はじめに
「障害があって収入が少ない」「家賃の支払いが負担」「一人暮らしを始めたいが経済的に不安」障害のある方にとって、住まいの確保と家賃負担は大きな課題です。特に障害年金や就労継続支援B型の工賃だけでは、家賃を払うと生活費が残らないという状況も少なくありません。
障害者向けの家賃補助制度は、自治体によって様々に用意されています。グループホーム利用者への家賃助成、民間住宅への家賃補助、住宅手当など、利用できる制度を知ることで、経済的負担を軽減し、安定した住まいを確保することができます。
本記事では、障害者が利用できる家賃補助制度の全体像、国の制度、主要自治体別の制度、申請方法、そしてよくある質問まで、詳しく解説します。
障害者向け家賃補助制度の全体像
家賃補助の種類
1. グループホーム家賃助成
- 最も一般的な制度
- 障害者グループホームの利用者向け
- 国の制度+自治体独自の上乗せ
2. 民間住宅家賃補助
- 一般の賃貸住宅に住む障害者向け
- 自治体独自の制度
- 実施している自治体は限定的
3. 住居確保給付金
- 離職・廃業により住居を失うおそれがある方向け
- 障害者に限らない制度だが利用可能
4. 生活保護の住宅扶助
- 生活保護受給者向け
- 家賃相当額を支給
5. 公営住宅の優先入居・家賃減免
- 市営住宅、県営住宅など
- 家賃が所得に応じて設定される
- 障害者世帯は優先入居の対象
制度の実施主体
国の制度
- 特定障害者特別給付費(グループホーム家賃助成)
- 住居確保給付金
- 生活保護
都道府県の制度
- 一部の都道府県で独自制度
市区町村の制度
- グループホーム家賃助成の上乗せ
- 民間住宅家賃補助(自治体により有無が異なる)
重要 お住まいの自治体により、利用できる制度が大きく異なります
国の制度
1. 特定障害者特別給付費(グループホーム家賃助成)
概要 障害者グループホームに入居している低所得者に対して、家賃の一部を助成する国の制度
対象者 以下のすべてに該当する方
- 障害者グループホーム(共同生活援助)に入居している
- 生活保護受給者または市町村民税非課税世帯(低所得者)
助成額 月額上限10,000円(実際の家賃が10,000円未満の場合は実費)
対象となる家賃
- 居住費のうち家賃相当分
- 光熱水費、食費は対象外
申請方法
- グループホーム事業者を通じて申請
- 利用者が直接申請する必要はない場合が多い
- 市区町村の障害福祉担当窓口で確認
支給方法
- グループホーム事業者に直接支給される場合
- または利用者の家賃から差し引かれる
注意点
- 生活保護受給者は、生活保護の住宅扶助との併給調整あり
- 所得が一定額を超えると対象外
根拠法令 障害者総合支援法
2. 住居確保給付金
概要 離職・廃業または減収により住居を失うおそれがある方に対し、家賃相当額を支給する制度
対象者 以下のすべてに該当する方
- 離職・廃業後2年以内、またはやむを得ない休業等により収入が減少
- 直前の月の世帯収入合計額が、基準額+家賃額(上限あり)以下
- 預貯金の合計額が基準額×6以下
- ハローワークに求職申込をし、誠実かつ熱心に求職活動を行う
障害者の場合
- 障害があっても対象になる
- 就労継続支援等の利用は可能
- ただし、求職活動が条件のため、就労不可能な場合は対象外の可能性
支給額 家賃額(上限あり、自治体により異なる)
例(東京都特別区)
- 単身世帯 上限53,700円
- 2人世帯 上限64,000円
- 3人世帯 上限69,800円
支給期間 原則3か月(最長9か月まで延長可能)
申請先 市区町村の自立相談支援機関(社会福祉協議会など)
注意
- 一時的な支援制度
- 求職活動が条件
- 生活保護との併給不可
3. 生活保護の住宅扶助
概要 生活保護受給者に対して、家賃相当額を支給
対象者 生活保護受給者
支給額 家賃の実費(上限あり、自治体により異なる)
例(東京都特別区、2024年)
- 単身世帯 上限53,700円
- 2人世帯 上限64,000円
- 3〜5人世帯 上限69,800円
- 6人世帯 上限75,000円
- 7人以上 上限83,800円
支給方法
- 家主に直接支払われる場合
- または受給者が受け取り、家主に支払う
申請先 福祉事務所
注意
- 生活保護全体の一部
- 収入認定あり
- 他の家賃補助との併給不可
主要自治体の障害者家賃補助制度
東京都
1. グループホーム家賃助成(都独自上乗せ)
概要 国の10,000円に加え、都が独自に上乗せ助成
対象者
- グループホームに入居
- 低所得者(市町村民税非課税など)
助成額 国10,000円+都の上乗せ(区市町村により異なる)
例(一部の区)
- 合計で月額20,000円〜30,000円程度
2. 東京都心身障害者福祉手当
概要 直接の家賃補助ではないが、生活費全般に使える手当
対象者
- 身体障害者手帳1・2級
- 愛の手帳1〜3度
- 精神障害者保健福祉手帳1級
金額 月額15,500円(2024年度)
所得制限 あり
申請先 区市町村の障害福祉担当窓口
3. 区市町村独自の制度
世田谷区
- 民間賃貸住宅家賃助成制度
- 対象 障害者手帳所持者で一定の条件
- 金額 月額10,000円〜20,000円程度
- 所得制限あり
練馬区
- 心身障害者福祉手当(区独自)
- 月額15,500円
江戸川区
- 心身障害者福祉手当(区独自)
- 月額15,000円
その他の区 各区で独自の手当や助成制度がある場合がある
確認方法 各区のホームページまたは区役所で確認
神奈川県
1. 横浜市
グループホーム家賃助成
- 国10,000円+市の上乗せ
- 合計で月額20,000円程度(条件による)
民間住宅家賃補助
- 現在は実施していない
障害者手当
- 特別障害者手当(国) 月額27,980円
- 障害児福祉手当(国) 月額15,220円
- 特別障害者手当(市独自) 区分により月額4,000円〜13,000円
2. 川崎市
グループホーム家賃助成
- 国10,000円+市の上乗せ
- 合計で月額20,000円程度
民間住宅家賃補助
- 現在は実施していない
障害者手当
- 国の手当に加え、市独自の手当あり
3. 相模原市
グループホーム家賃助成
- 国10,000円+市の上乗せ
その他 市独自の障害者手当
大阪府
1. 大阪市
グループホーム家賃助成
- 国10,000円+市の上乗せ
- 合計で月額15,000円〜20,000円程度
民間住宅家賃補助
- 大阪市重度障がい者等住宅改造費助成事業(改造費用の助成、家賃補助ではない)
障害者手当
- 特別障害者手当(国)
- 障害児福祉手当(国)
- 大阪市重度障害者手当(市独自) 月額5,000円
2. 堺市
グループホーム家賃助成
- 国10,000円
障害者手当
- 国の手当+市独自の手当
愛知県
1. 名古屋市
グループホーム家賃助成
- 国10,000円+市の上乗せ
民間住宅家賃補助
- 現在は実施していない
障害者手当
- 国の手当+市独自の手当(特別障害者手当 月額13,000円など)
福岡県
1. 福岡市
グループホーム家賃助成
- 国10,000円
障害者手当
- 国の手当+市独自の手当
北海道
1. 札幌市
グループホーム家賃助成
- 国10,000円+市の上乗せ
障害者手当
- 国の手当+市独自の手当
その他の自治体
民間住宅家賃補助を実施している自治体の例
- 東京都内の一部の区(世田谷区など)
- 一部の地方自治体
確認方法 お住まいの市区町村のホームページまたは障害福祉担当窓口で確認
注意 民間住宅への直接的な家賃補助を実施している自治体は少数派です
公営住宅の活用
家賃補助ではありませんが、公営住宅は障害者にとって有効な選択肢です。
公営住宅とは
種類
- 市営住宅
- 県営住宅
- 都営住宅(東京都)
- 府営住宅(大阪府)
- 道営住宅(北海道)
特徴
- 所得に応じた家賃設定(民間より安い)
- 初期費用が安い(敷金のみ、礼金なし)
- 更新料なし
障害者の優遇措置
1. 優先入居
- 障害者世帯は抽選の倍率が優遇される
- または優先枠がある
2. 家賃減免
- 所得が低い場合、さらに家賃が減免される場合がある
- 自治体により制度が異なる
3. 単身入居可能
- 一般的に公営住宅は単身入居不可が多い
- 障害者は単身でも入居可能な場合がある
入居条件
一般的な条件
- 所得が一定額以下
- 住宅に困窮していること
- 市町村内に居住または勤務していること
障害者の場合
- 障害者手帳を持っていること
- 単身でも入居可能な場合がある
申請方法
募集
- 定期募集(年数回)
- 随時募集(空きがある場合)
申込
- 募集期間中に申込
- 抽選または先着順
窓口
- 市町村の住宅課
- 都道府県の住宅供給公社
家賃の目安
所得により異なる
- 月額数千円〜数万円
- 民間の半額以下の場合が多い
例(東京都営住宅、単身用1K)
- 月額10,000円〜30,000円程度(所得による)
メリット
- 家賃が安い
- 初期費用が安い
- 更新料なし
- 安定した住まい
デメリット
- 抽選倍率が高い
- 選べない(場所、間取り)
- 古い建物が多い
- 所得制限がある
グループホームの活用
家賃補助が最も充実しているのは、グループホームです。
グループホームとは
概要 障害者が共同生活を送る住まい
特徴
- 数人で一緒に住む
- 世話人による生活支援
- 食事提供あり(事業所による)
対象
- 障害支援区分の認定は不要(訓練等給付)
- 身体、知的、精神障害者
費用
家賃
- 事業所により異なる
- 月額30,000円〜60,000円程度
家賃助成
- 国10,000円
- 自治体の上乗せ(ある場合)
- 実質負担 月額20,000円〜50,000円程度
その他
- 食費 月額30,000円〜40,000円程度
- 光熱水費 月額10,000円〜15,000円程度
- サービス利用料 1割負担(上限あり)
合計 月額60,000円〜100,000円程度
収入の目安
- 障害基礎年金2級 約65,000円/月
- 就労継続支援B型工賃 平均約16,000円/月
- 合計 約81,000円/月
→ グループホームの費用を賄える可能性がある
メリット
- 家賃助成が受けられる
- 生活支援がある
- 孤立しない
- 食事の心配が少ない
デメリット
- プライバシーが限定的
- 共同生活のルールがある
- 事業所により質が異なる
探し方
- 市区町村の障害福祉担当窓口
- 相談支援事業所
- WAM NET(ワムネット)で検索
申請方法(一般的な流れ)
グループホーム家賃助成
ステップ1 グループホーム入居
- グループホームを探して入居
ステップ2 助成の確認
- 事業所に家賃助成について確認
ステップ3 申請(事業所が代行する場合が多い)
- 事業所を通じて市区町村に申請
- または利用者が市区町村の窓口で申請
ステップ4 支給決定
ステップ5 助成開始
- 家賃から差し引かれる、または事業所に直接支給
民間住宅家賃補助(自治体独自制度の場合)
ステップ1 制度の確認
- お住まいの市区町村に制度があるか確認
ステップ2 要件の確認
- 対象者の要件を確認
ステップ3 申請書類の準備
- 申請書
- 障害者手帳のコピー
- 賃貸借契約書のコピー
- 所得証明書
- その他(自治体により異なる)
ステップ4 窓口で申請
- 市区町村の障害福祉担当窓口
ステップ5 審査
ステップ6 支給決定
ステップ7 助成開始
- 振込または家賃から差し引き
住居確保給付金
ステップ1 自立相談支援機関に相談
- 市区町村の社会福祉協議会など
ステップ2 申請書類の準備
- 申請書
- 離職証明書など
- 賃貸借契約書
- 預貯金通帳のコピー
- その他
ステップ3 申請
ステップ4 求職活動
- ハローワークに求職申込
- 月2回以上の職業相談
ステップ5 支給決定
ステップ6 家賃支給
- 家主に直接支払われる
家賃補助を受けるための条件(一般的)
共通条件
1. 障害者手帳の所持
- 身体障害者手帳
- 療育手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
2. 所得制限
- 本人または世帯の所得が一定額以下
- 制度により基準が異なる
3. 居住要件
- 当該市区町村に居住していること
グループホーム家賃助成の条件
1. グループホームに入居
2. 低所得者
- 生活保護受給者
- 市町村民税非課税世帯
民間住宅家賃補助の条件(自治体による)
1. 障害者手帳の等級
- 重度障害者(1〜2級など)に限定される場合が多い
2. 所得制限
- 厳しい所得制限がある場合が多い
3. 賃貸住宅に居住
- 持ち家は対象外
- 公営住宅は対象外の場合がある
4. その他
- 世帯分離していること
- 単身世帯であること
- など、自治体により様々
よくある質問(FAQ)
Q1 障害者が利用できる家賃補助にはどんなものがありますか?
A グループホーム家賃助成(国+自治体)、一部自治体の民間住宅家賃補助、住居確保給付金、生活保護の住宅扶助などがあります。
Q2 一人暮らしでも家賃補助は受けられますか?
A 自治体により、民間住宅家賃補助制度がある場合があります。ただし、実施している自治体は少数です。お住まいの市区町村に確認してください。
Q3 グループホームの家賃助成はいくらですか?
A 国の制度で月額10,000円、自治体によりさらに上乗せがあり、合計で月額20,000円〜30,000円程度になる場合があります。
Q4 精神障害者保健福祉手帳でも家賃補助は受けられますか?
A はい。グループホーム家賃助成など、障害の種類を問わない制度があります。ただし、自治体独自の制度は対象が限定される場合があります。
Q5 所得制限はありますか?
A ほとんどの制度に所得制限があります。生活保護受給者や市町村民税非課税世帯などが対象となる場合が多いです。
Q6 家賃補助と障害年金は併用できますか?
A はい、併用できます。家賃補助は障害年金とは別の制度です。
Q7 実家に住んでいても家賃補助は受けられますか?
A 一般的に、実家(持ち家)に住んでいる場合は対象外です。賃貸住宅に住んでいることが条件です。
Q8 公営住宅に住んでいても家賃補助は受けられますか?
A 制度により異なります。公営住宅は対象外の場合が多いですが、確認が必要です。
Q9 申請はどこでできますか?
A 市区町村の障害福祉担当窓口、またはグループホーム事業所を通じて申請します。
Q10 東京23区ではどこの区が家賃補助が充実していますか?
A 世田谷区など一部の区で民間住宅家賃補助があります。ただし、区により制度が大きく異なるため、各区に確認してください。
まとめ 家賃補助制度を活用しよう
障害のある方へ
家賃補助の選択肢
- グループホーム家賃助成
- 最も確実に受けられる制度
- 国10,000円+自治体上乗せ
- 民間住宅家賃補助
- 自治体により有無が異なる
- お住まいの市区町村に確認
- 住居確保給付金
- 離職・減収の場合
- 一時的な支援
- 生活保護の住宅扶助
- 生活保護受給者
- 家賃の実費を支給
- 公営住宅
- 所得に応じた低家賃
- 障害者は優先入居
大切なポイント
- お住まいの自治体の制度を確認
- 自治体により大きく異なる
- グループホームが最も助成が充実
- 共同生活が可能なら選択肢に
- 所得制限がある
- 多くの制度に所得制限
- 複数の制度の併用
- 手当と家賃補助は併用可能
- 窓口で相談
- 市区町村の障害福祉担当窓口へ
- 公営住宅も検討
- 家賃が安く、安定した住まい
相談先
市区町村の障害福祉担当窓口 基幹相談支援センター グループホーム事業所 社会福祉協議会(住居確保給付金)
最後に
障害があっても、安心して暮らせる住まいを確保することは、とても大切です。
家賃の負担は大きいですが、様々な支援制度があります。
特に、グループホームは家賃助成が充実しており、障害年金と工賃で生活できる可能性があります。
一人暮らしを希望する場合も、お住まいの自治体に家賃補助制度があるか確認してみてください。
また、公営住宅は家賃が安く、障害者は優先入居の対象になります。
制度は複雑で、自治体により大きく異なりますが、一人で悩まず、市区町村の窓口に相談してください。
あなたが安心して暮らせる住まいを見つけられることを、心から願っています。
利用できる制度を活用して、安定した生活を送りましょう。

コメント