英彦山神宮は福岡県田川郡添田町と大分県中津市にまたがる英彦山に鎮座する神社で、修験道の霊場として約1300年の歴史を持つ格式高い神社です。日本三大修験道の山の一つに数えられ、かつては多くの修験者が厳しい修行を行った聖地として知られています。標高1199メートルの英彦山は古くから神の山として崇められ、山全体が御神体とされてきました。本記事では英彦山神宮の歴史や由緒、祀られている神様、境内の見どころ、そして参拝する際に知っておきたい情報について詳しく見ていきます。
英彦山神宮の歴史と由緒
英彦山神宮の創建は継体天皇25年531年と伝えられ、約1500年の歴史を持ちます。北魏の僧である善正が英彦山に登り、霊鷲山として開山したのが始まりとされています。当初は仏教寺院として発展しました。
奈良時代から平安時代にかけて修験道の霊場として栄え、最盛期には僧坊が800以上、修験者が3000人以上いたといわれています。羽黒山、熊野三山とともに日本三大修験道の山として、全国から修行者が集まりました。
明治時代の神仏分離により英彦山神社となり、昭和50年1975年には別格官幣社の格式を引き継ぎ、英彦山神宮に改称されました。神宮の称号を持つのは伊勢神宮、明治神宮など限られた神社のみで、その格式の高さを示しています。
祀られている神様
英彦山神宮の主祭神は天忍穂耳命です。天照大御神の御子神であり、農業や産業の神として信仰されています。また山の神、修験道の神としても崇敬されてきました。
天忍穂耳命は天孫降臨の際にニニギノミコトの父神として重要な役割を果たした神であり、皇室とも深い関わりのある神様です。この神様を主祭神として祀ることは、英彦山の格式の高さを示しています。
また相殿神として伊邪那岐命と伊邪那美命も祀られており、これらの神々の御神徳により、五穀豊穣、家内安全、厄除け、開運招福など幅広いご利益があるとされています。
修験道の霊場
英彦山は古くから修験道の聖地として知られ、羽黒山、熊野三山とともに日本三大修験道の山に数えられます。険しい山道を登り、滝に打たれ、断食をするなど、厳しい修行が行われてきました。
修験道とは山岳信仰と仏教、道教などが融合した日本独自の宗教形態です。英彦山では神仏習合の時代から多くの修験者が修行を積み、霊力を身につけようとしました。
現在でも英彦山には修験道の伝統が色濃く残っており、峰入りという修行が行われることがあります。一般の参拝者も山を登ることで、修験の雰囲気を感じることができます。
奉幣殿と上宮
英彦山神宮には麓の奉幣殿と山頂近くの上宮があります。一般的に参拝するのは奉幣殿で、標高約600メートルに位置する立派な社殿です。銅の鳥居をくぐり、石段を登った先にあります。
上宮は標高1188メートルの山頂近くにあり、英彦山の最も神聖な場所とされています。奉幣殿から上宮までは登山道を約2時間から3時間かけて登る必要があります。
体力に自信がある方は、上宮まで参拝することでより強いご利益が得られるとされています。山頂からの眺望も素晴らしく、晴れた日には遠く九州の山々を一望できます。
銅の鳥居と国の重要文化財
英彦山神宮の参道入口には、日本三大銅鳥居の一つに数えられる立派な銅の鳥居があります。寛永14年1637年に奉納されたもので、国の重要文化財に指定されています。
高さ約6.3メートルの堂々とした鳥居は、緑青を帯びた独特の風格があります。約400年の風雪に耐えてきたこの鳥居は、英彦山神宮のシンボルとなっています。
銅の鳥居をくぐると、いよいよ聖域に入るという厳かな気持ちになります。この鳥居の前で一礼してから参道を進むのが作法です。
石段と杉並木の参道
銅の鳥居から奉幣殿までは、約800段の石段が続きます。両側には樹齢数百年の杉並木が立ち並び、神秘的な雰囲気を醸し出しています。この参道そのものが修行の場でもあります。
石段を一段一段登ることは、心身を清める行為とされています。急な石段ですが、ゆっくりと自分のペースで登ることで、日常の煩悩を洗い流すことができます。
途中には休憩所もあり、息を整えながら登ることができます。杉の香りと森の空気に包まれた参道は、都会の喧騒を忘れさせてくれる特別な空間です。
英彦山の自然と四季
英彦山は豊かな自然に恵まれており、四季折々の美しさを楽しむことができます。春には新緑が美しく、参道の杉並木も鮮やかな緑に包まれます。また山野草の花々も咲き、登山者の目を楽しませます。
夏は深い緑に覆われ、涼を求める人々が訪れます。山の上は麓より気温が低く、避暑地としても人気があります。秋には紅葉が美しく、特に10月下旬から11月上旬が見頃です。
冬は雪に覆われることもあり、厳しい自然の中に神々しさを感じます。ただし冬季は登山道が危険になることもありますので、十分な装備と注意が必要です。
スロープカー
かつては英彦山花園駅から神宮下駅までスロープカーが運行されており、急な参道を楽に登ることができました。高齢者や体力に自信のない方にとって便利な交通手段でした。
しかし現在は運行を休止しており、徒歩で石段を登る必要があります。訪問前には最新の運行状況を確認することをお勧めします。
徒歩での参拝は時間と体力を要しますが、それだけに達成感も大きく、修験の山ならではの体験ができます。自分の足で登ることに意味があるともいえます。
年中行事
英彦山神宮では一年を通じて様々な祭事が執り行われています。1月1日の歳旦祭には初詣の参拝者が訪れ、山の神様に新年の無事を祈願します。雪の中での参拝となることもあります。
5月には例大祭が盛大に執り行われ、神事や奉納行事が行われます。修験道ゆかりの神社らしく、伝統的な儀式が厳かに執り行われます。
また春と秋には峰入りという修験道の修行が行われることもあります。一般の方も参加できる場合がありますので、興味のある方は問い合わせてみると良いでしょう。
ご利益と信仰
英彦山神宮は山岳信仰と修験道の霊場として、開運招福や厄除けのご利益で知られています。厳しい修行の場であったことから、心身を鍛え、困難を乗り越える力を授けてくださるとされています。
また天忍穂耳命を祀ることから、五穀豊穣や産業発展のご利益もあります。農業や林業に従事する人々の信仰も篤い神社です。
さらに山の神様として登山の安全を守ってくださるともされており、登山者が安全祈願に訪れることも多くあります。自然の厳しさと神々しさを感じられる霊験あらたかな神社です。
参拝の作法とマナー
英彦山神宮を参拝する際は、一般的な神社参拝の作法に従います。銅の鳥居をくぐる前に一礼し、参道の石段を敬意を持って登ります。手水舎で手と口を清めてから拝殿に向かいます。
参拝は二礼二拍手一礼が基本です。お賽銭を入れ、鈴を鳴らしてから二度深く礼をし、二度拍手して祈願し、最後に一礼します。修験の山として、特に心を込めて参拝することが大切です。
石段を登る際は歩きやすい靴が必須です。上宮まで登る場合は登山装備が必要で、飲料水や食料、雨具なども準備しましょう。自然を大切にし、ゴミは必ず持ち帰ることが重要です。
授与品とお守り
英彦山神宮では様々なお守りや授与品が用意されています。厄除け守や開運守は特に人気があり、修験の山のご利益をいただけるお守りです。
また登山安全守は登山者に人気で、英彦山をはじめ様々な山での安全を祈願するお守りです。自然の厳しさを知る山岳信仰の神社ならではの授与品です。
御朱印も授与されており、参拝の記念として多くの人が受けています。御朱印帳も販売されており、英彦山神宮オリジナルのデザインが人気です。神宮の格式を示す貴重な御朱印です。
拝観時間とアクセス
英彦山神宮の境内は基本的に自由に参拝できますが、社務所や授与所の受付時間は午前9時から午後5時頃までです。祈祷を希望する場合は事前に確認することをお勧めします。
アクセスはJR日田彦山線の彦山駅が最寄りですが、駅からは約7キロメートル離れているため、タクシーまたはバスの利用が必要です。バスの本数は限られていますので、事前に時刻表を確認しましょう。
車で訪れる場合は大分自動車道の杷木インターチェンジから約30分です。神社には無料駐車場がありますが、紅葉シーズンなど混雑時は早めの到着がお勧めです。
周辺の見どころ
英彦山周辺には他にも見どころがあります。英彦山温泉は参拝後の疲れを癒すのに最適で、山の幸を使った料理も楽しめます。登山の後の温泉は格別です。
また添田町には他にも史跡や自然スポットがあり、英彦山観光と合わせて楽しむことができます。道の駅歓遊舎ひこさんでは地元の特産品を購入できます。
福岡県と大分県の県境に位置するため、両県の観光を組み合わせることも可能です。自然豊かな筑豊地方の魅力を満喫できます。
まとめ
英彦山神宮は約1500年の歴史を持つ格式高い神社であり、日本三大修験道の山として古くから修験者の修行の場として栄えてきました。天忍穂耳命を主祭神として祀り、開運招福、厄除け、五穀豊穣など幅広いご利益があるとされています。明治時代の神仏分離を経て昭和50年に神宮の称号を得た、数少ない格式高い神社です。国の重要文化財である銅の鳥居から始まる参道は約800段の石段が続き、樹齢数百年の杉並木に囲まれた神秘的な空間となっています。標高約600メートルの奉幣殿と山頂近くの上宮があり、上宮まで登ることでより深い参拝体験ができます。四季折々の自然が美しく、特に秋の紅葉は見事です。修験の山らしい厳かな雰囲気と自然のパワーを感じられる、九州を代表する霊験あらたかな聖地です。参拝には体力を要しますが、それだけに得られる達成感と御神徳も大きい、特別な神社です。

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