「成人した子どもが家から出ない」「いつまで待てばいいのかわからない」「親として何ができるのか悩んでいる」
成人した子どもの引きこもりに悩む親御さんへ向けて、本記事では引きこもりの現状、親としてできること、してはいけないこと、利用できる支援制度、専門機関への相談方法について詳しく解説します。
一人で抱え込まず、適切な支援につながることが、本人にとっても家族にとっても大切です。
大人の引きこもりの現状
まず、引きこもりの現状を理解しましょう。
引きこもりとは
定義
内閣府の定義では、引きこもりとは
- 6ヶ月以上、自宅にひきこもって社会参加していない状態
- 趣味の用事や近所のコンビニ以外には外出しない状態
引きこもりの人数
決して珍しくない
- 15〜64歳の引きこもり 全国で推計146万人(2022年内閣府調査)
- 40〜64歳の引きこもり 約61万人
- 引きこもり期間 7年以上が約50%
- 年齢層 中高年の引きこもりが増加
あなただけではない
多くの家族が同じ悩みを抱えている
引きこもりは決して珍しいことではなく、全国で100万人以上の方が同じ状況にあります。あなたの家族だけではありません。
引きこもりの背景・原因
引きこもりの背景は一人ひとり異なりますが、主な要因を理解しましょう。
主な背景
1. 就職・職場の問題
- 就職活動の失敗
- 職場での人間関係
- 職場でのパワハラ、いじめ
- 仕事が合わなかった
- リストラ、退職
2. 学校での問題
- いじめ
- 不登校
- 学業不振
- 人間関係のトラブル
3. 病気や障害
- うつ病、不安障害などの精神疾患
- 発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症など)
- 身体疾患
4. 人間関係の困難
- 対人恐怖
- コミュニケーションの苦手さ
- 傷つき体験
5. 家庭環境
- 親の過干渉、過保護
- 家族間のトラブル
- 虐待やネグレクトの経験
6. 社会的要因
- 社会の競争の激しさ
- 経済状況の悪化
- 孤立化
複合的な要因
単一の原因ではない
多くの場合、引きこもりは単一の原因ではなく、複数の要因が絡み合って起こります。「これが原因」と単純化できないことを理解しましょう。
親として知っておくべきこと
引きこもる子どもに対して、親が知っておくべき大切なことがあります。
1. 本人も苦しんでいる
引きこもりたくて引きこもっているわけではない
引きこもっている本人も、多くの場合
- 「このままではいけない」と思っている
- 焦りや不安を感じている
- 自分を責めている
- 外に出たいが出られない
「怠けている」「甘えている」わけではありません。
2. 責任は親にない
自分を責めないで
「育て方が悪かったのか」と自分を責める親御さんは多いですが
- 引きこもりの原因は複雑で多様
- 親の育て方だけが原因ではない
- 自分を責めすぎないことが大切
3. すぐに解決するものではない
長期的な視点を持つ
引きこもりからの回復は
- 時間がかかる(数ヶ月〜数年)
- 段階的に進む
- 行きつ戻りつすることもある
焦らず、長期的な視点を持ちましょう。
4. 専門家の力を借りることが大切
一人で抱え込まない
引きこもりの問題は
- 家族だけで解決するのは難しい
- 専門家の支援が有効
- 早めに相談することが回復への近道
親としてできること
引きこもる子どもに対して、親ができることを具体的に紹介します。
1. 安心できる家庭環境を作る
批判せず、受け入れる
- 否定しない 「いつまで引きこもっているんだ」「働け」などの批判は避ける
- 比較しない 他の兄弟や友人と比較しない
- 焦らせない 「早く何とかしろ」とプレッシャーをかけない
- 存在を認める 「家にいてもいい」という安心感を与える
2. コミュニケーションを保つ
無理のない範囲で
- 挨拶をする 「おはよう」「おやすみ」など、基本的な挨拶
- 食事を一緒に 可能なら食事を一緒に取る
- 日常会話 天気や食べ物など、軽い話題で話しかける
- 無理強いしない 反応が薄くても、無理に会話を続けない
- ドアの前に食事を置く 部屋から出てこない場合も、食事は提供
3. 生活リズムを整える手伝い
基本的な生活習慣
- 食事の時間 なるべく規則的に食事を提供
- 昼夜逆転の改善 少しずつ、朝日を浴びるよう促す
- 健康管理 体調が悪い時は病院に行くよう勧める
4. 小さな変化を認める
少しの進歩を評価
- 部屋から出てきた
- 食事を一緒に取った
- 外出した(たとえコンビニでも)
- 自分から話しかけてきた
こうした小さな変化を認め、「よかったね」と伝えましょう。ただし、大げさに褒めると逆効果になることもあるので、さりげなく。
5. 専門機関に相談する
早めに相談
親だけで抱え込まず、専門機関に相談しましょう。
相談先(後述で詳しく説明)
- ひきこもり地域支援センター
- 精神保健福祉センター
- 生活困窮者自立相談支援機関
- 地域包括支援センター(中高年の場合)
- NPO法人
6. 家族自身のケアも大切
親も休む
- 一人で抱え込まない 配偶者や他の家族と相談
- 親の会に参加 同じ悩みを持つ親同士で話す
- 自分の時間を持つ 趣味や友人との時間を大切に
- 専門家に相談 カウンセリングなども検討
親が疲弊してしまうと、本人を支えることができません。親自身のケアも大切です。
7. 経済的な準備
長期的な視点で
- 生活費の確保 本人が働けない期間の生活費
- 親の老後資金 親自身の老後資金も確保
- 制度の活用 生活保護、障害年金など(該当する場合)
親がしてはいけないこと
良かれと思ってやっていることが、逆効果になることもあります。
1. 強く責める、批判する
逆効果
- 「いつまで引きこもっているんだ」
- 「甘えるな」
- 「働かないなら出て行け」
こうした言葉は、本人を追い詰め、さらに引きこもりを深刻化させます。
2. 他人と比較する
自己肯定感を下げる
- 「○○さんの子は立派に働いている」
- 「兄弟は頑張っているのに」
比較は本人の自己肯定感を下げ、回復を遅らせます。
3. 無理やり外に出そうとする
信頼関係を壊す
- 部屋から無理やり引きずり出す
- 勝手に就職活動をさせる
- 無理やり病院に連れて行く
本人の意思を無視した行動は、信頼関係を壊し、状況を悪化させます。
4. 過保護・過干渉
自立を妨げる
- 何でもやってあげる
- 本人の代わりに決断する
- 常に監視する
適度な距離感が大切です。
5. 放置する・無視する
孤立を深める
- 完全に無視する
- 関わりを一切持たない
- 存在を否定する
適度な距離は必要ですが、完全に放置すると孤立が深まります。
6. 一人で抱え込む
状況を悪化させる
- 誰にも相談しない
- 家族だけで何とかしようとする
- 「恥ずかしい」と隠す
専門家の力を借りることが、解決への近道です。
利用できる支援制度・相談窓口
引きこもりの支援には、様々な制度や相談窓口があります。
1. ひきこもり地域支援センター
全都道府県・指定都市に設置
内容
- 引きこもりに特化した相談窓口
- 電話相談、来所相談、訪問支援
- 家族教室、家族会
- 支援機関の紹介
問い合わせ
- お住まいの都道府県・市の「ひきこもり地域支援センター」を検索
- 例 「神奈川県 ひきこもり地域支援センター」
2. 精神保健福祉センター
心の健康に関する相談
内容
- 精神保健に関する相談
- うつ病、不安障害などがある場合
- 家族相談
- 支援機関の紹介
問い合わせ
- お住まいの都道府県・市の「精神保健福祉センター」を検索
3. 生活困窮者自立相談支援機関
生活全般の相談
内容
- 経済的な困窮の相談
- 就労支援
- 家計改善支援
- 住居確保給付金
問い合わせ
- お住まいの市区町村の福祉課
- 「生活困窮者自立相談支援機関」を検索
4. 地域包括支援センター
中高年の引きこもりの場合
内容
- 40歳以上の引きこもりの相談
- 介護、福祉、医療の総合相談
- 8050問題(80代の親が50代の子を支える)への対応
問い合わせ
- お住まいの地域の「地域包括支援センター」を検索
5. 保健所・保健センター
健康面の相談
内容
- 心の健康相談
- 精神科医による相談
- 保健師による訪問
6. NPO法人・民間支援団体
多様な支援
内容
- 居場所提供
- 訪問支援
- 就労支援
- 家族会
探し方
- 「引きこもり 支援 NPO ○○県」で検索
- ひきこもり地域支援センターで紹介してもらう
7. 家族会
同じ悩みを持つ家族同士
内容
- 経験の共有
- 情報交換
- 孤立感の軽減
探し方
- ひきこもり地域支援センターで紹介
- 「引きこもり 家族会 ○○県」で検索
8. 就労継続支援B型事業所
社会参加の第一歩
内容
- 障害や病気がある方の就労支援
- 自分のペースで作業
- 工賃が出る
- 社会とのつながり
対象
- 精神疾患、発達障害などがある方
- 医師の診断書があれば利用可能
問い合わせ
- 市区町村の障害福祉課
段階的な回復のステップ
引きこもりからの回復は、段階的に進みます。
ステップ1 安定期
まずは安心できる環境
- 家で安心して過ごせる
- 生活リズムが整う
- 家族とのコミュニケーションが少しずつ取れる
ステップ2 準備期
少しずつ外への関心
- 家族以外の人と会う(支援者など)
- 近所を散歩する
- 趣味の活動を始める
ステップ3 回復期
社会とのつながり
- 居場所に通う(週1回など)
- ボランティア活動
- 就労継続支援B型などの利用
ステップ4 社会参加期
段階的な就労
- アルバイト
- 就労継続支援A型
- 就労移行支援
- 一般就労
重要
- 段階は行きつ戻りつする
- 人によってペースは異なる
- 焦らないことが大切
親御さんへのメッセージ
あなたは一人ではありません
全国に同じ悩みを持つ家族がたくさんいます。一人で抱え込まず、相談してください。
焦らないで
回復には時間がかかります。焦ると逆効果です。長期的な視点を持ちましょう。
小さな変化を大切に
劇的な変化ではなく、小さな変化の積み重ねが回復につながります。
親も休んで
親が疲弊してしまうと、本人を支えられません。親自身のケアも大切にしてください。
希望を持って
引きこもりから回復した人はたくさんいます。適切な支援につながれば、必ず道は開けます。
よくある質問(FAQ)
Q1 いつまで待てばいいのでしょうか?
A 明確な期限はありません。ただし、「待つ」だけではなく、専門家に相談しながら適切な支援につなげることが大切です。何もせずに待つのではなく、支援を受けながら見守る姿勢が重要です。
Q2 無理やりにでも外に出すべきでしょうか?
A 無理やり外に出そうとすると、信頼関係が壊れ、状況が悪化することが多いです。本人の意思を尊重しながら、段階的に外とのつながりを作ることが大切です。
Q3 このまま一生引きこもるのではないかと不安です
A 適切な支援につながれば、多くの方が回復しています。早めに専門機関に相談することが大切です。
Q4 本人が「相談したくない」と言います
A まずは親だけでも相談機関に行ってください。家族相談を受け付けている機関は多くあります。親が相談することで、対応のヒントが得られます。
Q5 経済的に苦しいです
A 生活困窮者自立相談支援機関、生活保護、障害年金(該当する場合)など、利用できる制度があります。市区町村の福祉課に相談してください。
Q6 兄弟への影響が心配です
A 引きこもりの問題が、他の家族(兄弟)に過度な負担をかけないよう配慮が必要です。家族全体のバランスを考え、必要であれば家族カウンセリングなども検討してください。
まとめ
成人した子どもの引きこもりは、親にとっても本人にとっても辛い状況です。しかし、全国で100万人以上の方が同じ状況にあり、あなただけではありません。
親としてできることは、
- 安心できる家庭環境を作る
- 批判せず、受け入れる
- 無理のないコミュニケーションを保つ
- 小さな変化を認める
- 専門機関に早めに相談する
- 親自身のケアも大切にする
そして何より、一人で抱え込まないことが最も大切です。
ひきこもり地域支援センター、精神保健福祉センター、生活困窮者自立相談支援機関、地域包括支援センター、NPO法人など、様々な相談窓口があります。まずは電話一本からでも構いません。専門家の力を借りることが、本人にとっても家族にとっても、回復への第一歩です。
引きこもりからの回復には時間がかかりますが、適切な支援につながれば、必ず道は開けます。焦らず、希望を持って、一歩ずつ進んでいきましょう。
あなたと、あなたのお子さんが、少しでも楽になれますように。

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