障がい者の転職と高次脳機能障害、遂行機能障害との向き合いながら働く方法

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事故や病気の後に、これまでできていた仕事の進め方が難しくなった、計画通りに作業を進められなくなったという経験で悩む方は少なくありません。 こうした困難の背景には、高次脳機能障害のひとつである遂行機能障害が関わっていることがあります。 適切な理解と工夫、そして職場の協力があれば、長く働き続けることができる障がいです。 ここでは、高次脳機能障害と遂行機能障害の基本から、仕事を続けるための具体的な対策、転職活動の進め方までをわかりやすく解説します。

高次脳機能障害とは何か

高次脳機能障害とは、脳の損傷によって、認知機能や行動の調整に困難が生じる状態を指します。 脳卒中、脳外傷、脳腫瘍、低酸素脳症、脳炎などの病気や事故によって、脳の特定の領域が損傷を受けることで現れます。

身体的な麻痺や言語障害と異なり、高次脳機能障害は外見からはわかりにくいことが大きな特徴です。 このため、見えにくい障害とも呼ばれ、本人や家族、職場の周囲も気づきにくく、理解されにくいまま苦しむことがあります。

主な症状として、いくつかのタイプがあります。

注意障害は、集中力が続かない、複数のことに注意を向けられない、刺激に気を取られやすいといった症状です。

記憶障害は、新しいことを覚えられない、過去のことを思い出せない、約束や予定を忘れてしまうといった症状で、業務遂行に大きく影響します。

遂行機能障害は、計画を立てる、優先順位をつける、段取りを考える、状況に応じて柔軟に対応するといった能力に困難が生じる状態です。

社会的行動障害は、感情のコントロールが難しい、対人関係でトラブルが生じやすい、意欲の低下が見られるといった症状です。

これらの症状は、ひとつだけが現れる場合もあれば、複数が組み合わさって現れる場合もあります。 症状の組み合わせや強さは個人差が大きく、同じ高次脳機能障害でも、必要な配慮や工夫は人によって異なります。

遂行機能障害の特徴

高次脳機能障害のなかでも、仕事に大きく影響しやすいのが遂行機能障害です。 遂行機能とは、目標を立てて、計画し、実行し、結果を振り返るという一連の能力を指します。 日常生活や仕事で当たり前のように使っている能力ですが、損傷を受けると業務遂行のさまざまな場面でつまずきが生まれます。

具体的な困難として、いくつかの場面が挙げられます。

業務の計画を立てることが難しくなります。 何から手をつけてよいかわからない、全体の流れをイメージできない、所要時間を見積もれないといった困難が生じやすくなります。

優先順位の判断にも影響が出ます。 緊急度や重要度を比較して、どれを先に進めるべきかの判断が難しく、目の前にあるものから手をつけたり、優先度の低い業務に時間をかけすぎたりすることがあります。

段取りを考えることにも苦労します。 業務を遂行するための手順を頭の中で組み立てる、必要な準備物を揃える、関係者との連携を計画するといった作業に時間がかかります。

予期せぬ変化への対応も難しくなります。 当初の計画と異なる状況が発生したとき、柔軟に切り替えて対応することが困難で、混乱したり、固まってしまったりすることがあります。

複数の業務を同時に進めることも、大きな負担となります。 ひとつのことに集中していると、別の業務に注意を向けられない、業務の切り替えに時間がかかるといった困難が現れます。

自分の行動を振り返ることも難しい場合があります。 ミスをしても気づきにくい、同じ間違いを繰り返してしまう、改善点が見えにくいといった状態が生じることがあります。

これらの困難は、本人の努力不足ではなく、脳の機能に起因する症状です。 適切な工夫と支援があれば、業務を円滑に進めることが可能になります。

仕事を続けるための具体的な対策

遂行機能障害と向き合いながら仕事を続けるには、さまざまな工夫を組み合わせることが大切です。 取り入れやすい対策をいくつか紹介します。

最も基本的で効果的な工夫が、業務の見える化です。 頭の中で計画を立てることが難しい場合、目の前に書き出すことで、考えやすくなります。 タスクリスト、フローチャート、カレンダー、付箋など、自分が使いやすいツールで業務を視覚化しましょう。

業務をできるだけ細かい手順に分解することも有効です。 大きな業務をひとつのまとまりとして捉えると、何から始めればよいか迷ってしまいます。 小さなステップに分けて、ひとつずつ完了させていく形にすると、迷いなく進められます。

毎日のルーティンを確立する工夫も役立ちます。 出勤直後、業務開始時、休憩前、退勤前など、決まった時間に決まった作業を組み込んでおくことで、判断や計画の負担を減らせます。 ルーティン化することで、エネルギーを使う場面を最小限に抑えられます。

スケジュール管理ツールを徹底的に活用しましょう。 スマートフォンのカレンダーアプリ、リマインダー機能、タスク管理アプリなどを使って、予定や締め切りを管理します。 自分の記憶だけに頼らず、機械の力を借りる姿勢が、業務の安定に直結します。

メモとチェックリストを習慣化することも大切です。 口頭で受けた指示は必ずメモに残し、業務の手順はチェックリストで確認しながら進めます。 一度作成したチェックリストは、繰り返し使えるよう保存しておくと、長期的な効率化につながります。

ひとつの業務に集中する環境を整えることも、有効な工夫です。 複数の業務を同時に抱えると、優先順位の判断や切り替えに大きなエネルギーが必要になります。 今取り組んでいる業務を完了させてから次に進む、というシンプルな進め方を徹底すると、混乱が減ります。

タイマーを活用するのもおすすめです。 時間で区切って作業を進める、休憩のタイミングを通知で知らせる、業務切り替えの目安にするなど、時間を視覚化することで、業務の流れをコントロールしやすくなります。

定期的な振り返りの時間を設けることも、大切な習慣です。 一日の終わりに業務を振り返る、週末にその週の業務を整理する、月単位で達成事項を確認するなど、自分のペースで振り返る時間を作りましょう。

職場に配慮を求めるコツ

自分の工夫だけでは限界があるため、職場に合理的配慮を求めることも大切な選択肢です。 2024年4月から民間企業にも合理的配慮の提供が法的義務となっており、必要な配慮を求める権利が法律で守られています。

配慮を求めるときは、自分の特性を客観的に説明することが第一歩です。 高次脳機能障害による遂行機能の困難があること、計画や優先順位の判断、複数業務の同時進行が苦手であることを、業務上の事実として伝えましょう。

具体的な配慮の例としては、いくつかの選択肢が考えられます。 業務指示を書面でもらう、優先順位を明示してもらう、業務を細かい段階に分けて教えてもらう、複数業務の同時進行を避けて単一業務に集中できる体制を整える、定期的な振り返り面談を設けてもらう、急な業務変更を最小限に抑えてもらうなどです。

医師や脳リハビリの専門家からの意見書を活用することも有効です。 高次脳機能障害は外見からわかりにくいため、医学的な裏付けがあると職場の理解が得やすくなります。

ジョブコーチや就労支援員に職場との橋渡しを依頼することも検討しましょう。 高次脳機能障害に詳しい支援員と一緒に職場との調整を進めることで、より適切な配慮が実現します。

定期的な面談の機会を持つこともおすすめです。 業務の進め方、困りごと、配慮の効果などを継続的に共有することで、長期的に安定した働き方が実現します。

リハビリテーションと医療との連携

高次脳機能障害は、リハビリテーションによって機能の回復や代償手段の獲得が進む障がいです。 医療との連携を続けながら、就労を支える土台を整えましょう。

医療機関でのリハビリは、機能回復を目指す重要な取り組みです。 作業療法士、言語聴覚士、心理士などの専門家が、認知機能の訓練や、生活への適応をサポートしてくれます。

高次脳機能障害支援拠点機関と呼ばれる、専門の支援機関も全国にあります。 診断、リハビリ、就労支援、家族支援などを総合的に提供しており、状況に応じた支援を受けられます。

通院を続けることで、症状の変化に応じた治療調整や、就労に向けた助言を継続的に受けられます。 転職や就労環境の変化があった際にも、医師と相談しながら無理のないペースを保つことが大切です。

家族や周囲の理解を得ることも、リハビリの重要な要素です。 家族会や当事者会に参加することで、同じ立場の仲間との交流が生まれ、心の支えとなることがあります。

自分に合った働き方を選ぶ

高次脳機能障害の特性を踏まえて、自分に合った働き方を選ぶことが、長期的な就労継続に直結します。

業務内容が定型的で、手順が明確な仕事は、特性に合いやすい選択肢です。 データ入力、書類整理、清掃、商品の検品、ピッキング作業、軽作業など、ルーティン化しやすい業務は、慣れるにつれてスムーズに進められるようになります。

複数業務の同時進行が少なく、ひとつの業務に集中できる職場は、遂行機能障害との両立に向いています。 バックオフィス業務、専門職、データ管理、ライティングなど、自分のペースで進められる業務が選択肢になります。

特例子会社や、障がい者雇用に積極的な企業は、業務設計の段階から配慮を組み込んでいることが多いです。 ジョブコーチや支援員が常駐している職場、定期的なフォロー面談がある職場など、長く働ける仕組みが整っているところを選ぶと安心です。

就労継続支援B型や、就労継続支援A型といった福祉的就労も選択肢になります。 雇用契約を結ばずに自分のペースで通えるB型、最低賃金が保障されるA型など、自分の状況に合わせて選べます。 一般就労に向けた準備段階として活用する方も多いです。

短時間勤務やパートタイム勤務から始める道もあります。 脳の疲労が出やすい時期は、短時間勤務で経験を積み、徐々に勤務時間を伸ばしていくキャリアパスが現実的です。

復職を目指す場合は、リワークプログラムを活用する方法もあります。 医療機関や就労移行支援事業所が提供するリワークプログラムでは、就労に必要な訓練を段階的に進めながら、自分のペースを取り戻していけます。

逆に、業務量が常に変動する職場、臨機応変な判断を強く求められる職場、複数業務の同時進行が前提の職場は、慎重に検討する必要があります。

利用できる制度と支援機関

高次脳機能障害のある方を支える制度や機関は、いくつもあります。

身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳のいずれかの対象となる可能性があります。 高次脳機能障害は、症状の内容に応じて対応する手帳が異なります。 失語、麻痺、視野欠損などを伴う場合は身体障害者手帳、認知や行動の障害が主である場合は精神障害者保健福祉手帳の対象となることが多いです。 お住まいの自治体の福祉窓口で確認してみましょう。

障害年金の対象になる場合もあります。 高次脳機能障害によって日常生活や就労に著しい支障がある場合、障害基礎年金や障害厚生年金の受給対象となる可能性があります。 申請には専門的な手続きが必要であるため、社会保険労務士や年金事務所に相談することをおすすめします。

自立支援医療制度を活用することで、通院や薬代の負担を軽減できます。

ハローワークの障がい者専門窓口、就労移行支援事業所、障害者就業生活支援センター、地域障害者職業センターなど、就労支援機関のサポートを受けられます。 特に地域障害者職業センターでは、職業評価や職業準備支援、ジョブコーチによる支援などを受けられ、自分の特性に応じた就労準備を進められます。

高次脳機能障害支援拠点機関は、全国に設置されており、専門的な相談、リハビリ、家族支援などを提供しています。 当事者団体や家族会も、つながりや学びの場として活用できます。

心の持ち方と周囲との関係

高次脳機能障害と向き合いながら働くためには、心の持ち方も大切です。

病気や事故の前の自分と比べないことを意識しましょう。 以前はできていたことができなくなったという感覚は、強い喪失感を生みます。 比較するのではなく、今の自分にできることを大切にする視点を持つことが、長期的な回復と就労継続の支えになります。

小さな成功を積み重ねることを大切にしましょう。 今日は予定通り業務を進められた、新しい手順を覚えられた、ミスなく仕事を終えられたなど、小さな前進を自分で認める習慣が、自信を育てます。

家族や信頼できる人とのつながりを保つことも、心の支えになります。 無理に詳しい説明をする必要はありませんが、つらいときに気持ちを共有できる相手がいることは、大きな財産です。

ひとりで抱え込まないことが、何より大切です。 医師、支援員、家族、当事者の仲間など、頼れる相手が複数いるだけで、心の負担は大きく軽くなります。

まとめ

高次脳機能障害、特に遂行機能障害は、計画や優先順位の判断、段取りの組み立てなど、業務の中心となる能力に影響を及ぼす障がいです。 業務の見える化、手順の細分化、ルーティンの確立、ツールの活用などの工夫を取り入れることで、業務を円滑に進めることができます。 職場には、書面での指示、優先順位の明示、段階的な業務説明、定期面談など、必要な合理的配慮を求める権利が法的に保障されています。 医療との連携、リハビリテーションの継続、ジョブコーチや就労支援員のサポートを活用しながら、自分に合った働き方を見つけていきましょう。 定型業務が中心の職場、特例子会社、就労継続支援、短時間勤務など、選択肢は多様です。 身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、障害年金、自立支援医療など、利用できる制度を積極的に活用しましょう。 自分のペースで小さな成功を積み重ね、周囲との支え合いのなかで、長く働ける道を一歩ずつ作っていきましょう。

なお、生活や仕事でつらい気持ちが強くなったときは、ひとりで抱え込まず専門機関に相談してください。 よりそいホットラインや、いのちの電話など、24時間対応の窓口も利用できます。 あなたの安全と健康が、何より大切な土台です。

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