はじめに:障害者手当について知りたい方へ
障害のある方やそのご家族にとって、「どんな手当が受給できるのか」「自分は対象になるのか」「手続きはどうすればいいのか」という情報は非常に重要です。障害者手当は、障害のある方の生活を経済的に支援するための制度ですが、種類が多く、それぞれに受給要件や金額が異なるため、全体像を把握するのは簡単ではありません。
障害者手当には、国が定める全国共通の手当と、都道府県や市区町村が独自に設けている手当があります。また、障害の種類や程度、年齢、所得などによって、受給できる手当が異なります。さらに、手当によっては併給できるものとできないものがあり、どの手当を申請すべきか判断するのは容易ではありません。
重要なのは、「知らなかった」「申請していなかった」ために、本来受給できる手当を受け取れていないケースが少なくないということです。障害者手当は申請主義であり、自分から申請しなければ受給できません。また、遡って受給することができない手当も多いため、できるだけ早く情報を知り、適切に申請することが大切です。
本記事では、障害者手当の全体像を網羅的に解説し、国の手当、都道府県・市区町村の手当、その他の給付制度について、受給要件、金額、申請方法などを詳しく説明します。障害のある方、そのご家族、支援者の方々にとって、実践的な情報源となれば幸いです。
障害者手当の全体像
まず、障害者手当の全体像を理解しましょう。
障害者手当の種類
大きく3つに分類
障害者手当は、大きく以下の3つに分類されます。
1. 国の手当
- 特別障害者手当
- 障害児福祉手当
- 特別児童扶養手当
2. 都道府県・市区町村の手当
- 重度心身障害者手当(東京都など)
- 心身障害者福祉手当(各自治体独自)
- その他、自治体ごとに様々な手当
3. その他の給付制度
- 障害年金(年金制度)
- 生活保護の障害者加算
- 児童扶養手当(ひとり親家庭)
手当の特徴
それぞれ目的と対象が異なる
重要なポイント
- 手当によって、対象となる障害の程度や年齢が異なる
- 所得制限がある手当が多い
- 併給できる手当とできない手当がある
- 申請しなければ受給できない(申請主義)
- 遡及して受給できない手当が多い
手当と年金の違い
制度の目的が異なる
手当
- 福祉制度
- 障害による特別な負担や費用を補填するため
- 所得制限がある
年金
- 社会保険制度
- 障害による収入減少を補うため
- 基本的に所得制限はない(20歳前障害の障害基礎年金を除く)
国の手当
国が定める全国共通の手当について、詳しく見ていきましょう。
1. 特別障害者手当
在宅の重度障害者(20歳以上)への手当
対象者
20歳以上で、著しく重度の障害があるため、日常生活において常時特別の介護を必要とする状態にある在宅の方
障害の程度(おおむね以下のいずれか)
- 身体障害者手帳1級または2級の障害が重複している
- 身体障害者手帳1級または2級の障害があり、IQ20以下の重度知的障害がある
- 身体障害者手帳1級または2級の障害があり、精神障害がある(同程度以上)
- IQ20以下の重度知的障害があり、精神障害がある
- 精神障害が重複している
- 身体障害、知的障害、精神障害が重複し、同程度以上の状態にある
手当月額(令和6年4月現在)
月額27,980円
年3回(2月、5月、8月、11月)に4ヶ月分ずつ支給
所得制限
本人、配偶者、扶養義務者の所得が一定額を超える場合は支給停止
支給されない場合
- 施設に入所している
- 病院または診療所に3ヶ月を超えて入院している
申請窓口
市区町村の障害福祉担当窓口
必要書類
- 認定請求書
- 診断書(所定の様式)
- 所得状況届
- 本人名義の口座がわかるもの
- 年金証書(受給している場合)
- マイナンバーがわかるもの
2. 障害児福祉手当
在宅の重度障害児(20歳未満)への手当
対象者
20歳未満で、重度の障害があるため、日常生活において常時介護を必要とする状態にある在宅の児童
障害の程度(おおむね以下のいずれか)
- 身体障害者手帳1級の一部(両上肢、両下肢、体幹機能の障害など)
- 身体障害者手帳1級または2級の障害が重複している
- IQ20以下の重度知的障害
- 精神障害、血液疾患等で同程度以上の状態にある
手当月額(令和6年4月現在)
月額15,220円
年3回(2月、5月、8月、11月)に4ヶ月分ずつ支給
所得制限
本人、配偶者、扶養義務者の所得が一定額を超える場合は支給停止
支給されない場合
- 施設に入所している
- 障害を事由とする年金を受給している
申請窓口
市区町村の障害福祉担当窓口
必要書類
- 認定請求書
- 診断書(所定の様式)
- 所得状況届
- 保護者名義の口座がわかるもの
- マイナンバーがわかるもの
3. 特別児童扶養手当
障害児(20歳未満)を養育する保護者への手当
対象者
20歳未満で、身体または精神に障害のある児童を養育している父母等
障害の程度
- 1級:重度の障害(身体障害者手帳おおむね1級・2級程度、療育手帳A程度、精神障害または疾病により同程度の状態)
- 2級:中度の障害(身体障害者手帳おおむね3級・4級の一部程度、療育手帳B程度、精神障害または疾病により同程度の状態)
手当月額(令和6年4月現在)
- 1級:月額55,350円
- 2級:月額36,860円
年3回(4月、8月、11月)に4ヶ月分ずつ支給
所得制限
受給者本人、配偶者、扶養義務者の所得が一定額を超える場合は支給停止
支給されない場合
- 児童が施設に入所している
- 児童が障害を事由とする年金を受給している
申請窓口
市区町村の障害福祉担当窓口
必要書類
- 認定請求書
- 診断書(所定の様式)または身体障害者手帳・療育手帳等の写し
- 所得状況届
- 受給者名義の口座がわかるもの
- 戸籍謄本
- 住民票
- マイナンバーがわかるもの
都道府県・市区町村の手当
都道府県や市区町村が独自に設けている手当について見ていきましょう。
自治体独自の手当の特徴
自治体によって制度が大きく異なる
重要
都道府県・市区町村の手当は、自治体ごとに制度が異なります。
- 手当の名称が異なる
- 支給額が異なる
- 受給要件が異なる
- 制度自体がない自治体もある
お住まいの自治体の制度を確認することが必要です。
東京都の例
重度心身障害者手当
対象者(以下のいずれか)
- 重度の知的障害であって、日常生活において常時複雑な介護を必要とする程度の身体障害を有する方
- 重度の知的障害の方
- 重度の身体障害の方
手当月額
月額60,000円
所得制限
本人の所得が一定額を超える場合は支給停止
支給されない場合
- 施設に入所している
- 病院に3ヶ月を超えて入院している
心身障害者福祉手当
対象者
- 身体障害者手帳1級・2級
- 愛の手帳1度・2度
- 精神障害者保健福祉手帳1級
(ただし、65歳以上で新たに手帳を取得した方は対象外)
手当月額
月額15,500円
所得制限
本人の所得が一定額を超える場合は支給停止
神奈川県の例
特別障害者手当(県制度)
神奈川県では、国の特別障害者手当に県独自の上乗せがある自治体があります。
重度障害者等介護手当
自治体によって異なる
横浜市、川崎市、相模原市など、各市が独自の手当を設けています。
大阪府の例
重度障害者介護手当
対象者
- 身体障害者手帳1級または2級
- 療育手帳A
- 精神障害者保健福祉手帳1級
手当月額
自治体によって異なる(例:月額5,000円〜15,000円程度)
調べ方
お住まいの自治体に確認
確認方法
- 市区町村のホームページで「障害者手当」「心身障害者福祉手当」などで検索
- 市区町村の障害福祉担当窓口に電話または訪問
- 障害者福祉のしおり(自治体が発行)を確認
その他の給付制度
手当以外の給付制度についても見ていきましょう。
1. 障害年金
年金制度による給付
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取ることができる年金です。
種類
- 障害基礎年金:国民年金から支給
- 障害厚生年金:厚生年金から支給
障害基礎年金の額(令和6年度)
- 1級:年額1,020,000円(月額約85,000円)
- 2級:年額816,000円(月額68,000円)
子の加算あり
障害厚生年金の額
報酬比例部分 + 障害基礎年金
配偶者加給年金あり(2級以上)
受給要件
- 初診日に年金に加入していること
- 保険料納付要件を満たしていること
- 障害認定日に一定の障害状態にあること
申請窓口
- 障害基礎年金:市区町村の年金担当窓口または年金事務所
- 障害厚生年金:年金事務所
2. 生活保護の障害者加算
生活保護受給者への加算
生活保護を受給している方で、障害者手帳を持っている方は、障害者加算が受けられます。
加算額
自治体や障害の程度によって異なる
例:月額約26,000円〜35,000円程度
対象
生活保護受給者で、以下のいずれかに該当する方
- 身体障害者手帳1級〜3級
- 療育手帳A・B
- 精神障害者保健福祉手帳1級・2級
3. 児童扶養手当(ひとり親家庭)
ひとり親家庭への手当
ひとり親家庭の児童を養育している方に支給される手当です。
障害児を養育している場合、特別児童扶養手当と併給できます。
手当月額(令和6年4月現在)
- 全部支給:月額45,500円(第1子)
- 一部支給:月額45,490円〜10,740円(所得に応じて)
第2子以降は加算あり
所得制限
所得が一定額を超える場合は支給停止
4. 就学援助
小中学生の教育費支援
経済的理由により就学困難な児童生徒の保護者に対し、学用品費、給食費などを援助する制度です。
障害児の保護者も対象になる場合があります。
5. 医療費助成
障害者医療費助成制度
自治体によっては、障害者手帳を持っている方の医療費を助成する制度があります。
例
- 重度心身障害者医療費助成(自己負担なしまたは軽減)
- 精神障害者医療費助成
手当の併給について
複数の手当を同時に受給できるかどうかについて見ていきましょう。
併給できる組み合わせ
以下は併給可能
1. 特別障害者手当 + 障害年金
併給可能
2. 障害児福祉手当 + 特別児童扶養手当
併給不可(どちらか一方のみ)
3. 特別児童扶養手当 + 障害年金
併給不可(児童本人が障害年金を受給している場合、特別児童扶養手当は支給されない)
4. 特別児童扶養手当 + 児童扶養手当
併給可能
5. 都道府県・市区町村の手当 + 国の手当
多くの場合、併給可能
ただし、自治体によって異なるため、確認が必要
6. 障害年金 + 都道府県・市区町村の手当
多くの場合、併給可能
併給できない組み合わせ
どちらか一方を選択
1. 障害児福祉手当 vs 障害年金
障害年金を受給している場合、障害児福祉手当は受給できない
2. 特別障害者手当 vs 施設入所
施設に入所している場合、特別障害者手当は受給できない
注意点
自治体の制度は個別確認が必要
都道府県・市区町村の手当については、併給の可否が自治体によって異なります。
複数の手当を申請する場合は、必ず窓口で確認しましょう。
所得制限について
多くの手当には所得制限があります。
所得制限の基本
本人、配偶者、扶養義務者の所得
手当によって、以下のいずれかまたは複数の所得が制限の対象になります。
対象者
- 本人:手当を受ける本人
- 配偶者:法律上の配偶者(事実婚を含む場合もある)
- 扶養義務者:本人を扶養している、または本人と生計を同じくする父母、祖父母、子、兄弟姉妹など
所得制限額の例
特別障害者手当の場合(令和6年度)
本人の所得制限
- 扶養親族等の数0人:約3,604,000円
- 扶養親族等の数1人:約3,984,000円
- 扶養親族等の数2人:約4,364,000円
- 以降、1人増えるごとに380,000円加算
配偶者・扶養義務者の所得制限
- 扶養親族等の数0人:約6,287,000円
- 扶養親族等の数1人:約6,536,000円
- 扶養親族等の数2人:約6,749,000円
- 以降、1人増えるごとに213,000円加算
所得の計算
収入ではなく所得
所得制限は「収入」ではなく「所得」で判定されます。
所得の計算
所得 = 収入 − 必要経費(給与所得控除など)− 諸控除(社会保険料控除、障害者控除など)
障害年金は所得に含まれない
非課税所得
障害年金は非課税所得であり、所得制限の計算に含まれません。
手当の申請方法
手当を受給するための申請方法について見ていきましょう。
申請の基本
申請主義
手当は、自分から申請しなければ受給できません。
重要
- 自動的に受給できるわけではない
- 遡及して受給できない手当が多い
- できるだけ早く申請することが大切
申請の流れ
一般的な流れ
1. 情報収集
どの手当が受給できるか、市区町村の窓口やホームページで確認
2. 必要書類の準備
- 申請書(窓口でもらう、またはダウンロード)
- 診断書(所定の様式、医師に記入してもらう)
- 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の写し
- 所得証明書(前年の所得がわかるもの)
- 戸籍謄本、住民票
- 本人名義の口座がわかるもの
- マイナンバーがわかるもの
3. 申請
市区町村の障害福祉担当窓口に提出
4. 審査
自治体が受給要件を満たしているか審査
5. 認定・支給開始
認定されれば、指定した口座に振り込まれる
申請窓口
市区町村の障害福祉担当窓口
窓口の名称例
- 障害福祉課
- 福祉事務所
- 障害者支援課
自治体によって名称が異なります。
診断書について
医師に記入してもらう
多くの手当は、所定の様式の診断書が必要です。
注意点
- 様式は自治体から入手(窓口またはダウンロード)
- かかりつけ医に記入を依頼
- 診断書料がかかる(5,000円〜10,000円程度)
- 記入に時間がかかる場合がある(1〜2週間程度)
更新手続き
定期的な更新が必要
多くの手当は、一度認定されても、定期的に更新手続きが必要です。
更新の頻度
- 1年ごと
- 2年ごと
- 状態に応じて
更新を忘れると、手当が停止されるので注意が必要です。
よくある質問
Q1 手当は自動的に受給できますか?
A いいえ、申請が必要です
手当は申請主義です。自分から申請しなければ受給できません。
Q2 遡って受給できますか?
A 多くの手当は遡及できません
多くの手当は、申請した月の翌月分からの支給となり、遡及して受給することはできません。
できるだけ早く申請することが大切です。
Q3 障害者手帳を持っていれば自動的に手当がもらえますか?
A いいえ、手帳だけでは受給できません
障害者手帳を持っていても、手当の受給要件(障害の程度、所得制限など)を満たし、申請する必要があります。
Q4 複数の手当を同時に受給できますか?
A 手当の組み合わせによります
併給できる手当とできない手当があります。詳しくは「手当の併給について」の項を参照してください。
Q5 所得が多いと手当は受給できませんか?
A 所得制限を超えると支給停止になります
多くの手当には所得制限があり、本人、配偶者、扶養義務者の所得が一定額を超えると支給停止になります。
Q6 障害年金と手当の違いは何ですか?
A 制度の目的と支給元が異なります
- 手当:福祉制度、特別な負担や費用を補填、所得制限あり
- 年金:社会保険制度、収入減少を補う、基本的に所得制限なし
Q7 施設に入所していても手当は受給できますか?
A 多くの手当は受給できません
特別障害者手当、障害児福祉手当などは、施設に入所している場合は受給できません。
Q8 手当の申請にはどんな書類が必要ですか?
A 手当によって異なりますが、主に以下のものが必要です
- 申請書
- 診断書(所定の様式)
- 障害者手帳の写し
- 所得証明書
- 戸籍謄本、住民票
- 本人名義の口座がわかるもの
- マイナンバーがわかるもの
Q9 診断書の費用はどれくらいですか?
A 5,000円〜10,000円程度が一般的です
診断書料は医療機関によって異なりますが、5,000円〜10,000円程度が一般的です。
Q10 手当の申請はどこでできますか?
A 市区町村の障害福祉担当窓口です
お住まいの市区町村の障害福祉課、福祉事務所、障害者支援課などで申請できます。
まとめ:障害者手当を活用して生活を支えよう
障害者手当には、国の手当(特別障害者手当、障害児福祉手当、特別児童扶養手当)と、都道府県・市区町村の独自の手当があります。それぞれに受給要件、支給額、所得制限などが異なり、複雑な制度となっていますが、適切に活用することで、障害のある方の生活を経済的に支えることができます。
重要なのは、手当は申請主義であり、自分から申請しなければ受給できないということです。また、多くの手当は遡及して受給することができないため、できるだけ早く情報を収集し、申請することが大切です。障害者手帳を取得したら、すぐに受給できる手当がないか確認しましょう。
手当によっては併給できるものとできないものがあり、また所得制限がある手当も多いため、自分の状況に合わせて、どの手当を申請すべきか検討する必要があります。不明な点があれば、市区町村の障害福祉担当窓口に相談することをおすすめします。
都道府県・市区町村の手当は、自治体によって制度が大きく異なります。お住まいの自治体のホームページや窓口で、必ず最新の情報を確認しましょう。また、障害年金や生活保護の障害者加算など、手当以外の給付制度も併せて検討することで、より安定した生活を送ることができます。
障害者手当制度を正しく理解し、適切に活用して、より良い生活を送りましょう。わからないことがあれば、遠慮せずに市区町村の窓口や、障害者相談支援事業所などに相談してください。あなたの生活を支える制度が、きっとあります。

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