日本におけるリンクワーカーの資格と養成制度をめぐる現状と展望

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社会的処方の考え方が日本でも広がりを見せる中、その担い手となるリンクワーカーへの注目が高まっています。医療や福祉の制度の隙間にいる人々を地域の社会資源につなぐ専門職として、リンクワーカーは新しい支援の形を象徴する存在となりつつあります。しかし日本においては、リンクワーカーの資格制度や養成体制はまだ確立されておらず、現場での実践と並行して制度づくりの議論が進められている段階です。イギリスなどの先進国の経験を参考にしながら、日本独自のリンクワーカー像を模索する動きが各地で見られます。この記事では、リンクワーカーの役割や必要とされる能力、日本における資格化の現状と課題、養成の取り組みについて詳しく解説します。

リンクワーカーの役割と専門性

リンクワーカーがどのような専門職であるかを理解することが、資格や養成について考える出発点となります。

リンクワーカーは社会的処方を実践する専門職として、医療機関などから紹介された人々と地域の社会資源をつなぐ役割を担います。患者や利用者が抱える社会的、心理的、経済的な課題に対して、地域に存在する多様なサービスや活動とのマッチングを通じて支援を提供します。

リンクワーカーの仕事は単なる情報提供や紹介にとどまりません。利用者と丁寧な対話を重ね、その人の人生全体を見つめながら、本人が望む生活を実現するための伴走者として関わります。表面的な訴えの背後にある真のニーズを引き出し、利用者自身が主体的に動き出せるよう支援する深い関わりが求められます。

具体的な業務としては、利用者との面談や相談対応、地域資源の把握と開拓、関係機関との連絡調整、活動への同行支援、継続的なフォローアップなどが含まれます。一人の利用者と長期的に関わりながら、必要な時に必要な支援を組み合わせて提供していく仕事です。

リンクワーカーには高度な総合的能力が必要とされます。コミュニケーション能力、傾聴のスキル、地域資源についての知識、関係機関との調整力、倫理観、文化的多様性への理解、自己管理能力など、多面的な能力の組み合わせが求められます。一つの専門分野の知識だけでは対応できない複合的な仕事です。

医療や福祉の専門職とは異なる独自の専門性も重要な特徴です。医師や看護師は医学的な治療を担当し、ケアマネジャーは介護サービスのコーディネートを担当しますが、リンクワーカーはそれらの制度的サービスの枠を超えた地域の多様な資源との橋渡しを担います。制度に縛られない柔軟な支援ができる立場です。

伴走型支援という概念も、リンクワーカーの専門性を理解する上で重要です。問題解決を一方的に提供するのではなく、利用者と並んで歩みながら、その人自身の力を引き出していくアプローチです。短期的な解決ではなく、長期的な関係性の中で支援を展開する姿勢が求められます。

イギリスにおけるリンクワーカーの養成と資格

リンクワーカー制度の先進国であるイギリスの状況を見ることで、日本の現状を相対化できます。

イギリスではリンクワーカーが正式な職業として確立され、養成と資格の体系が整備されています。国民保健サービスの一部として位置づけられ、全国の医療機関に配置される専門職として認められています。

イギリスのリンクワーカーの養成プログラムは、複数の教育機関で提供されています。大学レベルのコースでは、社会的処方の理論的背景、地域開発、コミュニケーション技術、メンタルヘルス、文化的能力などを体系的に学びます。実習を通じて実践的な能力を身につけることも重視されています。

国民保健サービス自体も研修プログラムを提供しています。新しくリンクワーカーになる人向けの基礎研修、現任者向けの継続研修、特定領域に特化した専門研修など、キャリアの段階に応じた学習機会が用意されています。

社会的処方ネットワークと呼ばれる組織が、リンクワーカーのコミュニティを支えています。実践者間の情報交換、ベストプラクティスの共有、専門性の向上に向けた取り組みなどが行われており、リンクワーカーの専門職としての発展を支える基盤となっています。

イギリスにおけるリンクワーカーの背景は多様です。看護師、社会福祉士、心理職などの医療福祉の専門資格を持つ人もいれば、地域活動の経験豊富なボランティアからリンクワーカーになる人もいます。共通しているのは、養成プログラムを通じて専門的な訓練を受けることです。

リンクワーカーの待遇も改善されてきました。当初はボランティアや低賃金の仕事として始まることが多かった時代から、専門職としての適切な処遇が確保される段階へと進んできています。国民保健サービスの正式な職員として雇用されることで、安定した雇用と継続的な能力開発が保障されています。

ただしイギリスのシステムも完璧ではありません。地域による配置の偏り、リンクワーカーの確保の困難さ、待遇のさらなる改善の必要性など、課題も指摘されています。日本がイギリスのモデルから学ぶ際には、こうした課題も含めて理解することが大切です。

日本におけるリンクワーカー的役割の現状

日本ではリンクワーカーという職種が公式に確立されているわけではありませんが、類似の役割を担う様々な専門職や活動が存在しています。

地域包括支援センターの社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーは、地域の高齢者を中心とした包括的な支援を担っており、リンクワーカー的な役割を一部担っています。高齢者の困りごとに応じて、医療、介護、福祉、地域資源を組み合わせた支援を提供しています。

生活困窮者自立支援制度の自立相談支援員も、リンクワーカーに近い役割を担う専門職です。生活困窮の背景にある複合的な課題に対応するため、関連する様々な支援機関や地域資源につなぐ調整役として機能しています。

コミュニティソーシャルワーカーは、地域での支援活動を専門とする社会福祉専門職です。地域住民の困りごとに寄り添い、必要な支援につなぐ役割を担っています。社会福祉協議会などに配置されることが多く、地域に根ざした活動を展開しています。

精神保健福祉士は、精神障害のある方の地域生活支援を担う専門職として、リンクワーカー的な役割も果たしています。医療と地域生活の橋渡し役として、本人と多様な社会資源をつなぐ支援を提供しています。

生活支援コーディネーターは、介護保険制度の中で位置づけられた役割で、地域の生活支援サービスのコーディネートを担います。地域の多様な担い手による生活支援の体制づくりに貢献しています。

これらの専門職は本来の業務領域を持ちながら、結果としてリンクワーカー的な機能も担っているのが現状です。専任のリンクワーカーとして活動できる体制は整っておらず、本来の業務の中での対応が中心となっています。

民間のNPOや社会福祉法人の中には、リンクワーカー的な活動を意識的に展開する団体も増えてきています。社会的処方の理念を取り入れ、地域の医療機関と連携しながら、独自の支援を提供する事例が各地で見られます。

医療機関の中にも、リンクワーカー的な役割を担うスタッフを配置する動きが始まっています。医療ソーシャルワーカーやメディカルコーディネーターなどが、患者の社会的な課題への対応を担当する形で実践が進められています。

資格化に向けた議論の現状

リンクワーカーを公式な資格として位置づけるかどうかについて、日本では様々な議論が行われています。

資格化を推進する立場からは、複数の論拠が示されています。専門職としての社会的認知が高まり、優秀な人材の確保につながること、教育や研修の体系化により質の確保が可能になること、適切な処遇の根拠となること、医療や福祉との連携において立場が明確になることなどが挙げられます。

資格化に慎重な立場もあります。社会的処方の本質は柔軟性にあり、画一的な資格制度がかえって実践を制約する恐れがあること、既存の専門職との関係をどう整理するか難しい問題があること、養成制度の整備に時間とコストがかかること、国家資格化のハードルが高いことなどが指摘されています。

中間的な立場として、いきなり国家資格化を目指すのではなく、段階的に専門性を確立していくべきとする意見もあります。まずは民間資格や認定制度として整備し、実績を積み重ねた上で公的な資格化を検討するという考え方です。

国の動向として、厚生労働省も社会的処方の研究事業を実施しており、リンクワーカーを含む実施体制について検討を進めています。具体的な制度設計に至るには時間がかかりそうですが、政策的な議論は続けられています。

学会レベルでも議論が行われています。日本プライマリ・ケア連合学会、日本社会医療学会などが社会的処方に関する研究や実践を進めており、リンクワーカーの位置づけについても検討されています。学術的な議論の積み重ねが、制度設計の基盤となります。

民間レベルでは、すでに認定制度を運用する団体が現れています。一般社団法人日本社会的処方協会など、リンクワーカーの養成と認定を行う団体が活動を始めており、独自の専門性確立の試みが進められています。

これらの議論はまだ収束していない段階ですが、社会的処方の実践が広がる中で、リンクワーカーの位置づけを明確にする必要性は確実に高まっています。今後数年の間に、何らかの形で資格や認定の仕組みが整備される可能性が高いと考えられます。

既存の関連資格との関係

リンクワーカーの資格化を考える上で、既存の関連資格との関係を整理することが重要です。

社会福祉士は社会福祉専門職の代表的な国家資格で、相談援助やソーシャルワークを専門とします。リンクワーカーの仕事と重なる部分が多く、社会福祉士がリンクワーカー的な役割を担うことは自然な流れです。社会福祉士の養成カリキュラムにリンクワーカー的な内容を組み込むことで、対応力を強化することが考えられます。

精神保健福祉士は精神障害のある方の支援を専門とする国家資格で、メンタルヘルスに関する深い知識を持ちます。社会的処方の対象には精神的な課題を抱える人も多く、精神保健福祉士の専門性が活かせる場面が多くあります。

介護支援専門員はケアマネジャーとして知られる資格で、介護サービスのコーディネートを行います。高齢者の社会的処方においては、ケアマネジャーとリンクワーカーの連携が重要です。両者の役割分担と協力のあり方を整理する必要があります。

保健師は地域の健康課題に取り組む専門職で、予防的な視点から地域住民の健康を支援します。社会的処方は予防的な健康増進の側面も持ち、保健師の専門性と親和性が高い領域です。

看護師の中にも、地域看護や訪問看護を専門とする方々がリンクワーカー的な役割を担うケースがあります。医療と地域生活の橋渡し役として、看護師の専門性は重要な意味を持ちます。

公認心理師や臨床心理士などの心理専門職も、リンクワーカーと協働する重要な専門職です。心理的なサポートが必要な利用者への対応で、心理職とリンクワーカーが連携することで、より包括的な支援が可能になります。

これらの既存資格を持つ専門職がリンクワーカーとして活動する場合、追加的な研修や認定によって専門性を強化する仕組みが現実的です。既存の専門性を活かしながら、社会的処方に必要な能力を追加していく形で、効率的な人材育成が可能になります。

一方、これらの専門資格を持たない人がリンクワーカーになる道筋も検討する価値があります。地域活動の経験豊富な方、当事者経験を持つ方、子育てや介護の経験を持つ方など、専門資格はなくても豊かな人間性と地域への理解を持つ人々が、リンクワーカーとして活躍できる仕組みも大切です。

養成プログラムの試み

日本においても、リンクワーカーの養成プログラムが各地で試みられています。

大学や大学院での社会的処方に関する教育が始まっています。医学部、社会福祉学部、看護学部などのカリキュラムに社会的処方の内容が組み込まれる例が増えており、将来の医療福祉専門職にリンクワーカー的な視点を養う取り組みが進められています。

民間の養成講座も多様な形で展開されています。一般社団法人日本社会的処方協会が運営する養成プログラムは、社会的処方に関する基礎知識から実践技術まで体系的に学べる内容となっています。受講者は医療従事者、福祉専門職、地域活動者など多様で、実践と理論を結びつけた学びが提供されています。

NPOや社会福祉法人が独自に研修プログラムを提供する例もあります。地域の実情に応じた具体的な内容、実践現場との連動、当事者との対話の機会など、それぞれの特色を持った養成が行われています。

自治体が主導する研修も始まっています。地域包括ケアシステムの推進と関連付けて、関係者向けの社会的処方研修を実施する自治体が現れています。多職種が一緒に学ぶ機会を通じて、地域での連携基盤づくりが進められています。

医療機関や医療系団体が独自に提供する研修もあります。日本医師会、日本プライマリ・ケア連合学会などが、医療従事者向けの社会的処方研修を提供しています。臨床の現場で社会的処方を実践するための実用的な内容が中心となっています。

これらの養成の取り組みは、それぞれの強みを持ちながら発展しています。今後はこれらの実践を踏まえて、より体系化された養成プログラムが構築されていくことが期待されます。

養成内容としては、社会的処方の理論と歴史、コミュニケーション技術、地域資源についての知識、関係機関との連携、倫理的な配慮、自己管理とバーンアウト予防などが含まれることが一般的です。座学だけでなく、ロールプレイ、現場見学、実習などを組み合わせた実践的な学びが重視されています。

求められる能力と適性

リンクワーカーには、どのような能力や適性が求められるのでしょうか。

人と接することへの強い関心と意欲は最も基本的な要素です。様々な背景を持つ人々と深く関わる仕事であり、人への関心と尊重の姿勢がなければ続けることが難しい仕事です。

優れた傾聴能力も不可欠です。相手の話を遮らずに聞き、表面的な訴えの背後にある真のニーズを理解する力が求められます。指示や助言を急ぐのではなく、まず相手の世界を理解しようとする姿勢が大切です。

コミュニケーション能力は多面的に必要となります。利用者との対話、関係機関の専門職との連携、地域住民との交流など、様々な相手と効果的にコミュニケーションをとる力が求められます。

地域に対する深い関心と理解も欠かせません。地域の歴史、文化、人々のつながり、利用できる資源、課題などを総合的に理解することが、適切な支援につながります。

柔軟性と創造性も重要な能力です。一人ひとりの利用者に応じた個別の支援を組み立てる必要があり、既存の枠組みにとらわれない発想力が求められます。

ストレス耐性も必要な要素です。困難な状況にある人々と関わり続ける仕事は、精神的な負担が大きくなることがあります。自分自身の心の健康を保ちながら、長期的に活動を続けられる力が必要です。

倫理的な判断力も欠かせません。利用者のプライバシーの保護、個人情報の取り扱い、利益相反への対応など、倫理的な配慮が常に求められる仕事です。

自己研鑽の姿勢も重要です。社会の変化、新しい支援方法、地域資源の変化など、常に学び続ける必要がある分野です。自分の知識や技術を更新し続ける意欲が求められます。

チームでの協働能力も必要です。一人で抱え込むのではなく、関係する専門職や地域の人々と協力しながら支援を展開できる力が大切です。

これらの能力や適性は、すべてが最初から備わっている必要はありません。養成プログラムや実践経験を通じて、徐々に育てていくことができるものです。重要なのは、これらの方向に成長したいという意欲と姿勢です。

報酬とキャリアパスの課題

リンクワーカーが持続可能な専門職として確立されるためには、適切な報酬とキャリアパスが整備される必要があります。

現在の日本では、リンクワーカー的な役割を担う人々の処遇は様々です。地域包括支援センターやコミュニティソーシャルワーカーなど、既存の制度に位置づけられた専門職は一定の処遇が確保されています。一方、NPOや民間の取り組みの中で活動する人々は、ボランティアや低賃金で働いていることが少なくありません。

報酬の確保には、いくつかの課題があります。社会的処方が制度として位置づけられていないため、活動に対する公的な財源が限定的です。診療報酬の中に社会的処方に対する加算がないため、医療機関がリンクワーカーを雇用する経済的なインセンティブが不足しています。

これらの課題への対応として、複数の方向性が検討されています。診療報酬の中での評価、地域支援事業や生活困窮者自立支援制度における位置づけ、新しい予算枠組みの創設など、財源確保の方策が議論されています。

イギリスのように、医療保険制度の中で社会的処方を制度化する方向も検討に値します。日本でも医療と介護の統合的な提供体制が進められており、その中に社会的処方を組み込むことが、財源確保の現実的な道筋となるかもしれません。

キャリアパスの整備も重要な課題です。リンクワーカーとして経験を積んだ人が、より責任のある立場や教育者の役割へとステップアップできる道筋が必要です。スーパーバイザー、教育担当者、地域コーディネーターなど、上位の役割を整備することで、長期的なキャリア形成が可能になります。

専門性の継続的な向上の機会も大切です。研修、学会参加、海外視察、研究活動など、専門職としての成長を支える仕組みが必要です。

複数の働き方の選択肢を用意することも有効です。常勤、非常勤、業務委託、複業など、多様な働き方を認めることで、様々な背景を持つ人々がリンクワーカーとして活動しやすくなります。

報酬とキャリアパスの整備は、個人の働きやすさだけでなく、リンクワーカーという専門職全体の発展にも影響します。優秀な人材が継続的に集まり、専門性が高まっていくためには、これらの環境整備が不可欠です。

海外モデルからの学びと日本独自の発展

海外のリンクワーカー制度から学びながらも、日本独自の発展のあり方を考える視点が重要です。

イギリスをはじめとする海外モデルから学べることは多くあります。社会的処方の理論的基盤、養成プログラムの設計、効果検証の方法、組織体制の作り方など、先行する経験は貴重な参考資料となります。

しかし海外モデルをそのまま日本に持ち込むだけでは、効果的な制度にならない可能性があります。日本には独自の社会保障制度、地域コミュニティのあり方、医療提供体制、文化的背景があります。これらに適応した日本独自のリンクワーカー像を構築する必要があります。

日本の地域包括ケアシステムとの統合は、独自の発展の重要な方向性です。日本では2010年代から地域包括ケアシステムの構築が進められており、医療、介護、予防、生活支援、住まいを地域で一体的に提供する仕組みが整備されてきました。社会的処方とリンクワーカーをこのシステムの中に位置づけることで、日本独自の包括的な支援体制が実現できます。

日本の伝統的な地域コミュニティの強みを活かす視点も大切です。自治会、町内会、老人クラブ、子ども会などの地縁組織、神社や寺院の地域行事、商店街の活動など、日本独特の社会資源を活用した社会的処方の展開が可能です。

少子高齢化への対応という日本の喫緊の課題と、社会的処方の親和性も注目されます。高齢者の孤立、フレイル予防、認知症との共生、ヤングケアラー支援など、日本社会が直面する課題に対して、リンクワーカーの活動は有効なアプローチとなります。

働き方の多様化への対応も日本独自の文脈です。フリーランス、リモートワーク、副業など、新しい働き方が広がる中で、リンクワーカーも柔軟な働き方を選択できる仕組みが求められています。

人と人とのつながりを大切にする日本の文化的特性も活かせる要素です。お互い様、おかげさま、絆といった日本独特の価値観は、社会的処方の理念と通じる部分があります。これらの文化的資源を意識的に活用することで、日本らしい支援のあり方が育まれます。

海外モデルから学びつつ、日本の文脈に根ざした独自の発展を目指すことが、効果的なリンクワーカー制度の構築につながります。輸入された概念をそのまま当てはめるのではなく、日本社会の中で意味を持つ形で再構成する作業が求められています。

地域との関わりと連携

リンクワーカーが効果的に活動するためには、地域との深い関わりと多職種との連携が不可欠です。

地域に深く根ざすことが、リンクワーカーの活動の基盤となります。その地域の歴史、文化、住民の特性、利用できる資源、課題などを長期的に把握することで、本当に役立つ支援が可能になります。短期的な転職を繰り返すのではなく、一定期間以上同じ地域で活動できる体制が望ましいです。

地域資源の開拓と維持も重要な業務です。既存の資源を把握するだけでなく、新しい資源を発掘したり、既存の資源同士をつなげたりする創造的な活動も求められます。資源マップの作成、団体間のネットワーク構築、新しい活動の立ち上げ支援など、多様な働きかけが必要です。

医療機関との連携は社会的処方の出発点として欠かせません。家庭医、診療所、病院などとの良好な関係を築き、適切な紹介ルートを確立することが、社会的処方の流れを作る基盤となります。

行政との連携も重要です。福祉部門、健康部門、教育部門、住宅部門など、関連する行政組織との関係づくりが、利用者支援の幅を広げます。地域の政策決定への関与も、リンクワーカーの重要な役割となり得ます。

地域の市民活動団体との連携も欠かせません。NPO、ボランティア団体、自助グループなど、市民の自発的な活動が地域には豊富に存在します。これらの団体との関係を築き、活動を支えることが、社会的処方の成功につながります。

教育機関との連携も視野に入れたい要素です。小中学校、高校、大学などとの関係を築くことで、子どもや若者への社会的処方や、教育を通じた地域づくりが可能になります。

宗教施設や文化施設との連携も特徴的な要素です。お寺や教会、図書館や博物館など、地域の文化的な拠点が社会的処方の場として活用される可能性があります。

民間企業との関係づくりも、地域資源の幅を広げます。商店、飲食店、サービス業など、地域の経済活動の中にも社会的処方に活用できる要素があります。企業の社会的責任活動と連動させることも考えられます。

これらの多様な主体との連携は、リンクワーカー個人の力だけでは実現できません。組織的な取り組み、地域全体の合意形成、長期的な関係構築など、構造的なアプローチが必要です。

当事者の参画とピアサポート

リンクワーカー制度を考える上で、当事者の参画とピアサポートの位置づけは重要な論点です。

社会的処方の利用者は、自分自身の経験を持つ専門家でもあります。利用者の視点を制度設計に反映させることで、より実効性のある仕組みが作れます。当事者団体やセルフヘルプグループとの対話を通じて、当事者の声を制度に反映させていく取り組みが大切です。

ピアサポーターをリンクワーカーとして位置づける可能性も注目されます。同じような経験を持つ人による支援は、専門職とは異なる効果を持ちます。共感や理解の深さ、安心感、希望を与える力など、ピアならではの強みがあります。

イギリスでは、当事者経験を持つピアリンクワーカーが活躍する事例が増えています。精神疾患の経験、薬物依存からの回復経験、ホームレス経験など、それぞれの経験が支援の力となっています。日本でも同様の取り組みが期待されます。

当事者がリンクワーカーになるための道筋も整備する必要があります。経験を強みとしながら、必要な知識や技術を身につけるための養成プログラムの設計が求められます。

ピアサポートの専門性も認められるべきです。経験があるだけでは支援はできません。経験を支援に活かすためには、自分の経験を整理し、他者の経験と区別し、適切な距離感を保つ訓練が必要です。

報酬の問題もピアサポーターには重要です。多くのピアサポーターはボランティアや低賃金で活動していますが、その専門性に見合った報酬が確保されることが、持続可能な活動につながります。

専門職とピアサポーターの協働のあり方も検討課題です。それぞれの強みを活かしながら、効果的な支援チームを作る仕組みが求められます。互いを尊重し、対等な関係で連携する姿勢が大切です。

まとめ

日本におけるリンクワーカーの資格と養成は、まだ確立段階には至っていませんが、社会的処方の広がりとともに重要性を増している分野です。社会福祉士、精神保健福祉士、保健師、看護師、ケアマネジャーなどの既存の専門職がリンクワーカー的な役割を一部担っているのが現状ですが、専任のリンクワーカーとしての位置づけや養成体制の整備が課題となっています。資格化の議論は様々な立場から進められており、国家資格化、民間資格化、認定制度の活用など複数の方向性が検討されています。イギリスをはじめとする海外の先進事例から学びながらも、日本独自の社会保障制度や地域文化に根ざした発展のあり方を模索する必要があります。

リンクワーカーには傾聴能力、コミュニケーション能力、地域への理解、柔軟性、倫理観など多面的な能力が求められ、これらを養う体系的な教育プログラムの整備が進められています。報酬の確保とキャリアパスの整備は、リンクワーカーが持続可能な専門職として確立される上で不可欠の課題です。地域との深い関わりと多職種との連携、当事者の参画とピアサポートの位置づけなど、考慮すべき論点は多岐にわたります。社会の制度の隙間にいる人々を支える新しい専門職として、リンクワーカーへの期待は確実に高まっています。

資格や養成の制度を整備していくことは、この期待に応える具体的な歩みです。一朝一夕には実現しない課題ですが、現場での実践を積み重ねながら、関係者の議論を深め、制度の整備を進めていくことが大切です。リンクワーカーが日本社会で確立された専門職として活躍する未来に向けて、私たち一人ひとりが関心を持ち、議論に参加していくことが求められています。誰もが社会の中で居場所を見つけ、必要な支援につながれる社会の実現に向けて、リンクワーカーという新しい専門職の発展を支えていきましょう。

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