過食症について知る

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過食症は正式には神経性過食症と呼ばれ、短時間に大量の食べ物を食べる過食エピソードを繰り返し、その後に嘔吐や下剤の乱用などの代償行為を行う摂食障害です。

体重や体型への過度なこだわりがあり、自己評価が体重や体型に極端に影響される特徴があります。

思春期から青年期の女性に多く見られますが、男性や中高年でも発症します。心と身体の両方に深刻な影響を及ぼす病気であり、適切な治療が必要です。

本記事では過食症の症状や原因、診断方法、治療法、そして患者さんや家族が知っておくべき情報について詳しく見ていきます。

過食症の主な症状

過食症の中心的な症状は過食エピソードです。これは短時間に、通常の人が同じ状況で食べる量よりも明らかに多い量の食べ物を食べることを指します。2時間以内に数千キロカロリーもの食べ物を摂取することもあります。

過食中は食べることをコントロールできない感覚があります。止めたくても止められない、何を食べているのかわからなくなる、気づいたら空になった容器が目の前にあるという状態です。この制御不能感が過食の重要な特徴です。

過食の後には強い罪悪感、自己嫌悪、恥ずかしさが襲ってきます。この不快な感情と体重増加への恐怖から、嘔吐、下剤や利尿剤の乱用、過度な運動、絶食などの代償行為を行います。これが過食症と単なる過食との大きな違いです。

代償行為の種類

最も一般的な代償行為は自己誘発性嘔吐です。過食後にトイレに行き、指を喉に入れるなどして意図的に嘔吐します。最初は吐くのが難しくても、繰り返すうちに簡単に吐けるようになることが多いです。

下剤や利尿剤の乱用も見られます。体重を減らすため、また食べたものを体外に出すために、これらの薬を大量に使用します。しかし実際には脂肪は減らず、水分が失われるだけで、健康に深刻な害を及ぼします。

また過度な運動や絶食も代償行為の一種です。過食した翌日は何も食べない、または数時間運動し続けるなどの行動を取ります。これらの代償行為は週に1回以上、少なくとも3ヶ月間続く場合に診断基準を満たします。

拒食症との違い

過食症と拒食症は両方とも摂食障害ですが、異なる病気です。拒食症は体重が著しく低く、食事を極端に制限します。一方、過食症の人の体重は正常範囲内か、やや高めのことが多いです。

ただし過食症と拒食症は関連があり、拒食症から過食症に移行することもあります。また過食症の人も食事制限をしますが、それが過食を引き起こすという悪循環に陥っています。

拒食症の人は痩せていることが外見からわかりますが、過食症の人は見た目ではわからないことが多いです。そのため周囲に気づかれにくく、孤独に苦しむことがあります。

過食症の原因

過食症の原因は一つではなく、生物学的要因、心理的要因、社会文化的要因が複雑に絡み合っています。遺伝的要因も関与しており、家族に摂食障害の人がいると発症リスクが高くなります。

脳内の神経伝達物質、特にセロトニンの異常が関係していると考えられています。セロトニンは食欲や気分の調整に関わっており、このバランスが崩れることで過食や代償行為が引き起こされる可能性があります。

心理的には、完璧主義、低い自己肯定感、感情調整の困難さなどが背景にあることが多いです。また痩せていることを理想とする社会的なプレッシャー、ダイエットの流行なども発症に影響します。

きっかけとストレス

過食症の発症には、しばしば何らかのきっかけがあります。ダイエットから始まることが非常に多く、厳しい食事制限が過食を引き起こし、その後に代償行為が始まるというパターンです。

人生の転機や強いストレスも引き金になります。受験、就職、失恋、家族の問題、いじめやトラウマ体験などが発症のきっかけとなることがあります。

また何らかの批判やからかいがきっかけになることもあります。太っていると言われた、体型を指摘されたという経験が、過度な体重へのこだわりを生み、摂食障害につながることがあります。

身体への影響

過食症は身体に深刻な影響を及ぼします。頻繁な嘔吐により、胃酸で歯のエナメル質が溶けて虫歯が増えます。また喉や食道が傷つき、炎症を起こします。唾液腺が腫れて顔が丸く見えることもあります。

電解質のバランスが崩れることも重大な問題です。特にカリウムが低下すると、不整脈を引き起こし、最悪の場合、心停止に至ることもあります。これは命に関わる合併症です。

また下剤の乱用は腸の機能を低下させ、慢性的な便秘を引き起こします。月経不順や無月経、骨密度の低下、腎臓障害、脱水症状なども見られます。長期化すると様々な健康問題が蓄積します。

心理的影響

過食症は心にも大きな影響を与えます。過食と代償行為に多くの時間とエネルギーを費やし、日常生活が食べ物と体重のことで支配されます。常に食べ物のことを考え、次の過食を計画したり、後悔したりしています。

罪悪感と自己嫌悪が強く、自己肯定感が著しく低下します。秘密を抱えていることへの恥ずかしさから、人との交流を避けるようになり、孤立しやすくなります。

またうつ病や不安障害を併発することも多くあります。気分の落ち込み、無気力、死にたいという気持ちが現れることもあり、心理的なサポートが不可欠です。

診断基準

過食症の診断には国際的な診断基準が用いられます。反復する過食エピソード、反復する不適切な代償行動、過食と代償行動が週1回以上、3ヶ月間続くこと、自己評価が体重と体型に過度に影響されることなどが基準です。

診断は精神科医や心療内科医による詳細な問診と、身体的な検査によって行われます。血液検査で電解質のバランスや栄養状態を確認し、心電図で不整脈の有無をチェックします。

早期発見が重要ですが、本人が隠すことが多く、診断が遅れがちです。家族や周囲の人が変化に気づき、受診を促すことも大切です。

認知行動療法

過食症の治療において最も効果が証明されているのが認知行動療法CBT-Eです。食行動、体重や体型への考え方、感情との関係を理解し、変えていくことを目指します。

治療では規則正しい食事パターンを確立することから始めます。極端な食事制限が過食を引き起こすため、1日3食と間食を計画的に摂る習慣を作ります。最初は難しくても、徐々に過食の頻度が減っていきます。

また体重や体型への過度なこだわりを和らげ、自己評価を体重以外のものに広げていきます。認知の歪みを修正し、より柔軟で現実的な考え方を身につけます。

対人関係療法

対人関係療法IPTも過食症に効果的な心理療法です。過食症状は対人関係の問題と関連していることが多く、人間関係のストレスが過食の引き金になることがあります。

この療法では、重要な対人関係における問題を特定し、解決していきます。コミュニケーションスキルを向上させ、対人関係のストレスを減らすことで、過食症状の改善を図ります。

喪失、役割の変化、対人関係の葛藤など、具体的な対人関係の問題に焦点を当て、より健康的な関係を築くことを目指します。

薬物療法

過食症に対しては、抗うつ薬、特にSSRIが使用されることがあります。これらの薬はセロトニンの働きを調整し、過食の頻度を減らす効果があります。また併存するうつ病や不安障害の治療にもなります。

ただし薬物療法だけでは根本的な解決にはならず、心理療法と組み合わせることが推奨されます。薬は症状を軽減する助けになりますが、考え方や行動パターンを変えるには心理療法が必要です。

薬の効果が現れるまでには数週間かかることがあります。副作用が気になる場合は医師に相談し、調整してもらいましょう。

栄養指導

栄養士による栄養指導も治療の重要な部分です。過食症の人は食べ物に関する誤った信念を持っていることが多く、正しい栄養知識を学ぶことが回復につながります。

極端な食事制限や特定の食品の除外が過食を引き起こすため、バランスの取れた食事の大切さを理解します。怖い食べ物を少しずつ取り入れ、食べ物への恐怖を和らげていきます。

また空腹と満腹のサインを認識し、身体の声に耳を傾ける練習をします。長年の過食と代償行為で失われた自然な食欲の感覚を取り戻すことを目指します。

入院治療

重度の過食症や、身体的な合併症がある場合、自殺のリスクが高い場合などには入院治療が必要になることがあります。入院により、安全な環境で集中的な治療を受けることができます。

入院中は医師、看護師、心理士、栄養士などの多職種チームが協力して治療に当たります。規則正しい食事、心理療法、薬物療法、身体的な管理が包括的に行われます。

入院期間は数週間から数ヶ月に及ぶこともありますが、症状が安定したら外来治療に移行します。入院は回復のための一つのステップであり、退院後も継続的な治療が必要です。

家族の役割

家族の理解とサポートは過食症の回復に非常に重要です。まず過食症が意志の弱さや甘えではなく、治療が必要な病気であることを理解することが大切です。

食事の準備や管理について、過度に干渉したり監視したりすることは避けるべきです。一方で完全に無関心でいることも良くありません。適度な距離を保ちながら、本人の自律性を尊重することが求められます。

また体重や食事について批判的なコメントをしないことも重要です。痩せた、太ったという言葉は本人を傷つけます。体型以外の話題で会話し、本人の価値を体重以外のところに見出すよう心がけましょう。

セルフモニタリング

過食症の治療において、セルフモニタリングは重要なツールです。食事日記をつけ、何を食べたか、いつ食べたか、どんな気持ちだったか、過食や代償行為があったかを記録します。

この記録により、過食の引き金となるパターンが見えてきます。特定の感情、状況、時間帯が過食と関連していることに気づくことができます。

また記録すること自体が行動を意識化させ、衝動的な過食を減らす効果があります。治療者と記録を共有し、一緒にパターンを分析することで、より効果的な対処法を見つけられます。

再発予防

過食症は再発しやすい病気です。症状が改善した後も、ストレスや生活の変化をきっかけに再発することがあります。再発を予防するために、学んだスキルを継続的に実践することが大切です。

規則正しい食事パターンを維持し、極端な食事制限を避けることが基本です。また体重を過度に気にしすぎない、体重測定の頻度を適切に保つことも重要です。

ストレス管理の方法を身につけ、過食以外の対処法を持つことも再発予防につながります。問題が生じたときに早めに治療者に相談し、悪化する前に対処することが大切です。

回復への道のり

過食症からの回復には時間がかかります。一進一退を繰り返しながら、徐々に改善していくことが一般的です。完全に症状がなくなることもあれば、症状は残るものの日常生活への影響が大幅に減ることもあります。

回復の過程で挫折や失敗を経験することは当然のことです。それを自分の弱さと捉えるのではなく、学びの機会として前向きに受け止めることが大切です。

また回復とは、単に過食や代償行為がなくなることだけではありません。自己肯定感が高まり、体重以外のことに価値を見出せるようになり、人生を楽しめるようになることが真の回復です。

社会の理解

過食症に対する社会の理解はまだ十分ではありません。痩せている方が美しいという価値観、ダイエットの推奨、体型への批判的なコメントなどが、摂食障害を引き起こしやすい環境を作っています。

多様な体型を受け入れ、体重や見た目で人を判断しない社会を作ることが重要です。また摂食障害が深刻な病気であり、適切な治療が必要であることを広く知らせる必要があります。

メディアやSNSが理想的な体型を過度に強調することも問題です。現実的で多様な身体イメージを提示し、健康を最優先にする価値観を広めることが求められています。

まとめ

過食症は、短時間に大量の食事を摂る過食エピソードと、その後の嘔吐や下剤乱用などの代償行為を繰り返す摂食障害です。

体重や体型への強いこだわりがあり、過食後には強い罪悪感や自己嫌悪が生じます。原因は心理的要因や社会的圧力などが複雑に関係し、厳しい食事制限から悪循環に陥ることが多いです。

治療は認知行動療法が中心で、家族の理解と継続的な支援が回復に重要とされています。

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