1. 身体障害者手帳の等級とは
身体障害者手帳の等級とは、身体障害の程度を1級から7級までの7段階で表したものです。1級が最も重度、7級が最も軽度となります。ただし、実際に手帳が交付されるのは1級から6級までで、7級単独では交付されません。
等級は、視覚障害、聴覚・平衡機能障害、音声・言語・そしゃく機能障害、肢体不自由、内部障害(心臓、腎臓、呼吸器、膀胱・直腸、小腸、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能、肝臓)など、障害の種類と程度によって判定されます。
等級によって受けられる福祉サービスや助成の内容が異なるため、自分の等級を理解することは、適切な支援を受けるために重要です。
2. 身体障害者手帳とは
身体障害者手帳は、身体に障害のある方が、法律に定められた障害の状態にあることを証明するものです。
手帳の目的
この手帳は、障害のある方が各種の福祉サービスや支援を受けるための根拠となります。税金の控除、公共交通機関の割引、医療費の助成、各種手当の受給など、さまざまな場面で利用されます。
対象となる障害
身体障害者福祉法で定められた身体障害があり、その障害が永続する方が対象です。一時的な怪我や病気は対象外ですが、回復の見込みがなく、障害が固定している場合は対象となります。
申請方法
お住まいの市区町村の障害福祉窓口で申請します。医師(指定医)の診断書・意見書、申請書、写真などを提出し、審査を経て交付されます。
3. 等級の基準と判定方法
等級は、障害の種類と程度に応じて、詳細な基準に基づいて判定されます。
等級の考え方
1級から6級までの基準があり、数字が小さいほど障害の程度が重くなります。複数の障害がある場合は、それぞれの等級を合算して総合的に判定されることがあります。
たとえば、3級の障害が2つある場合、2級に繰り上がることがあります。また、7級の障害が2つ以上ある場合、6級として認定されることがあります。
判定のプロセス
指定医(都道府県知事または政令指定都市の市長が指定した医師)が診断書・意見書を作成します。市区町村の窓口に申請書類を提出すると、都道府県または政令指定都市の身体障害者更生相談所などで審査が行われ、等級が決定されます。
等級の見直し
障害の状態が変化した場合は、等級の変更申請ができます。障害が軽くなった場合も、重くなった場合も、再認定を受けることが可能です。
一部の障害(特に進行性の疾患や内部障害)では、定期的に再認定が必要とされることがあります。
4. 障害の種類別・等級の基準
身体障害は大きく分けて、視覚障害、聴覚・平衡機能障害、音声・言語・そしゃく機能障害、肢体不自由、内部障害に分類されます。
視覚障害
視覚障害は、視力と視野の障害で判定されます。
1級:両眼の視力の和が0.01以下のもの 2級:両眼の視力の和が0.02以上0.04以下のもの、両眼の視野がそれぞれ10度以内で、かつ両眼による視野について視能率による損失率が95%以上のもの 3級:両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの、両眼の視野がそれぞれ10度以内で、かつ両眼による視野について視能率による損失率が90%以上のもの 4級:両眼の視力の和が0.09以上0.12以下のもの、両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの 5級:両眼の視力の和が0.13以上0.2以下のもの 6級:一眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のもので、両眼の視力の和が0.2を超えるもの
聴覚・平衡機能障害
聴覚障害は、聴力レベルで判定されます。
2級:両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上のもの(両耳全ろう) 3級:両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの、または両耳の平均聴力レベルが80デシベル以上で、かつ最良語音明瞭度が30%以下のもの 4級:両耳の聴力レベルが80デシベル以上のもの、または両耳の平均聴力レベルが50デシベル以上で、かつ最良語音明瞭度が50%以下のもの 6級:両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの、または一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの
平衡機能障害は、3級または5級で認定されます。
音声・言語・そしゃく機能障害
3級:音声機能、言語機能またはそしゃく機能の喪失 4級:音声機能、言語機能またはそしゃく機能の著しい障害
肢体不自由
上肢、下肢、体幹、脳原性運動機能障害(乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害)に分類されます。
上肢の例
- 1級:両上肢の機能を全廃したもの、両上肢を手関節以上で欠くもの
- 2級:両上肢の機能の著しい障害、両上肢のすべての指を欠くもの
- 3級:両上肢のおや指及びひとさし指を欠くもの、一上肢の機能を全廃したもの
- 4級以下:程度に応じて判定
下肢の例
- 1級:両下肢の機能を全廃したもの、両下肢を大腿の2分の1以上で欠くもの
- 2級:両下肢の機能の著しい障害
- 3級:両下肢をショパー関節以上で欠くもの
- 4級以下:程度に応じて判定
体幹
- 1級:体幹の機能障害により坐っていることができないもの
- 2級:体幹の機能障害により坐位または起立位を保つことが困難なもの
- 3級:体幹の機能障害により歩行が困難なもの
- 5級:体幹の機能の著しい障害
内部障害
心臓、腎臓、呼吸器、膀胱・直腸、小腸、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能、肝臓の各機能障害が対象です。
各内部障害とも、基本的に1級、3級、4級で認定されます(一部例外あり)。
心臓機能障害の例
- 1級:心臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの
- 3級:心臓の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの
- 4級:心臓の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの
腎臓機能障害の例
- 1級:腎臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの
- 3級:腎臓の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの
- 4級:腎臓の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの
その他の内部障害も同様の基準で判定されます。
5. 等級ごとに受けられる主なサービス
等級によって、受けられる福祉サービスや助成の内容が異なります。
1級・2級で受けられる主なサービス
特別障害者手当:20歳以上で、著しく重度の障害により、日常生活において常時特別の介護を必要とする方に支給されます(所得制限あり)。
障害基礎年金(1級・2級):国民年金加入中に障害の原因となった病気やケガの初診日があり、一定の要件を満たす場合に支給されます。
重度心身障害者医療費助成:医療費の自己負担分の一部または全部が助成されます(自治体により内容が異なります)。
公共交通機関の割引:本人と介護者1名が、多くの公共交通機関で割引を受けられます。
税金の控除:所得税や住民税で、特別障害者控除(控除額が大きい)が適用されます。
NHK受信料の全額免除:世帯全員が住民税非課税の場合、または世帯主が重度障害者の場合に適用されます。
3級・4級で受けられる主なサービス
障害基礎年金(2級相当の場合):障害の程度によっては、障害厚生年金(3級)が支給されることがあります。
自立支援医療(更生医療・育成医療):障害を軽減・除去するための医療費の自己負担が軽減されます。
公共交通機関の割引:本人が割引を受けられます(介護者の割引は事業者により異なります)。
税金の控除:所得税や住民税で、障害者控除が適用されます。
自動車税・自動車取得税の減免:一定の要件を満たす場合、減免が受けられます(自治体により条件が異なります)。
駐車禁止除外指定車標章:一定の要件を満たす場合、駐車禁止除外の対象となります。
5級・6級で受けられる主なサービス
自立支援医療:障害の軽減・除去のための医療費助成が受けられる場合があります。
公共交通機関の割引:多くの事業者で割引が適用されます。
税金の控除:障害者控除が適用されます。
自動車改造費の助成:一定の要件を満たす場合、自治体から助成を受けられることがあります。
補装具の交付・修理:義肢、装具、車いすなどの補装具の購入費用の一部が助成されます。
すべての等級で受けられる共通サービス
障害者雇用:障害者雇用促進法に基づき、雇用の機会が確保されます。
公営住宅の優先入居:公営住宅の抽選で優遇されることがあります。
携帯電話料金の割引:多くの携帯電話会社で割引プランがあります。
各種施設の入場料割引:博物館、美術館、映画館などで割引を受けられます。
補装具・日常生活用具の給付:等級や障害の種類に応じて、必要な用具が給付されます。
※サービスの内容や条件は、自治体や事業者によって異なります。詳しくは、お住まいの市区町村の障害福祉窓口にお問い合わせください。
6. 複数の障害がある場合の等級判定
複数の障害がある場合、それぞれの障害を合算して、より上位の等級に認定されることがあります。
合算の原則
身体障害者福祉法施行規則では、2つ以上の障害がある場合の等級の合算方法が定められています。
同一等級の障害が2つある場合
- 2級の障害が2つ → 1級
- 3級の障害が2つ → 2級
- 4級の障害が2つ → 3級
- 5級の障害が2つ → 4級
- 6級の障害が2つ → 5級
- 7級の障害が2つ → 6級
異なる等級の障害がある場合 等級表に基づいて、より上位の等級に繰り上がることがあります。たとえば、2級と3級の障害がある場合、1級に認定されることがあります。
合算の具体例
右上肢の機能障害(4級)と左下肢の機能障害(5級)がある場合、合算して3級に認定される可能性があります。
視覚障害(4級)と聴覚障害(6級)がある場合、合算して3級になることがあります。
注意点
すべての障害が単純に合算されるわけではありません。障害の種類や部位、日常生活への影響などを総合的に判断して等級が決定されます。
正確な判定は、指定医の診断と、都道府県または政令指定都市の判定によって行われます。
7. 手帳の申請から交付までの流れ
身体障害者手帳の取得には、いくつかの手順があります。
ステップ1:指定医の診察を受ける
身体障害者手帳の診断書・意見書は、都道府県知事または政令指定都市の市長が指定した医師(指定医)でなければ作成できません。
かかりつけ医が指定医でない場合は、紹介状を書いてもらい、指定医のいる医療機関を受診します。
ステップ2:診断書・意見書の作成
指定医が診察し、障害の状態を評価して診断書・意見書を作成します。この書類には、障害の原因、現在の状態、等級の目安などが記載されます。
診断書の作成には、数週間かかることもあります。また、作成費用は自己負担となり、数千円から1万円程度かかります。
ステップ3:市区町村窓口に申請
お住まいの市区町村の障害福祉窓口に、以下の書類を提出します。
- 身体障害者手帳交付申請書(窓口で入手可)
- 指定医が作成した診断書・意見書
- 写真(縦4cm×横3cm、脱帽、上半身を写したもの)
- マイナンバーカードまたは通知カード
- 本人確認書類
ステップ4:審査・判定
市区町村から都道府県または政令指定都市に書類が送られ、身体障害者更生相談所などで審査が行われます。
審査には通常1ヶ月から2ヶ月程度かかります。場合によっては、更生相談所での面接や追加の検査が必要になることもあります。
ステップ5:手帳の交付
審査の結果、障害の認定基準を満たしていれば、身体障害者手帳が交付されます。市区町村の窓口で受け取ります。
手帳には、氏名、住所、生年月日、障害名、等級、交付日などが記載されます。
却下された場合
審査の結果、障害の程度が認定基準に該当しないと判断された場合、手帳は交付されません。却下の理由を確認し、必要に応じて再申請を検討します。
8. 手帳取得後の手続き
手帳を取得した後も、いくつかの手続きが必要になることがあります。
再認定(再判定)
一部の障害、特に進行性の疾患や、将来的に障害の程度が変化する可能性がある場合、手帳に再認定の期限が記載されることがあります。
期限が来たら、再度診断書を提出し、等級の見直しを受ける必要があります。
等級変更の申請
障害の状態が変化し、等級が変わる可能性がある場合は、等級変更の申請ができます。
- 障害が重くなった場合:より重い等級への変更申請
- 障害が軽くなった場合:より軽い等級への変更申請、または手帳の返還
新たに指定医の診断書を取得し、市区町村窓口に申請します。
記載事項の変更
住所や氏名が変わった場合は、市区町村窓口で変更手続きを行います。都道府県をまたいで転居する場合は、転居先での再交付手続きが必要です。
再交付
手帳を紛失したり、破損したりした場合は、再交付の申請ができます。窓口で再交付申請書を提出します。
返還
障害が軽減し、認定基準に該当しなくなった場合や、本人が亡くなった場合は、手帳を返還します。
9. 手帳を活用するためのポイント
身体障害者手帳を有効に活用するために、知っておくべきポイントがあります。
自分の等級と受けられるサービスを把握する
等級によって利用できるサービスが異なります。市区町村の障害福祉窓口で、どのようなサービスが利用できるか確認しましょう。
障害者福祉のしおりやガイドブックが配布されている自治体も多いので、入手して読んでおくと便利です。
手帳は常に携帯する
公共交通機関の割引や施設の入場料割引を受ける際には、手帳の提示が必要です。外出時は常に携帯しましょう。
各種制度の申請を忘れずに
手当や医療費助成など、自動的に適用されるわけではなく、別途申請が必要なものが多くあります。該当する制度は積極的に申請しましょう。
障害者雇用を検討する
就職や転職を考える際、障害者雇用枠での就労も選択肢です。配慮を受けながら働けるため、長く安定して働ける可能性が高まります。
ハローワークの専門援助部門では、障害者の就職支援を行っています。
定期的に情報を更新する
福祉制度は変更されることがあります。定期的に市区町村の窓口やウェブサイトで最新情報を確認しましょう。
プライバシーに配慮する
手帳を持っていることを周囲に知られたくない場合もあります。サービスを利用する際には手帳の提示が必要ですが、それ以外の場面で無理に公開する必要はありません。
ただし、職場で配慮を求める場合や、障害者雇用枠で就職する場合は、開示が必要になります。
10. よくある質問(FAQ)
Q 7級の障害がありますが、手帳はもらえますか? A 7級単独では身体障害者手帳は交付されません。ただし、7級の障害が2つ以上ある場合は、6級として認定され、手帳が交付される可能性があります。また、他の等級の障害と合算して判定される場合もあります。
Q 手帳を取得すると、就職に不利になりませんか? A 手帳を持っていることを必ずしも開示する必要はありません。一般雇用枠で就職する場合、手帳の有無を伝える義務はありません。ただし、障害者雇用枠を利用する場合は、手帳が必要です。障害者雇用枠では、配慮を受けながら働けるメリットがあります。
Q 手帳の取得に費用はかかりますか? A 手帳の交付自体は無料ですが、指定医の診断書作成には数千円から1万円程度の費用がかかります。また、申請時の写真代も必要です。自治体によっては、診断書作成費用の助成制度がある場合もあります。
Q 一度取得した等級は変わらないのですか? A 障害の状態が変化すれば、等級も変更される可能性があります。障害が悪化した場合は、より重い等級への変更申請ができます。逆に、障害が軽減した場合は、より軽い等級に変更されたり、手帳の対象外となったりすることもあります。定期的な再認定が必要な場合もあります。
Q 子どもでも身体障害者手帳を取得できますか? A 年齢に関係なく取得できます。乳幼児でも、身体に永続する障害がある場合は、手帳の対象となります。子どもの場合、成長に伴い障害の状態が変化する可能性があるため、定期的な再認定が求められることが多いです。
Q 手帳を持っていることは、他人に知られますか? A 本人が開示しない限り、手帳を持っていることが公になることはありません。ただし、各種サービスを利用する際には手帳の提示が必要です。プライバシーは保護されており、本人の同意なく第三者に情報が伝わることはありません。
Q 内部障害で手帳を取得していますが、外見からは障害がわからないため、誤解されることがあります。どうすればいいですか? A 内部障害は外見からわかりにくいため、周囲の理解を得にくいという悩みは多く聞かれます。必要に応じて、ヘルプマークやヘルプカードを携帯することで、支援が必要なことを周囲に示すことができます。また、信頼できる人には、自分の状態を説明することも一つの方法です。
身体障害者手帳は、障害のある方が社会生活を送る上で、さまざまな支援を受けるための重要なツールです。等級や受けられるサービスをしっかり理解し、積極的に活用することで、より安心で豊かな生活を送ることができます。わからないことがあれば、市区町村の障害福祉窓口に気軽に相談してみましょう。

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