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「療育手帳を取るべきか迷っている」「デメリットはないのか」「就職に不利になるのでは」「結婚できなくなるのでは」「偏見や差別を受けるのでは」「本人が嫌がるのでは」「一度取ったら返納できないのか」「周囲にバレないか」「軽度だと取れないのか」。
療育手帳の取得を検討している親の多くが、デメリットやリスクについて不安を抱えています。
療育手帳は、知的障害のある人が福祉サービスや税金の優遇を受けられる手帳です。多くのメリットがある一方で、偏見や差別、本人の心理的負担、就職・結婚への影響、返納の難しさなどのデメリットも存在します。しかし、多くのデメリットは対処可能で、メリットがデメリットを上回るケースが多いです。
重要なのは、デメリットを正しく理解し、家族で話し合って決めることです。本記事では、療育手帳のデメリット、メリット、取得の判断基準、本人への伝え方、そしてデメリットへの対処法について詳しく解説します。
療育手帳とは
まず、療育手帳の基本を説明します。
定義
知的障害者のための手帳
療育手帳は、知的障害のある人に交付される障害者手帳です。
名称
自治体により名称が異なります。
- 療育手帳(多くの自治体)
- 愛の手帳(東京都など)
- みどりの手帳(さいたま市)
対象
知的障害
知的障害(知的発達の遅れ)がある人が対象です。
IQの目安
- 重度:IQ35未満
- 中度:IQ35~50程度
- 軽度:IQ50~75程度
ただし
IQだけでなく、日常生活能力も考慮されます。
等級
自治体により異なる
- 2区分(重度A、軽度B)
- 3区分(A1、A2、B)
- 4区分(A、B1、B2、C)
取得方法
- 市区町村の障害福祉課に申請
- 児童相談所(18歳未満)または知的障害者更生相談所(18歳以上)で判定
- 手帳交付
更新
定期的に更新
18歳未満は2~5年ごとに更新が必要です。18歳以上は、等級により異なります。
療育手帳のデメリット
療育手帳のデメリットを詳しく説明します。
1. 偏見・差別
最大のデメリット
療育手帳を持っていることで、偏見や差別を受ける可能性があります。
具体例
- 「あの子は手帳持ち」と陰口
- 親戚から反対される
- 結婚相手の家族から反対される
- 就職で不利
現実
近年、理解は進んでいますが、まだ偏見は存在します。
2. 本人の心理的負担
「自分は障害者」という認識
手帳を持つことで、本人が「自分は障害者だ」と強く認識し、心理的負担になることがあります。
特に思春期
思春期の子どもは、「普通と違う」ことを嫌がります。
自己否定
「自分はダメな人間だ」と自己否定につながることもあります。
3. 就職への影響
選択肢が限られる
一部の職業、企業では、知的障害者の採用を避けることがあります。
ただし
- 障害者雇用枠がある
- 手帳をオープンにするかクローズにするかは選べる
- 軽度の場合、一般就労も可能
4. 結婚への影響
結婚相手やその家族の反対
手帳を持っていることで、結婚相手やその家族から反対されることがあります。
ただし
軽度の知的障害であれば、結婚している人は多くいます。
5. 返納が難しい
一度取ると返せない?
療育手帳は、返納できますが、一度返納すると再取得が難しいことがあります。
詳細は後述
6. 周囲にバレる可能性
隠しにくい
福祉サービスを利用したり、割引を使ったりすることで、周囲にバレる可能性があります。
ただし
手帳を使わなければ、バレません。
7. ラベリング効果
「障害者」のレッテル
手帳を取ることで、本人や周囲が「障害者」というレッテルを貼り、可能性を狭めることがあります。
例
- 「どうせ手帳持ちだから」
- 「この子には無理」
8. 軽度だと取れないことがある
判定に通らない
IQ70以上の軽度知的障害の場合、判定に通らず、手帳を取れないことがあります。
境界知能(IQ70~85)
境界知能は、知的障害に該当せず、手帳を取れません。
9. 更新の手間
定期的な更新
18歳未満は、2~5年ごとに更新が必要で、手間がかかります。
10. 本人が手帳を嫌がる
拒否
本人が手帳を持つことを嫌がり、使わないことがあります。
11. 一部のサービスで「障害者枠」扱い
別扱い
一部の施設やサービスで、「障害者枠」として別扱いされ、不快に感じることがあります。
12. プライバシーの問題
情報管理
手帳の情報が、どこまで管理されているか不安に感じることがあります。
療育手帳のメリット
デメリットと比較するため、メリットも説明します。
1. 福祉サービスの利用
様々なサービス
- 放課後等デイサービス
- 短期入所(ショートステイ)
- 日中一時支援
- 居宅介護(ホームヘルプ)
- 移動支援
- グループホーム
- 就労継続支援(B型、A型)
- 就労移行支援
- 生活介護
- 自立訓練
2. 特別児童扶養手当
手当
特別児童扶養手当を受給できます。
金額(2024年度)
- 1級(重度):月約53,700円
- 2級(中度):月約35,760円
ただし
所得制限あり
3. 障害児福祉手当
重度の場合
重度の障害がある場合、障害児福祉手当を受給できます。
金額
月約15,220円
4. 障害基礎年金
20歳以降
20歳以降、障害基礎年金を受給できます。
金額(2024年度)
- 1級:月約83,150円
- 2級:月約66,520円
5. 税金の優遇
減税
- 所得税の障害者控除(27万円、特別障害者40万円)
- 住民税の障害者控除(26万円、特別障害者30万円)
- 相続税の障害者控除
- 贈与税の特例(特定贈与信託、6,000万円まで非課税)
6. 公共交通機関の割引
交通費が安い
- JR、私鉄の運賃割引(本人・介護者50%割引)
- バス運賃割引
- タクシー運賃割引(自治体により)
- 航空運賃割引
- 高速道路割引(ETC利用で50%割引)
7. 公共施設の割引・無料
レジャー費が安い
- 動物園、水族館、博物館などの入場料割引・無料
- 映画館割引(1,000円程度)
- テーマパーク割引
8. 携帯電話料金の割引
通信費が安い
大手キャリアの障害者割引で、月1,000円以上安くなります。
9. NHK受信料の減免
受信料が安い
- 全額免除(重度で世帯全員が非課税)
- 半額免除(本人が契約者)
10. 駐車禁止除外指定車標章
駐車が楽
一部の自治体で、駐車禁止除外指定車標章が交付され、駐車禁止区域に駐車できます。
11. 障害者雇用枠
就職の選択肢
障害者雇用枠で就職できます。
12. 住宅ローン控除
住宅購入時
障害者向け住宅ローン控除があります。
メリットとデメリットの比較
メリットとデメリットを比較します。
経済的メリットの試算
年間の経済的メリット(例:中度知的障害、軽度B)
- 特別児童扶養手当2級:年約43万円
- 税金の優遇:年約5万円~10万円
- 公共交通機関の割引:年約5万円(よく利用する場合)
- 公共施設の割引:年約2万円
- 携帯電話割引:年約1.5万円
合計:年約55万円~60万円以上
18年間(0~18歳)
合計:約1,000万円以上
経済的メリットは大きい
デメリットの多くは対処可能
偏見・差別
- 理解のある人とつながる
- 手帳の存在を隠す(使わない)
本人の心理的負担
- 適切な時期に、適切に伝える
- 「障害」ではなく「特性」と伝える
就職への影響
- 障害者雇用枠がある
- クローズ就労(手帳を使わない)も可能
結婚への影響
- 軽度であれば、結婚している人は多い
返納
- 返納は可能
取得の判断基準
療育手帳を取るべきか、判断基準を説明します。
取得をおすすめするケース
1. 中度~重度の知的障害
福祉サービスが必要
中度~重度の場合、福祉サービスが必要なので、手帳を取るメリットが大きいです。
2. 経済的に厳しい
経済的支援が必要
特別児童扶養手当、税金の優遇など、経済的支援が大きいです。
3. 将来、グループホーム・入所施設を考えている
福祉サービス利用
グループホーム、入所施設を利用するには、手帳が必要です。
4. 障害者雇用での就職を考えている
就職の選択肢
障害者雇用枠で就職するには、手帳が必要です。
5. 福祉サービスを利用したい
放デイ、ショートステイなど
放課後等デイサービス、ショートステイなどを利用したい場合、手帳が必要です。
取得を慎重に検討すべきケース
1. 軽度の知的障害で、本人が拒否
本人の気持ち
軽度で、本人が強く拒否する場合、無理に取る必要はありません。
2. 一般就労を目指している
就職への影響
一般就労(手帳を使わない就職)を目指している場合、手帳は不要かもしれません。
ただし
取っておいて使わないという選択肢もあります。
3. IQがボーダーライン(70前後)
取れないことも
IQ70前後の場合、判定に通らず、取れないことがあります。
4. 家族が強く反対
家族の同意
家族が強く反対する場合、取得は慎重に検討します。
迷ったら
とりあえず取る
迷ったら、とりあえず取っておくことをおすすめします。
理由
- 取っておいて使わないことも可能
- 必要になったときに、すぐに使える
- 経済的メリットが大きい
使わなければバレない
手帳を使わなければ、周囲にバレません。
本人への伝え方
本人に療育手帳のことを、どう伝えるか説明します。
伝える時期
小学校高学年~中学生
小学校高学年~中学生頃が、適切な時期です。
理由
- 自己理解ができる年齢
- 障害について理解できる
早すぎても遅すぎても×
幼すぎると理解できず、遅すぎると「隠していた」と不信感を持ちます。
伝え方
1. 「障害」ではなく「特性」
肯定的に
「あなたには障害があります」ではなく、「あなたには○○という特性があります」と伝えます。
2. 具体的に
わかりやすく
「あなたは、計算が苦手で、覚えるのに時間がかかります。でも、絵を描くのは得意ですね」と具体的に伝えます。
3. 手帳のメリットを説明
前向きに
「この手帳があると、サポートを受けられます。映画も安くなります」とメリットを説明します。
4. 「特別」ではなく「サポートがある」
当たり前に
「あなたは特別だから手帳がある」ではなく、「メガネをかける人がいるように、サポートが必要な人もいる」と伝えます。
5. 質問に答える
丁寧に
本人の質問に、丁寧に答えます。
6. 否定しない
受け止める
本人が「嫌だ」と言っても、否定せず、受け止めます。
本人が拒否したら
無理強いしない
本人が強く拒否する場合、無理強いしません。
時間をかける
時間をかけて、少しずつ理解してもらいます。
使わない選択肢も
取っておいて、使わないという選択肢もあります。
デメリットへの対処法
デメリットへの対処法を説明します。
偏見・差別への対処
1. 理解のある人とつながる
味方を増やす
親の会、療育施設など、理解のある人とつながります。
2. 手帳の存在を隠す
使わない
必要なとき以外、手帳を使わないことで、周囲にバレません。
3. 堂々とする
自信を持つ
偏見を持つ人は無視して、堂々とします。
4. 教育する
理解を広める
周囲に、障害について正しく理解してもらいます。
本人の心理的負担への対処
1. 適切に伝える
前述の伝え方を参考
適切な時期に、適切に伝えます。
2. 自己肯定感を高める
成功体験
成功体験を積ませ、自己肯定感を高めます。
3. ロールモデルを示す
希望
手帳を持っていても、活躍している人の例を示します。
就職への影響への対処
1. 障害者雇用枠を活用
選択肢
障害者雇用枠で就職します。
2. クローズ就労
手帳を使わない
手帳を使わず、一般就労することも可能です。
3. 得意分野を伸ばす
強み
得意分野を伸ばし、それを活かせる仕事を探します。
返納への対処
返納は可能
療育手帳は、返納できます。
方法
市区町村の障害福祉課に返納届を提出します。
注意
一度返納すると、再取得が難しいことがあります。慎重に判断します。
返納について
療育手帳の返納について、詳しく説明します。
返納できるか
可能
療育手帳は、返納できます。
返納の理由
なぜ返納するか
- 知的障害が改善した
- 本人が嫌がる
- 就職でクローズにしたい
- 結婚で隠したい
返納の方法
手続き
市区町村の障害福祉課に、返納届を提出します。
返納後
サービスが使えなくなる
返納後は、福祉サービス、手当、割引などが使えなくなります。
再取得
難しい場合も
一度返納すると、再取得が難しいことがあります。
理由
「以前は必要だったが、今は必要ない」と判断された記録が残ります。
慎重に
返納は、慎重に判断します。
よくある質問
Q1: 療育手帳を取ると、就職に不利ですか?
A: 障害者雇用枠があり、クローズ就労も可能です。
障害者雇用枠で就職できます。また、手帳を使わない一般就労(クローズ就労)も可能です。
Q2: 結婚できなくなりますか?
A: いいえ、軽度であれば結婚している人は多くいます。
手帳の有無より、本人の人柄や生活能力が重要です。
Q3: 一度取ったら、返せませんか?
A: 返納できますが、再取得が難しいことがあります。
返納は可能ですが、一度返納すると再取得が難しいことがあるので、慎重に判断します。
Q4: 周囲にバレませんか?
A: 手帳を使わなければ、バレません。
必要なとき以外、手帳を使わなければ、周囲にバレません。
Q5: 本人が嫌がっています。どうすればいいですか?
A: 適切に伝え、無理強いしないでください。
適切な時期に、肯定的に伝えます。それでも嫌がる場合、無理強いせず、時間をかけて理解してもらいます。
Q6: 軽度だと取れませんか?
A: IQや日常生活能力により、取れない場合があります。
IQ70以上の場合、取れないことがあります。ただし、日常生活能力も考慮されるので、相談してみてください。
Q7: メリットとデメリット、どちらが大きいですか?
A: 多くの場合、メリットがデメリットを上回ります。
経済的メリットが大きく、デメリットの多くは対処可能です。迷ったら、とりあえず取っておくことをおすすめします。
まとめ
療育手帳のデメリットは、偏見・差別、本人の心理的負担、就職への影響、結婚への影響、返納が難しい、周囲にバレる可能性、ラベリング効果、軽度だと取れないことがある、更新の手間、本人が手帳を嫌がる、一部のサービスで障害者枠扱い、プライバシーの問題です。
メリットは、福祉サービスの利用、特別児童扶養手当、障害児福祉手当、障害基礎年金、税金の優遇、公共交通機関の割引、公共施設の割引・無料、携帯電話料金の割引、NHK受信料の減免、駐車禁止除外指定車標章、障害者雇用枠、住宅ローン控除などです。
経済的メリットは年間約55万円~60万円以上、18年間で約1,000万円以上と大きく、デメリットの多くは対処可能です。
取得をおすすめするケースは、中度~重度の知的障害、経済的に厳しい、将来グループホーム・入所施設を考えている、障害者雇用での就職を考えている、福祉サービスを利用したい場合です。
取得を慎重に検討すべきケースは、軽度の知的障害で本人が拒否、一般就労を目指している、IQがボーダーライン、家族が強く反対する場合です。迷ったら、とりあえず取っておくことをおすすめします。
本人への伝え方は、小学校高学年~中学生頃に、障害ではなく特性、具体的に、手帳のメリットを説明、特別ではなくサポートがある、質問に答える、否定しないことが重要です。
デメリットへの対処法は、偏見・差別には理解のある人とつながる・手帳の存在を隠す、本人の心理的負担には適切に伝える・自己肯定感を高める、就職への影響には障害者雇用枠を活用・クローズ就労、返納は可能だが慎重に判断することです。
一人で抱え込まず、市区町村の障害福祉課、児童相談所、知的障害者更生相談所、相談支援事業所、発達障害者支援センター、親の会などに相談しながら、家族で話し合って決めましょう。療育手帳は、子どもの将来を支える重要なツールです。デメリットを理解した上で、賢く活用しましょう。
主な相談窓口
市区町村の障害福祉課
- 手帳の申請、相談
児童相談所(18歳未満)
- 判定
知的障害者更生相談所(18歳以上)
- 判定
相談支援事業所
- 総合的な相談
発達障害者支援センター
- 情報提供
親の会
- ピアサポート
一人で悩まず、必ず相談してください。療育手帳の取得は、家族にとって大きな決断です。正しい情報をもとに、最善の選択をしましょう。

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