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トラウマとは何か、なぜ忘れられないのか
トラウマが忘れられないという悩みは、深刻な心の痛みを伴います。事故や災害、暴力、虐待、いじめ、喪失体験など、強い恐怖や無力感を伴う出来事は、心に深い傷を残します。時間が経っても記憶が色褪せず、まるで昨日のことのように鮮明に思い出され、当時の感情が蘇ってきます。
トラウマが忘れられないのには、脳の仕組みが関係しています。強い恐怖や衝撃を受けると、脳の扁桃体という部分が過剰に活性化し、その記憶が強固に刻み込まれます。これは生存のための防衛機制で、危険な状況を記憶することで次に同じ危険を避けるためです。
トラウマ記憶は通常の記憶とは異なる形で保存されます。出来事の流れや時系列として整理されず、感覚や感情の断片として保存されるため、特定の音、匂い、場面などが引き金となって突然フラッシュバックが起こります。
また心理的な意味でも、トラウマは忘れにくいものです。自分の価値観や世界観を根底から揺るがす出来事は、人生の物語の中に位置づけることが難しく、未消化のまま心に残り続けます。
社会的な理解の不足も、トラウマを長引かせる要因です。見えない傷であるため、周囲から理解されにくく、時間が経てば忘れられるはずだと言われることで、さらに孤独感が深まります。
トラウマが人生に与える影響
トラウマが忘れられないことは、日常生活に様々な影響を及ぼします。まず過覚醒状態が続きます。常に警戒心が高まり、些細な刺激にも過剰に反応してしまいます。リラックスすることが難しく、疲労が蓄積します。
回避行動も強まります。トラウマを思い出させる場所、人、状況を避けるようになり、生活範囲が極端に狭くなります。外出が怖い、人と会えない、特定の場所に行けないなど、社会生活に大きな制約が生じます。
感情の麻痺も起こります。トラウマの痛みから自分を守るために、感情全体を感じにくくなります。喜びや楽しさも感じられなくなり、人生が色を失ったように感じます。
人間関係にも深刻な影響が出ます。他者を信頼することが難しくなり、親密な関係を築けなくなります。孤立することで、さらに心の回復が遅れる悪循環に陥ります。
身体症状として現れることも多くあります。頭痛、腹痛、不眠、動悸など、説明のつかない身体の不調が続きます。慢性的なストレス状態が、免疫系にも影響を及ぼします。
自己評価も低下します。なぜ自分だけこんな目に遭ったのか、自分に価値がないからだと考えてしまいます。被害者であるにもかかわらず、自分を責める気持ちが強くなります。
トラウマからの回復を阻む誤解
トラウマからの回復を妨げる誤解がいくつかあります。まず時間が解決するという考え方です。確かに時間は癒しの一部ですが、トラウマは放置しても自然に治るとは限りません。適切な対処が必要です。
忘れればよいという考え方も誤りです。トラウマを無理に忘れようとすると、かえって記憶が強化されます。また忘れることがゴールではなく、記憶と共存できるようになることが真の回復です。
強くなればよいという発想も危険です。トラウマは個人の弱さの問題ではありません。どんなに強い人でも、圧倒的な出来事の前では傷つきます。強さを求めることが、自分を追い詰めます。
一人で乗り越えるべきだという考えも間違っています。トラウマからの回復には、安全な環境と信頼できる人の支えが不可欠です。助けを求めることは弱さではなく、回復への第一歩です。
過去は変えられないから諦めるしかないという考えも違います。過去の出来事は変えられませんが、その意味づけや影響は変えることができます。トラウマに支配されない生き方を取り戻すことは可能です。
トラウマと向き合う安全な方法
トラウマと向き合うには、まず安全な環境を確保することが最優先です。現在危険な状況にある場合は、まずそこから離れることが必要です。身体的にも精神的にも安全な場所があって初めて、回復のプロセスが始まります。
自分のペースを守ることも重要です。無理に思い出そうとしたり、一気に向き合おうとしたりすると、再トラウマ化のリスクがあります。少しずつ、自分が耐えられる範囲で進めていきます。
グラウンディング技法を身につけることも有効です。フラッシュバックが起きたとき、今ここにいる自分に意識を戻す方法です。足の裏の感覚を感じる、周りの物を数える、信頼できる人に電話するなど、現実とつながる手段を持ちます。
安全な人との関係を築くことも回復の鍵です。信頼できる友人、家族、支援者に自分の状態を伝え、理解してもらいます。一人で抱え込まず、支えを受け入れることが大切です。
セルフケアを優先することも欠かせません。十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動など、基本的な生活習慣を整えます。心の回復には、身体の健康が土台となります。
日記やアートなど、表現する手段を持つことも助けになります。言葉にできない感情や記憶を、絵や音楽で表現することで、少しずつ処理が進むことがあります。
専門的な治療とサポート
トラウマの回復には、専門的な治療が非常に効果的です。トラウマ治療の専門家は、安全な方法で記憶を処理するサポートをしてくれます。
認知行動療法は、トラウマに関連する考え方や行動パターンを変えていく方法です。トラウマの意味づけを変え、回避行動を減らすことで、日常生活の質を改善します。
EMDR療法は、眼球運動を使ってトラウマ記憶を処理する方法で、科学的な効果が実証されています。言葉で語ることが難しいトラウマにも有効です。
持続エクスポージャー療法は、安全な環境で徐々にトラウマの記憶に触れていく方法です。専門家の指導のもとで行うことで、記憶の力を弱めることができます。
薬物療法が有効な場合もあります。不安や抑うつが強い場合、薬の力を借りることで症状が和らぎ、心理療法に取り組みやすくなります。
グループ療法やピアサポートも力になります。同じような経験をした人と出会うことで、孤独感が和らぎ、回復の希望を持てるようになります。
トラウマと共に生きる新しい人生
トラウマが完全に消えることはないかもしれませんが、それに支配されない生き方は可能です。トラウマは人生の一部であっても、人生の全てではありません。
回復とは、元の状態に戻ることではなく、新しい自分を築くことです。トラウマの経験を通じて、自分の強さや価値観を再発見することもあります。困難を乗り越えた経験は、深い人間理解や共感力につながります。
トラウマを持つ自分を受け入れることも回復の一部です。傷ついたことは恥ずかしいことではなく、生き延びたことは強さの証です。自分に優しくする姿勢が、癒しを促します。
小さな喜びを見つけることも大切です。トラウマに奪われた感覚を少しずつ取り戻し、日常の中に楽しみや安らぎを見出していきます。散歩、音楽、料理、自然との触れ合いなど、心地よいと感じることを大切にします。
意味を見出すことも助けになります。自分の経験を他の誰かの助けにする、社会の問題に声を上げるなど、トラウマを意味のあるものに変えていく人もいます。ただしこれは強制されるものではなく、自然に湧き上がる思いがあれば、という話です。
トラウマが忘れられない苦しみは、一人で抱えるべきものではありません。適切な支援を受けながら、自分のペースで回復の道を歩むことができます。トラウマは人生の終わりではなく、新しい自分との出会いの始まりになり得るのです。時間をかけて、少しずつ、希望を取り戻していくことは可能です。

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