには、デジタルスキルの習得が鍵となってきます。

基本的なパソコンスキルは、もはや前提条件です。 ワード、エクセル、パワーポイントなどのオフィスソフトの基本操作は、ほとんどの職種で求められます。 タイピング速度、ファイル管理、メールでのコミュニケーションなど、基本スキルを確実に身につけておきましょう。

データ分析やデータ処理のスキルも、今後重要性が高まる分野です。 エクセルの応用機能、簡単なデータ分析、ピボットテーブルの活用などができれば、多くの業務で活躍の幅が広がります。

プログラミングスキルは、可能であれば習得しておきたい分野です。 Python、JavaScript、HTMLなどの基本的な言語は、独学やオンライン講座でも学べます。 プログラミングは在宅勤務との相性が良く、障害特性に応じた働き方を実現しやすい職種です。

AI活用スキルも、これからのビジネスで欠かせないものとなっていきます。 ChatGPTなどの生成AIツールの使い方、プロンプトの書き方、AIを業務に活用する方法などを学んでおくと、職場で重宝される人材となれます。

Webデザインやノーコードツールのスキルも、注目されている分野です。 プログラミングを使わずにWebサイトやアプリを作れるノーコードツールは、習得のハードルが低く、新しいキャリアの可能性を開いてくれます。

スキルアップのための学習方法

デジタルスキルを習得するための学習方法は、近年大きく充実してきています。

ハローワークの職業訓練は、無料または低額で受講できる本格的な訓練です。 パソコンスキル、Web制作、プログラミング、CADなど、さまざまな分野の訓練が用意されています。 障害者向けの職業訓練コースもあり、自分の特性に合った訓練を受けられます。

求職者支援制度を活用すれば、職業訓練を受けながら月10万円の給付金を受け取れます。 収入が途絶える心配なくスキルアップに集中できる、貴重な制度です。

就労移行支援事業所では、就職に向けたスキル習得とともに、ビジネスマナーや職場での過ごし方なども学べます。 最近では、AI関連スキルやプログラミングを学べる就労移行支援事業所も増えてきています。 最長2年間利用でき、原則無料または低額で利用できます。

オンライン学習プラットフォームも、自宅で学習できる便利な選択肢です。 Udemy、Coursera、Schoo、Progateなど、無料から有料まで幅広いコンテンツが揃っています。 自分のペースで学べるため、体調に合わせた学習が可能です。

YouTubeなどの無料動画も、入門レベルの学習には十分活用できます。 プログラミング、デザイン、AI活用など、さまざまなテーマの解説動画が無料で公開されています。

書籍やテキストでの独学も、依然として有効な方法です。 体系的に学びたい場合、書籍は良い教材となります。 図書館を活用すれば、お金をかけずに学習を続けられます。

障害特性を強みに変える発想

AI時代の障害者雇用では、障害特性を弱みではなく強みとして捉える発想が重要となります。

自閉スペクトラム症の方の集中力やパターン認識能力は、データ分析やソフトウェアテスト、品質管理などの分野で大きな強みとなります。 細部への注意力、繰り返し作業への耐性、ルールに従った正確な作業など、AI時代にも価値ある特性として認められる傾向にあります。

ADHDの方の発想の豊かさや興味の幅広さは、クリエイティブな分野で活かされる可能性があります。 複数のアイデアを同時に展開する力、新しい視点での発想、好奇心の強さなどは、企画やデザイン、コンテンツ制作などで強みとなります。

身体障害がある方の場合、テレワークとの組み合わせで活躍の場が広がります。 プログラミング、Webデザイン、ライティング、データ分析など、パソコンで完結する仕事は、通勤の困難を回避しながら能力を発揮できる分野です。

精神障害がある方の経験は、メンタルヘルス支援、ピアサポート、当事者の視点を活かした相談業務などで価値を発揮できます。 自分自身の経験を社会のために活かす働き方は、AI時代にますます重要性が増していくでしょう。

聴覚障害がある方には、視覚的な情報処理が得意な特性を活かせる職種があります。 グラフィックデザイン、Webデザイン、データビジュアライゼーション、動画編集など、視覚を中心とした仕事で活躍できます。

視覚障害がある方も、音声入力ツールやスクリーンリーダーの進化により、IT分野での活躍の場が広がっています。 プログラミング、ライティング、音声を使った業務など、活躍できる職種は確実に増えています。

企業側の取り組みと変化

企業側でも、AI時代の障害者雇用に向けたさまざまな取り組みが進められています。

業務の高度化に向けた取り組みが増えています。 これまでの単純作業中心の障害者雇用から、より付加価値の高い業務への移行を目指す企業が増えてきています。 業務の質の向上は、障害者雇用促進法の改正でも求められている重要なテーマです。

社内研修や能力開発の充実も進んでいます。 入社後の継続的な学習機会の提供、資格取得支援、新しいスキルの習得サポートなど、長期的なキャリア開発を視野に入れた取り組みが広がっています。

特例子会社でのAI関連業務の導入も始まっています。 AIを活用した新しい業務の創出、AIのトレーニングデータ作成、AIアプリ開発など、特例子会社が新たな職域を開拓する事例も増えています。

ジョブクラフティングという考え方も、注目されています。 障害者一人ひとりの強みや興味に合わせて、業務内容を柔軟にカスタマイズしていく取り組みです。 画一的な業務割り当てではなく、個別の特性を活かせる仕事の組み立てを目指す動きが広がっています。

合理的配慮の充実も、企業の重要なテーマです。 2024年4月から民間事業者にも合理的配慮の提供が法的義務化されたことを受け、障害特性に応じた働き方の選択肢が増えてきています。

公的支援を活用したキャリア形成

これからの障害者雇用で活躍していくためには、公的な支援を積極的に活用することも大切です。

ハローワークの専門援助部門では、障害がある方の就労に関する専門的な相談とサポートを受けられます。 求人情報の提供だけでなく、職業相談、応募書類の書き方指導、面接対策など、無料で幅広いサポートを利用できます。

地域障害者職業センターでは、より専門的な職業評価と訓練を受けられます。 ジョブコーチ支援、職業準備支援、就職後の定着支援など、長期的なキャリア形成を支援するプログラムが充実しています。

障害者職業能力開発校では、本格的な職業訓練を受けられます。 プログラミング、CAD、デザイン、事務など、さまざまな分野の訓練が用意されており、新しいキャリアを目指す方に最適です。

障害者雇用関係の助成金も活用できます。 スキルアップのための研修費用、職場での合理的配慮の費用などについて、助成金を申請することができます。 企業を通じての申請になりますが、自分の希望を伝えることで活用できる可能性があります。

今からできる準備

2030年に向けて、今からできる準備を整理しておきましょう。

自分の障害特性と強みを理解することから始めましょう。 何が得意で、何が苦手か、どんな環境で能力を発揮できるかを、客観的に把握しておくことが大切です。 ジョブコーチや障害者職業センターの専門家との相談も、自己理解を深めるのに役立ちます。

新しいスキルの習得を始めることが重要です。 小さなことからで構いません。 オンライン講座の受講、書籍での学習、無料動画の視聴など、少しずつでもデジタルスキルを身につけていきましょう。

ポートフォリオを作成しておくことも有効です。 自分のスキルや作品をまとめたポートフォリオは、就職や転職活動で大きな武器となります。 プログラミングの成果物、デザイン作品、ライティングのサンプルなど、自分の能力を示せる材料を蓄積していきましょう。

人脈やネットワークを広げることも大切です。 同じ立場の仲間とつながること、業界の人と交流することで、新しい情報や機会が得られます。 オンラインコミュニティ、SNS、当事者団体など、つながり方の選択肢は豊富にあります。

体調管理とメンタルヘルスケアも、忘れてはいけないポイントです。 長期的に活躍し続けるためには、心と体の健康が基盤となります。 主治医との連携、必要な治療の継続、適切な休息など、自分を大切にする習慣を維持していきましょう。

まとめ

2030年に向けて、データ入力、書類整理、定型的な事務作業など、障害者雇用で多かった職種は自動化やAIの影響で縮小していく可能性が高い状況です。

一方で、生成AI関連業務、AIアプリ開発、Webデザイン、ソフトウェアテスト、ピアサポートなど、新たな職域も生まれてきています。 障害特性を強みとして捉え、デジタルスキルを習得していくことが、これからの障害者雇用で活躍するための鍵となります。 ハローワーク、職業訓練、就労移行支援事業所、オンライン学習などを活用しながら、自分のペースで新しい時代に備えていきましょう。

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