障害者雇用に関する助成金の不正受給問題と健全な雇用を見極める視点

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障害者雇用に関する助成金の不正受給が、近年メディアで取り上げられる機会が増えてきました。

特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金、職場適応援助者助成金、こうした助成金を不正に受給した企業や事業所のニュースを目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

「助成金の不正受給って具体的に何が問題なの」「自分が働いている職場は大丈夫なの」「自分が応募しようとしている企業は信頼できる」、こうした疑問を持つ方は少なくありません。

特に、障害を抱えながら働く方、これから障害者雇用枠での就職を目指す方、就労移行支援や就労継続支援を利用している方、こうした方々にとって、助成金の不正受給は自分の働き方や雇用の安定に直接関わる問題です。

不正受給が発覚した企業や事業所では、助成金の返還、雇用の打ち切り、事業所の閉鎖、こうした事態が起こることもあり、そこで働いていた障害者が突然職を失うケースもあります。

この記事では、障害者雇用に関する助成金の不正受給とはどんなものか、どうして起こるのか、当事者として何を知っておくべきか、健全な雇用を見極めるための視点、こうしたことを分かりやすくお伝えしていきます。

障害者雇用に関する助成金の種類

障害者雇用に関する助成金には、いくつかの種類があります。

まずは主な助成金の概要を整理しておきましょう。

最も代表的なのが、特定求職者雇用開発助成金です。

これは、就職が困難とされる方を雇用した企業に対して、一定期間の賃金の一部が助成される制度です。

障害者を新たに雇用した場合、短時間労働者で五十万円から百二十万円、それ以外の場合は百二十万円から二百四十万円程度が支給されます。

二つ目が、トライアル雇用助成金です。

これは、障害者を試行的に雇用する企業に対して、一人あたり月四万円程度が最長三か月から十二か月支給される制度です。

三つ目が、職場適応援助者助成金です。

これは、ジョブコーチを配置して障害者の職場適応を支援する事業者に対して、一定の金額が支給される制度です。

四つ目が、障害者雇用安定助成金です。

これは、障害者を継続して雇用するための取り組みを行う企業に対して支給される助成金です。

五つ目が、障害者作業施設設置等助成金です。

これは、障害者が働きやすい施設や設備を整備する企業に対して支給される助成金です。

これらの助成金は、本来の目的としては、障害者の雇用促進と安定のために設計されています。

企業が障害者を雇用する際の負担を軽減し、結果として障害者の就労機会を増やすことを目指しています。

不正受給とは何か

助成金の不正受給とは、本来支給されるべきでない助成金を、虚偽の申告や不適切な手段で受け取ることを指します。

障害者雇用に関する助成金の不正受給には、いくつかのパターンがあります。

一つ目のパターンは、実態のない雇用です。

実際には働いていない障害者を雇用しているように装って、助成金を申請する手口です。

書類上だけ雇用契約を結び、勤怠記録を偽造し、給与振込の記録だけを作る、こうした方法で不正に助成金を受け取ります。

二つ目のパターンは、業務実態の偽装です。

雇用契約は実在するけれど、実際には業務を行っていない、または業務量が極端に少ないにも関わらず、フルタイムで働いているように装う手口です。

三つ目のパターンは、賃金の偽装です。

実際に支払っている賃金より高い金額を申告して、より多くの助成金を受け取る手口です。

例えば、実際は時給千円で雇用しているのに、書類上は時給千二百円として申告し、その差額が不正な利益になります。

四つ目のパターンは、配慮内容の偽装です。

合理的配慮や職場適応援助の取り組みを実際には行っていないにも関わらず、行っているように申告する手口です。

ジョブコーチを配置したと申告しながら実際には配置していない、配慮のための設備を導入したと申告しながら実際には未導入、こうした例があります。

五つ目のパターンは、対象者の偽装です。

助成金の対象とならない方を、対象者として申告する手口です。

例えば、すでに別の会社で働いている方を新規雇用として申告する、こうした例があります。

六つ目のパターンは、複数企業での重複申請です。

同じ障害者を複数の企業で雇用しているように装って、複数の助成金を申請する手口です。

これらの不正受給は、いずれも厚生労働省の調査によって発覚することがあり、発覚した場合は助成金の返還、加算金の支払い、企業名の公表、こうした制裁が科されます。

なぜ不正受給が起こるのか

助成金の不正受給が起こる背景には、いくつかの構造的な要因があります。

一つ目の要因は、助成金の規模が大きいことです。

特定求職者雇用開発助成金では、一人あたり最大二百四十万円の助成が受けられます。

これを複数人分まとめて不正に申請すれば、数千万円から数億円の利益が生まれます。

この金銭的なインセンティブが、不正の動機になります。

二つ目の要因は、審査の限界です。

助成金の審査は、提出された書類を中心に行われます。

書類上で要件を満たしているように見えれば、助成金が支給される仕組みになっています。

実際の業務内容や雇用実態を細かく現地調査することは、リソースの制約から十分にできていない現状があります。

三つ目の要因は、巧妙な手口の進化です。

不正を行う側も、年々手口を巧妙化させています。

書類上は完璧に見えるよう偽造し、形式的には実態があるように見せかける、こうした手法が広がっています。

四つ目の要因は、業界全体の認識の問題です。

「助成金は活用するもの」「グレーな部分は許容範囲」、こうした認識が一部の業界で広がっており、不正と正当な活用の境界が曖昧になっていることがあります。

五つ目の要因は、当事者の声が届きにくいことです。

不正受給の現場で働く障害者は、自分が不正に巻き込まれていることに気づかないか、気づいても声を上げにくい立場にあります。

「告発したら職を失う」という不安が、不正の発覚を遅らせる要因になっています。

当事者が巻き込まれるリスク

助成金の不正受給は、企業や事業所だけの問題ではなく、そこで働く障害者にも深刻な影響を与えます。

最も大きなリスクは、突然の解雇や雇用の打ち切りです。

不正受給が発覚した企業は、助成金の返還を求められ、経営が悪化することがあります。

その結果、そこで働いていた障害者が職を失うケースが少なくありません。

二つ目のリスクは、職歴の汚染です。

不正受給で問題になった企業に勤めていた経歴は、次の就職活動でマイナスになることがあります。

「あの会社で働いていた」というだけで、新しい雇用主から疑念を持たれることがあります。

三つ目のリスクは、犯罪への加担になる可能性です。

自分の意思とは関係なく、書類上だけ雇用されていた、実態のない業務に従事していた、こうした場合、本人が知らないうちに不正受給の加担者として扱われる可能性があります。

四つ目のリスクは、心理的なダメージです。

不正受給の現場で働いていたことが発覚すると、自分も騙されていた、利用されていた、こうした感覚に苦しめられることがあります。

五つ目のリスクは、賃金未払いや劣悪な労働条件です。

不正受給を行う企業は、他の労働条件でも問題を抱えていることが多くあります。

書類上の賃金と実際の支払い額が違う、社会保険に加入していない、有給休暇が取得できない、こうした問題が同時に存在することがあります。

これらのリスクは、当事者の人生に長期的な影響を与えることがあります。

メディアで報じられた事例

二〇二〇年代に入って、障害者雇用に関する助成金の不正受給は、メディアで頻繁に取り上げられるようになりました。

二〇二三年から二〇二四年にかけて、特に大きく報じられた事例をいくつか紹介します。

ある就労継続支援A型事業所では、利用者である障害者に対して、実際には行っていない業務を行ったように申告し、特定求職者雇用開発助成金を不正に受給していたことが発覚しました。

この事業所は廃業に追い込まれ、そこで働いていた数十名の障害者が職を失いました。

別の事例では、複数の関連企業を作り、同じ障害者を複数の企業で雇用しているように装って、助成金を重複申請していた事業者がいました。

この事業者は、数億円規模の不正受給を行っていたとされ、経営陣が逮捕される事態になりました。

また、特定の社会福祉法人が運営する事業所で、職場適応援助者助成金を不正に受給していた事例も報じられました。

ジョブコーチを配置したと申告しながら、実際には適切な支援を行っていなかったというものです。

二〇二四年から二〇二六年にかけて、こうした不正受給に対する取り締まりは強化されています。

厚生労働省は、調査体制を拡充し、不正の発見と制裁を厳しく行う方針を打ち出しています。

二〇二六年の最新動向

二〇二六年現在、障害者雇用に関する助成金の不正受給対策は、複数の方向で強化されています。

一つ目の動向は、調査体制の拡充です。

厚生労働省は、助成金の支給後にも継続的な実態調査を行う体制を整備しました。

書類審査だけでなく、現地調査、利用者へのヒアリング、こうした多面的な調査が行われるようになっています。

二つ目の動向は、内部告発の仕組みの整備です。

公益通報者保護法の運用が強化され、不正を内部から告発した方が保護される仕組みが整備されています。

障害者本人や、家族、同僚、こうした方々が告発しやすい環境が整いつつあります。

三つ目の動向は、第三者評価の導入です。

就労移行支援事業所、就労継続支援A型・B型事業所、こうした事業所に対する第三者評価が一部で導入されています。

利用者の声、業務実態、こうしたものが客観的に評価される仕組みです。

四つ目の動向は、デジタル化による透明性向上です。

勤怠管理、業務記録、こうしたものがデジタル化されることで、不正な書類作成が困難になっています。

マイナンバー制度との連携も進められ、複数企業での重複雇用の発見が容易になっています。

五つ目の動向は、企業名公表の強化です。

不正受給が発覚した企業や事業所の名前が、より広く公表されるようになっています。

これにより、企業の社会的責任が問われる仕組みが強化されています。

六つ目の動向は、人的資本経営や就労選択支援との連動です。

人的資本経営の広がりにより、企業の障害者雇用の質が投資家から評価される時代になっています。

就労選択支援が二〇二五年十月から始まり、障害者本人が自分に合った働き方を選べる仕組みが整備されています。

これらの動向は、長期的には不正受給を減らし、健全な障害者雇用を増やす方向に作用すると考えられます。

健全な雇用を見極める方法

不正受給を行う企業や事業所を避け、健全な雇用を見つけるためには、いくつかのポイントを確認することが大切です。

一つ目のポイントは、業務実態の確認です。

応募を検討している企業や事業所では、実際にどんな業務を行っているかを確認してください。

見学や体験を通じて、業務の実態を自分の目で確かめることが大切です。

「書類上は色々書いてあるけれど、実際の業務は曖昧」、こうした場合は要注意です。

二つ目のポイントは、雇用契約と賃金の明確さです。

雇用契約書の内容、賃金の支払い方法、社会保険の加入状況、こうしたことを明確に確認してください。

口頭でだけ説明されて書面化されない、賃金の計算方法が曖昧、こうした場合は問題がある可能性があります。

三つ目のポイントは、職場の他のスタッフの状況です。

他の障害者スタッフがどのように働いているか、長く働いている方がいるか、こうしたことを観察してください。

短期間で人が入れ替わっている、誰も長く働いていない、こうした場合は何らかの問題がある可能性があります。

四つ目のポイントは、合理的配慮の実態です。

合理的配慮の内容が、書類上だけでなく実際に提供されているかを確認してください。

ジョブコーチがいると説明されているのに実際には会えない、配慮のための設備があると説明されているのに見当たらない、こうした場合は要注意です。

五つ目のポイントは、第三者評価や口コミです。

事業所や企業に対する第三者の評価、利用者の口コミ、こうした情報を確認してください。

支援機関、ハローワーク、就労移行支援事業所、こうした場所で「この事業所の評判はどうですか」と聞いてみることもできます。

六つ目のポイントは、行政処分の履歴です。

厚生労働省や都道府県のウェブサイトには、行政処分を受けた企業や事業所のリストが公開されています。

「企業名 行政処分」「事業所名 不正受給」、こうした言葉で検索すれば、過去の問題が分かることがあります。

七つ目のポイントは、運営法人の透明性です。

事業所を運営する法人の財務状況、役員の情報、こうしたものが公開されているか、ホームページが整備されているか、こうしたことも判断材料になります。

これらのポイントを総合的に判断することで、信頼できる雇用先を見極めることができます。

不正に気づいた時の対応

すでに不正受給が行われている職場にいる場合、または不正の疑いがある場合、どう対応すればいいかを知っておきましょう。

一つ目の対応は、証拠を集めることです。

不正の疑いがある場合、勤怠記録、給与明細、業務日報、こうした書類を保存しておきます。

不適切な指示があった場合、メールやLINE、こうしたやり取りを保存しておきます。

ただし、機密情報を不適切に持ち出すことは別の問題を生む可能性があるので、自分が関わる範囲の記録に留めてください。

二つ目の対応は、相談先を探すことです。

公益通報の窓口、労働基準監督署、都道府県の障害福祉課、ハローワーク、こうした行政機関に相談できます。

支援団体、つくろい東京ファンド、NPO法人もやい、ぱっぷす、BONDプロジェクト、Colabo、こうした団体にも相談できます。

弁護士に相談することもできます。

法テラスでは、収入が一定以下の方を対象に無料の法律相談を提供しています。

三つ目の対応は、自分の安全を確保することです。

不正を告発する前に、次の職場の目処を立てておくことが大切です。

告発によって職を失うリスクがあるため、生活基盤の確保を並行して進めてください。

雇用保険、住居確保給付金、緊急小口資金、生活保護、こうした制度を活用できることを知っておきましょう。

四つ目の対応は、公益通報者保護法の活用です。

この法律は、企業の不正を告発した方を保護するために作られた法律です。

適切な手続きを踏んで通報すれば、解雇や不利益な扱いから保護されます。

弁護士のサポートを受けながら進めることをおすすめします。

五つ目の対応は、心と体のケアです。

不正に気づいた、または巻き込まれていたという事実は、心に大きな負担をかけます。

主治医、カウンセラー、精神保健福祉センター、こうしたサポートを活用してください。

安心して働ける場所の選び方

健全な障害者雇用の場を見つけるために、信頼できる支援機関を活用することが大切です。

ハローワークの専門援助部門は、メンタル疾患や障害を抱える方向けの就労支援を提供しています。

職員が適切な求人を紹介してくれます。

ただし、ハローワークの求人の中にも問題のある企業が混ざっている可能性があるので、応募前に必ず職場見学や説明会で実態を確認してください。

就労移行支援事業所は、就職活動全般をサポートしてくれます。

実績のある就労移行支援事業所では、健全な障害者雇用を提供する企業とのネットワークがあります。

地域障害者職業センターでは、職業評価、ジョブコーチ支援、こうした包括的なサービスを無料で受けられます。

民間の障害者向け転職エージェントとして、dodaチャレンジ、ランスタッド、アットジーピー、こうしたサービスがあります。

これらのエージェントは、企業の実態を把握しており、信頼できる紹介をしてくれることが多いです。

夜職経験者向けの支援団体ぱっぷす、BONDプロジェクト、Colaboも、障害を抱える女性の就職相談に対応しています。

地域の障害者団体、自助グループ、当事者会、こうした場所でも、地域の事業所の評判について情報を得られます。

複数の機関の意見を聞きながら、自分に合った職場を選んでいくことが大切です。

心と体のケアを忘れずに

不正受給の問題を知ることや、自分の職場の実態を疑うことは、心に大きな負担をかけます。

メンタル面で疲弊している方は、主治医との相談を密にしてください。

通院費が心配な方は、自立支援医療制度を使えば医療費の自己負担を一割程度に軽減できます。

各自治体の精神保健福祉センターでは、無料で相談を受けられます。

夜中に強い苦しさを感じる時は、よりそいホットライン、いのちの電話、こうした二十四時間対応の電話相談窓口に連絡してください。

体の健康も大切です。

栄養バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、こうした基本的な健康管理を意識してください。

まとめ

障害者雇用に関する助成金の不正受給は、企業や事業所だけの問題ではなく、そこで働く障害者の生活と人生に深刻な影響を与える問題です。

二〇二六年現在、調査体制の拡充、内部告発の仕組み整備、第三者評価、デジタル化、企業名公表の強化、こうした対策が進んでいます。

健全な雇用を見極めるためには、業務実態、雇用契約と賃金、職場の他のスタッフの状況、合理的配慮の実態、第三者評価、行政処分の履歴、運営法人の透明性、こうしたポイントを確認してください。

信頼できる支援機関やエージェントを活用することで、安心して働ける職場に出会える可能性が高まります。

なお、もし今、精神的に追い詰められて死にたいといった気持ちが強く湧いている場合は、よりそいホットラインの「0120279338」やいのちの電話などの二十四時間対応の窓口に、どうか一度連絡してみてください。

あなたが今この瞬間を生き延びてくれることを、心から願っています。

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