「時間がかかりすぎる」「他の人の倍時間がかかる」「段取りが悪い」「要領が悪いと言われる」要領の悪さは、仕事や日常生活での大きなストレスとなり、自己肯定感も下げてしまいます。しかし、要領の悪さには必ず原因があり、適切な対処により改善できます。本記事では、要領が悪くなる原因、脳の特性との関係、具体的な改善方法、そして自分に合ったペースで生きるためのヒントを詳しく解説します。
「要領が悪い」とは
まず、要領の悪さがどのように現れるかを理解しましょう。
よくある症状
時間がかかる
- 他の人の2倍、3倍時間がかかる
- 締め切りに間に合わない
- 残業が多い
- 家事に時間がかかる
- 準備に時間がかかる
段取りが悪い
- 何から手をつければいいか分からない
- 優先順位がつけられない
- 同じ作業を何度もやり直す
- 無駄な動きが多い
- 計画を立てられない
マルチタスクができない
- 複数のことを同時に進められない
- 一つのことに集中しすぎて他が疎かになる
- 切り替えが苦手
- パニックになる
効率が悪い
- 簡単な方法があるのに難しい方法でやっている
- ツールを使いこなせない
- 無駄な作業が多い
- 同じことを繰り返している
ミスが多い
- 確認不足
- 抜け漏れが多い
- やり直しが発生する
- 二度手間、三度手間になる
不器用
- 手先が不器用
- 身体の使い方が下手
- 動作が遅い
- スムーズに動けない
要領が悪くなる原因
要領の悪さには、様々な背景があります。
1. 発達障害の特性
ADHD(注意欠如・多動症)
不注意:
- 注意が散漫で、細部を見落とす
- 集中が続かない
- 忘れっぽい
- 物をなくす
実行機能の弱さ:
- 計画を立てるのが苦手
- 優先順位がつけられない
- 時間の見積もりができない
- 段取りが悪い
- 作業記憶(ワーキングメモリ)が弱い
衝動性:
- 考えずに行動してしまう
- 待てない
- 後先考えない
これらの特性により、効率的に作業することが困難になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
こだわりの強さ:
- 一つのやり方に固執する
- 柔軟に対応できない
- 効率より正確さを重視しすぎる
全体把握の困難:
- 細部にこだわりすぎて全体が見えない
- 優先順位がつけられない
マルチタスクの困難:
- 一度に一つのことしかできない
- 切り替えが苦手
感覚過敏:
- 周囲の音や光が気になって集中できない
LD(学習障害)/ディスプラクシア(発達性協調運動障害)
特定の作業(読む、書く、計算する、身体を動かす)に時間がかかり、全体の効率が下がります。
2. ワーキングメモリの弱さ
作業記憶(ワーキングメモリ)とは、「一時的に情報を保持しながら処理する能力」です。
これが弱いと、複数の手順を覚えられない、同時に複数のことを処理できない、といった問題が生じます。
3. 完璧主義
「完璧にやらなければ」というこだわりが、効率を下げます。
- 細部にこだわりすぎる
- 何度も確認しすぎる
- 100点を目指して時間がかかる
- 70点で十分な場面でも100点を求める
4. 経験・スキル不足
単純に経験が少ない、スキルが未熟、ということも要領の悪さの原因です。
慣れれば速くなることも多いです。
5. 不安・心配性
「失敗したらどうしよう」という不安が、動きを鈍くします。
- 何度も確認する
- 決断できない
- 慎重になりすぎる
- 思考が止まる
6. 疲労・睡眠不足
疲れていると、判断力、集中力、処理速度が低下し、要領が悪くなります。
7. 情報処理速度の遅さ
脳の情報処理速度には個人差があり、生まれつき処理が遅い人もいます。
これは知能とは別の問題で、知能が高くても処理速度が遅い人もいます。
8. 教えられていない
効率的な方法、段取りの仕方、ツールの使い方などを、誰からも教わっていない、自分で学んでいない、という場合もあります。
9. 環境の問題
- 物が多すぎて探すのに時間がかかる
- 集中できない環境(騒音、邪魔が入る)
- ツールや設備が不十分
- 無駄な手順が多い職場
10. 性格特性
- 慎重すぎる
- 心配性
- 几帳面すぎる
- のんびりした性格
要領が悪いことの影響
要領の悪さは、様々な問題を引き起こします。
1. 仕事での問題
- 残業が多い、定時に帰れない
- 締め切りに間に合わない
- 評価が低い
- 「仕事が遅い」と言われる
- 昇進しにくい
- 解雇やパワハラのリスク
2. 日常生活での問題
- 家事に時間がかかる
- 遅刻が多い
- やりたいことができない
- 時間に追われる
- 疲れる
3. 心理的な影響
- 自己肯定感の低下
- 「自分はダメだ」という自己否定
- 焦り、不安、ストレス
- うつ、適応障害のリスク
- 劣等感
4. 人間関係への影響
- 「のろい」「使えない」と言われる
- チームに迷惑をかける罪悪感
- 孤立
- いじめやハラスメントの対象になる
要領を良くする具体的な方法
要領の悪さは、適切な工夫により改善できます。
カテゴリー1:思考・計画の改善
1. 全体像を把握する
作業を始める前に、全体の流れ、ゴール、必要な作業、時間、リソースを確認します。
地図を見てから走り出すイメージです。
2. 優先順位をつける
すべてを同じ力でやろうとせず、重要度と緊急度で優先順位をつけます。
アイゼンハワーマトリクス:
- 第1象限:緊急かつ重要→すぐやる
- 第2象限:重要だが緊急でない→計画的にやる
- 第3象限:緊急だが重要でない→他人に任せるか短時間で済ませる
- 第4象限:緊急でも重要でもない→やらない
3. 逆算思考
締め切りから逆算して、いつまでに何をすべきか、を計画します。
4. 細分化する
大きなタスクは、小さなステップに分解します。
「資料作成」→「情報収集」「構成作成」「執筆」「デザイン」「チェック」など。
5. 制限時間を設ける
「この作業は30分で終わらせる」と決めることで、集中力が上がり、効率が上がります。
パーキンソンの法則(仕事は与えられた時間いっぱいに膨張する)の逆利用です。
カテゴリー2:作業の効率化
6. テンプレート・フォーマットを作る
毎回ゼロから作らず、テンプレートやフォーマットを用意しておきます。
メール、資料、報告書、企画書など。
7. チェックリストを作る
手順をチェックリストにしておき、毎回それを見ながら作業します。
忘れ防止、抜け漏れ防止になります。
8. バッチ処理
同じような作業をまとめて一気に処理します。
例:メールの返信を1日3回まとめて行う、書類のチェックを午後にまとめて行う。
9. 2分ルール
2分以内でできることは、その場ですぐやります。
後回しにすると、「後でやる」リストに入れる手間、思い出す手間がかかります。
10. 80点主義
100点を目指さず、80点、70点で良しとします。
完璧を求めると時間がかかりすぎます。
11. ツールを活用する
便利なツールやアプリを使いこなすことで、劇的に効率が上がります。
- タスク管理:Todoist、Trello、Notion
- 時間管理:タイマー、ポモドーロアプリ
- 自動化:IFTTT、Zapier、ショートカット
- 辞書登録:よく使う文章を単語登録
12. 物の定位置を決める
探す時間を削減します。
鍵、財布、書類、文房具など、すべて定位置を決め、必ず戻します。
13. 整理整頓
物が多すぎると、探すのに時間がかかります。
断捨離、整理整頓により、効率が上がります。
カテゴリー3:集中力の管理
14. シングルタスク
マルチタスクを避け、一つずつ集中してやります。
マルチタスクは、実は効率が悪いことが研究で分かっています。
15. 集中できる環境を作る
- スマホを別の部屋に置く
- 通知をオフにする
- 静かな場所で作業
- ノイズキャンセリングイヤホン
16. ポモドーロテクニック
25分集中+5分休憩を繰り返す技法です。
タイマーをセットし、25分間は一つのことだけに集中します。
17. 午前中に重要なタスク
脳が最も活性化している午前中に、重要で難しいタスクを行います。
カテゴリー4:記憶・忘れ物対策
18. 外部記憶を活用
頭で覚えようとせず、すべて記録します。
- スマホのリマインダー、カレンダー
- ToDoアプリ
- メモ、付箋
- 写真で記録
19. 視覚化
見えないと忘れます。
ホワイトボード、壁に貼った付箋、カレンダーなど、目に見える形で管理します。
20. ルーティン化
毎日同じ時間に同じことをすることで、忘れにくくなります。
カテゴリー5:身体・健康管理
21. 十分な睡眠
睡眠不足は、判断力、集中力、処理速度を大幅に低下させます。
最低7時間の睡眠を確保します。
22. 適度な運動
運動は、脳の働きを活性化させ、集中力を高めます。
23. 栄養バランス
脳の働きには、栄養が必要です。バランスの取れた食事を心がけます。
24. 疲労を溜めない
定期的に休憩を取る、無理をしない、休日はしっかり休むことが大切です。
カテゴリー6:学習・スキルアップ
25. 他人のやり方を学ぶ
要領が良い人の仕事のやり方を観察し、真似します。
「どうやっているんですか?」と聞くことも有効です。
26. ショートカットキーを覚える
パソコン作業が多い場合、ショートカットキーを覚えるだけで、劇的に速くなります。
27. タイピング速度を上げる
タイピング練習により、文章作成の時間が短縮されます。
28. 本を読む
効率化、時間管理、生産性に関する本を読み、知識を増やします。
カテゴリー7:発達障害対策
29. 専門医を受診する
ADHDの可能性がある場合、心療内科や精神科を受診します。
ADHDの薬物療法(コンサータ、ストラテラなど)により、集中力、計画性、処理速度が劇的に改善することがあります。
「人生が変わった」という人も多いです。
30. ADHDライフハック
ADHD特有の対策を学びます。
- タイマー、リマインダーを多用
- 視覚化、外部記憶
- ルーティン化
- 環境調整(刺激を減らす)
カテゴリー8:認知・心理の改善
31. 完璧主義を手放す
「70点で良い」「完璧でなくても良い」と自分に許可を与えます。
32. 自己肯定感を保つ
「要領が悪い」という一面だけで自分を評価せず、他の良いところにも目を向けます。
33. 比較しない
他人と比較せず、過去の自分と比較します。
「昨日の自分より少し速くなった」で十分です。
発達障害と要領の悪さ
特にADHDやASDの場合、要領の悪さは脳の特性によるものであり、「努力不足」や「やる気の問題」ではありません。
診断を受けるメリット
- 原因が分かり、自己否定から解放される
- 適切な治療(薬物療法、心理療法)が受けられる
- 障害者雇用で配慮を受けられる
- 自己理解が深まり、対処法が見つかる
診断の受け方
大人の発達障害の診断ができる心療内科・精神科を受診し、問診と心理検査(WAIS-IVなど)を受けます。
自分に合った働き方・生き方を選ぶ
要領を改善する努力と同時に、「自分に合った環境」を選ぶことも重要です。
要領が悪くても働きやすい環境
- マイペースで働ける:在宅勤務、フリーランス、単純作業
- マルチタスクが少ない:一つのことに集中できる仕事
- 締め切りが緩い:余裕のある職場
- 丁寧さが評価される:スピードより正確さが求められる仕事(品質管理、校正など)
- ルーティンワーク:毎日同じ作業で、段取りを考えなくて良い
避けた方が良い環境
- マルチタスクが多い
- スピードが最優先
- 臨機応変な対応が求められる
- 常に新しいことに対応しなければならない
- 高度な計画性が必要
得意を活かす
要領は悪くても、他の強みがあるはずです。
- 丁寧さ、正確さ
- 集中力(一つのことへの)
- 誠実さ
- 専門知識
- 創造性
強みを活かせる場所を見つけましょう。
要領が悪いことを周囲に伝える
信頼できる上司や同僚には、自分の特性を説明し、理解と配慮を求めることも選択肢です。
伝え方の例
「私は、複数のタスクを同時に進めるのが苦手です。一つずつ指示していただけると助かります」
「段取りを考えるのに時間がかかるので、少し余裕を持ったスケジュールだと助かります」
「チェックリストがあると、ミスが減ります」
正直に伝えることで、配慮を受けられ、働きやすくなることがあります。
要領の悪さを受け入れる
改善の努力をしつつも、「自分はこういう性質だ」と受け入れることも大切です。
すべての人が要領良くなる必要はない
世の中には、様々な人がいます。
要領が良い人もいれば、悪い人もいます。それぞれに価値があります。
要領の悪さは欠点だけではない
- 丁寧で正確
- 慎重で失敗が少ない
- 一つのことに集中できる
- 深く考える
という側面もあります。
自分らしく生きる
「普通」や「効率的」を目指しすぎず、自分のペースで、自分らしく生きることが、結果的に幸せにつながります。
まとめ
要領が悪いのは、ADHD・ASD・LDなどの発達障害の特性、ワーキングメモリの弱さ、完璧主義、経験不足、不安、疲労、情報処理速度の遅さ、環境の問題、性格特性など、様々な原因があります。
改善するには、思考・計画の改善(全体把握、優先順位、逆算思考、細分化)、作業の効率化(テンプレート、チェックリスト、バッチ処理、80点主義、ツール活用)、集中力の管理、記憶・忘れ物対策、健康管理、学習・スキルアップ、発達障害対策、認知・心理の改善などが有効です。
特にADHDの場合、薬物療法により劇的に改善することがあるため、専門医の受診を検討してください。
改善の努力と同時に、自分に合った働き方・環境を選ぶこと、強みを活かすこと、要領の悪さを受け入れることも大切です。
要領が悪い自分を責めすぎず、「これが自分のペースだ」と受け入れ、できる工夫をしながら、自分らしく生きていきましょう。あなたには、あなたのペースで生きる権利があります。
要領の良さだけが価値ではありません。丁寧さ、誠実さ、一つのことへの集中力など、あなたならではの価値を大切にしてください。

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