障害者雇用のテレワーク廃止の動向と当事者への影響

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新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、多くの企業が導入したテレワーク。 障害がある方にとっても、通勤の負担がなく、自分のペースで働ける貴重な働き方として広がりました。 しかし近年、海外の大手IT企業を中心に出社回帰の流れが進み、日本企業でもテレワーク廃止を打ち出すケースが増えてきています。 障害者雇用枠で働く方や、これからテレワークで就職したいと考える障害がある方にとって、こうした動向は将来の働き方を左右する大きな問題です。 ここでは、テレワーク廃止の動きや障害者雇用への影響、当事者ができる対応について詳しく解説していきます。

テレワーク廃止の動きが広がっている背景

まず、なぜテレワーク廃止の動きが広がっているのか、その背景を整理しておきましょう。

コロナ禍において世界中に広く浸透したテレワークですが、コロナの落ち着いた2023年頃から状況が変わってきました。 海外大手テック企業を中心に、100%リモートワークだった働き方を見直す動きが始まっています。

メタの代表マーク・ザッカーバーグは、オフィスにおける対面でのパフォーマンスの向上を明言し、2023年9月よりハイブリッド勤務を導入しました。 グローバルコンサルティング大手のアクセンチュアは、2023年10月から週3日以上の出社義務を打ち出していましたが、2025年6月からは週5日フル出社へ方針を変更しています。

日本企業にも影響が及んでいます。 LINEヤフーは2024年12月にフルリモート勤務を廃止すると発表し、2025年4月からカンパニー部門の従業員に原則週1回の出社、開発部門やコーポレート部門などには原則月1回の出社を求めることになりました。

企業がテレワーク廃止に動く理由としては、対面でのコミュニケーションによる生産性向上、新人教育の効率化、企業文化の維持、目視での業務評価への回帰などが挙げられています。 日本企業に特有の要因として、目視で業務を評価したいという対面主義の根強さも指摘されています。

障害者雇用におけるテレワークの位置付け

障害者雇用におけるテレワークは、一般の従業員のテレワークとは異なる側面があります。

テレワークは、もともと通勤することが難しい重度の身体障害者や、地方にいて企業で働く機会が少ない障害者にとって、貴重な働く機会を提供する方法として注目されてきました。 コロナ禍を経て、こうした方々以外にも、テレワークで働ける機会が広がってきた経緯があります。

厚生労働省も、障害者の在宅雇用導入ガイドブックや、テレワークで障害のある方をより企業戦力にといった資料を発行し、障害者雇用におけるテレワークの活用を推進してきました。 令和3年4月からは、障害者トライアル雇用でもテレワークが推進されています。

法定雇用率の計算においても、在宅勤務やテレワークで働く障害者は、実雇用率に算入できる仕組みになっています。 所定労働時間を満たしていれば、勤務形態に関わらずカウントできるため、企業にとっても法定雇用率達成の手段として有効です。

障害がある方のアンケート結果でも、コロナ禍で半数以上がテレワークによる就業を経験し、今後の理想の働き方として在宅勤務を挙げる人も約半数を占めるなど、当事者からの支持も高い働き方となっています。

テレワーク廃止が障害者雇用に与える影響

一般の従業員以上に、障害がある方にとってテレワーク廃止の影響は深刻です。

通勤に困難を抱える障害者にとって、テレワーク廃止は働く機会そのものを失うことにつながりかねません。 車椅子利用者、視覚障害がある方、感覚過敏のある方など、通勤自体が大きな負担となる方々は、テレワークが選択肢にあるからこそ働けているという現実があります。

精神障害がある方にとって、満員電車や対面コミュニケーションの負担は症状を悪化させる要因となることがあります。 うつ病、不安障害、適応障害、自閉スペクトラム症などを抱える方々は、テレワークによって安定して働けていたケースも多くあります。

地方在住の障害者にとっても、テレワーク廃止は大きな打撃です。 首都圏や大都市部に本社がある企業に、地方在住の障害者がテレワークで雇用されているケースは少なくありません。 出社が必須となれば、引っ越しを余儀なくされたり、退職せざるを得ない状況に追い込まれたりすることもあります。

体調が日によって変動する方にとって、テレワークは体調に合わせて柔軟に働ける貴重な選択肢です。 出社が義務化されれば、調子の悪い日に無理をして出勤することで体調を崩し、長期的に働けなくなるリスクも高まります。

テレワーク廃止と合理的配慮の関係

ここで重要なポイントとなるのが、障害者雇用における合理的配慮との関係です。

障害者雇用促進法や障害者差別解消法に基づき、企業は障害がある従業員に対して合理的配慮を提供する義務があります。 2024年4月からは、民間事業者にも合理的配慮の提供が法的義務化されました。

テレワークの継続が、合理的配慮の一環として認められるケースがあります。 障害特性により出社が困難な方に対して、テレワークを認めることが合理的配慮として求められる場合があるのです。

全社的にテレワーク廃止を決定したとしても、障害がある従業員に対しては個別に配慮する必要があります。 一律にテレワーク廃止を適用し、障害がある従業員も例外なく出社を強制することは、合理的配慮の不提供として問題となる可能性があります。

ただし、合理的配慮には過重な負担にならない範囲という条件があります。 業務の性質上、テレワークでの遂行が困難な場合や、企業にとって過度な負担となる場合は、テレワークを認めないことも合理的な判断とされる可能性があります。

重要なのは、企業と障害がある従業員の間で建設的な対話を重ねて、お互いに納得できる解決策を見つけていくことです。 一方的にテレワーク廃止を通告するのではなく、個別の事情を考慮した対応が求められます。

テレワーク廃止の法的な問題

テレワーク廃止には、法的な観点からも注意すべきポイントがあります。

テレワークが就業規則に制度として盛り込まれている場合、廃止するためには就業規則の変更が必要となります。 原則として、雇用主が従業員と合意することなく就業規則を変更し、労働条件を不利益に変更することはできないと定められています。

例外として、従業員に変更後の就業規則を周知し、就業規則の変更が合理的なものであれば、合意なしでの変更が可能となります。 合理性の判断には、従業員の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合などとの交渉の状況などが総合的に考慮されます。

機器やネットワークの整備が不十分で情報漏洩のリスクがある場合、社員の労務管理が難しい場合、対面業務が必須の業種などでは、テレワーク廃止が合理的と判断される可能性があります。 一方、生産性の低下のみを理由とした一律のテレワーク廃止は、不合理と判断される可能性があるとされています。

障害がある従業員に対して合理的配慮を提供せずにテレワーク廃止を強行した場合、障害者雇用促進法違反として問題になる可能性もあります。

当事者ができる対応

テレワーク廃止の動きに直面したとき、障害がある方ができる対応を見ていきましょう。

まず、自分の障害特性と仕事の関係を整理しておくことが大切です。 なぜテレワークが必要なのか、出社になった場合にどのような困難が生じるのかを、具体的に説明できるようにしておきましょう。 通勤の困難、体調管理の課題、感覚過敏への対応、医療機関への通院との両立など、自分の状況を客観的に整理することが基本となります。

医師の診断書や意見書を準備しておくことも有効です。 主治医に相談し、テレワークが治療や症状管理にどのように役立っているか、出社になった場合の影響について意見書を書いてもらうと、企業との交渉で説得力が増します。

会社との対話を試みることが重要です。 人事担当者、産業医、上司などに、自分の状況と必要な配慮について丁寧に説明し、テレワーク継続を含めた合理的配慮を求めましょう。 一方的に主張するのではなく、建設的な対話を心がけることが大切です。

部分的なテレワーク継続や、ハイブリッド勤務の提案も選択肢です。 完全なテレワーク継続が難しい場合でも、週数日のテレワーク、出社時間の調整、フレックスタイム制の活用など、柔軟な働き方を提案することができます。

産業医面談を活用することも有効です。 産業医は労働者の健康管理を担う立場にあり、障害特性に応じた働き方について意見を述べることができます。 産業医の意見を踏まえて、人事との交渉を進めることもできます。

相談先や支援機関の活用

会社との対話だけで解決しない場合、外部の相談先や支援機関を活用することもできます。

地域障害者職業センターは、障害がある方の職業生活全般の相談に応じてくれる機関です。 専門の職業カウンセラーが、職場での合理的配慮の問題について助言してくれます。

ハローワークの専門援助部門も、相談窓口として活用できます。 障害がある方の就労に関する専門的な知識を持つ職員が、現在の職場での問題についてアドバイスしてくれます。

労働基準監督署や労働局では、労働者の権利に関する相談を受け付けています。 就業規則の変更手続きの適正性や、合理的配慮の不提供についての相談ができます。

弁護士への相談も選択肢の一つです。 法テラスを利用すれば、収入が一定以下の方は無料で弁護士に相談できます。 就業規則の変更の法的問題や、合理的配慮の請求方法について、専門的なアドバイスを受けられます。

障害者差別に関する相談窓口つなぐ窓口は、内閣府が設置している国の相談窓口です。 障害を理由とする不当な差別的取扱いや合理的配慮の不提供についての相談ができ、適切な機関に取り次いでもらえます。

NPO法人や障害者支援団体も、頼れる存在です。 同じような立場の方々の体験談を聞いたり、専門的な支援を受けたりすることができます。

テレワークを継続できる職場を選ぶ

転職を考える場合は、テレワークを継続している企業を選ぶことも一つの選択肢です。

フルリモートワークや完全テレワークを基本とする企業も、依然として多く存在しています。 特にIT業界、Webデザイン業界、ライティング業界などでは、リモートワークが標準となっている企業が多くあります。

障害者向けの転職エージェントには、テレワークが可能な求人を多く扱っているところもあります。 自分の障害特性に合った働き方ができる企業を、専門のアドバイザーと一緒に探していきましょう。

ハローワークでも、テレワーク可能な求人を探すことができます。 求人検索の際に、在宅勤務やテレワークというキーワードで絞り込むことで、該当する求人を見つけられます。

企業選びの際には、求人票だけでなく、実際の運用状況も確認することが大切です。 面接時にテレワークの導入状況、今後の方針、障害がある社員への配慮実績などを確認し、長期的に安心して働ける職場かを見極めましょう。

転職を急ぐ前に、現在の会社で交渉を試みることも有効です。 退職するという覚悟があれば、企業も真剣に対応してくれる可能性が高まります。 転職活動を進めながら、現職での交渉も並行して行うことで、選択肢が広がります。

ハイブリッド勤務という選択肢

完全なテレワークと完全な出社の中間として、ハイブリッド勤務が選択肢として広がっています。

ハイブリッド勤務は、週数日は出社、週数日はテレワークという働き方です。 出社による対面コミュニケーションのメリットと、テレワークによる柔軟性の両方を享受できる方法として注目されています。

障害がある方にとって、ハイブリッド勤務はバランスの取れた選択肢となり得ます。 体調が安定している日は出社し、調子が悪い日はテレワークにするなど、自分のコンディションに合わせて柔軟に働き方を選べる可能性があります。

ただし、ハイブリッド勤務でも、出社日数や曜日に縛りがある場合は、障害特性によっては対応が難しいこともあります。 出社日の柔軟な変更が可能か、急な体調不良に対応できるかなど、運用面の確認も重要です。

制度面の今後の動向

障害者雇用とテレワークをめぐる制度面の動向も注目しておきましょう。

法定雇用率の段階的な引き上げにより、企業は障害者雇用にこれまで以上に取り組む必要があります。 2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%への引き上げが予定されており、対象事業主の範囲も拡大されています。

法定雇用率の引き上げに伴い、多様な働き方を提供できる企業の競争力が高まることが見込まれます。 テレワークを廃止した結果、障害者雇用が進まなくなれば、納付金の負担増や企業名公表のリスクが高まります。 こうした背景から、障害者雇用についてはテレワークを継続する企業も多いと予想されます。

短時間労働者の雇用率算入も、テレワークと関連する制度変更です。 2024年4月から、週10時間以上20時間未満で働く重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者も雇用率の算定対象となりました。 こうした短時間の働き方は、テレワークと組み合わせることで実現しやすくなります。

合理的配慮の提供義務化により、企業は障害がある従業員への個別配慮をより重視する必要が出てきています。 全社一律のテレワーク廃止が難しくなり、障害特性に応じた柔軟な対応が求められる流れが続くと見られます。

自分の働き方を守るために

最後に、自分の働き方を守るために意識しておきたいポイントを整理しておきます。

自分の権利を知っておくことが基本となります。 障害者雇用促進法、障害者差別解消法、労働契約法などの関連法規を理解し、自分が何を主張できるのかを把握しておきましょう。

記録を残す習慣をつけることも大切です。 会社とのやり取り、医師との相談内容、体調の変化などを記録しておくことで、いざというときの証拠となります。

同じ立場の仲間とつながることも、心の支えになります。 障害者の自助グループ、SNSのコミュニティ、当事者団体などを通じて、同じような状況にある方々と情報交換することで、解決のヒントを得られます。

無理をしないことも、長期的な視点では重要です。 体調を崩してまで働き続ける必要はありません。 休職、転職生活保護の活用など、選択肢は複数あります。

最も大切なのは、自分の体と心を守ることです。 テレワーク廃止に直面しても、焦らず、利用できる支援を活用しながら、自分らしい働き方を模索していきましょう。

まとめ

テレワーク廃止の動きは海外大手IT企業を中心に広がり、日本企業にも影響が及んでいます。 障害がある方にとってテレワークは合理的配慮の一環として機能してきたケースが多く、廃止が働く機会の喪失につながる懸念があります。

企業との対話、医師の意見書、産業医面談、外部相談機関の活用などを通じて、テレワーク継続やハイブリッド勤務などの選択肢を模索することが大切です。 法定雇用率の引き上げや合理的配慮の義務化により、障害者の働き方を守る制度的な基盤は強化されており、自分の権利を知り適切に主張することが重要です。

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