言葉が詰まる原因と対処法 吃音から心理的要因まで徹底解説

1. 「言葉が詰まる」とは

「言葉が詰まる」とは、話そうとしているのに言葉がスムーズに出てこない状態を指します。多くの人が経験したことのある現象ですが、その原因や程度は様々です。

言葉が詰まる症状には、いくつかのパターンがあります。最初の音が出ない、同じ音を繰り返してしまう、言葉の途中で詰まってしまう、言いたい言葉が思い出せない、緊張して声が出なくなるなど、多様な形で現れます。

一時的に言葉が詰まることは、誰にでも起こりうる正常な反応です。しかし、頻繁に起こったり、日常生活に支障をきたしたりする場合は、何らかの原因が隠れている可能性があります。

この記事では、言葉が詰まる原因を医学的・心理的側面から解説し、それぞれの状況に応じた対処法をご紹介します。

2. 吃音(きつおん)による言葉の詰まり

言葉が詰まる原因として最も代表的なのが吃音です。吃音は、話し言葉が滑らかに出ない発話障害の一種です。

吃音の症状

吃音には、主に3つのタイプの症状があります。

連発(れんぱつ)は、音や音節を繰り返す症状です。「か、か、か、かばん」「わ、わ、わたし」のように、最初の音を何度も繰り返してしまいます。幼児期の吃音に多く見られます。

伸発(しんぱつ)は、音を引き伸ばす症状です。「かーーーばん」「わーーーたし」のように、最初の音が長く引き伸ばされます。

難発(なんぱつ)は、最初の音が出ない症状です。言いたい言葉があるのに、最初の音がなかなか出てこず、言葉が詰まった状態になります。「っっっかばん」のように、力を入れても声が出ない状態です。難発は、吃音の中でも特に本人の苦痛が大きい症状です。

これらの症状に加えて、随伴症状が現れることもあります。顔をしかめる、首を振る、足を踏み鳴らす、まばたきを頻繁にするなど、言葉を出そうとする際に身体の他の部分が動いてしまう症状です。

吃音の原因

吃音の正確な原因は、まだ完全には解明されていませんが、複数の要因が関係していると考えられています。

脳の機能的要因として、言語処理や発話のタイミングを司る脳の領域に、機能的な違いがあることが研究で示されています。吃音のある人とない人では、脳の活動パターンに違いが見られます。

遺伝的要因も関係しています。吃音のある親や兄弟姉妹がいる場合、吃音を持つ確率が高くなります。ただし、遺伝だけで決まるわけではありません。

発達的要因として、言語能力が急速に発達する2歳から5歳頃に吃音が始まることが多くあります。この時期は、言いたいことと実際の言語能力の間にギャップが生じやすい時期です。

心理的ストレスや環境要因は、吃音を悪化させる要因にはなりますが、吃音そのものの原因ではありません。

発達性吃音と獲得性吃音

発達性吃音は、幼児期(2歳から5歳頃)に始まる吃音です。吃音の大部分は、この発達性吃音です。多くの場合、自然に改善することもありますが、一部は成人期まで持続します。

獲得性吃音は、脳卒中、頭部外傷、脳腫瘍などの脳の器質的疾患、または強い心的外傷によって、突然発症する吃音です。発達性吃音とは異なる特徴を持ちます。

吃音への対処

幼児期の吃音では、多くの場合、自然に改善します。親ができることは、子どもの話をゆっくり聞く、言い直しをさせない、話し方を指摘しない、焦らせない環境を作る、といったことです。

症状が3か月以上続く場合、症状が悪化している場合、本人が困っている場合は、言語聴覚士に相談することをお勧めします。

学齢期以降の吃音では、言語聴覚士による吃音の専門的な訓練が有効です。流暢性形成法(なめらかに話す技法を学ぶ)、吃音緩和法(楽に吃る方法を学ぶ)などの訓練があります。

また、吃音に対する心理的アプローチとして、認知行動療法やグループ療法も効果的です。吃音を受け入れ、吃音があっても豊かなコミュニケーションができるようになることを目指します。

3. 心理的要因による言葉の詰まり

心理的な要因でも、言葉が詰まることがあります。

緊張・不安による言葉の詰まり

人前で話すときや、面接、プレゼンテーションなど、緊張する場面で言葉が詰まることは、誰にでも起こりうる現象です。

緊張すると、交感神経が活発になり、心拍数が上がり、呼吸が浅く速くなります。この状態では、発話に必要な呼吸のコントロールが難しくなり、声が震えたり、言葉が詰まったりします。

また、「失敗してはいけない」「うまく話さなければ」という思いが強いほど、緊張が高まり、かえって言葉が詰まりやすくなります。

社交不安症(社会不安障害)

社交不安症では、人前で話すことや、注目される状況に対して、過度の不安や恐怖を感じます。この不安によって、言葉が詰まる、声が震える、頭が真っ白になるといった症状が現れます。

社交不安症による言葉の詰まりは、特定の社会的状況で一貫して起こります。日常生活や仕事に大きな支障をきたす場合は、専門家の支援が必要です。

選択性緘黙症

選択性緘黙症では、特定の場面において、不安のために話すことができなくなります。言葉が詰まるというよりも、声がまったく出なくなる状態です。

家では普通に話せるのに、学校や職場では一言も話せなくなるといった症状が特徴的です。

パニック症

パニック発作が起きると、息苦しさ、動悸、めまいなどの身体症状とともに、言葉が出にくくなることがあります。「このまま死んでしまうのではないか」という強い恐怖を感じます。

対処法

リラクゼーション技法として、深呼吸、腹式呼吸、筋弛緩法、マインドフルネスなどを実践することで、緊張を和らげることができます。

認知行動療法では、不安を引き起こす思考パターンを特定し、より現実的な考え方に変えていきます。「完璧に話さなければならない」という考えを、「多少詰まっても大丈夫」という考えに変えていきます。

段階的暴露により、不安を感じる状況に少しずつ慣れていくことも有効です。小さな場面から始めて、徐々に難易度を上げていきます。

症状が重い場合は、精神科や心療内科での治療が必要です。認知行動療法に加えて、必要に応じて薬物療法(SSRI等)が検討されます。

4. 脳の疾患による言葉の詰まり

脳の疾患や損傷によって、言葉が詰まることがあります。

失語症

脳卒中、脳外傷、脳腫瘍などによって、言語を司る脳の領域が損傷されると、失語症が起こります。

失語症では、言いたい言葉が思い出せない、言葉が詰まる、言い間違いをする、話の内容が理解できないなど、様々な言語障害が現れます。

失語症のタイプによって症状は異なります。ブローカ失語では、言葉を話すことが困難で、たどたどしい話し方になり、言葉が詰まることが多くなります。

構音障害

脳卒中、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などによって、発話に必要な筋肉の動きが障害されると、構音障害が起こります。

舌や唇、顎、声帯などを動かす筋肉の機能が低下し、呂律が回らない、声が小さくなる、話すスピードが遅くなる、言葉が詰まるといった症状が現れます。

吃音様症状

脳卒中や頭部外傷の後に、突然吃音のような症状が現れることがあります。これは神経学的吃音と呼ばれ、発達性吃音とは異なる特徴を持ちます。

認知症

認知症の進行に伴い、言葉が出にくくなったり、言いたい言葉が思い出せなかったりすることがあります。特にアルツハイマー型認知症では、言語機能の低下が見られます。

対処法

脳の疾患による言語障害には、専門的なリハビリテーションが必要です。言語聴覚士による言語療法を受けることが重要です。

原因疾患の治療を並行して行いながら、失われた機能を回復させたり、残存する機能を最大限活用したりする訓練を行います。

家族や周囲の人は、本人の話をゆっくり聞く、言い直しをさせない、補助的なコミュニケーション手段(ジェスチャー、絵カード、筆談など)を活用する、といった配慮が大切です。

5. その他の原因による言葉の詰まり

加齢による変化

加齢とともに、言葉を思い出すスピードが遅くなったり、適切な言葉が出てこなかったりすることがあります。これは正常な老化現象の一つで、多くの場合は病的なものではありません。

ただし、急激に悪化する場合や、日常生活に大きな支障が出る場合は、認知症などの可能性もあるため、医療機関を受診することをお勧めします。

疲労・ストレス

心身の疲労が蓄積していたり、強いストレスを感じていたりすると、一時的に言葉が出にくくなることがあります。十分な休息を取ることで改善します。

薬の副作用

一部の薬剤の副作用として、言葉が出にくくなることがあります。抗不安薬、睡眠薬、一部の抗うつ薬などで、そのような副作用が報告されています。

薬を服用し始めてから言葉の出にくさを感じるようになった場合は、処方医に相談しましょう。

甲状腺機能の異常

甲状腺機能低下症では、代謝が低下し、思考や動作が緩慢になります。その結果、言葉が出にくくなることがあります。

低血糖

血糖値が極端に低下すると、脳の機能が低下し、言葉が出にくくなったり、ろれつが回らなくなったりすることがあります。糖尿病の治療中の方は、特に注意が必要です。

ビタミンB12欠乏

ビタミンB12が欠乏すると、神経系の機能が障害され、言語機能にも影響が出ることがあります。

6. 場面別の対処法

人前で話すとき

準備と練習をしっかり行うことで、自信がつき、緊張が和らぎます。話す内容を事前に整理し、何度か練習しておきましょう。

呼吸法として、話す前に深呼吸を数回行い、気持ちを落ち着けます。話している最中も、適度に息継ぎをすることを意識しましょう。

完璧主義をやめることも大切です。多少言葉が詰まっても、聞いている人はそれほど気にしていないことがほとんどです。

ゆっくり話すことを心がけましょう。焦って早口になると、かえって言葉が詰まりやすくなります。

面接・プレゼンテーション

模擬練習を繰り返し、本番の状況に慣れておくことが有効です。友人や家族に聞いてもらい、フィードバックをもらいましょう。

最初の一言を決めておくと、スムーズに始められます。自己紹介や挨拶の言葉を、あらかじめ準備しておきましょう。

視覚資料の活用により、話す内容を補助できます。スライドやメモを用意することで、安心感が得られます。

日常会話

焦らないことが大切です。言葉が詰まっても、焦らずゆっくり話せば大丈夫です。

伝えたいことを明確にするために、話す前に少し考える時間を取りましょう。

相手の反応を気にしすぎないことも重要です。多くの人は、話し方よりも話の内容に注目しています。

電話での会話

電話では相手の表情が見えないため、緊張しやすくなります。

話す内容をメモしておくと、安心して話せます。

最初に少し間を置くことで、落ち着きを取り戻せます。

ゆっくり、はっきり話すことを意識しましょう。

7. 言葉が詰まることへの心理的対処

受容と理解

言葉が詰まることは、多くの人が経験することです。それを恥ずかしいことや悪いことだと思わず、「そういうこともある」と受け入れることが大切です。

自己批判をやめる

「またうまく話せなかった」「自分はダメだ」と自分を責めることは、さらなる不安を生み出します。自己批判をやめ、自分に優しくすることを心がけましょう。

小さな成功体験を積む

言葉が詰まらずに話せた経験、少し詰まっても最後まで伝えられた経験など、小さな成功体験を認識し、自信につなげていきましょう。

マインドフルネス

今この瞬間に意識を向け、不安や心配にとらわれない練習をします。マインドフルネス瞑想は、不安の軽減に効果的です。

完璧を求めない

完璧に流暢に話すことを目標にするのではなく、伝えたいことが伝わればよい、という柔軟な考え方を持ちましょう。

8. 専門家への相談が必要な場合

以下のような場合は、専門家への相談を検討しましょう。

日常生活に支障がある

言葉が詰まることで、学校や仕事、対人関係に大きな支障が出ている場合は、専門的な支援が必要です。

症状が悪化している

言葉の詰まりが頻繁になってきた、症状が重くなってきた場合は、早めに相談しましょう。

心理的苦痛が大きい

言葉が詰まることで、強い不安、恐怖、抑うつを感じている場合は、メンタルヘルスの専門家に相談することをお勧めします。

突然症状が現れた

これまでなかったのに、突然言葉が詰まるようになった場合、特に成人期以降に突然現れた場合は、脳の疾患の可能性も考えられます。

他の症状を伴う

頭痛、めまい、手足のしびれ、記憶障害など、他の症状を伴う場合は、神経内科や脳神経外科を受診しましょう。

相談先

吃音の場合は、言語聴覚士、耳鼻咽喉科、吃音の専門外来などに相談できます。

心理的要因の場合は、精神科、心療内科、臨床心理士、カウンセラーなどに相談できます。

脳の疾患が疑われる場合は、神経内科、脳神経外科を受診しましょう。

子どもの場合は、小児科、児童精神科、学校のスクールカウンセラー、地域の子育て相談窓口などに相談できます。

9. 周囲ができるサポート

言葉が詰まる人の周囲にいる家族、友人、同僚にもできることがあります。

ゆっくり聞く姿勢

相手が言葉を探している間、焦らせず、ゆっくり待つことが大切です。言葉を先回りして言ってあげたり、急かしたりしないようにしましょう。

言い直しをさせない

言葉が詰まったときに、「もう一度言って」「ちゃんと話して」と言い直しをさせることは、相手をさらに緊張させます。

指摘しない

話し方を指摘したり、からかったりすることは、絶対に避けましょう。本人は十分に気にしています。

表情や態度に気をつける

相手が話している間、イライラした表情を見せたり、時計を見たりすることは避けましょう。落ち着いた、受容的な態度で聞くことが大切です。

内容に集中する

話し方ではなく、話の内容に集中しましょう。相手が伝えたいことを理解しようとする姿勢が大切です。

代わりに答えない

子どもの場合、親が代わりに答えてしまうことがありますが、これは避けるべきです。本人が話す機会を奪わないようにしましょう。

安心できる環境を作る

失敗を恐れずに話せる雰囲気、ミスを責めない文化を作ることが大切です。

10. まとめ:言葉が詰まることへの理解と対応

言葉が詰まる原因は多岐にわたります。吃音、心理的要因、脳の疾患、その他の身体的要因など、様々な原因が考えられます。

吃音は、脳の機能的要因や遺伝的要因が関係する発話障害で、言語聴覚士による専門的な訓練が有効です。心理的要因による言葉の詰まりには、リラクゼーション技法や認知行動療法が効果的です。

脳の疾患による場合は、専門医療機関での診断と治療、言語聴覚士によるリハビリテーションが必要です。

重要なのは、言葉が詰まることは決して恥ずかしいことではなく、多くの人が経験することだということです。適切な理解と対処により、改善が期待できます。

日常生活に支障がある場合、症状が悪化している場合、心理的苦痛が大きい場合は、専門家に相談することをお勧めします。早期の相談と適切な支援により、状況は改善していきます。

周囲の人々の理解とサポートも、大きな力になります。焦らせず、指摘せず、ゆっくり聞く姿勢が、何よりの支援となります。

言葉が詰まることで悩んでいる方、その周囲の方々が、この記事を通じて適切な理解と対処法を知り、より良いコミュニケーションができるようになることを願っています。

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