うつ病の人がとる行動 症状のサインと周囲の理解

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うつ病は心の病気ですが、行動にも様々な変化として現れます。以前は積極的だった人が何もしなくなる、清潔だった人が身だしなみを気にしなくなる、社交的だった人が人を避けるようになるなど、その人らしさが失われていくような変化が見られます。

これらの行動変化はうつ病の症状の一部であり、本人の意志の弱さや怠けではありません。脳の機能が低下し、考える力、判断する力、行動する力が著しく低下している状態です。

周囲がこれらの行動変化をうつ病のサインとして理解し、適切に対応することで、本人が必要な治療を受けるきっかけとなります。

この記事ではうつ病の人に見られる典型的な行動変化、その背景、周囲の対応について詳しく解説します。

うつ病の基本理解

うつ病とは

うつ病は、脳の機能が低下し、気分の落ち込み、興味や喜びの喪失、エネルギーの低下などが持続する精神疾患です。単なる気分の落ち込みではなく、医学的な治療が必要な病気です。

行動変化が現れる理由

脳機能の低下
うつ病では脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)のバランスが崩れ、脳の機能が低下します。思考力、判断力、意欲、集中力が著しく低下します。

エネルギーの枯渇
心身のエネルギーが極度に低下し、日常的な行動をとることさえ困難になります。

自己評価の低下
自分は価値がない、何をやってもダメだという否定的な思考により、行動を起こす意欲が失われます。

日常生活における行動変化

起床・睡眠に関する行動

朝起きられない
朝起きるのが非常に困難になります。目覚まし時計を何度も止めます。布団から出られない。午前中は特に調子が悪いことが多い(日内変動)。

過度の睡眠
一日中寝ている。10時間以上眠る。休日はほとんど寝て過ごす。寝ても寝ても疲れが取れない。

不眠
なかなか寝つけない(入眠困難)。夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)。朝早く目が覚めて眠れない(早朝覚醒)。

昼夜逆転
夜眠れず昼間寝るという生活リズムの乱れ。

身だしなみ・衛生面の行動

入浴しない
入浴の頻度が極端に減る。何日も、時には何週間も入浴しない。入浴する気力がない。

着替えない
同じ服を何日も着続ける。パジャマのまま一日過ごす。着替える必要性を感じない。

歯を磨かない
歯磨きをしなくなる。口腔衛生が悪化する。

髪を整えない
髪がボサボサのまま。洗髪しない。男性は髭を剃らない。

化粧をしない
以前は化粧をしていた女性がすっぴんで過ごす。外見を気にしなくなる。

部屋が散らかる
片付けをしない。ゴミが溜まる。洗濯物が山積み。掃除をしない。

背景
身だしなみを整える気力がない。自分の外見に興味がない。面倒だと感じる。エネルギーがない。自分を大切にする気持ちが失われている。

食事に関する行動

食欲不振
食べる気がしない。食事を抜く。少量しか食べられない。味がしない、おいしく感じない。体重が減少する(1ヶ月で5キログラム以上など)。

過食
逆に食べ過ぎる。特に甘いものを大量に食べる。感情を食べ物で埋めようとする。体重が増加する。

食事の準備をしない
料理をしなくなる。買い物に行かない。コンビニ食やデリバリーばかり。または何も食べない。

一人で食べる
家族と一緒に食事をしなくなる。部屋で一人で食べる。

背景
食欲の低下または増加はうつ病の典型的症状。食事を準備するエネルギーがない。味覚が鈍麻する。人と食事をする気力がない。

仕事・学業に関する行動

遅刻・欠勤が増える
頻繁に遅刻する。欠勤が増える。休みがちになる。朝起きられない。会社や学校に行く気力がない。

ギリギリに出勤する
以前は余裕を持って出勤していたのに、ギリギリの時間に駆け込む。

仕事の効率低下
ミスが増える。作業が遅くなる。締め切りに遅れる。集中できない。

決断できない
簡単な判断もできなくなる。優先順位がつけられない。どうすればいいか分からない。

責任を避ける
新しい仕事を引き受けない。責任ある立場を避ける。会議で発言しない。

休憩時間に一人でいる
昼休みも机に座ったまま。同僚との会話を避ける。休憩室に行かない。

早退する
午後になると帰りたくなる。途中で抜け出す。

退職を考える
仕事を辞めたいと繰り返し言う。退職願を出す。衝動的に辞めてしまう。

背景
認知機能の低下により仕事のパフォーマンスが落ちる。集中力、記憶力、判断力の低下。極度の疲労感。職場にいることが苦痛。自分は役に立たないという思い。

対人関係における行動

人を避ける
友人や家族との約束をキャンセルする。誘いを断る。電話に出ない。メールやLINEに返信しない。訪問者に会わない。

会話が減る
家族との会話が少なくなる。必要最低限のことしか話さない。一言で返事をする。

表情が乏しい
笑わなくなる。無表情。目に生気がない。うつろな表情。

視線を合わせない
人の目を見て話さない。下を向いている。

引きこもる
自室にこもる。外出しない。家族とも顔を合わせない。カーテンを閉めて暗い部屋にいる。

イライラする
些細なことで怒る。家族に当たる。攻撃的になる(特に男性に多い)。

依存的になる
一人でいることを怖がる。常に誰かそばにいてほしい。決断を他人に委ねる。

背景
人と関わるエネルギーがない。会話することが疲れる。自分が他人の負担になると感じる。迷惑をかけたくない。社交性の喪失。感情が麻痺している。

趣味・余暇活動の行動

興味の喪失
以前好きだったことに興味がなくなる。趣味をやめる。楽しめない。

テレビやスマホをぼんやり見る
何時間もテレビをつけているが内容は入っていない。スマホを見ているが集中していない。

何もしない
ぼんやり座っている。横になっている。何をする気も起きない。

外出しない
買い物にも行かない。散歩もしない。家に閉じこもる。

運動をやめる
ジムやランニングなど、習慣的にしていた運動をやめる。

背景
興味や喜びの喪失(アンヘドニア)はうつ病の中核症状。何をしても楽しくない。エネルギーがない。面倒だと感じる。

金銭管理の行動

請求書を放置する
支払いを忘れる。督促状が来ても対応しない。

浪費する
衝動買いをする。ネットショッピングで無駄な買い物。ギャンブルにのめり込む(気分を紛らわせるため)。

お金の管理ができない
家計簿をつけなくなる。通帳記入をしない。残高を把握していない。

背景
判断力の低下。現実逃避。一時的な満足を求める。日常的なタスクをこなせない。

うつ病特有の行動パターン

自殺関連行動(最も注意すべき)

自殺について話す
死にたい、消えたい、いなくなりたい、楽になりたいと口にする。冗談めかして言うこともある。

自殺の計画を立てる
自殺の方法を調べる。遺書を書く。SNSに別れのようなメッセージを投稿する。

身辺整理をする
大切なものを人にあげる。荷物を整理する。借金を返そうとする。ペットを人に譲る。

突然元気になる
深刻なうつ状態から突然明るくなる(自殺を決意して楽になった可能性があり非常に危険)。

危険な場所に行く
高いビル、橋、線路など危険な場所に近づく。

危険な行動
無謀な運転、大量の薬を集めるなど。

これらのサインがあれば緊急対応が必要
すぐに専門家に相談、必要なら救急車を呼ぶ。一人にしない。危険なものを遠ざける。

反復的・儀式的行動

同じことを繰り返し確認する
鍵をかけたか何度も確認。メールを何度も読み返す。

同じことを繰り返し尋ねる
安心を求めて同じ質問を繰り返す。

ルーティンに固執する
少しの変化も受け入れられない。決まった行動パターンから外れることを恐れる。

背景
不安の軽減。確実性への渇望。変化への対応能力の低下。

回避行動

電話・メールを見ない
着信を無視する。メールを開かない。連絡を断つ。

郵便物を開けない
請求書や手紙を開封せず積み上げる。

医療機関を受診しない
体調が悪くても病院に行かない。歯医者を避ける。

責任を回避する
やらなければならないことを先延ばしにする。締め切りを守らない。

背景
対処する気力がない。現実から目を背けたい。決断を下せない。

過度の謝罪

常に謝る
自分のせいだと考える。些細なことでも謝罪する。申し訳ないと繰り返す。

自分を責める
すべて自分が悪いと考える。自分は迷惑な存在だと思う。

背景
自己評価の極端な低下。罪責感。他者に負担をかけているという思い込み。

身体症状を訴える行動

痛みを訴える
頭痛、腰痛、胃痛など身体の痛みを訴える。検査しても異常が見つからない。

疲労を訴える
常に疲れている、だるいと訴え続ける。

内科を転々とする
身体症状のため内科を何軒も受診するが改善しない。精神科受診を勧められても拒否する。

背景
うつ病では身体症状が前面に出ることがある(仮面うつ病)。心の問題を身体の問題として感じる。

重症度による行動の違い

軽度のうつ病

仕事や学校には何とか行けるが、効率が落ちる。休日は寝て過ごす。趣味はしなくなる。人との交流は最低限。外見はほぼ保たれる。

中等度のうつ病

仕事や学校を休みがちになる。日常生活に明らかな支障。身だしなみが乱れ始める。食事が不規則。人との交流を避ける。

重度のうつ病

仕事や学校に行けない。一日中寝ている、または何もせずぼんやりしている。入浴や着替えもできない。食事もとれない。家族との会話もほとんどない。自室にこもる。自殺のリスクが高い。

うつ病の行動変化と似た他の状態

燃え尽き症候群(バーンアウト)

仕事などで頑張りすぎた結果、エネルギーが枯渇した状態。うつ病と症状が重なるが、休息により比較的早く回復することが多い。

適応障害

特定のストレス要因に対する反応。ストレス源から離れると改善する。うつ病より軽度で期間も短い。

認知症

高齢者の場合、認知症とうつ病の鑑別が必要。記憶障害が主か、気分の落ち込みが主かなど専門家の判断が必要。

甲状腺機能低下症

倦怠感、意欲低下、抑うつ気分など、うつ病と似た症状。血液検査で鑑別可能。

薬物の副作用

一部の薬(降圧薬、ステロイドなど)の副作用でうつ症状が出ることがある。

家族や周囲の人の対応

気づくこと

本人は病気と気づいていないことが多い。周囲が行動の変化に気づき、声をかけることが重要。

受診を勧める

「最近元気がないようだけど、一度病院で診てもらったら?」と優しく提案。無理強いせず、本人のペースを尊重。

批判しない

「怠けている」「気持ちの問題」「頑張れば治る」などの言葉は禁物。病気であることを理解する。

話を聴く

本人の話をじっくり聴く。解決策を提示するより共感することが大切。「つらいね」「大変だったね」と受け止める。

励まさない

「頑張れ」は逆効果。本人は十分頑張っているのにできない状態。プレッシャーになる。

無理をさせない

無理に外出させる、活動させるのは避ける。本人のペースを大切に。

危険なサインを見逃さない

自殺に関するサインには最大限の注意。専門家にすぐ相談。一人にしない。

自分も休む

支える側も疲弊する。自分のケアも大切。一人で抱え込まない。相談できる人を持つ。

長期戦の覚悟

うつ病の回復には時間がかかる。数ヶ月から年単位。焦らず見守る。

専門家のサポートを受ける

家族だけで対応しようとせず、医師、カウンセラー、保健師などの専門家の助けを借りる。家族向けのサポートグループもある。

職場での対応

上司・人事の対応

変化に気づく
遅刻、欠勤、パフォーマンスの低下などに気づいたら声をかける。

プライバシーに配慮して相談
個室で一対一で話す。責めるのではなく心配していることを伝える。

産業医・保健師につなぐ
専門家に相談するよう勧める。

業務調整
負担を軽減する。残業を減らす。責任の重い仕事を一時的に外す。

休職を提案
必要なら休職を勧める。復職支援プログラムを説明する。

復職後の配慮
段階的な復職。定期的な面談。無理をさせない。

同僚の対応

気づいたら声をかける
「最近大丈夫?」と優しく声をかける。

サポートする
仕事を手伝う。カバーする。ただし本人のプライドを傷つけないよう配慮。

普通に接する
特別扱いせず、しかし温かく見守る。孤立させない。

噂話をしない
病気のことをむやみに広めない。プライバシーを守る。

本人ができること

うつ病の人は行動する力が極端に低下していますが、少しずつできることから始めることが回復につながります。

助けを求める

一人で抱え込まない。家族、友人、医師に相談する。これが最も重要な第一歩。

治療を受ける

精神科、心療内科を受診する。薬物療法、心理療法を受ける。医師の指示に従う。

小さな目標

大きな目標は避ける。「今日は起きる」「今日は顔を洗う」など小さな目標から。達成できたら自分を褒める。

規則正しい生活

できる範囲で生活リズムを整える。朝起きる時間を決める。日光を浴びる。

完璧を求めない

すべてをこなそうとしない。優先順位をつける。できないことは仕方ないと受け入れる。

自分を責めない

病気のせいであって自分のせいではない。自分を責めない。

焦らない

回復には時間がかかる。波がある。良い時と悪い時がある。焦らず一歩ずつ。

まとめ

うつ病の人には様々な行動変化が現れます。朝起きられない、身だしなみを気にしなくなる、人を避ける、興味を失う、仕事のパフォーマンスが落ちる、何もする気が起きないなど、その人らしさが失われていくような変化です。

これらの行動変化は、うつ病による脳機能の低下、エネルギーの枯渇、自己評価の低下によるものです。本人の意志の弱さや怠けではありません。病気の症状です。

特に注意すべきは自殺関連行動です。死にたいと口にする、身辺整理をする、突然元気になるなどのサインがあれば、緊急に専門家に相談する必要があります。

家族や周囲の人は、行動の変化に気づき、批判せず、話を聴き、受診を勧め、長期的に見守ることが大切です。「頑張れ」は禁句です。

職場では上司や人事が変化に気づき、産業医につなぎ、業務調整や休職を提案することが重要です。

本人は助けを求める、治療を受ける、小さな目標から始める、自分を責めない、焦らないことが大切です。

うつ病は適切な治療により回復可能な病気です。行動変化をうつ病のサインとして理解し、早期に適切な対応をとることで、回復への道が開けます。一人で抱え込まず、専門家の助けを借りながら、本人も周囲も無理をせず、長い目で見守っていきましょう。

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