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「親と同居しているけれど、世帯を分けた方がいいのか」「福祉サービスの利用料が安くなると聞いた」「でも、デメリットはないのか」「手続きは面倒なのか」。障害のある人と親が同居している場合、世帯分離という選択肢があります。
世帯分離とは、同じ住所に住んでいても、住民票上の世帯を別々にすることです。世帯分離をすることで、福祉サービスの利用料が安くなる、税金が軽減されるなど、多くのメリットがあります。本記事では、世帯分離とは何か、メリットとデメリット、手続き方法、注意点、そしてよくある質問について詳しく解説します。
世帯分離とは
基本的な仕組み
同じ住所、別の世帯
世帯分離とは、同じ住所に住んでいても、住民票上の世帯を別々にすることです。
具体例
世帯分離前
- 住所:同じ
- 世帯主:父
- 世帯員:母、障害のある子ども
世帯分離後
- 住所:同じ
- 世帯1:世帯主 父、世帯員 母
- 世帯2:世帯主 障害のある子ども(単身世帯)
実態は変わらない
世帯分離をしても、実際の生活は変わりません。一緒に住み続けます。
変わるのは住民票上の世帯
住民票上の世帯が分かれるだけです。
世帯とは
生計を一つにする単位
世帯とは、住居と生計を一つにする単位です。
住民基本台帳法の定義
「世帯とは、居住と生計を共にする社会生活上の単位」とされています。
実務上の運用
実務上は、同じ住所に住んでいても、生計が別であれば世帯を分けることができます。
世帯分離と住所変更の違い
住所は変えない
世帯分離は、住所を変えるのではありません。同じ住所のまま、世帯だけを分けます。
住所変更(別居)
- 住所が変わる
- 実際に別々に暮らす
世帯分離
- 住所は同じ
- 実際は一緒に暮らす
- 住民票上の世帯が分かれる
世帯分離のメリット
世帯分離をすることで、様々なメリットがあります。
1. 福祉サービスの利用料が安くなる
最大のメリット
障害福祉サービスの利用料は、世帯の所得に応じて決まります。世帯分離をすることで、利用料が安くなる可能性があります。
利用者負担の仕組み
障害福祉サービスの利用料は、原則1割負担ですが、所得に応じて月額上限があります。
月額上限(2024年度)
- 生活保護受給世帯:0円
- 市町村民税非課税世帯:0円
- 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満):9,300円
- 上記以外:37,200円
世帯の範囲
18歳以上の障害者の場合
- 障害者本人とその配偶者
18歳未満の障害児の場合
- 保護者の属する住民基本台帳での世帯
世帯分離のメリット
親の収入が高く、市町村民税課税世帯の場合、世帯分離をすることで、障害者本人だけの世帯となり、本人が非課税であれば、利用料が0円になります。
具体例
世帯分離前
- 世帯:父、母、障害のある子ども(20歳)
- 父の収入:年収600万円(市町村民税課税)
- 子どもの収入:障害基礎年金のみ(非課税)
- 福祉サービス利用料:月額9,300円または37,200円
世帯分離後
- 世帯1:父、母(市町村民税課税)
- 世帯2:障害のある子ども(市町村民税非課税)
- 福祉サービス利用料:0円
年間の削減額
- 月額9,300円の場合:年間111,600円
- 月額37,200円の場合:年間446,400円
対象サービス
- 居宅介護(ホームヘルプ)
- 生活介護
- 就労継続支援A型・B型
- 短期入所(ショートステイ)
- グループホーム
- その他の障害福祉サービス
2. 障害基礎年金の所得制限に影響しない
20歳前障害の場合
20歳前に障害を負った人が受給する障害基礎年金には、所得制限があります。
所得制限(2024年度)
- 本人の所得が462万1,000円を超えると全額停止
- 本人の所得が360万4,000円を超えると半額支給
世帯分離のメリット
所得制限は「本人の所得」で判定されるため、世帯分離をしても影響はありません。ただし、世帯分離により、本人の所得が明確になります。
注意点
世帯分離そのものは障害基礎年金には直接影響しませんが、親の扶養から外れることで、親の税金や社会保険料に影響する可能性があります(後述)。
3. 税金の控除が受けられる
障害者控除、特別障害者控除
親が障害のある子どもを扶養している場合、障害者控除または特別障害者控除が受けられます。
控除額(2024年度)
- 障害者控除(所得税):27万円
- 特別障害者控除(所得税):40万円
- 同居特別障害者控除(所得税):75万円
世帯分離しても控除は受けられる
世帯分離をしても、実際に同居し、生計を一にしていれば、同居特別障害者控除(75万円)を受けられます。
メリット
世帯分離をすることで、福祉サービスの利用料は安くなり、かつ税金の控除も受けられるため、二重にメリットがあります。
4. 生活保護が受けやすくなる
本人だけの収入で判定
生活保護の受給要件は、世帯の収入が最低生活費を下回ることです。
世帯分離のメリット
世帯分離をすることで、障害者本人だけの収入で判定されるため、生活保護が受けやすくなります。
具体例
世帯分離前
- 世帯の収入:父の給与 + 子どもの障害年金
- 生活保護:受給できない(世帯収入が最低生活費を上回る)
世帯分離後
- 子どもの収入:障害年金のみ
- 生活保護:受給できる可能性(障害年金が最低生活費を下回る場合)
5. 国民健康保険料が安くなる可能性
世帯単位で計算
国民健康保険料は、世帯の所得に応じて計算されます。
世帯分離のメリット
世帯分離をすることで、障害者本人の世帯の保険料が安くなる可能性があります。
注意点
親の世帯の保険料が上がる可能性もあります。全体で見ると、必ずしも安くならない場合もあります。
6. 介護保険料が安くなる可能性
65歳以上の場合
65歳以上の障害者は、介護保険料を支払います。介護保険料は、所得に応じて決まります。
世帯分離のメリット
世帯分離をすることで、本人の所得が低ければ、介護保険料が安くなります。
7. グループホームの家賃補助
特定障害者特別給付費
グループホームの家賃補助(特定障害者特別給付費、月額最大1万円)は、市町村民税非課税世帯が対象です。
世帯分離のメリット
世帯分離をすることで、本人が非課税世帯となり、家賃補助が受けられる可能性があります。
8. 心理的なメリット
自立の意識
世帯分離をすることで、本人が「一人の大人」として扱われる意識が芽生えます。
親の意識の変化
親も、子どもを一人の大人として見るようになります。
世帯分離のデメリット・注意点
世帯分離にはデメリットや注意点もあります。
1. 親の扶養から外れる
健康保険の扶養
親の健康保険の扶養に入っている場合、世帯分離をすると扶養から外れる可能性があります。
扶養の要件
健康保険の扶養の要件は、「生計を一にしていること」「年収が130万円未満」などです。世帯分離をすると、「生計を一にしている」とみなされない可能性があります。
影響
扶養から外れると、本人が国民健康保険に加入する必要があり、保険料を支払います。
対策
保険組合によって扱いが異なるため、事前に確認しましょう。世帯分離をしても、実際に同居し、生計を一にしていれば、扶養を継続できる場合もあります。
2. 親の税金が増える可能性
扶養控除が受けられなくなる可能性
障害者控除は受けられますが、扶養控除(一般の扶養親族:38万円)が受けられなくなる可能性があります。
ただし
実際に同居し、生計を一にしていれば、世帯分離をしても扶養控除や障害者控除は受けられます。
確認
税務署や税理士に確認しましょう。
3. 国民健康保険料の総額が増える可能性
世帯が分かれる
世帯分離をすることで、それぞれの世帯で国民健康保険料を支払うことになり、総額が増える可能性があります。
具体例
世帯分離前
- 世帯の保険料:年額15万円
世帯分離後
- 親の世帯の保険料:年額12万円
- 子どもの世帯の保険料:年額5万円
- 合計:年額17万円
対策
市区町村の国民健康保険窓口で、事前にシミュレーションしてもらいましょう。
4. 手続きの手間
複数の手続き
世帯分離をすると、以下の手続きが必要になります。
必要な手続き
- 世帯分離届の提出
- 国民健康保険の手続き
- 福祉サービスの利用者負担額の再判定
- その他
手間
手続きには、一定の手間がかかります。
5. 親亡き後の準備が必要
単身世帯
世帯分離をすると、本人は単身世帯となります。親が亡くなった場合の準備が必要です。
準備
- 成年後見制度
- 日常生活自立支援事業
- 相談支援事業所との連携
6. 世帯の定義の曖昧さ
自治体によって解釈が異なる
世帯分離の運用は、自治体によって異なる場合があります。
確認
市区町村の窓口で、事前に確認しましょう。
7. 生活実態との乖離
住民票と実態
住民票上は別世帯でも、実際は一緒に暮らしています。この乖離が、手続きの際に説明を求められることがあります。
世帯分離をすべきかの判断基準
世帯分離をすべきかどうか、判断基準を示します。
世帯分離をすべき場合
以下の条件を満たす場合、世帯分離を検討すべきです。
- 親の収入が高く、市町村民税課税世帯
- 福祉サービスの利用料が月額9,300円または37,200円
- 障害者本人の収入が低く、非課税
- 障害基礎年金のみ、またはB型工賃のみ
- 福祉サービスを利用している、または利用予定
- 居宅介護、生活介護、B型、グループホームなど
- 健康保険の扶養の影響が少ない
- 親が国民健康保険
- または、保険組合が世帯分離後も扶養を認める
- 国民健康保険料の総額が増えない、または許容範囲
世帯分離をしない方がいい場合
以下の場合、世帯分離をしないか、慎重に検討すべきです。
- 親も市町村民税非課税世帯
- 福祉サービスの利用料は既に0円
- 福祉サービスを利用していない
- メリットが少ない
- 親の健康保険の扶養に入っており、外れるリスクが高い
- 国民健康保険料が大幅に増える
- 国民健康保険料の総額が大幅に増える
- メリットよりデメリットが大きい
- 手続きが面倒、または理解が難しい
シミュレーションをする
必ず事前に
世帯分離をする前に、必ず以下をシミュレーションしましょう。
シミュレーション項目
- 福祉サービスの利用料の変化
- 国民健康保険料の変化
- 健康保険の扶養の可否
- 親の税金の変化
- その他の影響
相談先
- 市区町村の障害福祉課(福祉サービス利用料)
- 市区町村の国民健康保険窓口(保険料)
- 親の勤務先または保険組合(健康保険の扶養)
- 税務署または税理士(税金)
世帯分離の手続き方法
世帯分離の手続き方法を説明します。
1. 事前準備
シミュレーション
上記の相談先で、事前にシミュレーションをします。
必要書類の確認
市区町村の窓口で、必要書類を確認します。
2. 世帯分離届の提出
提出先
市区町村の住民課(または市民課、区民課など)
必要なもの
- 世帯分離届(窓口にあります)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 印鑑(自治体によっては不要)
記入内容
- 世帯主の氏名
- 分離する人の氏名
- 分離の理由
分離の理由
「生計を別にするため」などと記入します。詳細な理由は求められないことが多いですが、自治体によっては確認される場合があります。
即日対応
世帯分離届は、その場で受理され、新しい住民票が発行されます。
3. 新しい住民票の取得
世帯全員の住民票
世帯分離後の住民票を取得します。
必要枚数
- 福祉サービスの手続き用
- 健康保険の手続き用
- その他
4. 関連手続き
国民健康保険
国民健康保険に加入している場合、同じ窓口で手続きをします。
健康保険の扶養
親の健康保険の扶養に入っている場合、親の勤務先または保険組合に確認し、必要な手続きをします。
福祉サービス
福祉サービスを利用している場合、市区町村の障害福祉課に新しい住民票を提出し、利用者負担額の再判定を依頼します。
再判定の時期
通常、翌月または翌々月から新しい利用者負担額が適用されます。
その他
必要に応じて、以下の手続きをします。
- 税金の申告
- その他の福祉サービス
5. 確認
利用者負担額の確認
福祉サービスの利用者負担額が、実際に変更されたか確認します。
保険料の確認
国民健康保険料が、予想通りか確認します。
よくある質問
Q1: 世帯分離は違法ではないのですか?
A: 合法です。
世帯分離は、住民基本台帳法で認められた手続きです。同じ住所に住んでいても、生計が別であれば世帯を分けることができます。
Q2: 実際は親と生計を一にしているのに、世帯分離できますか?
A: グレーゾーンです。
実務上は、同じ住所に住んでいても、世帯分離届を提出すれば受理されることがほとんどです。ただし、厳密には「生計を別にしている」ことが前提です。障害のある子どもが障害基礎年金を受給しており、一定の収入があれば、生計を別にしているとみなされることが多いです。自治体によって解釈が異なるため、窓口で確認しましょう。
Q3: 世帯分離をすると、親の扶養控除が受けられなくなりますか?
A: 実際に同居し、生計を一にしていれば受けられます。
世帯分離をしても、実際に同居し、生計を一にしていれば、扶養控除や障害者控除は受けられます。税務署に確認しましょう。
Q4: 世帯分離をすると、健康保険の扶養から外れますか?
A: 保険組合によります。
保険組合によって扱いが異なります。世帯分離をしても、実際に同居し、生計を一にしていれば、扶養を継続できる場合もあります。親の勤務先または保険組合に確認しましょう。
Q5: 世帯分離を元に戻すことはできますか?
A: できます。
世帯合併届を提出すれば、元に戻すことができます。
Q6: 世帯分離をしたことが、周囲にバレますか?
A: 通常はバレません。
世帯分離をしても、住所は変わりません。住民票を見ない限り、周囲にはわかりません。
Q7: 兄弟姉妹がいる場合、どうすればいいですか?
A: 障害のある子どもだけを世帯分離します。
障害のある子どもだけを世帯分離し、親と他の兄弟姉妹は同じ世帯のままにすることができます。
Q8: 世帯分離をすると、生活保護を受けやすくなりますか?
A: 受けやすくなります。
世帯分離をすることで、障害者本人だけの収入で判定されるため、生活保護を受けやすくなります。
まとめ
世帯分離とは、同じ住所に住んでいても、住民票上の世帯を別々にすることです。
世帯分離のメリットは、福祉サービスの利用料が安くなる(年間最大約45万円の削減)、税金の控除が受けられる、生活保護が受けやすくなる、国民健康保険料や介護保険料が安くなる可能性、グループホームの家賃補助が受けられる、心理的なメリットなどがあります。
デメリットや注意点は、親の健康保険の扶養から外れる可能性、親の税金が増える可能性、国民健康保険料の総額が増える可能性、手続きの手間、親亡き後の準備が必要、世帯の定義の曖昧さ、生活実態との乖離などです。
世帯分離をすべきかの判断基準は、親の収入が高く市町村民税課税世帯、本人が非課税、福祉サービスを利用している、健康保険の扶養の影響が少ない、国民健康保険料の総額が増えない場合です。
手続きは、事前準備(シミュレーション)、世帯分離届の提出、新しい住民票の取得、関連手続き(国民健康保険、健康保険の扶養、福祉サービス)、確認です。
必ず事前にシミュレーションをし、メリットとデメリットを比較してから、世帯分離を決めましょう。市区町村の障害福祉課、国民健康保険窓口、税務署、保険組合などに相談しながら進めることをおすすめします。
主な相談窓口
市区町村の障害福祉課
- 福祉サービス利用料のシミュレーション
市区町村の国民健康保険窓口
- 保険料のシミュレーション
親の勤務先または保険組合
- 健康保険の扶養の可否
税務署または税理士
- 税金への影響
一人で決めず、必ず専門家に相談してください。

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