夜職を経験してPTSDのような症状が出ている時に

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夜職に従事した経験のある方の中には、「お客様の顔を思い出すと体が固まる」「夜の街を歩けなくなった」「特定の音や匂いで動悸がする」「眠れない夜が続いている」「フラッシュバックで日常生活が苦しい」という症状に悩まされている方が少なくありません。これらはPTSDや複雑性PTSDと呼ばれる心の傷の症状である可能性があります。長年夜職を続けてきた方、辛い経験をした方が、辞めた後にこうした症状に苦しむことは決して珍しくありません。一人で抱え込まず、適切な医療やサポートを受けることで、回復への道筋が見えてきます。

夜職経験者に見られるPTSDのような症状

夜職を経験した方に現れる、PTSDに似た症状にはさまざまなものがあります。

最初に挙げられるのが、フラッシュバックです。お客様の顔、特定の出来事、店舗の場面などが、突然鮮明に思い出されて頭から離れなくなります。意識して思い出そうとしているわけではないのに、勝手に記憶が蘇ってきます。

特定の場所や状況への強い拒否反応も典型的な症状です。夜の繁華街、お酒の匂い、特定の音楽、カラオケ、男性の声など、夜職を連想させるものに触れると、動悸、息苦しさ、震え、吐き気などの身体症状が出ることがあります。

睡眠の問題も多くの方が抱えます。寝つけない、眠っても何度も目が覚める、悪夢を見る、夜中に怖くなって眠れないといった症状が続きます。

過剰な警戒心も特徴的です。常に周囲を警戒している、誰かに見られている気がする、知らない人が怖い、外出するのが不安など、安心して過ごせない状態が続きます。

感情の麻痺や解離症状もあります。何も感じない、自分が自分でないような感覚、現実感がない、楽しいという感情が分からないといった状態に陥ることがあります。

体の症状も伴います。慢性的な頭痛、肩こり、胃腸の不調、息苦しさ、動悸、めまいなど、ストレスが体に表出する症状が続くことがあります。

人間関係への影響も深刻です。人を信頼できない、親密な関係を築けない、怒りっぽくなる、誰かに触れられることへの強い拒否反応などが現れます。

自己否定的な思考も、回復を妨げる要因です。自分は汚れている、自分には価値がない、誰にも理解されない、過去の自分が許せないといった感覚が続きます。

PTSDと複雑性PTSDの違い

夜職経験者に見られる症状は、PTSDよりも複雑性PTSDに近い場合が多いものです。

PTSDは、生命を脅かすような単発の出来事、たとえば事故、災害、暴力被害などをきっかけに発症する心の傷です。

複雑性PTSDは、長期にわたって繰り返される対人関係上のトラウマによって発症します。家庭内での虐待、長期的な性的搾取、繰り返される暴力やハラスメントなどが原因となります。

夜職の現場では、長期にわたって望まない接触、性的な対応、暴言、ハラスメント、経済的な搾取などが続くことがあります。これらの累積したトラウマが、複雑性PTSDの発症につながることがあります。

複雑性PTSDの特徴として、感情調整の困難、自己否定、対人関係の問題、解離症状などがあり、PTSDの症状に加えて、より広範囲な人格や生活への影響が見られます。

世界保健機関のICD-11では、2018年に複雑性PTSDが正式な診断名として位置づけられました。日本でも認知が広がりつつあり、専門の治療を受けられる医療機関が増えています。

症状が出るのは弱さではない

PTSDのような症状が出ていることを、自分の弱さとして責めてしまう方が多くいます。

最初に理解しておきたいのが、これらの症状は心の防衛反応であるということです。トラウマとなる経験に対して、心が必死に対処しようとした結果として現れる症状であり、決してあなたの弱さや甘えではありません。

夜職の現場で長年経験してきたことは、想像以上に心と体に負担をかけています。多くの方が経験する症状であり、特別なことではありません。

自分を責めることは、回復を妨げる要因となります。「もっと強くあるべき」「他の人は平気そうなのに」と自分を追い詰めることは、症状を悪化させるだけです。

過去の自分の選択を恥じる必要もありません。それぞれの状況の中で、生きるための最善の選択をしてきた結果として、今があります。過去を否定することは、生き抜いてきた自分自身を否定することです。

症状が出ているということは、本来の心の機能が働いている証拠です。何も感じないままだったら、もっと深刻な状態になっていたかもしれません。今の症状は、回復への第一歩でもあります。

医療機関での治療

PTSDや複雑性PTSDの症状は、適切な治療を受けることで改善が期待できます。

最初に検討したいのが、精神科や心療内科の受診です。心の問題に詳しい医師に相談することで、診断と治療方針が立てられます。

トラウマインフォームドケアと呼ばれる、トラウマを抱える方への配慮ある治療を行う医療機関が増えています。安心して治療を受けられる環境を選ぶことが大切です。

治療法には、薬物療法と心理療法があります。

薬物療法では、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠導入剤などが使われます。症状を和らげることで、日常生活を送りやすくし、心理療法に取り組む土台を作ります。

心理療法には、認知行動療法、EMDR、トラウマフォーカスト認知行動療法、持続エクスポージャー療法など、トラウマ治療に効果が認められている方法があります。

EMDRは、眼球運動を用いてトラウマ記憶を処理する治療法で、PTSDに対する効果が国際的に認められています。専門の訓練を受けた治療者のもとで受けられます。

経済的に治療費が心配な方は、自立支援医療制度を活用できます。精神科の通院医療費が原則1割負担となり、所得に応じた月額上限も設定されています。

生活保護を受給している場合は、医療扶助で自己負担なく治療を受けられます。

信頼できる治療者の見つけ方

PTSDの治療では、信頼できる治療者と出会うことが極めて重要です。

最初に確認したいのが、トラウマ治療の経験がある医師やカウンセラーかどうかです。経験のない治療者に当たると、治療が長引いたり、二次被害が生じたりする可能性があります。

夜職経験者への理解がある治療者を選ぶことも大切です。職業に対する偏見や決めつけがある治療者では、安心して話せません。

最初の数回の面談で、自分が安心して話せる相手かを確認しましょう。話しやすさ、共感的な姿勢、専門知識など、総合的に判断することが大切です。

合わないと感じたら、別の治療者を探す勇気を持ちましょう。我慢して続けることは、回復を遅らせます。自分に合った治療者を見つけるまで、複数の医療機関を試すことも選択肢です。

女性向けの専門外来や、トラウマ治療を専門とするクリニックもあります。インターネットで地域の医療機関を調べる、女性のためのメンタルヘルス支援団体に問い合わせるなどの方法で、適切な治療者を見つけられます。

日常生活での回復のための工夫

医療機関での治療と並行して、日常生活でできる回復のための工夫があります。

最初に取り組みたいのが、生活リズムの安定です。決まった時間に起きて寝る、規則正しい食事を取ることが、心の安定の基盤となります。夜職時代の不規則な生活から、昼型のリズムへ徐々に切り替えていくことが大切です。

体を動かすことも、心の回復に効果があります。ウォーキング、ヨガ、ストレッチなど、無理のない範囲での運動が、ストレスホルモンを下げ、気分を改善します。

呼吸法やマインドフルネスも、症状の軽減に役立ちます。フラッシュバックや動悸が起きた時に、深呼吸をする、今この瞬間に意識を向けるといった技法が、症状を落ち着かせる助けとなります。

トリガーから距離を置くことも大切です。夜職を連想させる場所、人、音、匂いから距離を取ることで、症状の頻度を減らせます。

安全な場所を作ることも、回復の基盤となります。自分の部屋、好きなカフェ、自然の中など、心が落ち着ける場所を意識的に持つことが大切です。

書くことも、感情を整理する有効な方法です。ジャーナリング、日記、手紙形式での書き出しなど、自分の気持ちを言葉にすることで、感情が整理されます。

つながりを大切にする

PTSDの回復には、信頼できる人とのつながりが大きな役割を果たします。

最初に検討したいのが、自助グループへの参加です。同じような経験をした女性たちが集まる場で、体験を共有し、お互いを支え合う関係を築くことができます。夜職経験者向けの自助グループ、トラウマサバイバーの自助グループなどがあります。

信頼できる友人や家族との関係も、心の支えとなります。すべてを打ち明ける必要はありませんが、自分を理解してくれる人がいることが、回復のエネルギーになります。

支援団体とのつながりも有効です。夜職経験者を支援する団体、女性のための相談窓口、性暴力被害者支援団体など、専門性を持った場所があります。

無理して人と関わる必要はありません。一人でいたい時は一人でいることも、回復の過程では必要です。自分のペースで、無理のない関わり方を選ぶことが大切です。

緊急時の対応

PTSDの症状で日常生活が困難になった時、緊急時の対応も知っておきましょう。

フラッシュバックが起きた時は、自分を「今、ここ」に戻す技法が役立ちます。冷たい水を飲む、氷を握る、五感で周囲を確認する、深呼吸をするなど、現在の安全な状態を確認することで症状が落ち着きます。

激しい不安や動悸が起きた時は、安全な場所に移動することが大切です。人混みから離れる、自分の部屋に戻る、信頼できる人に連絡するなど、心が落ち着く環境に身を置きましょう。

死にたい気持ちが強くなった時は、すぐに専門の窓口に連絡してください。よりそいホットライン0120-279-338、いのちの電話0570-783-556は、24時間または夜間も対応しています。

緊急性が高い場合は、精神科救急、救急外来、119番への通報もためらわないでください。命を守ることが最優先です。

回復への長い道のり

PTSDや複雑性PTSDからの回復は、時間がかかるプロセスです。

すぐに治る病気ではないことを理解しておきましょう。数か月から数年単位での治療が必要な場合があります。焦らず、自分のペースで進めることが大切です。

回復は直線的ではありません。良くなったり、また悪くなったりを繰り返しながら、長い目で見ると改善していくのが一般的なパターンです。一時的に悪化しても、それは回復の終わりではありません。

完全に症状がなくなることが目標とは限りません。症状とうまく付き合いながら、自分らしい生活を取り戻すことが、現実的な回復の姿です。

過去の経験を完全に忘れることはできなくても、その記憶に振り回されない自分になることはできます。トラウマと共に生きながら、新しい人生を築いていく力を育てることが、治療の目標となります。

回復の過程で、新しい自分を発見することもあります。これまで気づかなかった強さ、優しさ、可能性に出会うことがあります。

夜職経験によるPTSDのような症状は、決してあなただけの問題ではありません。同じような苦しみを抱えながら、回復への道を歩んでいる方が多くいます。

最初の一歩として、専門家への相談から始めましょう。精神科や心療内科の受診、精神保健福祉センターでの無料相談、よりそいホットラインへの電話など、さまざまな入口があります。

自分を責めず、症状を否定せず、回復のために必要な支援を受け取る権利が、あなたにはあります。長年苦しんできた自分を、これからは大切に育てていく時期です。

過去の経験は、これからのあなたの価値を決めるものではありません。生き抜いてきた強さを認めながら、心の傷を癒していく時間を、自分自身に与えていきましょう。

困ったときには遠慮なく支援を求め、利用できるすべての制度と相談先を活用しながら、一歩ずつ前進していきましょう。あなたが安心して暮らせる毎日を実現するための支援は、必ず存在しています。

なお、現在つらい状況にあり、心の健康に深刻な影響が出ている方、自分を傷つけたい気持ちや消えてしまいたい気持ちを抱えている方は、よりそいホットライン0120-279-338、いのちの電話0570-783-556、お住まいの地域の精神保健福祉センターなどの相談窓口にお電話ください。専門家の支援を受けながら、新しい人生への一歩を踏み出していきましょう。一人ではないことを忘れず、自分のペースで、自分の心を大切にしていくことが、回復への確かな道となります。

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