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「今どんな気持ち?」と聞かれても答えられない。
何が辛いのか、どう感じているのか、自分でもわからない。言葉にしようとすると頭が真っ白になる。
医師やカウンセラーに説明しようとしても、うまく伝えられない。この「自分の状態を言葉にできない」状態は、孤立感と無力感をもたらし、適切な支援を受けることも困難にします。
本記事では、なぜ言葉にできないのか、その背景を理解し、自分の状態を表現するための具体的な方法、そして支援を受けるためのコミュニケーション術について詳しく解説します。
自分の状態を言葉にできない状態
まず、この状態を理解しましょう。
よくあるパターン
医師やカウンセラーに「どんな症状がありますか」と聞かれても、言葉が出てこない。「辛いです」としか言えず、何がどう辛いのか説明できない。
友人や家族に「大丈夫?」と聞かれても、「大丈夫」としか答えられない。本当は大丈夫ではないのに、説明できない。
自分の感情が何なのかわからない。悲しいのか、怒っているのか、不安なのか、それとも別の何かなのか、区別がつかない。
身体の症状はあるのに、それを言葉で表現できない。「なんとなく調子が悪い」という曖昧な表現しかできない。
孤立感と無力感
言葉にできないことは、深い孤立感をもたらします。自分の苦しみを誰にもわかってもらえない、伝えられない、理解されない。
「説明できない自分」に無力感を感じ、「こんなこともできないのか」と自己嫌悪に陥ります。
支援を受けにくい
自分の状態を言葉にできないと、適切な支援を受けることが困難になります。医師は診断できず、カウンセラーは対処法を提案できず、周囲も何をすればいいかわかりません。
結果として、必要な支援が得られず、状況が改善しません。
なぜ言葉にできないのか
自分の状態を言葉にできない背景には、さまざまな要因があります。
アレキシサイミア
アレキシサイミア失感情症とは、自分の感情を認識したり、言葉で表現したりすることが困難な状態です。
感情はあるのに、それが何なのか、なぜそう感じるのかがわからない。「お腹が痛い」という身体感覚はわかっても、「悲しい」という感情としては認識できない。
アレキシサイミアは、自閉スペクトラム症、PTSD、うつ病などと関連することがあります。
感情の抑圧
長期間にわたって感情を抑圧してきた人は、自分の感情に気づく能力が低下します。「泣いてはいけない」「弱音を吐いてはいけない」「怒ってはいけない」と教えられて育った人は、感情を感じること自体を封じ込めます。
感情を感じないようにしてきた結果、感情がわからなくなります。
語彙の不足
感情や身体感覚を表現する語彙を知らない、または持っていない場合、言葉にすることが困難です。
「憂鬱」「焦燥感」「倦怠感」「違和感」など、微妙なニュアンスを表現する言葉を知らないと、「なんとなく嫌な感じ」としか言えません。
複雑すぎる状態
状態があまりに複雑で、一言では表現できない場合もあります。悲しみと怒りと不安と疲労が混ざり合っている、身体症状と精神症状が絡み合っているなど。
複雑すぎて、どこから説明すればいいかわからず、言葉に詰まります。
思考の混乱
うつ病や不安障害では、思考が混乱し、言葉を組み立てる能力が低下します。頭が働かない、考えがまとまらない、言葉が出てこないという状態になります。
解離症状
解離症状がある場合、自分の感情や身体感覚から切り離されている感覚があり、自分の状態を認識できません。
「ここにいるのに、ここにいない」「自分のことなのに、自分のことではない」という感覚が、言葉にすることを妨げます。
トラウマ
トラウマ体験がある場合、その体験や関連する感情を言葉にすることが非常に困難です。言葉にしようとすると、フラッシュバックが起きる、身体が固まる、パニックになるなど。
脳がトラウマを言語化することから自分を守っています。
文化的背景
日本の文化では、感情を詳しく言語化する習慣があまりありません。「察する」文化であり、言葉にしなくてもわかり合えるという前提があります。
そのため、感情を明確に言語化する訓練を受けていない人が多いです。
発達障害
自閉スペクトラム症などの発達障害がある場合、自分の内的状態を認識したり、言語化したりすることが苦手な場合があります。
また、抽象的な概念を理解することが難しい場合もあります。
自分の状態を言葉にする方法
言葉にできない状態から、少しずつ表現できるようになるための方法があります。
身体感覚から始める
感情を直接言語化することが難しい場合、身体感覚から始めましょう。
「胸が苦しい」「お腹が重い」「肩がこる」「頭が痛い」「息が浅い」「手が冷たい」など、身体に現れている感覚を言葉にします。
身体感覚は、感情よりも認識しやすく、言葉にしやすいです。
感情リストを使う
感情を表す言葉のリストを見ながら、「これに近い」というものを選ぶ方法があります。
喜び、悲しみ、怒り、恐怖、不安、嫌悪、驚き、興味、罪悪感、羞恥心、嫉妬、焦燥感、虚無感、孤独感、絶望感など。
リストから選ぶことで、自分の感情に名前をつけられます。感情リストは、インターネットで検索すれば見つかります。
数値で表現する
「どれくらい辛いですか」と聞かれた時、「10点満点で○点」と数値で表現する方法もあります。
具体的な言葉が出なくても、強度を伝えることができます。
例えを使う
「まるで〇〇のような感じ」と、例えを使って表現する方法もあります。
「頭の中に霧がかかっているような」「胸に重い石が乗っているような」「身体が鉛のように重い」など。
例えは、抽象的な感覚を伝えるのに有効です。
書き出す
話すことが難しい場合、書き出してみましょう。紙に、またはスマートフォンのメモに、思いつくままに書きます。
書くことで、思考が整理され、言葉にしやすくなります。書いたものを、医師やカウンセラーに見せることもできます。
絵や図で表現する
言葉にできない場合、絵や図で表現する方法もあります。自分の状態を色や形で表す、身体の図に痛みや不快感の場所を記すなど。
アートセラピーでは、言葉にできない感情を絵で表現します。
比較する
過去の状態と比較して表現する方法もあります。
「昨日よりは良い」「先週よりも悪い」「一年前と同じくらい」など。
他人の言葉を借りる
本、映画、歌詞などで、自分の状態を表現している言葉を見つけたら、「これです」と示す方法もあります。
他人が既に言語化してくれたものを借りることで、伝えられます。
質問に答える形式
「どう感じていますか」という開かれた質問には答えにくくても、「眠れていますか」「食欲はありますか」「楽しいと感じることはありますか」という具体的な質問には答えやすいです。
医師やカウンセラーに、具体的な質問をしてもらうようお願いしましょう。
時間をかける
すぐに答えられなくても、焦る必要はありません。「少し考える時間をください」と言って、時間をかけて言葉を探しましょう。
沈黙を恐れず、ゆっくり考えることも大切です。
支援者とのコミュニケーション
医師やカウンセラー、家族など、支援者とどうコミュニケーションを取ればいいでしょうか。
「言葉にできない」と伝える
まず、「自分の状態を言葉にすることが難しいです」と正直に伝えましょう。
支援者がそのことを理解すれば、質問の仕方を工夫してくれたり、別の方法を提案してくれたりします。
事前に準備する
診察やカウンセリングの前に、伝えたいことをメモしておきましょう。箇条書きでも構いません。
その場で言葉に詰まっても、メモを見せることができます。
同伴者に助けてもらう
一人では説明できない場合、信頼できる家族や友人に同伴してもらい、補足してもらうことも有効です。
時間をかけてもらう
診察時間が短いと、十分に説明できません。「時間をかけて話を聞いてほしい」と事前に伝えましょう。
初診では長めの時間を取ってくれる医療機関もあります。
複数回に分けて伝える
一度にすべてを伝える必要はありません。複数回の診察やカウンセリングを通じて、少しずつ伝えていけば良いのです。
アレキシサイミアへの対処
アレキシサイミアがある場合、特別なアプローチが必要です。
専門家の支援
アレキシサイミアに詳しいカウンセラーや心理士の支援を受けましょう。感情を認識し、言語化する訓練を行うことができます。
マインドフルネス
マインドフルネス瞑想は、今この瞬間の身体感覚や感情に気づく訓練です。継続的に実践することで、自分の内的状態への気づきが高まります。
感情日記
毎日、その日に感じた感情を記録する習慣をつけましょう。最初は「なんとなく嫌な感じ」でも構いません。
徐々に、感情を認識し、言語化する能力が育ちます。
トラウマがある場合
トラウマがある場合、言語化は非常に困難で、無理をすると再トラウマ化の危険があります。
トラウマ専門家の支援
トラウマに詳しい心理士やカウンセラーの支援を受けましょう。EMDR、ソマティックエクスペリエンシング、トラウマフォーカスト認知行動療法など、専門的な治療法があります。
安全を最優先
無理に言語化しようとせず、まずは安全感を確立することが最優先です。安全を感じられる環境、関係性ができてから、少しずつ取り組みます。
家族や友人へのお願い
周囲の人ができることもあります。
質問を工夫する
「どうしたの?」という開かれた質問ではなく、「眠れている?」「食欲はある?」「何か手伝えることはある?」という具体的な質問をする。
言葉にするよう急かさない
「ちゃんと説明して」と急かすと、さらに言葉が出なくなります。時間をかけて、待つ姿勢が大切です。
推測を押し付けない
「こういうことでしょ」と決めつけず、本人のペースで言葉が出るのを待ちましょう。
言葉以外の表現を受け入れる
涙、沈黙、身体の動きなど、言葉以外の表現も、コミュニケーションです。言葉だけが伝達手段ではありません。
まとめ
自分の状態を言葉にできないことは、決して珍しいことではなく、アレキシサイミア、感情の抑圧、語彙の不足、複雑な状態、思考の混乱、解離、トラウマなど、さまざまな背景があります。
身体感覚から始める、感情リストを使う、数値で表現する、例えを使う、書き出す、絵で表現するなど、言語化のための方法はあります。
医師やカウンセラーには、「言葉にできない」と正直に伝え、事前にメモを用意する、時間をかけてもらう、質問を工夫してもらうなどの工夫が有効です。
言葉にできない自分を責める必要はありません。少しずつ、自分のペースで、自分の内的世界を探索し、表現していけば良いのです。
専門家の支援を受けながら、焦らず、優しく、自分と向き合っていきましょう。言葉にできなくても、あなたの苦しみは本物であり、あなたには支援を受ける権利があります。

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