障害者雇用の農園型ビジネスへの規制と最新動向

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近年、企業が法定雇用率を達成するための手段として広がってきた農園型障害者雇用、いわゆる代行ビジネスについて、社会的な批判が高まり国も対応に動いている状況をご存じでしょうか。

障害者の方や、これから障害者雇用枠での就職を考えている方にとって、こうした動きは自分の働き方や就職先の選択に直接関わる重要な問題です。

ここでは、農園型障害者雇用ビジネスの実態や、政府による規制の動き、批判される理由、これからの障害者雇用の方向性について詳しく解説していきます。

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農園型障害者雇用ビジネスとは

まず、農園型障害者雇用ビジネスがどのような仕組みなのかを整理しておきましょう。

農園型障害者雇用ビジネスとは、運営会社が用意した農園で障害者を働かせ、それを雇用したい企業に紹介するサービスです。 企業は運営会社と契約し、農園で働く障害者を自社の従業員として雇用することで、法定雇用率の達成に役立てる仕組みとなっています。

実際の作業内容は、ハーブの栽培、野菜の収穫、苗の植え付け、除草、加工作業など、農作業が中心です。

障害者の方々は屋内型のビニールハウスや農園で働き、作業の指導や日常的な管理は運営会社のスタッフが行います。

雇用主は契約した企業ですが、勤務地は運営会社の農園であり、業務内容も運営会社が用意したものです。

企業の本社や事業所で働くわけではなく、企業の本来の事業活動とは関係のない場所で農作業に従事することになります。

このビジネスモデルは法律で禁止されているわけではなく、適法に運営されています。

そのため、多くの企業が利用しており、令和5年4月の厚生労働省の調査では、障害者向けの農園とサテライトオフィスが合わせて全国125カ所、少なくとも6568人が働き、利用する企業は延べ1000社を超えることが明らかになっています。

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農園型ビジネスが広がった背景

なぜこのようなビジネスモデルが広がってきたのか、その背景にはいくつかの要因があります。

法定雇用率の段階的な引き上げが、最も大きな要因です。 民間企業の法定雇用率は、令和5年度の2.3%から、令和6年4月に2.5%、令和8年7月に2.7%へと引き上げられる予定です。

これにより、多くの企業が新たに障害者雇用に取り組む必要に迫られています。

業務の切り出しの難しさも、企業が農園型を選ぶ理由の一つです。 厚生労働省の調査では、障害者雇用が難しい企業の約8割が、当該障害者に適した業務がないと回答しています。

自社の業務の中から障害者に適した仕事を切り出すには、業務の見直しや職場環境の整備など、相当の労力とコストが必要となります。

障害者の定着率の低さも問題となっています。

障害者の1年後の定着率は平均で約6割とされており、約4割が1年以内に退職している現実があります。 採用しても定着しないと、企業は再び採用活動を行わなければならず、負担が大きくなります。

地域間の労働力バランスも背景にあります。

東京都など都市部では企業が集中している一方、障害者の求職者が少なく求人過多となっています。

逆に地方では企業が少なく、障害者の労働力が余っている状況があります。 農園型ビジネスは、都市部の企業と地方の障害者を結びつける役割も果たしています。

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農園型ビジネスへの批判

農園型障害者雇用ビジネスは、近年大きな批判にさらされています。 ここでは、主な批判のポイントを見ていきましょう。

実質的な雇用とは言えないという批判があります。 企業は単にお金を支払って法定雇用率の数字を満たしているだけで、本来の意味での障害者雇用とは異なるという指摘です。

雇用主である企業と、実際に働く障害者の間に実質的な関わりがほとんどなく、共生社会の理念から外れているとされています。

仕事のやりがいや成長機会の乏しさも問題視されています。

農園での作業は単純作業の繰り返しであり、収穫物が企業の事業に活用されることも少なく、自分の仕事が誰かの役に立っているという実感を持ちにくい状況です。

キャリアアップの機会もほとんどなく、長年同じ作業を続けることになりがちです。

賃金水準の問題もあります。

最低賃金は支払われているものの、農園型で働く障害者の賃金は一般的な障害者雇用と比べても低めの傾向があります。

昇給や賞与もほとんどなく、長く働いても収入が増えていかない実情があります。

社会との接点の少なさも指摘されています。

企業の本社や事業所で働けば、健常者との交流があり、社会の一員として活動している実感が得られます。

しかし、農園型では障害者だけが集まって働く環境となるため、社会との接点が限られてしまいます。

数合わせのための雇用という批判も根強くあります。

障害者雇用の本来の目的は、障害者が社会で活躍できる場を作ることですが、農園型ビジネスは法定雇用率という数字を満たすためだけの手段になっているのではないかという指摘です。

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政府の対応と規制の動き

こうした批判を受けて、政府も対応に動き始めています。

令和4年12月の障害者雇用促進法改正の際、国会は厚生労働省に対して、農園型障害者雇用は代行ビジネスであるため利用しないように指導するよう要請しました。

衆参両議院の厚生労働委員会の附帯決議には、単に雇用率の達成のみを目的として雇用主に代わって障害者に職場や業務を提供するいわゆる障害者雇用代行ビジネスを利用することがないよう、事業主への周知、指導等の措置を検討することと明記されています。

令和4年1月以降、各都道府県の労働局では、障害者雇用ビジネス実施事業者やその利用企業の実態把握を行っています。 業務内容や業務量、雇用期間、労働時間、雇用管理の状況などを把握し、必要に応じて関係部局や関係機関と連携して、就業場所や利用企業を訪問。

不適切な事案については改善指導が実施されています。

令和5年5月には、厚生労働省が企業向けに障害者雇用に関するリーフレットを公表しました。

このリーフレットでは、企業に対して障害者雇用の適正化を呼びかけ、単なる数合わせではなく、障害者が活躍できる雇用環境を整えることの重要性が強調されています。

令和6年2月には、農園型障害者雇用問題研究会の報告書がまとめられました。

この報告書では、農業分野における障害者就労をより良好なものとするための課題や、必要な取り組みについて整理されています。

ただし、現時点では農園型ビジネスを直接禁止する法律はなく、ガイドラインや指導による対応が中心となっています。

完全な規制ではなく、適正化に向けた誘導という性格が強い状況です。

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厚生労働省が示すアセスメントの考え方

厚生労働省は、農園型を含む障害者雇用全般において、適切なアセスメントの実施が重要だと指摘しています。

アセスメントとは、障害者一人ひとりの能力や適性、希望を把握し、その方に最適な業務や働き方を見極めるプロセスです。

評価結果は障害者本人とも共有し、継続的なモニタリングを通じて、職業人生全般にわたる支援を行うことが求められています。

評価結果に基づき、各人の能力や適性を最大限に生かせるよう、業務分担や配置、合理的配慮の内容を定期的に見直し、必要な能力開発・向上の取り組みを行うことが期待されています。

報酬や等級などの処遇にも、適切に反映させていくことが望ましいとされています。

農園で経験を積んだ障害者が、利用企業の本社の人事担当に異動したケースや、将来的には自社内への配置転換を検討したいと述べる利用企業もあります。

こうした取り組みは、農園型を単なる数合わせではなく、自社内での雇用への第一歩として活用する方向性を示しています。

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適切に運営されている農園型もある

農園型障害者雇用がすべて批判される対象というわけではありません。 適切に運営され、障害者の方々の働きがいや成長につながっているケースもあります。

ある企業では、屋内型の貸農園を利用してハーブ栽培と加工を障害者の方々に依頼しています。

出来上がったハーブティーは社内のカフェテリアで提供され、オフィスで働く従業員の福利厚生として活用されています。

今後は食品会社と提携し、生産したハーブを加工食品の原材料として活用してもらう販路を調整中とのことです。

このケースでは、農園で生産されたものが企業の本来の活動に役立てられており、障害者の仕事が会社全体に貢献している実感を持ちやすい環境となっています。

管理スタッフが定期的に農園を訪問し、障害者の方々との関係性を築いている点も、適切な運営の例として挙げられます。

農園型を活用しながらも、自社内への配置転換やキャリアアップの機会を提供している企業もあります。

障害者の能力や適性が認められれば、本社や事業所での勤務に移行する道が用意されているケースもあるのです。

問題なのは農園型ビジネス自体ではなく、形式的に数字を満たすだけで実質的な障害者雇用への取り組みを怠っている企業の姿勢だと言えます。

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障害者の立場から見る農園型

農園型障害者雇用には、批判だけでなく、障害者本人にとってのメリットも存在します。

福祉施設の作業所と比較すると、賃金が高いことが大きなメリットです。

就労継続支援B型の作業所では工賃が月1万円から2万円程度であることが多いのに対し、農園型では最低賃金が保障され、月10万円以上の収入を得られます。

雇用契約に基づいて働けることも、重要なポイントです。

社会保険に加入でき、有給休暇も取得できる、正規の労働者としての地位が保障されています。

精神障害者や知的障害者など、一般企業での就労が難しい障害者にとって、屋内型農園は働きやすい環境です。

室内で空調が整っており、作業内容も比較的単純で、ストレスの少ない環境で働けます。

支援員が常駐していることも、安心して働ける要素です。

体調が悪くなったときの対応、人間関係のトラブル、作業の指導など、必要なサポートを受けられる環境が整っています。

障害者の中には、農園型で長く安定して働くことを希望する方も多くいます。

すべての障害者が一般企業の本社や事業所で働きたいわけではなく、自分のペースで穏やかに働ける環境を求める方にとって、農園型は貴重な選択肢となっています。

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今後の障害者雇用の方向性

農園型への規制の動きと並行して、障害者雇用全体の方向性も変わりつつあります。

法定雇用率の段階的な引き上げにより、より多くの企業が障害者雇用に本格的に取り組む必要が出てきています。

単に数字を満たすだけではなく、障害者が活躍できる職場づくりが求められる時代となっています。

自社内での雇用を進めるための支援も充実してきています。

ジョブコーチによる職場定着支援、業務の切り出しを支援するコンサルティングサービス、職場環境整備のための助成金など、企業を支援する仕組みが整備されています。

特例子会社という選択肢もあります。

親会社の実雇用率に算入できる障害者の雇用に特別な配慮をした子会社で、専門的な支援体制のもとで障害者が働ける環境を提供しています。

農園型と違い、自社グループ内での雇用となるため、より実質的な障害者雇用と評価されることが多いものです。

ITやテクノロジーを活用した新しい働き方も広がっています。

テレワーク、デジタルツールの活用、AI技術による業務支援など、障害特性を活かせる職場が増えてきています。

精神障害者や発達障害者の活躍も、近年特に注目されています。

これまで見えにくかった障害への理解が進み、適切な配慮のもとで活躍できる職場が増えてきています。

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障害者の方が職場を選ぶ際のポイント

これから障害者雇用枠で就職を考える方や、転職を検討する方が、職場を選ぶ際のポイントを整理しておきましょう。

雇用形態と勤務地を確認することが大切です。

本社や事業所での勤務なのか、農園など別の場所での勤務なのかを確認しましょう。

農園型を選ぶ場合も、運営会社の実態や、利用企業との関係性を確認しておくと安心です。

業務内容と仕事のやりがいを考えてみましょう。

自分が興味を持てる仕事か、成長機会があるか、自分の仕事が誰かの役に立っているという実感を持てるかなどを確認します。

キャリアアップの可能性も重要です。

長く働いていく中で、業務の幅が広がる機会があるか、昇給や昇進の可能性があるか、自社への配置転換の道があるかなどを確認しておきましょう。

合理的配慮の内容を具体的に確認することも大切です。

障害特性に応じた業務調整、通院への配慮、コミュニケーション方法の工夫など、自分が必要とする配慮を受けられるかを確認します。

職場の障害への理解度も、長く働く上で重要です。

障害者雇用の経験が豊富な企業か、社員の障害への理解があるか、サポート体制が整っているかなどを、面接や職場見学を通じて確認していきましょう。

支援機関のサポートを活用することもおすすめです。

ハローワーク、就労移行支援事業所、障害者専門の転職エージェントなどに相談し、自分に合った職場を一緒に探してもらいましょう。

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まとめ

農園型障害者雇用ビジネスは、法定雇用率の達成に苦慮する企業のニーズに応える形で広がってきましたが、近年は社会的な批判が高まり、政府も対応に動いています。

令和4年12月の障害者雇用促進法改正の際の国会の附帯決議や、令和5年の厚生労働省のリーフレット、令和6年2月の研究会報告書など、適正化に向けた取り組みが進められています。

ただし、現時点では農園型を直接禁止する法律はなく、指導やガイドラインによる対応が中心となっています。 農園型のすべてが批判される対象ではなく、適切に運営され、障害者の方々の働きがいや成長につながっているケースもあります。

法定雇用率の段階的な引き上げに伴い、企業には単なる数合わせではなく、障害者が活躍できる職場づくりが求められる時代となっています。

障害者の方が就職や転職を考える際には、雇用形態、勤務地、業務内容、キャリアアップの可能性、合理的配慮の内容などを総合的に確認し、自分に合った職場を選んでいくことが大切です。

ハローワーク、就労移行支援事業所、障害者専門の転職エージェントなど、支援機関のサポートを活用しながら、自分らしい働き方を見つけていきましょう。

障害者雇用は単なる義務の達成ではなく、共生社会の実現に向けた重要な取り組みです。 障害者一人ひとりが自分の能力を活かして社会に参加できる環境が、これからますます広がっていくことが期待されます。

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