はじめに
「適応障害と診断され、休職することになった」「どのくらい休めばいいのか」「休職中はどう過ごせばいいのか」「復職できるのか不安」適応障害での休職は、多くの疑問と不安を伴います。
適応障害での休職は、決して恥ずかしいことでも、逃げでもありません。それは、心身の回復のために必要な治療の一環です。適切な期間休養し、回復に専念することで、多くの方が職場に復帰しています。
本記事では、適応障害とは何か、休職期間の目安、休職中の過ごし方、復職までのプロセス、手続き、経済的支援、そしてよくある質問まで、詳しく解説します。
適応障害とは
定義
適応障害 明確なストレス因子に対する反応として、著しい苦痛や社会的・職業的機能の障害が生じる状態
主な特徴
1. 明確なストレス因子がある
- 仕事の変化(異動、昇進、転職)
- 人間関係の問題
- 環境の変化
- 失業、経済的困難
- 家庭の問題
2. ストレス因子から3か月以内に症状が出現
3. ストレス因子が除去されれば、6か月以内に症状が改善
4. 症状
- 抑うつ気分
- 不安
- 意欲の低下
- 焦燥感
- 不眠
- 身体症状(頭痛、胃痛、動悸など)
5. うつ病との違い
- ストレス因子が明確
- ストレスから離れると改善する
- うつ病より軽度
- 予後が良い
サブタイプ
抑うつ気分を伴うもの 落ち込み、涙もろさ、絶望感
不安を伴うもの 過度な心配、緊張、焦燥感
混合性(不安と抑うつ) 両方の症状
行為の障害を伴うもの 無断欠勤、暴力、無謀な運転など
情緒と行為の障害を伴うもの 感情の変化と行動の問題
特定不能 上記に当てはまらない
適応障害の休職期間の目安
一般的な休職期間
平均 1〜3か月が最も多い
内訳
- 1か月 約30%
- 2か月 約25%
- 3か月 約20%
- 4〜6か月 約15%
- 6か月以上 約10%
個人差 症状の重さ、ストレス因子の性質、本人の回復力、職場環境などにより大きく異なります。
期間別の目安
1〜2週間
- 軽度の適応障害
- 一時的な休息が必要
- 有給休暇で対応できる場合も
1〜2か月
- 中等度の適応障害
- 最も一般的な期間
- ストレスから離れて回復
3〜6か月
- やや重度の適応障害
- うつ病に近い症状
- しっかりとした休養が必要
6か月以上
- 重度、または複雑な要因
- うつ病への移行の可能性
- 復職が困難な場合
注意 適応障害の定義上、ストレス因子が除去されれば6か月以内に改善するとされていますが、実際には個人差があります。
医師の判断
診断書 医師が「○週間(または○か月)の休養を要する」と記載
初回 通常1〜2か月から開始
延長 回復状況により延長する場合も
重要 医師と相談しながら決める
休職の決断
休職すべきサイン
以下の多く(5つ以上)に当てはまる場合、休職を検討
- 朝、起き上がれない
- 会社に行けない、行くのが極度に苦痛
- 仕事に集中できない
- ミスが増えている
- 遅刻・欠勤が増えている
- 不眠が続いている
- 食欲がない、または過食
- 常に不安、イライラ
- 涙が止まらない
- 「死にたい」と思う
- 身体症状(頭痛、胃痛、動悸など)が続く
- 医師が休職を勧める
休職のメリット
- 回復に専念できる
- ストレス源から離れる
- 心身の休息
- 雇用関係が継続
- 在籍したまま
- 復職の道が残る
- 健康保険が継続
- 社会保険が継続
- 傷病手当金が受給できる
- 収入の約3分の2
- 焦らず回復できる
- 時間的余裕
休職のデメリット
- 収入が減る
- 傷病手当金は約67%
- キャリアへの影響
- 昇進が遅れる可能性
- 復職への不安
- 戻れるか心配
- 周囲の目
- 気にしすぎないことが大切
判断 メリットの方がはるかに大きいです。健康が最優先。
休職の手続き
ステップ1 医療機関の受診
受診先
- 心療内科、精神科
- かかりつけ医
診察
- 症状を詳しく伝える
- 仕事のストレスを説明
- 休職の必要性を相談
診断書 「適応障害のため、○週間(または○か月)の休養を要する」
費用 数千円程度(診断書料)
ステップ2 会社への連絡
誰に連絡
- 直属の上司
- 人事部
方法
- 電話、メール
- 体調不良で休む旨を伝える
タイミング 診断書を取得後、速やかに
ステップ3 診断書の提出
提出先
- 人事部
- 総務部
方法
- 郵送可(簡易書留または内容証明)
- 直接持参(体調が許せば)
添付書類
- 休職願(会社の書式がある場合)
コピー 診断書のコピーを自分用に取っておく
ステップ4 休職の承認
期間 会社により異なる(数日〜2週間程度)
通知 休職の承認、休職期間の連絡
確認事項
- 休職期間
- 給与の有無
- 健康保険の継続
- 連絡方法
ステップ5 傷病手当金の申請
概要 健康保険から給付される手当
金額 標準報酬日額の3分の2(約67%)
期間 最長1年6か月
手続き
- 会社から申請書をもらう
- 医師に記入してもらう(療養担当者記入欄)
- 自分で記入する(被保険者記入欄)
- 会社に記入してもらう(事業主記入欄)
- 健康保険協会(または健康保険組合)に提出
タイミング 1か月ごとに申請するのが一般的
支給 申請から約2週間〜1か月後
ステップ6 定期的な報告
頻度 会社により異なる(月1回程度が多い)
内容
- 療養状況
- 回復状況
- 復職の見込み
方法
- メール
- 書面
- 面談(求められた場合)
注意 無理のない範囲で。負担にならないように。
休職中の過ごし方
休職期間を4つのフェーズに分けて考えます。
フェーズ1 急性期(最初の2〜4週間)
状態 最も辛い時期。症状が強い。
目標 とにかく休む。安全を確保する。
やること
1. 睡眠を最優先
- 寝たい時に寝る
- 十分な睡眠時間(8時間以上も可)
- 眠れない場合は医師に相談
2. 食事
- 1日3食、規則正しく(できる範囲で)
- 簡単なものでいい
- 栄養バランス(徐々に)
3. 服薬
- 医師の指示通りに服用
- 副作用があれば報告
4. 通院
- 定期的に通院(週1回または2週に1回)
- 症状を正直に報告
5. ストレス源から離れる
- 仕事のメール、電話は見ない
- 会社の人と会わない
- 仕事のことを考えない(難しいが、努力する)
やらないこと
- 無理に活動する
- 仕事のことを考える
- 大きな決断をする
- 自分を責める
過ごし方
- 寝る
- ぼーっとする
- 好きな音楽を聴く
- 好きな本を読む(無理なら読まない)
- 散歩(短時間、気が向いたら)
罪悪感について 何もしなくていい。休むことが仕事。
フェーズ2 回復初期(2〜8週間)
状態 少しずつ症状が軽くなる。良い日と悪い日が混在。
目標 生活リズムを整える。少しずつ活動を増やす。
やること
1. 生活リズムの確立
- 起床・就寝時間を一定に(徐々に)
- 朝、カーテンを開けて日光を浴びる
- 3食を決まった時間に
2. 軽い運動
- 散歩(10分から、徐々に30分へ)
- ストレッチ
- ヨガ
- 無理のない範囲で
3. 趣味の再開
- 好きなことを少しずつ
- 読書、音楽、映画、ゲームなど
- 楽しめなくても無理しない
4. 外出
- 買い物
- カフェ
- 図書館
- 人混みは避ける
5. 人との交流
- 家族と話す
- 友人と会う(短時間)
- 無理はしない
6. リラクゼーション
- 深呼吸
- 入浴
- マッサージ
やらないこと
- 一気に活動を増やす
- 仕事のことを考える(まだ早い)
- 自分を他人と比較する
過ごし方
- 散歩
- 読書
- 映画、ドラマ
- 料理
- 掃除、整理整頓(軽く)
- 日記を書く
フェーズ3 回復中期(2〜4か月)
状態 症状がかなり改善。良い日が増える。
目標 活動量を増やす。復職を意識し始める。
やること
1. 規則正しい生活の維持
- 起床時間を出勤時と同じにする
- 就寝時間も規則正しく
2. 運動の継続・増加
- 散歩を毎日
- ジョギング、水泳など
- ジムに通う
3. 社会との接点
- 図書館、カフェで過ごす
- ボランティア(軽いもの)
- 習い事
4. 認知行動療法
- カウンセリングを受ける
- ストレスへの対処法を学ぶ
- 考え方のクセを修正
5. 復職の準備
- リワークプログラム(必要に応じて)
- 職場との連絡(産業医、人事)
- 復職後のイメージトレーニング
6. 読書、学習
- 仕事に関連する本
- 新しいスキルの習得
- ただし、無理はしない
やらないこと
- 焦る
- 完璧を求める
- 無理に仕事モードに戻る
過ごし方
- 規則正しい生活
- 運動
- 趣味
- 人と会う
- 学習
- リワーク
フェーズ4 復職準備期(復職前1〜2か月)
状態 ほぼ回復。復職が視野に入る。
目標 復職に向けた準備。
やること
1. リワークプログラム
- 医療機関、地域障害者職業センター
- 復職のためのリハビリテーション
- 模擬職場で訓練
2. 産業医面談
- 職場復帰の可否を判断
- 復職後の配慮事項を相談
3. 職場との調整
- 復職日の決定
- 復職プラン(段階的復職など)
- 業務内容の調整
4. 復職への不安への対処
- 不安を書き出す
- 対処法を考える
- カウンセラー、医師と相談
5. 生活リズムの最終調整
- 完全に出勤時と同じリズムに
6. 予行練習
- 通勤経路を実際に移動してみる
- 決まった時間に外出する
やらないこと
- 急に頑張りすぎる
- 不安を一人で抱え込む
復職のプロセス
復職の判断基準
医学的基準 医師が就労可能と判断
自己評価 以下のチェック項目
□ 症状が安定している □ 規則正しい生活ができている □ 通勤時間相当の外出ができる □ 意欲が戻っている □ 集中力が回復している □ 仕事のことを考えても不安が強すぎない □ 睡眠がとれている □ 食欲がある
会社の基準 産業医の判断、就業規則の規定
復職までのステップ
ステップ1 主治医との相談
- 復職可能かどうか
- 復職診断書の作成
ステップ2 産業医面談
- 会社の産業医と面談
- 復職の可否を判断
- 配慮事項の検討
ステップ3 復職プランの作成
- 段階的復職(リハビリ出勤)
- 業務内容の調整
- 勤務時間の調整
ステップ4 復職日の決定
ステップ5 復職
段階的復職(リハビリ出勤)
概要 いきなりフルタイムではなく、段階的に勤務時間・業務量を増やす
期間 1〜3か月程度
例
第1段階(2週間)
- 勤務時間 4時間/日
- 業務 軽作業、慣らし
第2段階(2週間)
- 勤務時間 6時間/日
- 業務 徐々に通常業務へ
第3段階(4週間)
- 勤務時間 8時間/日(通常)
- 業務 通常業務(ただし調整あり)
効果
- 無理なく復帰
- 再発防止
復職後の配慮
業務内容
- 当面、負担の少ない業務
- 残業禁止
- 出張禁止(当面)
勤務時間
- 時短勤務
- フレックスタイム
その他
- 定期的な産業医面談
- 上司との定期面談
- 環境調整(デスク配置など)
復職後の注意点
1. 無理をしない
重要 復職直後は、まだ完全に回復していません
注意
- 頑張りすぎない
- 疲れたら休む
- 「NO」と言う勇気
2. 生活リズムの維持
継続
- 睡眠
- 食事
- 運動
3. ストレス管理
方法
- 深呼吸
- 休憩
- 趣味の時間
4. 定期的な通院
継続 復職後も、定期的に通院
服薬 自己判断で中止しない
5. 相談できる人を持つ
相談先
- 上司
- 産業医
- カウンセラー
- 家族、友人
6. サインに気づく
再発のサイン
- 眠れなくなる
- 食欲が落ちる
- 意欲が低下
- イライラする
対処 早めに医師に相談
休職期間の延長
延長が必要な場合
判断
- 医師が回復不十分と判断
- 本人が復職に不安
- 症状が残っている
手続き
- 医師に相談
- 診断書(延長)を取得
- 会社に提出
期間 通常1〜3か月ずつ延長
上限 会社の就業規則による(通常1年〜2年)
延長のデメリット
- 復職が遅れる
- 経済的負担(傷病手当金は最長1年6か月)
- 会社との関係
しかし 無理に復職して再発する方が問題。回復を優先。
復職できない場合
退職の検討
判断
- 休職期間の上限に達した
- 回復の見込みがない
- 職場環境が原因で改善されない
- 別の道に進みたい
手続き
- 退職届の提出
- 引き継ぎ(できる範囲で)
- 失業給付の申請
障害年金の検討
対象 適応障害が重度で、長期化している場合
等級 通常は該当しにくいですが、重度の場合は可能性あり
相談 社会保険労務士、年金事務所
経済的支援
1. 傷病手当金
金額 標準報酬日額の3分の2(約67%)
期間 最長1年6か月
手続き 前述の通り
2. 休職中の給与
会社による
- 有給 ほとんどなし
- 無給 多くの場合
確認 就業規則で確認
3. 健康保険の継続
継続 休職中も健康保険は継続
保険料
- 会社が負担する場合
- 自己負担の場合
- 会社による
4. 生活費の工面
方法
- 傷病手当金
- 貯金
- 家族の支援
- 生活福祉資金貸付(社会福祉協議会)
削減
- 固定費の見直し
- 不要な出費を控える
よくある質問(FAQ)
Q1 適応障害での休職は何か月が普通ですか?
A 1〜3か月が最も多いですが、個人差があります。医師と相談しながら決めてください。
Q2 休職中は何をすればいいですか?
A 最初はとにかく休む。徐々に生活リズムを整え、活動を増やします。焦らないことが大切です。
Q3 休職したことは履歴書に書きますか?
A 職歴欄には書く必要はありません。在職期間の空白として記載するだけです。
Q4 休職中に会社から連絡が来ます。
A 月1回程度の報告は通常ですが、頻繁すぎる連絡は負担です。人事に頻度を調整してもらうよう依頼できます。
Q5 休職期間を延長できますか?
A はい。医師の診断書があれば、延長できます。ただし、会社の就業規則に上限があります。
Q6 復職が怖いです。
A 多くの人が同じ不安を感じます。段階的復職、産業医面談、カウンセリングなどを活用してください。
Q7 復職後、再発しませんか?
A 適切な配慮とストレス管理があれば、再発は防げます。無理をしないことが大切です。
Q8 休職したことで昇進に影響しますか?
A 会社によります。ただし、健康を優先すべきです。
Q9 休職中に旅行に行ってもいいですか?
A 回復期なら、リフレッシュのための旅行は問題ありません。ただし、SNSへの投稿は慎重に。
Q10 適応障害は完治しますか?
A はい。ストレス因子から離れ、適切な治療を受ければ、多くの場合完治します。
まとめ 焦らず、しっかり休んで回復を
適応障害で休職したあなたへ
大切なメッセージ
休職は治療の一環です。決して恥ずかしいことではありません。
覚えておいてほしいこと
- 休職期間は1〜3か月が一般的
- 個人差がある
- 最初はとにかく休む
- 何もしなくていい
- 徐々に活動を増やす
- 焦らない
- 復職は段階的に
- リハビリ出勤を活用
- 経済的支援がある
- 傷病手当金(約67%)
- 多くの人が復職している
- 適切に休めば回復します
- 再発予防が大切
- ストレス管理、無理をしない
- 一人で抱え込まない
- 医師、産業医、家族に相談
休職中の心構え
急性期 とにかく寝る。罪悪感を手放す。
回復初期 生活リズムを整える。少しずつ活動。
回復中期 社会とのつながり。復職を意識。
復職準備期 リワーク。職場との調整。
復職に向けて
- 焦らない
- 段階的に
- 配慮を求める
- 無理をしない
- サインに気づく
最後に
あなたが今、休職中で不安を感じているなら
休職したことを後悔しないでください。あなたは、自分の健康を守るために、正しい選択をしました。
今は、ただ休んでください。回復に専念してください。
焦る必要はありません。人それぞれ、回復のペースは違います。
自分を他人と比べないでください。自分のペースで、一歩ずつ進めばいいのです。
そして、必ず回復します。多くの人が、適応障害から回復し、また元気に働いています。
あなたにも、必ずできます。
復職への道は、決して平坦ではありません。不安もあるでしょう。でも、あなたは一人じゃありません。
医師、産業医、カウンセラー、家族、友人あなたを支えたいと思っている人が、たくさんいます。
助けを求めてください。一人で抱え込まないでください。
あなたの回復を、そして職場への復帰を、心から応援しています。
あなたには、健康に働く権利があります。焦らず、しっかり休んで、回復してください。

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