障害年金の申請方法を徹底解説|手続きの流れ・必要書類・注意点

1. 障害年金申請の基本

障害年金は、病気やケガによって生活や仕事に支障が出ている方が受給できる公的年金です。適切に申請すれば、多くの方が受給できる可能性があります。

申請には、初診日の証明、一定の保険料納付要件、障害の程度の認定という3つの要件を満たす必要があります。申請から受給決定までには通常3〜4ヶ月かかり、準備する書類も多岐にわたります。

重要なのは、「自分には無理だ」と諦めないことです。多くの方が「自分は対象外だろう」と思い込んでいますが、実際には受給要件を満たしていることがあります。わからないことは年金事務所や社会保険労務士に相談しながら、一つ一つ進めていきましょう。

2. 障害年金とは

障害年金は、国民年金または厚生年金に加入している間に発症した病気やケガにより、生活や仕事に支障が出ている方に支給される公的年金です。

障害年金の種類

障害基礎年金 国民年金に加入している間に初診日がある場合に支給されます。自営業者、学生、無職の方、厚生年金に加入していない方などが対象です。等級は1級と2級があります。

障害厚生年金 厚生年金に加入している間に初診日がある場合に支給されます。会社員、公務員などが対象です。等級は1級、2級、3級があり、3級に該当しない軽い障害の場合は障害手当金(一時金)が支給されることがあります。

障害厚生年金が支給される場合は、同時に障害基礎年金も支給されます(1級・2級の場合)。

支給額(2024年度)

障害基礎年金

  • 1級 年額1,020,000円(月額約85,000円)
  • 2級 年額816,000円(月額約68,000円)
  • 子の加算 1人目・2人目は各234,800円、3人目以降は各78,300円

障害厚生年金 報酬比例の年金額(加入期間や給与による)+配偶者加給年金額(2級以上で配偶者がいる場合、234,800円)

障害厚生年金は、加入期間や給与によって金額が異なります。

受給要件

障害年金を受給するには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

1. 初診日要件 障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師の診療を受けた日(初診日)に、国民年金または厚生年金に加入していること。

2. 保険料納付要件 初診日の前日時点で、以下のいずれかを満たすこと。

  • 初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、3分の2以上の期間について保険料が納付または免除されていること
  • 初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと(初診日が65歳未満の場合の特例)

3. 障害認定要件 障害認定日(初診日から1年6ヶ月を経過した日、または1年6ヶ月以内に症状が固定した日)において、障害等級(1級〜3級)に該当する障害の状態にあること。

3. 対象となる障害

障害年金の対象となる障害は、身体の障害だけでなく、精神の障害も含まれます。

外部障害

眼の障害 視力障害、視野障害など 聴覚の障害 聴力障害、平衡機能障害など 鼻腔機能の障害 そしゃく・嚥下機能、言語機能の障害 肢体の障害 上肢・下肢の欠損、機能障害、体幹・脊柱の障害など

内部障害

心疾患による障害 腎疾患による障害 人工透析を受けている場合など 肝疾患による障害 呼吸器疾患による障害 血液・造血器疾患による障害 膀胱・直腸の障害 人工肛門、尿路変更など その他の内臓疾患 糖尿病、がんなど

精神の障害

統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害 気分(感情)障害 うつ病、双極性障害など 症状性を含む器質性精神障害 認知症、高次脳機能障害など てんかん 知的障害 発達障害 自閉スペクトラム症、ADHD、学習障害など 神経症性障害 不安障害、パニック障害、強迫性障害、PTSDなど(原則として対象外だが、精神病の病態を示している場合は認定対象)

この他にも、難病、がん、糖尿病、線維筋痛症、化学物質過敏症など、さまざまな疾患が対象となります。

4. 申請前に確認すべきこと

障害年金の申請を始める前に、以下の点を確認しましょう。

初診日の確認

障害の原因となった病気やケガで、初めて医師の診療を受けた日を特定します。この日が、障害年金のすべての基準になるため、非常に重要です。

初診日がわからない場合や、証明が困難な場合は、年金事務所に相談しましょう。

初診日の加入制度の確認

初診日に、国民年金に加入していたのか、厚生年金に加入していたのかを確認します。これにより、障害基礎年金か障害厚生年金かが決まります。

保険料納付状況の確認

初診日の前日時点で、保険料納付要件を満たしているか確認します。年金事務所で「被保険者記録照会回答票」を取得することで確認できます。

学生時代に国民年金保険料を払っていなかった場合でも、学生納付特例制度を利用していれば、納付要件を満たすことがあります。

障害の状態の確認

自分の障害の状態が、障害等級に該当するか、ある程度の見当をつけておきます。認定基準は、日本年金機構のウェブサイトで公開されています。

必要な医療機関の確認

初診の医療機関、現在通院中の医療機関など、診断書や証明書を取得する必要がある医療機関を把握します。

5. 申請の流れ

障害年金の申請は、以下の流れで進めます。

ステップ1 年金事務所で相談

まず、お近くの年金事務所に相談に行きます。事前に予約をすると、待ち時間が少なくて済みます。

相談では、初診日、加入制度、保険料納付状況などを確認し、申請が可能かどうか判断してもらえます。また、必要な書類について説明を受けます。

ステップ2 受診状況等証明書の取得

初診の医療機関と現在通院中の医療機関が異なる場合、初診の医療機関で「受診状況等証明書」を取得します。

この書類で、初診日を証明します。初診の医療機関が廃院している場合や、カルテが残っていない場合は、他の方法で証明する必要があります(年金事務所に相談)。

ステップ3 診断書の取得

現在通院中の医療機関で、障害年金用の診断書を作成してもらいます。診断書の様式は、障害の種類によって異なります(精神の障害用、眼の障害用、聴覚の障害用など)。

障害認定日の診断書 障害認定日(初診日から1年6ヶ月後)から3ヶ月以内の状態を記載したもの

現在の診断書 請求日から3ヶ月以内の状態を記載したもの(障害認定日から時間が経っている場合)

診断書の作成には、数週間から1ヶ月程度かかることがあります。また、費用は医療機関により異なりますが、5,000円から10,000円程度が一般的です。

ステップ4 病歴・就労状況等申立書の作成

本人または家族が、発病から現在までの経過を時系列で記載します。

病状の変化、日常生活の状況、就労状況などを具体的に記載します。この書類は、診断書とともに審査の重要な資料となります。

ステップ5 その他の書類の準備

以下の書類も準備します。

  • 年金請求書(窓口で入手)
  • 年金手帳または基礎年金番号通知書
  • 戸籍謄本または住民票(配偶者や子がいる場合)
  • 世帯全員の住民票(配偶者や子がいる場合)
  • 子の収入証明書(義務教育終了後の子がいる場合)
  • 本人名義の預金通帳(年金受取口座)
  • 印鑑
  • マイナンバーカードまたは通知カード

ステップ6 年金事務所に申請書類を提出

すべての書類が揃ったら、年金事務所に提出します。窓口で提出する場合、書類の不備がないか確認してもらえます。

郵送でも提出できますが、不備があると再提出になるため、できれば窓口での提出をお勧めします。

ステップ7 審査

提出された書類は、日本年金機構の障害年金センターで審査されます。通常、3〜4ヶ月程度かかります。

ステップ8 結果通知

審査の結果、年金証書または不支給決定通知書が郵送されます。

認定された場合 年金証書が届き、その後、年金が指定口座に振り込まれます。障害認定日にさかのぼって支給される場合、一括で支給されます。

不支給となった場合 不支給決定通知書が届きます。納得できない場合は、不服申し立て(審査請求)ができます。

6. 必要書類の詳細

障害年金の申請には、多くの書類が必要です。

年金請求書

年金事務所で入手します。または、日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできます。

障害基礎年金用と障害厚生年金用で様式が異なります。

年金手帳または基礎年金番号通知書

基礎年金番号を確認するために必要です。

受診状況等証明書(初診日の証明)

初診の医療機関に依頼して作成してもらいます。

初診の医療機関と現在通院中の医療機関が同じ場合は不要です(診断書に初診日が記載されるため)。

初診の医療機関が廃院している、カルテが残っていないなどの理由で取得できない場合は、受診状況等証明書が添付できない申立書を提出します。

診断書

障害年金用の診断書を、現在通院中の医療機関に依頼して作成してもらいます。

診断書の種類は以下の通りです。

  • 精神の障害用
  • 眼の障害用
  • 聴覚、鼻腔機能、平衡機能、そしゃく・嚥下機能、言語機能の障害用
  • 肢体の障害用
  • 呼吸器疾患の障害用
  • 循環器疾患の障害用
  • 腎疾患、肝疾患、糖尿病の障害用
  • 血液・造血器、その他の障害用

障害認定日の診断書と、現在の診断書が必要になる場合があります。

病歴・就労状況等申立書

本人または家族が作成します。発病から現在までの病状、日常生活、就労状況を時系列で記載します。

この書類は非常に重要で、診断書とともに審査の重要な資料となります。具体的に、詳しく記載することが大切です。

戸籍謄本・住民票

配偶者や子がいる場合に必要です。加給年金の支給を受けるために提出します。

預金通帳のコピー

年金を受け取る口座を指定するために、通帳の口座番号が記載されているページのコピーを提出します。

その他の添付書類

  • レントゲンフィルム(呼吸器疾患の場合など)
  • 心電図(循環器疾患の場合など)
  • 検査結果(血液検査、画像検査など)
  • 障害者手帳のコピー(持っている場合)
  • 療育手帳のコピー(知的障害の場合)

7. 病歴・就労状況等申立書の書き方

病歴・就労状況等申立書は、診断書とともに審査の重要な資料です。

記載する内容

発病から現在までの経過を、時系列で記載します。以下のような内容を含めます。

  • いつ頃、どのような症状が出始めたか
  • 初めて医療機関を受診した時期と理由
  • 診断名、治療内容(薬物療法、入院、手術など)
  • 転院した場合は、その時期と理由
  • 症状の変化(良くなった時期、悪くなった時期)
  • 日常生活への影響(食事、入浴、外出、家事、買い物など)
  • 就労状況(働いていた時期、休職、退職、仕事の内容、支障の程度)
  • 家族のサポート状況

書き方のポイント

具体的に書く 「調子が悪い」ではなく、「朝起きられず、一日中布団の中で過ごすことが多い」のように具体的に記載します。

日常生活の困難さを詳しく書く できないこと、困っていることを遠慮せずに記載します。「頑張ればできる」ではなく、実際にどれだけ苦労しているかを書きます。

時系列で整理する いつ、何があったかを時系列で整理して記載します。年月を明確に書きます。

家族の支援も記載する 家族の支援がなければ生活が成り立たない場合、そのことを具体的に記載します。

就労状況も詳しく 働いている、または働いていた場合、どのような配慮を受けていたか、どのような困難があったかを記載します。

よくある失敗

  • 遠慮して、困難さを控えめに書いてしまう
  • 「普通にできる」と書いてしまう(実際には家族の支援が必要なのに)
  • 抽象的な表現で、具体性がない
  • 時系列がバラバラで、経過がわかりにくい

病歴・就労状況等申立書の書き方は、認定結果に大きく影響します。わからない場合は、社会保険労務士に相談することも検討しましょう。

8. 申請時の注意点

障害年金の申請には、いくつかの注意点があります。

初診日の証明が重要

初診日の証明ができないと、障害年金を受給できません。初診の医療機関が廃院している場合など、証明が困難な場合は、早めに年金事務所に相談しましょう。

診断書の内容が重要

診断書の記載内容が、認定結果に大きく影響します。医師に、日常生活の困難さを具体的に伝えることが大切です。

「普段は何とか頑張っています」と伝えると、医師は「それほど重症ではない」と判断して診断書を書くかもしれません。実際にどれだけ困っているかを正直に伝えましょう。

遡及請求と事後重症請求

障害認定日請求(遡及請求) 障害認定日(初診日から1年6ヶ月後)の時点で障害等級に該当していた場合、その時点にさかのぼって年金が支給されます。最大5年分が一括で支給されます。

事後重症請求 障害認定日の時点では該当しなかったが、その後悪化して障害等級に該当した場合、請求した月の翌月分から年金が支給されます。遡っての支給はありません。

障害認定日請求ができる場合は、できるだけそちらを選びましょう。

20歳前の傷病による障害

20歳前に初診日がある場合、障害基礎年金が支給されることがありますが、所得制限があります。一定以上の所得がある場合、年金の全額または一部が停止されます。

保険料納付要件

保険料納付要件を満たしていない場合、障害年金は支給されません。未納期間がある場合でも、免除制度を利用していれば要件を満たすことがあります。過去にさかのぼって免除申請できる場合もあるため、年金事務所に相談しましょう。

複数の障害がある場合

複数の障害がある場合、それぞれを合算して等級が決定されることがあります(併合認定)。すべての障害について診断書を提出します。

働いていても受給できる

障害年金は、働いているかどうかではなく、障害の程度によって決まります。働いていても、障害の状態が等級に該当すれば受給できます。

ただし、働けているということは、障害の程度がそれほど重くないと判断される可能性もあります。就労状況と障害の状態を正確に伝えることが大切です。

9. 不支給になった場合の対処法

審査の結果、不支給となった場合、以下の対処法があります。

不服申し立て(審査請求)

不支給決定に納得できない場合、3ヶ月以内に審査請求ができます。

審査請求は、地方厚生局の社会保険審査官に対して行います。審査請求書と理由書を提出します。

審査請求でも認められなかった場合、さらに再審査請求(社会保険審査会)ができます。

再申請

不支給となった理由を確認し、状態が悪化した場合や、新たな証拠が得られた場合は、再度申請することができます。

専門家に相談

社会保険労務士(特に障害年金を専門とする社労士)に相談し、アドバイスを受けることも有効です。

10. よくある質問(FAQ)

Q   働いていても障害年金はもらえますか? 

A   もらえます。障害年金は、働いているかどうかではなく、障害の程度によって決まります。ただし、フルタイムで問題なく働けている場合は、障害の程度が軽いと判断される可能性があります。

Q   申請にはどれくらいの費用がかかりますか? 

A   診断書の作成費用(5,000円〜10,000円程度)、受診状況等証明書の作成費用(数千円程度)、戸籍謄本などの取得費用がかかります。自分で申請する場合は、合計で1万円〜2万円程度です。社会保険労務士に依頼する場合は、別途報酬(通常、受給決定額の数ヶ月分)が必要です。

Q   申請してから受給までどれくらいかかりますか?

 A   通常、申請から3〜4ヶ月程度で結果が出ます。認定された場合、その後1〜2ヶ月で年金が振り込まれます。

Q   精神疾患でも障害年金はもらえますか? 

A   もらえます。うつ病、統合失調症、双極性障害、発達障害など、さまざまな精神疾患が対象です。日常生活や仕事に支障が出ている場合は、申請を検討しましょう。

Q   障害者手帳がないと障害年金は受給できませんか? 

A   障害者手帳は必須ではありません。手帳がなくても、障害年金の要件を満たせば受給できます。ただし、手帳を持っている場合は、参考資料として提出します。

Q   初診日が証明できません。どうすればいいですか? 

A   初診の医療機関が廃院している、カルテが残っていないなどの場合、他の資料(お薬手帳、診察券、家族の証言など)で証明を試みます。年金事務所に相談し、どのような資料が使えるか確認しましょう。

Q   自分で申請するのが難しいです。誰かに頼めますか? 

A   社会保険労務士(社労士)に依頼することができます。特に、障害年金を専門とする社労士に依頼すると、スムーズに申請できます。ただし、報酬がかかります(通常、受給決定額の数ヶ月分)。

Q   一度不支給になったら、二度と申請できませんか? 

A   そんなことはありません。状態が悪化した場合や、新たな証拠が得られた場合は、再度申請できます。また、不服申し立て(審査請求)も可能です。

まとめ

障害年金の申請は複雑で、時間もかかりますが、受給できれば生活の大きな支えになります。「自分には無理」と諦めず、まずは年金事務所に相談してみましょう。わからないことは専門家に聞きながら、一つ一つ進めていけば大丈夫です。あなたの権利を行使し、必要な支援を受けることで、少しでも生活が楽になることを願っています。

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