はじめに
「障害があるけど一人暮らしをしたい」「親元を離れて自立したい」「でも経済的に不安」「生活できるか心配」障害のある方が一人暮らしを始めることは、大きなチャレンジであると同時に、自立への重要な一歩です。
障害があっても、適切な支援を活用すれば、一人暮らしは十分に可能です。障害福祉サービス、経済的支援、生活支援、相談窓口など、様々な制度とサービスが用意されています。これらを組み合わせることで、安全で充実した一人暮らしを実現できます。
本記事では、障害者が一人暮らしをするために利用できる支援制度、準備の仕方、生活設計、トラブル対処法、そしてよくある質問まで、詳しく解説します。
障害者の一人暮らし支援の全体像
支援の種類
1. 障害福祉サービス
- 居宅介護(ホームヘルプ)
- 自立生活援助
- 訪問看護
- 短期入所(ショートステイ)
- 移動支援
2. 経済的支援
- 障害年金
- 生活保護
- 各種手当
- 家賃補助(自治体による)
- 医療費助成
3. 住まいの支援
- 公営住宅の優先入居
- 民間住宅の紹介・保証
- 住宅改修費助成
- 日常生活用具給付
4. 生活支援
- 相談支援
- 地域定着支援
- 見守り・安否確認
- 配食サービス
5. 就労支援
- 就労継続支援
- 就労移行支援
- 障害者就業・生活支援センター
6. 緊急時の支援
- 地域生活支援拠点
- 24時間対応の相談支援
障害福祉サービス
1. 居宅介護(ホームヘルプ)
概要 自宅での日常生活を支援するサービス
サービス内容
身体介護
- 食事介助
- 入浴介助
- 排泄介助
- 着替え介助
- 体位変換
- 移乗・移動介助
家事援助
- 掃除
- 洗濯
- 買い物
- 調理
- 薬の受け取り
通院等介助 病院への付き添い
対象者
- 障害支援区分1以上(家事援助は区分によらず利用可能な場合も)
- 身体、知的、精神障害者
利用者負担 原則1割(上限あり)
利用時間 週数時間〜毎日数時間(障害支援区分による)
申請先 市区町村の障害福祉担当窓口
ポイント 一人暮らしの障害者にとって、最も基本的で重要なサービス
2. 重度訪問介護
概要 重度の障害があり、常時介護が必要な方への長時間の介護サービス
対象者
- 障害支援区分4以上(一定の条件)
- 重度の肢体不自由者、重度の知的障害・精神障害者
サービス内容
- 身体介護
- 家事援助
- 見守り
- 外出介助
- 長時間(1日数時間〜24時間)の支援
利用者負担 原則1割(上限あり)
特徴 長時間の支援が可能なため、重度障害者の一人暮らしを支える
3. 自立生活援助
概要 一人暮らしを始めた障害者への定期的な訪問支援
対象者
- 障害者支援施設やグループホームから一人暮らしを始めた方
- 現に一人暮らしをしており、支援が必要な方
サービス内容
- 定期的な居宅訪問(週1回程度)
- 生活状況の確認
- 必要な助言、関係機関との連絡調整
- 随時の相談対応
期間 1年間(必要に応じて更新可能)
利用者負担 原則1割(上限あり)
申請先 市区町村の障害福祉担当窓口
ポイント 一人暮らしを始めたばかりの時期に、定期的に様子を見てくれる
4. 訪問看護
概要 看護師が自宅を訪問し、医療的ケアや健康管理を行う
対象者
- 医療的ケアが必要な障害者
- 主治医の指示書が必要
サービス内容
- 健康状態の観察
- 服薬管理
- 医療処置(たんの吸引、経管栄養など)
- リハビリテーション
- 相談・助言
利用者負担
- 健康保険適用(1〜3割)
- 自立支援医療の対象になる場合あり
申請 訪問看護ステーションに連絡、主治医の指示書
5. 短期入所(ショートステイ)
概要 短期間、施設に入所して介護等を受けるサービス
利用目的
- 介護者の休息(レスパイト)
- 一人暮らしの障害者の緊急時の受け入れ
- 体調不良時
- 試し利用(一人暮らしの準備)
対象者 障害支援区分1以上(または障害児)
利用期間 数日〜1か月程度
利用者負担 サービス費の1割+滞在費(食費、光熱水費)
申請先 市区町村の障害福祉担当窓口
ポイント 一人暮らしでも、体調が悪い時などに利用できる
6. 移動支援(地域生活支援事業)
概要 外出時の移動を支援
対象者 屋外での移動が困難な障害者
サービス内容
- 買い物の付き添い
- 通院の付き添い
- 余暇活動の付き添い
利用者負担 市区町村により異なる
申請先 市区町村の障害福祉担当窓口
ポイント 一人暮らしでの買い物や外出を支援
7. 地域定着支援
概要 24時間の連絡体制を確保し、緊急時に対応
対象者
- 一人暮らしの障害者
- 家族との同居から一人暮らしに移行した方
サービス内容
- 24時間の連絡体制
- 緊急時の訪問、相談
- 関係機関との連絡調整
利用者負担 原則1割(上限あり)
申請先 市区町村の障害福祉担当窓口
ポイント 一人暮らしの安心感につながる
経済的支援
1. 障害年金
種類
- 障害基礎年金
- 障害厚生年金
金額(2024年度)
- 障害基礎年金1級 年額約102万円(月額約85,000円)
- 障害基礎年金2級 年額約82万円(月額約68,000円)
- 障害厚生年金 報酬比例額+上記
対象 一定の障害の状態にある方
申請先
- 障害基礎年金 市区町村の年金担当窓口
- 障害厚生年金 年金事務所
ポイント 一人暮らしの主な収入源となる
2. 生活保護
概要 最低限度の生活を保障する制度
扶助の種類
- 生活扶助 日常生活費
- 住宅扶助 家賃
- 医療扶助 医療費
- その他
金額(例 東京都特別区、単身)
- 生活扶助 月額約80,000円
- 住宅扶助 月額上限53,700円
- 合計 月額約133,700円
対象 資産・収入が最低生活費を下回る方
申請先 福祉事務所
ポイント
- 障害年金と併給可能(障害年金は収入認定される)
- 医療費無料
- 様々な減免制度
3. 各種手当
特別障害者手当
- 対象 20歳以上の重度障害者(在宅)
- 金額 月額27,980円
障害児福祉手当
- 対象 20歳未満の重度障害児(在宅)
- 金額 月額15,220円
自治体独自の手当
- 自治体により様々
- 月額数千円〜1万円程度
申請先 市区町村の障害福祉担当窓口
4. 医療費助成
重度障害者医療費助成(マル障)
- 自己負担が軽減される
- 自治体により制度が異なる
自立支援医療(精神通院)
- 精神科通院の自己負担が1割
- 上限あり
申請先 市区町村
5. 家賃補助
グループホーム以外の家賃補助 自治体により制度がある場合あり(詳細は前回記事参照)
公営住宅 所得に応じた低家賃、障害者は優先入居
住まいの支援
1. 住まいの選択肢
民間賃貸住宅
- 最も一般的
- 選択肢が多い
- 初期費用が高い
公営住宅
- 家賃が安い
- 障害者は優先入居
- 抽選倍率が高い
福祉ホーム
- 住居を必要とする障害者向け
- 低額な料金
- 数が少ない
サービス付き高齢者向け住宅(一部)
- 障害者も入居可能な場合あり
- 見守りサービス付き
2. 住宅探しの支援
居住サポート事業
- 自治体により実施
- 不動産業者への同行
- 物件情報の提供
- 入居後の相談
相談支援事業所 住まい探しの相談に応じる
不動産業者 障害者の入居に理解のある業者を探す
保証人問題
- 保証会社の利用
- 成年後見人
- 自治体の保証制度(ある場合)
3. 住宅改修費助成
概要 自宅のバリアフリー化などの改修費用を助成
対象工事
- 手すりの取り付け
- 段差解消
- 扉の引き戸化
- トイレ・浴室の改修
助成額 自治体により異なる(上限20万円〜100万円程度)
申請先 市区町村の障害福祉担当窓口
注意 賃貸住宅の場合、家主の承諾が必要
4. 日常生活用具給付
概要 日常生活に必要な用具を給付または貸与
対象用具
- 特殊寝台
- 車いす
- 歩行器
- 入浴補助用具
- 便器
- 火災警報器
- 自動消火器
- 電磁調理器
- 音声時計
- その他
利用者負担 原則1割(上限あり)
申請先 市区町村の障害福祉担当窓口
ポイント 一人暮らしの安全・安心のために活用
一人暮らしの準備
ステップ1 自己評価
できること・できないことを確認
- 身の回りのこと(食事、入浴、トイレなど)
- 家事(掃除、洗濯、料理、買い物)
- お金の管理
- 服薬管理
- 緊急時の対応
支援が必要なことをリストアップ
ステップ2 相談
相談先
- 市区町村の障害福祉担当窓口
- 相談支援事業所
- 障害者就業・生活支援センター
- 家族
相談内容
- 一人暮らしの希望
- 利用できるサービス
- 経済的な見通し
- 住まいの探し方
ステップ3 サービス等利用計画の作成
相談支援専門員と一緒に
- 必要なサービスを検討
- サービスの組み合わせ
- 週間スケジュール
申請 市区町村に障害福祉サービスの申請
ステップ4 経済設計
収入の確認
- 障害年金
- 就労収入(就労継続支援B型の工賃など)
- 各種手当
- 生活保護(必要な場合)
支出の見積もり
- 家賃
- 光熱水費
- 食費
- 通信費
- サービス利用料
- 医療費
- その他
収支のバランスを確認 収入 ≧ 支出 になるように調整
例(精神障害、就労継続支援B型利用)
収入
- 障害基礎年金2級 65,000円
- 工賃 16,000円
- 自治体の手当 15,000円
- 合計 96,000円
支出
- 家賃 40,000円(公営住宅)
- 光熱水費 10,000円
- 食費 25,000円
- 通信費 3,000円
- サービス利用料 5,000円
- 医療費 2,000円(自立支援医療)
- その他 10,000円
- 合計 95,000円
→ ギリギリだが可能
ステップ5 住まい探し
条件を決める
- 家賃の上限
- 場所(通所先に近い、病院に近いなど)
- 間取り
- バリアフリー
物件探し
- 不動産業者
- 公営住宅の申込
- 居住サポート事業の活用
内見
- 実際に見る
- 支援者と一緒に
契約
- 初期費用の準備
- 保証人または保証会社
ステップ6 体験・練習
ショートステイでの一人暮らし体験 数日間、一人で過ごしてみる
グループホームでの準備 グループホームで共同生活を経験してから一人暮らし
家族と離れて過ごす練習 週末だけ一人で過ごす
生活スキルの練習
- 料理教室
- 金銭管理の練習
- 服薬管理の練習
ステップ7 引っ越し準備
家具・家電の準備
- 必要最低限から
- リサイクルショップの活用
- 自治体の助成制度(ある場合)
生活用品
- 食器、調理器具
- 掃除用具
- 寝具
手続き
- 電気、ガス、水道の開栓
- インターネット
- 転入届
- 障害者手帳の住所変更
ステップ8 引っ越し・入居
引っ越し
- 引っ越し業者または自力
- 支援者の協力
入居
- 鍵の受け取り
- 家主への挨拶(必要に応じて)
サービス開始
- 居宅介護などのサービス開始
- ヘルパーとの顔合わせ
一人暮らしの生活設計
日常生活のスケジュール例
平日(就労継続支援B型利用)
- 7 00 起床、朝食、身支度
- 8 30 ヘルパーによる服薬確認、掃除
- 9 00 通所
- 16 00 帰宅
- 17 00 ヘルパーによる夕食準備
- 18 00 夕食
- 19 00 自由時間(TV、趣味など)
- 21 00 入浴
- 22 00 服薬
- 23 00 就寝
休日
- 8 00 起床、朝食
- 10 00 掃除、洗濯
- 12 00 昼食
- 13 00 外出(買い物、余暇)または自宅で過ごす
- 18 00 夕食
- 19 00 自由時間
- 23 00 就寝
生活のポイント
1. 規則正しい生活
- 起床・就寝時間を一定に
- 3食きちんと食べる
- 服薬を忘れない
2. ヘルパーの活用
- できないことはヘルパーに頼む
- 無理をしない
3. 金銭管理
- 家計簿をつける(アプリも便利)
- 計画的な支出
- 使いすぎに注意
4. 健康管理
- 定期的な通院
- 服薬の継続
- 体調不良時は早めに相談
5. 社会とのつながり
- 通所施設での交流
- 地域活動への参加
- 孤立しない
6. 緊急時の備え
- 緊急連絡先を見やすい場所に
- 地域定着支援の活用
- 近隣との関係(挨拶程度でも)
孤独・孤立への対処
リスク 一人暮らしは孤独・孤立のリスクがある
予防策
1. 通所・就労 週数日でも外に出る場所を持つ
2. 定期的な人との交流
- ヘルパー
- 相談支援専門員
- 家族、友人
- 地域活動
3. 趣味・サークル 地域活動支援センター、趣味のサークル
4. オンラインでのつながり SNS、オンラインコミュニティ(適度に)
5. 定期的な見守り 自立生活援助、地域定着支援
トラブル・困った時の対処
1. 体調不良
対処
- 主治医に連絡、受診
- ヘルパーに相談
- 地域定着支援の緊急連絡
- 短期入所の利用
2. お金が足りない
対処
- 相談支援専門員に相談
- 家計の見直し
- 生活福祉資金貸付(社会福祉協議会)
- 生活保護の検討
3. 隣人とのトラブル
対処
- 相談支援専門員に相談
- 管理会社・家主に相談
- 市区町村の相談窓口
4. ヘルパーとの相性が悪い
対処
- サービス提供責任者に相談
- ヘルパーの変更
- 事業所の変更
5. 孤独・寂しい
対処
- 家族、友人に連絡
- 相談支援専門員に相談
- 地域活動に参加
- 電話相談(こころの健康相談など)
6. 家賃が払えない
対処
- すぐに家主・管理会社に相談
- 相談支援専門員に相談
- 住居確保給付金の申請(要件を満たす場合)
- 生活保護の検討
7. 災害時
備え
- 避難場所の確認
- 非常持ち出し袋
- 障害者手帳のコピー
- 服薬リスト
災害時
- 避難所へ(福祉避難所があれば)
- 市区町村に障害者であることを伝える
- 必要な配慮を求める
よくある質問(FAQ)
Q1 重度の障害がありますが、一人暮らしはできますか?
A 重度訪問介護などの長時間支援を活用すれば、可能です。まずは相談支援事業所に相談してください。
Q2 収入が少ないのですが、一人暮らしできますか?
A 障害年金、各種手当、生活保護などを組み合わせれば可能です。公営住宅なら家賃も安く済みます。
Q3 料理ができないのですが。
A 居宅介護(ホームヘルプ)で調理支援を受けられます。配食サービスの利用も検討できます。
Q4 一人暮らしを始めるのに、いくらぐらい必要ですか?
A 初期費用(敷金、礼金、引っ越し代など)として、30万円〜50万円程度は見ておいた方が良いでしょう。自治体の助成制度がある場合もあります。
Q5 保証人がいないのですが。
A 保証会社の利用、成年後見人、自治体の保証制度などの選択肢があります。相談支援事業所に相談してください。
Q6 一人暮らしをやめて、グループホームに入ることはできますか?
A はい、できます。一人暮らしが難しいと感じたら、無理せずグループホームへの入居を検討してください。
Q7 精神障害があり、症状が不安定です。一人暮らしは無理でしょうか?
A 症状が安定していることが前提ですが、自立生活援助や地域定着支援を活用すれば可能な場合もあります。主治医と相談してください。
Q8 家族が反対しています。
A 家族の不安は理解できます。相談支援専門員や主治医を交えて、家族と一緒に話し合いましょう。体験利用も有効です。
Q9 一人暮らしの準備にどのくらい時間がかかりますか?
A 数か月〜1年程度が目安です。焦らず、しっかり準備することが大切です。
Q10 一人暮らしで失敗したらどうしよう。
A 失敗してもいいのです。うまくいかなければ、グループホームに戻る、実家に戻ることもできます。チャレンジすることが大切です。
まとめ 障害があっても一人暮らしは可能
障害のある方へ
一人暮らしを支える主な制度・サービス
- 障害福祉サービス
- 居宅介護、自立生活援助、地域定着支援
- 経済的支援
- 障害年金、各種手当、生活保護
- 住まいの支援
- 公営住宅、住宅改修費助成、日常生活用具
- 相談支援
- 相談支援事業所、障害者就業・生活支援センター
- 緊急時の支援
- 24時間対応、短期入所
一人暮らし成功のポイント
- しっかり準備する
- 経済設計、サービスの確保、体験
- 支援を活用する
- 一人で抱え込まない
- 無理をしない
- できないことはヘルパーに頼む
- 規則正しい生活
- 健康管理、服薬
- 社会とつながる
- 孤立しない
- 困ったら相談する
- 相談支援専門員、市区町村
- 失敗を恐れない
- うまくいかなければ方法を変える
相談先
市区町村の障害福祉担当窓口 相談支援事業所 障害者就業・生活支援センター
最後に
障害があっても、一人暮らしをすることは十分に可能です。
多くの方が、様々な支援を活用しながら、一人暮らしを実現しています。
最初は不安も大きいと思います。でも、しっかり準備して、支援を活用すれば、大丈夫です。
一人暮らしは、自立への大きな一歩です。自分のペースで生活できる、自由があります。
もちろん、大変なこともあります。孤独を感じることもあるでしょう。でも、それも含めて、自分の人生です。
一人で抱え込まず、困ったら相談してください。あなたを支えたいと思っている人が、たくさんいます。
そして、無理だと思ったら、グループホームに戻る、実家に戻ることもできます。それは失敗ではありません。
チャレンジすること自体が、素晴らしいことです。
あなたが、自分らしい生活を送れることを、心から願っています。
一人暮らしへの挑戦を、応援しています。

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