1. 仕事中に意識が飛ぶとは
仕事中に強い眠気に襲われ、気づいたら一瞬意識が途切れていた、という経験はありませんか。「意識が飛ぶ」とは、一瞬記憶が抜け落ちる、何をしていたか分からなくなる、気づいたら数秒から数分経っていた、という状態を指します。
単なる眠気とは異なり、意識が飛ぶ症状は、日常生活や仕事に支障をきたすだけでなく、重大な事故につながる危険性もあります。また、背景に病気が隠れている可能性もあるため、注意が必要です。
この記事では、仕事中に眠気が強く、意識が飛ぶ症状の原因、すぐにできる対処法、病院を受診すべき目安、そして考えられる病気について、詳しく解説していきます。
2. 「意識が飛ぶ」症状の具体例
まず、どのような状態を「意識が飛ぶ」と表現するのか、具体的に見てみましょう。
マイクロスリープ(瞬間的居眠り)
数秒から数十秒程度、一瞬意識が途切れる状態です。本人は眠っていることに気づかないことが多く、気づいたら時計の針が進んでいた、パソコンの画面が変わっていた、ということが起こります。
デスクワーク中にキーボードを打っていたはずが、気づいたら同じキーを連打していた、会議中に話を聞いていたつもりが、内容がまったく思い出せない、運転中に気づいたら車線を外れていたといった状態です。
自動症
意識がもうろうとした状態で、無意識のうちに何か行動をしている状態です。後から、その間のことを覚えていません。
パソコンを操作していたが、何を入力したか覚えていない、書類を書いていたが、内容が支離滅裂だった、歩いていたが、どうやってそこに着いたか覚えていないといった状態です。
ぼんやりして集中できない
意識ははっきりしているが、頭がぼーっとして、仕事に集中できない状態です。同じ文章を何度読んでも頭に入らない、話しかけられても反応が遅れる、簡単なミスを繰り返すといった状態です。
突然の強烈な眠気
我慢できないほどの強い眠気が突然襲ってくる状態です。睡眠不足でもないのに、抗いがたい眠気に襲われ、気づいたら寝落ちしていたという経験があります。
3. よくある原因
仕事中に眠気が強く、意識が飛ぶ原因は様々です。まず、よくある原因から見てみましょう。
睡眠不足
最も多い原因が、単純な睡眠不足です。必要な睡眠時間は個人差がありますが、一般的には7時間から8時間が推奨されています。
慢性的に睡眠時間が不足していると、日中の眠気が強くなり、集中力が低下します。徹夜明け、連日の残業、夜更かしの習慣などが原因となります。
睡眠の質の低下
睡眠時間は確保していても、睡眠の質が悪いと、日中の眠気につながります。
寝る直前までスマートフォンを見ている、寝室が明るい・騒がしい、寝酒の習慣がある、寝る前にカフェインを摂取するなどの習慣は、睡眠の質を低下させます。
昼食後の生理的な眠気
昼食後、特に午後2時から3時頃は、生理的に眠くなりやすい時間帯です。これは、体内時計のリズムによるものです。
炭水化物を多く摂ると、血糖値が急上昇した後に急降下し、眠気が強くなることがあります。
単調な作業
変化のない単調な作業を続けていると、脳の活動が低下し、眠気を感じやすくなります。
長時間のデスクワーク、同じ作業の繰り返し、静かで刺激の少ない環境などが原因となります。
ストレスと疲労
過度のストレスや疲労が蓄積すると、睡眠の質が低下したり、日中の眠気が強くなったりします。
仕事のプレッシャー、人間関係のストレス、長時間労働などが影響します。
運動不足
適度な運動は、睡眠の質を向上させます。運動不足は、睡眠の質を低下させ、日中の眠気につながります。
生活リズムの乱れ
不規則な生活、夜勤や交代勤務などにより、体内時計が乱れると、睡眠のリズムが崩れ、日中の眠気が強くなります。
カフェインの過剰摂取または離脱
カフェインを過剰に摂取していると、耐性ができて効果が薄れます。また、カフェインを急にやめると、離脱症状として眠気や頭痛が現れることがあります。
4. すぐにできる対処法
仕事中に強い眠気に襲われたとき、すぐにできる対処法をご紹介します。
短時間の仮眠
可能であれば、15分から20分程度の短い仮眠を取ることが最も効果的です。それ以上長く寝ると、深い睡眠に入ってしまい、かえって目覚めが悪くなります。
昼休みに仮眠を取る、休憩室で目を閉じるなどの工夫をしましょう。
軽い運動やストレッチ
席を立って歩く、階段を上り下りする、ストレッチをするなど、体を動かすことで、血行が良くなり、眠気が軽減されます。
トイレに行くついでに少し歩く、デスクで肩や首を回すだけでも効果があります。
顔を洗う、冷たい水を飲む
冷たい水で顔を洗う、冷水を飲むことで、交感神経が刺激され、目が覚めます。
深呼吸
ゆっくりと深く呼吸をすることで、脳に酸素が送られ、眠気が軽減されることがあります。
カフェインを摂る
コーヒーや緑茶などのカフェインを含む飲み物を摂ることで、一時的に覚醒度が上がります。ただし、効果が現れるまでに20分から30分かかります。
過剰摂取は逆効果ですので、適度な量に留めましょう。
明るい光を浴びる
外に出て日光を浴びる、明るい場所に移動することで、体内時計がリセットされ、覚醒度が上がります。
作業内容を変える
単調な作業を続けていると眠くなりやすいので、別の作業に切り替える、少し難易度の高い作業に取り組むなど、変化をつけましょう。
ガムを噛む
ガムを噛むことで、咀嚼のリズムが脳を刺激し、眠気が軽減されることがあります。
換気をする
部屋の空気が悪いと、眠気が強くなります。窓を開けて換気をする、エアコンの設定を見直すなどしましょう。
5. 生活習慣の改善
一時的な対処法だけでなく、根本的に眠気を改善するためには、生活習慣の見直しが重要です。
十分な睡眠時間の確保
毎日7時間から8時間の睡眠を確保しましょう。睡眠不足が続いている場合は、睡眠負債を返済するために、週末に少し多めに寝ることも有効です。
規則正しい睡眠リズム
毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きることで、体内時計が整い、睡眠の質が向上します。休日も、平日と大きく変えないことが大切です。
睡眠環境の整備
寝室を暗く、静かに、適温に保ちます。遮光カーテン、耳栓、適切な寝具などを使い、快適な睡眠環境を整えましょう。
寝る前の習慣
寝る1時間前からは、スマートフォンやパソコンの使用を控えます。ブルーライトは、睡眠を妨げるメラトニンの分泌を抑制します。
寝る前のカフェイン、アルコール、タバコは避けましょう。リラックスできる活動(読書、音楽、ストレッチなど)をすることで、入眠しやすくなります。
適度な運動
日中に適度な運動をすることで、夜の睡眠の質が向上します。ただし、寝る直前の激しい運動は逆効果ですので、避けましょう。
昼食の内容を見直す
炭水化物を大量に摂ると、血糖値の急変動により眠気が強くなります。バランスの取れた食事を、腹八分目に留めることが大切です。
タンパク質、野菜を多めに、炭水化物は控えめにすると、午後の眠気が軽減されます。
ストレス管理
ストレスは睡眠の質を低下させます。趣味の時間を持つ、人と話す、リラクゼーション技法を学ぶなど、ストレスを適切に発散しましょう。
6. 病院を受診すべき目安
以下のような場合は、単なる睡眠不足ではなく、病気が隠れている可能性があります。早めに医療機関を受診しましょう。
十分な睡眠を取っているのに日中の眠気が強い
毎晩7時間から8時間以上寝ているのに、日中の眠気が改善されない場合は、睡眠の病気の可能性があります。
突然、我慢できない眠気に襲われる
睡眠不足でもないのに、突然強烈な眠気に襲われ、寝落ちしてしまうことが繰り返される場合は、ナルコレプシーなどの病気が疑われます。
いびきがひどい、または睡眠中に呼吸が止まる
家族から、いびきがひどい、睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
寝ても疲れが取れない
十分な時間寝ても、朝起きたときに疲れが残っている、熟睡感がない場合は、睡眠の質に問題がある可能性があります。
意識を失う、または記憶が抜け落ちる
一瞬意識を失う、後から思い出せない時間がある、という場合は、てんかんなどの脳の病気の可能性もあります。
日常生活や仕事に支障が出ている
眠気のために、仕事でミスが増えた、運転が危険、人間関係に問題が生じているなど、生活に明らかな支障が出ている場合は、受診が必要です。
その他の症状を伴う
頭痛、めまい、動悸、息切れ、体重の変化、気分の落ち込みなど、他の症状を伴う場合は、様々な病気の可能性があります。
7. 考えられる病気
仕事中の強い眠気と意識が飛ぶ症状の背景には、以下のような病気が隠れている可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に呼吸が何度も止まる病気です。呼吸が止まるたびに脳が覚醒するため、睡眠の質が著しく低下し、日中の強い眠気につながります。
主な症状として、大きないびき、睡眠中の無呼吸(家族が気づく)、日中の強い眠気、起床時の頭痛や口の渇き、集中力の低下、夜間頻尿などがあります。
リスク要因として、肥満、首が太い・短い、顎が小さい、扁桃腺が大きい、鼻づまり、飲酒、喫煙などがあります。
治療としては、CPAP(持続陽圧呼吸療法)、マウスピース、生活習慣の改善(減量、禁酒など)、場合によっては手術が行われます。
ナルコレプシー
日中に突然、我慢できない眠気に襲われ、居眠りしてしまう病気です。脳の覚醒を維持する機能に異常があると考えられています。
主な症状として、日中の過度の眠気(睡眠発作)、情動脱力発作(笑ったり驚いたりすると、突然体の力が抜ける)、入眠時幻覚(眠りに入るときに生々しい幻覚を見る)、睡眠麻痺(金縛り)などがあります。
10代から20代での発症が多く見られます。治療としては、薬物療法(覚醒を促す薬、情動脱力発作を抑える薬)、規則正しい睡眠、計画的な短時間の昼寝などが行われます。
特発性過眠症
十分な睡眠を取っているにもかかわらず、日中の過度の眠気があり、長時間の昼寝をしてしまう病気です。ナルコレプシーと似ていますが、情動脱力発作はありません。
治療としては、薬物療法、生活習慣の調整などが行われます。
うつ病
うつ病では、不眠だけでなく、過眠(寝すぎる)が症状として現れることがあります。また、日中の強い倦怠感や集中力の低下により、眠気を感じやすくなります。
気分の落ち込み、興味や喜びの喪失、疲労感、思考力の低下などの症状も伴います。
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの分泌が低下する病気です。代謝が低下し、常に眠い、だるい、疲れやすいといった症状が現れます。
体重増加、寒がり、便秘、皮膚の乾燥、記憶力の低下などの症状も伴います。
貧血
貧血により、脳への酸素供給が不足すると、眠気、だるさ、集中力の低下などが起こります。
めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、顔色が悪いなどの症状も伴います。
糖尿病
血糖値のコントロールが悪いと、高血糖または低血糖により、眠気や意識の変容が起こることがあります。
特に、低血糖では、冷や汗、手の震え、動悸、強い空腹感、意識障害などが急激に現れます。
慢性疲労症候群
原因不明の強い疲労が6か月以上続く病気です。休んでも疲労が回復せず、日中の眠気や集中力の低下が見られます。
てんかん
脳の神経細胞の異常な興奮により、発作が起こる病気です。一瞬意識を失う(欠神発作)、記憶が抜け落ちる、といった症状が現れることがあります。
薬の副作用
抗ヒスタミン薬(花粉症の薬など)、抗不安薬、睡眠薬、一部の抗うつ薬、血圧の薬など、多くの薬に眠気の副作用があります。
服用している薬がある場合は、副作用の可能性も考慮しましょう。
8. 受診する診療科
症状に応じて、以下の診療科を受診しましょう。
睡眠外来・睡眠障害専門外来
睡眠に関する問題全般を扱う専門外来です。睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー、特発性過眠症などの診断と治療を行います。
呼吸器内科・耳鼻咽喉科
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、これらの診療科でも診察を受けられます。
精神科・心療内科
うつ病、不安症など、精神的な問題が眠気の原因となっている場合は、これらの診療科を受診します。
内科
甲状腺機能低下症、糖尿病、貧血など、内科的な病気が疑われる場合は、まず内科を受診します。
神経内科
てんかんなど、脳神経の病気が疑われる場合は、神経内科を受診します。
かかりつけ医
どの診療科を受診すべきか分からない場合は、まずかかりつけ医に相談し、適切な診療科を紹介してもらうこともできます。
9. 検査と診断
睡眠に関する病気の診断には、以下のような検査が行われます。
問診
睡眠時間、睡眠の質、日中の眠気の程度、いびき、無呼吸の有無、生活習慣などについて詳しく聞かれます。
エプワース眠気尺度(ESS)などの質問票を用いて、日中の眠気の程度を評価します。
睡眠日誌
1週間から2週間程度、毎日の就寝時刻、起床時刻、昼寝の有無、眠気の程度などを記録します。
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)
睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシーの診断に用いられる検査です。一晩、医療機関に入院または検査機器を自宅に持ち帰り、睡眠中の脳波、呼吸、心拍、酸素飽和度などを記録します。
反復睡眠潜時検査(MSLT)
ナルコレプシーの診断に用いられる検査です。日中、2時間おきに5回、薄暗い部屋で横になり、入眠までの時間やレム睡眠の出現を調べます。
血液検査
甲状腺機能、血糖値、貧血などを調べるために、血液検査が行われることがあります。
その他の検査
必要に応じて、MRIやCTなどの画像検査、脳波検査などが行われることもあります。
10. 職場での対応と配慮
仕事中の眠気や意識が飛ぶ症状で困っている場合、職場での対応も重要です。
上司や産業医に相談
症状が業務に支障をきたしている場合は、上司や人事部、産業医に相談することを検討しましょう。
病気の診断がある場合は、医師の診断書を提出し、必要な配慮を求めることができます。
可能な配慮
短時間の仮眠の許可、作業時間の調整(眠気の強い時間帯を避ける)、単調な作業の軽減、定期的な休憩の確保、明るい場所での作業、安全上のリスクが高い作業(運転、機械操作など)の回避などが考えられます。
障害者雇用や就労支援
ナルコレプシーなどの病気で、日常生活や仕事に大きな支障がある場合は、障害者手帳の取得や、障害者雇用枠での就労、就労支援サービスの利用なども選択肢となります。
11. まとめ:我慢せず、適切な対処を
仕事中に強い眠気があり、意識が飛ぶ症状は、単なる睡眠不足だけでなく、睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー、うつ病など、様々な病気が原因となっている可能性があります。
まずは、睡眠時間の確保、睡眠の質の改善、生活習慣の見直しなど、自分でできる対処法を試してみましょう。短時間の仮眠、軽い運動、カフェインの適度な摂取なども、一時的な対処として有効です。
しかし、十分な睡眠を取っているのに改善しない、突然の強烈な眠気に襲われる、日常生活や仕事に支障が出ている、という場合は、医療機関を受診することが重要です。
眠気や意識が飛ぶ症状を我慢し続けると、仕事のパフォーマンスが低下するだけでなく、事故につながる危険性もあります。また、背景に病気がある場合、早期に発見し治療を開始することで、症状を大きく改善できます。
気になる症状がある場合は、一人で抱え込まず、睡眠外来や内科、精神科などの専門医に相談しましょう。適切な診断と治療により、眠気をコントロールし、快適に仕事や生活を送ることができるようになります。

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