1. 障害福祉サービス受給者証とは
障害福祉サービス受給者証は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスを利用するために必要な証明書です。この受給者証を持つことで、様々な福祉サービスを公費負担により利用できるようになります。
重要なのは、障害者手帳とは別のものであるということです。障害者手帳を持っていなくても、障害福祉サービス受給者証を取得できる場合があります。逆に、障害者手帳を持っていても、障害福祉サービスを利用する場合は、別途この受給者証の申請が必要です。
受給者証には、利用できるサービスの種類、支給量(1か月に利用できる時間数や日数)、利用者負担の上限額などが記載されます。
この記事では、障害福祉サービス受給者証の役割、申請方法、利用できるサービス、費用負担について、詳しく解説していきます。
2. 障害福祉サービス受給者証と障害者手帳の違い
混同されやすい2つの証明書について、違いを明確にしておきましょう。
障害者手帳
障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)は、障害があることを証明する手帳です。
主な用途は、税金の控除、公共交通機関の割引、各種割引サービス、障害者雇用枠での就職などです。
取得は任意で、必要に応じて申請します。有効期限は、精神障害者保健福祉手帳のみ2年間で、他は基本的に無期限です。
障害福祉サービス受給者証
障害福祉サービス受給者証は、障害福祉サービスを利用するために必要な証明書です。
主な用途は、ホームヘルプ、デイサービス、就労支援、移動支援などの福祉サービスの利用です。
障害福祉サービスを利用したい場合に申請します。有効期限は、サービスの種類によって異なりますが、多くは1年間または3年間です。
両方持つことも、片方だけ持つことも可能
障害者手帳と受給者証は、別々のものです。両方を持つこともできますし、片方だけを持つこともできます。
障害者手帳がなくても、障害福祉サービスが必要と認められれば、受給者証を取得できます。
3. 対象となる人
障害福祉サービス受給者証は、以下のような人が対象となります。
身体障害者
身体障害者手帳を持っている、または身体に障害があると認められる人が対象です。
知的障害者
療育手帳を持っている、または知的障害があると認められる人が対象です。
精神障害者
精神障害者保健福祉手帳を持っている、または精神疾患があると認められる人が対象です。
統合失調症、うつ病、双極性障害、発達障害、高次脳機能障害、てんかんなどが含まれます。
難病患者
国が指定する難病(指定難病)により、障害がある、または日常生活に制限がある人も対象です。
361疾患が対象となっています(令和6年4月現在)。
障害者手帳がなくても申請可能
重要なポイントは、障害者手帳を持っていなくても、医師の診断書や意見書により、障害があると認められれば、受給者証を取得できるということです。
例えば、発達障害があるが手帳は持っていない、精神疾患で治療中だが手帳は取得していない、といった場合でも、サービスが必要と認められれば受給者証を取得できます。
4. 利用できる障害福祉サービスの種類
障害福祉サービスには、大きく分けて「介護給付」と「訓練等給付」があります。
介護給付
日常生活の介護や支援を必要とする人向けのサービスです。
居宅介護(ホームヘルプ)は、自宅での入浴、排せつ、食事などの介護や、調理、洗濯、掃除などの家事援助を行います。
重度訪問介護は、重度の肢体不自由者または重度の知的障害・精神障害により常時介護が必要な人に対し、自宅での介護や外出時の移動支援を総合的に行います。
同行援護は、視覚障害により移動が困難な人に対し、外出時の移動支援や必要な情報提供を行います。
行動援護は、知的障害や精神障害により行動が困難で常時介護が必要な人に対し、危険回避のための援護や外出支援を行います。
重度障害者等包括支援は、介護の必要性が非常に高い人に対し、居宅介護などのサービスを包括的に提供します。
短期入所(ショートステイ)は、介護者が病気や休養が必要なときなどに、短期間施設に入所し、入浴、排せつ、食事の介護などを受けられます。
療養介護は、医療と常時介護の両方が必要な人に対し、医療機関で機能訓練、療養上の管理、看護、介護、日常生活上の支援を行います。
生活介護は、常時介護が必要な人に対し、日中に施設で入浴、排せつ、食事の介護や、創作的活動、生産活動の機会を提供します。
施設入所支援は、施設に入所する人に対し、夜間や休日に入浴、排せつ、食事の介護などを提供します。
訓練等給付
自立した生活や社会参加を目指す人向けのサービスです。
自立訓練(機能訓練・生活訓練)は、自立した日常生活や社会生活ができるよう、一定期間、身体機能や生活能力の向上のための訓練を行います。
就労移行支援は、一般企業への就職を目指す人に対し、就労に必要な知識や能力の向上のための訓練、求職活動の支援、職場定着支援を行います。利用期間は原則2年間です。
就労継続支援A型(雇用型)は、一般企業での就労が困難な人に対し、雇用契約を結んで働く場を提供します。最低賃金以上の給料が保障されます。
就労継続支援B型(非雇用型)は、一般企業での就労が困難な人や、就労移行支援を利用したが就職できなかった人などに対し、雇用契約を結ばずに働く場を提供します。工賃が支払われます。
就労定着支援は、就労移行支援等を利用して一般就労に移行した人に対し、就労に伴う生活面の課題に対する支援を行います。利用期間は最長3年間です。
自立生活援助は、施設やグループホームから一人暮らしに移行した人などに対し、定期的な訪問や相談対応により、地域生活を支援します。利用期間は原則1年間です。
共同生活援助(グループホーム)は、共同生活を行う住居で、相談、入浴、排せつ、食事の介護、日常生活上の援助を行います。
地域生活支援事業
市町村が独自に行うサービスです。受給者証とは別の手続きが必要な場合があります。
移動支援は、外出時の移動を支援します。
地域活動支援センターは、創作的活動、生産活動の機会の提供、社会との交流促進などを行います。
日常生活用具の給付は、日常生活を便利にする用具を給付します。
その他、相談支援、コミュニケーション支援、日中一時支援など、様々なサービスがあります。
5. 申請の流れ
障害福祉サービス受給者証の申請は、以下の流れで行います。
1. 相談
まず、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に相談します。どのようなサービスが必要か、利用できるサービスは何かなどを相談します。
2. 申請
窓口で申請書を受け取り、必要事項を記入して提出します。
必要書類は、障害福祉サービス支給申請書、障害者手帳のコピー(持っている場合)、医師の診断書や意見書(手帳がない場合や、障害の状況を証明するため)、マイナンバーに関する書類、印鑑などです。
3. 調査(アセスメント)
市町村の担当者が、本人や家族と面接し、心身の状況、生活環境、サービス利用の意向などを聞き取ります。この調査結果は、障害支援区分の認定に使われます。
4. 障害支援区分の認定
障害支援区分は、障害の程度を表す指標で、区分1(軽度)から区分6(重度)まであります。
調査結果をもとに、市町村の審査会が障害支援区分を判定します。訓練等給付のサービス(就労移行支援など)は、障害支援区分の認定が不要な場合もあります。
5. サービス等利用計画の作成
相談支援事業所の相談支援専門員が、本人や家族の意向を聞き取り、どのようなサービスをどれくらい利用するかという計画(サービス等利用計画)を作成します。
本人や家族がセルフプランとして自分で作成することもできます。
6. 支給決定
市町村が、サービスの種類、支給量(1か月に利用できる時間数や日数)、利用者負担の上限額などを決定します。
7. 受給者証の交付
支給決定後、障害福祉サービス受給者証が交付されます。申請から交付まで、通常1か月から2か月程度かかります。
8. 事業所との契約
受給者証を受け取ったら、利用したい事業所(ホームヘルプ事業所、就労支援事業所など)と契約を結びます。
9. サービスの利用開始
契約後、サービスの利用を開始します。
10. モニタリングと更新
定期的に、相談支援専門員がモニタリング(サービスの利用状況の確認)を行います。受給者証には有効期限があり、更新手続きが必要です。
6. 費用負担
障害福祉サービスは、原則として1割の自己負担がありますが、所得に応じた負担上限月額が設定されています。
負担上限月額
生活保護世帯の場合、負担上限月額は0円です。
市町村民税非課税世帯(本人および配偶者)の場合、負担上限月額は0円です。
市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)の場合、18歳以上は負担上限月額9,300円、18歳未満は負担上限月額4,600円です。
市町村民税課税世帯(所得割16万円以上)の場合、負担上限月額は37,200円です。
ただし、入所施設やグループホームを利用する場合、20歳以上は本人とその配偶者の所得で判定されますが、20歳未満は世帯全体の所得で判定されます。
実費負担
サービス利用料の1割負担以外に、食費、光熱水費、日用品費などは実費負担となります。
補足給付
低所得の人が、施設やグループホームを利用する場合、食費や光熱水費の一部が補助される制度があります。
7. 受給者証の更新
障害福祉サービス受給者証には有効期限があり、更新手続きが必要です。
有効期限
サービスの種類によって異なりますが、多くは1年間または3年間です。
訓練等給付(就労移行支援など)は、サービスごとに利用期間が定められており、その期間が有効期限となります。
更新手続き
有効期限の約3か月前に、市町村から更新手続きの案内が届きます。更新の申請、調査、サービス等利用計画の見直し、支給決定という流れは、新規申請とほぼ同じです。
更新を忘れると、サービスが利用できなくなりますので、注意が必要です。
8. 受給者証を利用する上での注意点
サービスは事前に申請が必要
サービスを利用してから申請しても、遡って給付を受けることはできません。必ず事前に申請し、受給者証を受け取ってからサービスを利用しましょう。
支給量を超えた利用は全額自己負担
受給者証に記載された支給量(1か月の利用時間数や日数)を超えてサービスを利用した場合、超過分は全額自己負担となります。
計画的な利用が重要
相談支援専門員と相談しながら、自分に必要なサービスを計画的に利用することが大切です。
変更があれば届出を
引っ越し、世帯構成の変更、所得の変化などがあった場合は、市町村に届け出る必要があります。
9. 相談支援事業所の役割
障害福祉サービスを利用する際、相談支援事業所の相談支援専門員が重要な役割を果たします。
サービス等利用計画の作成
本人や家族の希望、生活状況、障害の状況などを聞き取り、どのようなサービスをどれくらい利用するかという計画を作成します。
モニタリング
定期的に、サービスの利用状況を確認し、計画の見直しが必要かどうかを判断します。
総合的な相談
障害福祉サービスのこと以外にも、生活全般の相談に応じます。
関係機関との調整
サービス事業所、医療機関、行政など、様々な関係機関との調整を行います。
相談支援は、基本的に無料で受けられます(計画作成費は公費負担)。
10. よくある質問
障害者手帳がないと受給者証は取得できない?
いいえ、障害者手帳がなくても、医師の診断書や意見書により障害があると認められれば、受給者証を取得できます。
受給者証の申請をすると、必ずサービスが利用できる?
支給決定は、市町村が本人の状況や希望、サービスの必要性などを総合的に判断して行います。申請したからといって、必ず希望通りのサービスが利用できるとは限りませんが、必要性が認められれば、何らかのサービスは利用できます。
複数のサービスを同時に利用できる?
はい、複数のサービスを組み合わせて利用することができます。例えば、平日は就労継続支援B型を利用し、週末にホームヘルプを利用するといったことが可能です。
他の市町村に引っ越したらどうなる?
引っ越し先の市町村で、改めて申請手続きが必要です。引っ越しが決まったら、現在の市町村と引っ越し先の市町村の両方に早めに相談しましょう。
受給者証を持っていることは周囲に知られる?
受給者証は、自分から見せない限り、他人には分かりません。プライバシーは守られます。
サービス事業所には見せる必要がありますが、それ以外の場面で見せる必要はありません。
11. まとめ:必要なサービスを利用するための大切なツール
障害福祉サービス受給者証は、障害者総合支援法に基づく様々な福祉サービスを利用するために必要な証明書です。障害者手帳とは別のもので、サービスを利用する場合は、別途申請が必要です。
対象となるのは、身体障害、知的障害、精神障害、難病により、日常生活や社会生活に支援が必要な人です。障害者手帳がなくても、医師の診断書により障害があると認められれば取得できます。
利用できるサービスには、ホームヘルプ、デイサービス、ショートステイ、就労支援、グループホームなど、様々なものがあります。
申請は、市区町村の障害福祉担当窓口で行います。申請から交付まで1か月から2か月程度かかります。費用は、所得に応じた負担上限月額が設定されており、多くの場合、無料または低額で利用できます。
もし障害により日常生活や社会生活に困難を感じている場合は、まずお住まいの市区町村の障害福祉窓口に相談してみましょう。相談支援事業所でも、相談に応じてくれます。
障害福祉サービスは、障害のある方が自分らしく生活するための権利であり、必要なサービスを利用することは、決して恥ずかしいことではありません。適切なサービスを利用することで、より充実した生活を送ることができます。

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