1. 群発頭痛と難病指定について
群発頭痛は、片側の目の奥やその周辺に激しい痛みが起こる頭痛で、「自殺頭痛」とも呼ばれるほどの耐え難い痛みが特徴です。この激痛に苦しむ患者の中には、「群発頭痛は難病指定されているのか」「医療費の助成は受けられるのか」という疑問を持つ方が多くいらっしゃいます。
結論から申し上げると、群発頭痛は現在、難病法に基づく指定難病には指定されていません。したがって、難病医療費助成制度の対象とはなっていないのが現状です。
しかし、群発頭痛は決して軽視できる病気ではなく、患者の生活に深刻な影響を与える疾患です。この記事では、群発頭痛と難病指定の関係、利用できる支援制度、そして今後の展望について詳しく解説していきます。
2. 群発頭痛とは
まず、群発頭痛という病気について理解を深めましょう。
群発頭痛の特徴
群発頭痛は、一次性頭痛(明確な原因疾患がない頭痛)の一種で、片側の目の奥や目の周囲、こめかみなどに激烈な痛みが生じる頭痛です。痛みの強さは、患者が「目をえぐられるような」「錐で刺されるような」と表現するほど激しく、医療関係者の間でも「最も痛い頭痛」の一つとされています。
痛みは15分から180分程度続き、一定期間(数週間から数か月)にわたってほぼ毎日、決まった時間に発作が起こります。この一定期間を「群発期」と呼び、群発期が終わると痛みは完全に消失します。しかし、数か月から数年後に再び群発期が訪れることが多く、これを繰り返します。
主な症状
激烈な痛みが最も特徴的な症状です。片側の目の奥やその周辺に、えぐられるような、焼けるような、刺されるような激痛が生じます。あまりの痛みに、じっとしていられず、歩き回ったり頭を壁に打ちつけたりする患者もいます。
自律神経症状として、痛みのある側の目が充血する、涙が出る、鼻水が出る、鼻が詰まる、まぶたが腫れる、まぶたが垂れ下がる、額や顔に汗をかくなどの症状が伴います。
発作の規則性も特徴的です。群発期には、ほぼ毎日決まった時間に発作が起こることが多く、特に夜間や明け方に発作が起きやすい傾向があります。
有病率と患者数
群発頭痛の有病率は人口の約0.1%程度とされており、日本では約10万人から20万人の患者がいると推定されています。男性に多く、男女比は約3対1から7対1とされています。発症年齢は20代から40代が最も多いとされています。
片頭痛に比べると患者数は少ないものの、痛みの激しさと生活への影響の大きさから、患者の苦痛は非常に深刻です。
3. 日本の難病制度の仕組み
群発頭痛が難病指定されているかを理解するために、まず日本の難病制度について説明します。
難病法と指定難病
日本では、平成27年(2015年)に「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」が施行されました。この法律に基づき、一定の要件を満たす疾患が「指定難病」として指定され、医療費助成の対象となります。
令和6年(2024年)4月現在、指定難病は338疾患が指定されています。
指定難病の要件
疾患が指定難病として認定されるには、以下の要件を満たす必要があります。
発病の機構が明らかでないこと。原因がわかっていない、または十分に解明されていない疾患である必要があります。
治療方法が確立していないこと。根本的な治療法がない、または治療法が不十分な疾患である必要があります。
希少な疾病であること。患者数が日本において一定の人数(人口の約0.1%程度)に達しないことが要件です。
長期の療養を必要とすること。長期にわたる治療や経過観察が必要な疾患である必要があります。
患者数が本邦において一定の人数に達しないこと。概ね人口の0.1%程度以下であることが基準とされています。
客観的な診断基準が確立していること。医学的に診断基準が明確であることが必要です。
医療費助成の内容
指定難病に認定された患者は、重症度分類等を満たす場合、医療費の自己負担額が軽減されます。自己負担上限額は、所得に応じて月額約1,000円から3万円の範囲で設定されます。
4. 群発頭痛が難病指定されていない理由
群発頭痛は激烈な痛みを伴い、患者の生活に深刻な影響を与えるにもかかわらず、なぜ指定難病に含まれていないのでしょうか。
有病率の問題
群発頭痛の有病率は人口の約0.1%程度とされています。これは指定難病の基準である「人口の約0.1%程度以下」のギリギリのラインにあり、場合によっては基準を上回る可能性があります。
治療法の存在
群発頭痛には、急性期治療として酸素吸入やトリプタン製剤の注射、予防療法としてベラパミルなどの薬物療法があり、一定の効果が認められています。完全に治療法が確立していないわけではないという点が、指定難病の要件との関係で問題となる可能性があります。
ただし、これらの治療法が全ての患者に有効なわけではなく、難治性の患者も多く存在します。
診断基準の問題
群発頭痛には国際頭痛分類に基づく診断基準が存在しますが、客観的な検査で確定診断できるわけではありません。診断は主に症状の特徴と経過に基づいて行われます。
発病機構の理解
群発頭痛の発病機構は完全には解明されていませんが、視床下部の機能異常や三叉神経・自律神経系の関与などが指摘されており、一定の理解が進んでいます。完全に「機構が明らかでない」とは言い切れない面があります。
5. 群発頭痛患者が利用できる制度
群発頭痛は指定難病ではありませんが、患者が利用できる医療費助成や支援制度はいくつか存在します。
高額療養費制度
群発頭痛の治療費が高額になった場合、高額療養費制度を利用できます。この制度は、1か月の医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。
自己負担上限額は所得に応じて異なりますが、一般的な所得の場合、月額約8万円程度が上限となります。世帯で複数の医療費がある場合や、直近12か月で3回以上高額療養費の支給を受けた場合は、さらに負担が軽減されます。
医療費控除
確定申告で医療費控除を受けることができます。1年間に支払った医療費(家族分を含む)が10万円を超えた場合、または総所得金額等の5%を超えた場合、その超過分を所得から控除できます。
群発頭痛の治療費だけでなく、通院のための交通費なども医療費控除の対象となります。
傷病手当金
会社員や公務員など、健康保険に加入している方が、病気やケガで仕事を休み、給与を受けられない場合、傷病手当金を受給できる可能性があります。
群発期に仕事を休まざるを得ない場合、この制度を利用できる可能性があります。支給額は標準報酬日額の3分の2相当額で、最長1年6か月間受給できます。
障害年金
群発頭痛が非常に重症で、日常生活や就労に著しい制限がある場合、障害年金の対象となる可能性があります。ただし、認定のハードルは高く、医師の詳細な診断書が必要です。
頭痛で障害年金を受給するには、治療の経過、日常生活の制限の程度、就労への影響などを詳しく記録し、証明する必要があります。
就労支援制度
群発頭痛によって就労に支障がある場合、障害者雇用制度やハローワークの障害者就労支援サービスを利用できる可能性があります。
また、職場での合理的配慮を求めることもできます。群発期の勤務調整や、酸素吸入ができる環境の整備などを相談することが考えられます。
自治体独自の支援
一部の自治体では、指定難病以外の疾患に対する独自の医療費助成制度を設けている場合があります。お住まいの自治体の保健福祉部門に問い合わせてみることをお勧めします。
6. 群発頭痛の治療と医療費
群発頭痛の治療にはどのようなものがあり、どの程度の医療費がかかるのでしょうか。
急性期治療
酸素吸入療法は、群発頭痛の急性期治療として最も効果的な方法の一つです。発作が始まったときに、高濃度の酸素を15分程度吸入することで、多くの患者で痛みが軽減します。
在宅酸素療法として処方される場合、健康保険が適用されます。自己負担額は3割負担の場合、月額約7,000円から1万円程度です。酸素ボンベのレンタル料や管理料が含まれます。
トリプタン製剤の皮下注射も急性期治療として有効です。スマトリプタンの自己注射が処方されることが多く、発作時に自分で注射します。薬剤費は1回分で約1,000円から1,500円程度(3割負担)です。
群発期中に毎日発作がある場合、月間の薬剤費は数万円に達することがあります。
予防療法
ベラパミルは、群発頭痛の予防療法として最も広く使用される薬剤です。カルシウム拮抗薬の一種で、群発期中に毎日服用します。薬剤費は比較的安価で、月額数百円から1,000円程度(3割負担)です。
ステロイドが短期間使用されることもあります。群発期の初期に使用し、発作を抑制します。
リチウムは、慢性群発頭痛の予防に使用されることがあります。ただし、定期的な血中濃度測定が必要です。
その他の治療法
神経ブロックとして、後頭神経ブロックや翼口蓋神経節ブロックが行われることがあります。
外科的治療として、難治性の場合、脳深部刺激療法(DBS)などの手術療法が検討されることもありますが、保険適用外の場合が多く、費用は高額になります。
総合的な医療費
群発期中の月間医療費は、診察料、検査料、薬剤費を合わせて、3割負担で月額2万円から5万円程度になることが一般的です。重症例や難治例では、さらに高額になることもあります。
年間を通じて見ると、群発期が年に1回、2か月間続く場合、年間の医療費負担は5万円から10万円程度となります。これは高額療養費制度や医療費控除の対象となる可能性があります。
7. 難病指定に向けた動き
群発頭痛を指定難病にしようという動きは、患者団体や医療関係者の間にあります。
患者団体の活動
群発頭痛の患者会や支援団体は、難病指定を求める活動を行っています。患者の実態調査、署名活動、行政への要望書提出などを通じて、群発頭痛の深刻さを訴えています。
医療関係者の意見
頭痛専門医や神経内科医の中にも、群発頭痛の指定難病化を支持する声があります。痛みの激しさ、生活への影響の大きさ、難治例の存在などを理由に、医療費助成の必要性を指摘しています。
課題と展望
指定難病に追加されるには、厚生労働省の指定難病検討委員会での審議を経る必要があります。疾患の実態を示すデータの蓄積、診断基準の明確化、治療法の標準化などが、指定に向けた課題となります。
群発頭痛の研究が進み、より多くのエビデンスが蓄積されることで、将来的に指定難病として認められる可能性はあります。ただし、現時点では具体的なスケジュールは示されていません。
8. 群発頭痛患者の生活上の工夫
難病指定されていない現状でも、群発頭痛と上手に付き合いながら生活の質を保つための工夫があります。
発作の記録
発作の日時、持続時間、痛みの程度、使用した薬、効果などを詳しく記録することが重要です。これにより、発作のパターンを把握でき、治療法の調整にも役立ちます。また、障害年金申請などの際にも、詳細な記録は重要な資料となります。
トリガーの回避
群発頭痛の発作を誘発する要因(トリガー)には、アルコール摂取、気圧の変化、強い光、特定の食品などがあります。自分のトリガーを特定し、群発期には可能な限り避けることが大切です。
特にアルコールは、群発期には確実に発作を誘発するため、完全に避ける必要があります。
生活リズムの維持
規則正しい睡眠リズムを保つことが重要です。睡眠不足や不規則な生活は、発作を悪化させる可能性があります。
職場での理解と配慮
群発頭痛について職場に説明し、理解を得ることが大切です。群発期の勤務調整、酸素吸入ができる環境の確保、発作時の対応などについて、事前に相談しておくことが望ましいです。
診断書や意見書を職場に提出することで、合理的配慮を受けやすくなります。
専門医の受診
頭痛専門医や神経内科の専門医を受診することで、より適切な治療を受けられます。日本頭痛学会のウェブサイトなどで、頭痛専門医を探すことができます。
患者会への参加
群発頭痛の患者会に参加することで、同じ悩みを持つ人々と情報交換ができ、孤独感が軽減されます。治療法の情報や生活の工夫なども共有できます。
9. 家族や周囲の理解と支援
群発頭痛は、外見からは症状がわかりにくい病気です。家族や職場の理解と支援が、患者の生活の質を大きく左右します。
病気の理解
まず、群発頭痛がどのような病気か、どれほど激しい痛みなのかを理解することが重要です。「ただの頭痛」と軽視せず、深刻な症状であることを認識する必要があります。
発作時の対応
発作が起きたときは、静かで暗い環境を提供し、酸素吸入や薬の使用をサポートします。救急車を呼ぶべきか判断に迷う場合もあるため、事前に対応方法を本人と話し合っておくことが大切です。
精神的なサポート
激しい痛みに繰り返し襲われることは、精神的にも大きな負担です。不安や抑うつ状態になることもあります。話を聞き、共感し、励ますことが重要です。
生活面のサポート
群発期には日常生活が困難になることもあります。家事や育児、買い物などをサポートすることで、本人の負担を軽減できます。
医療機関の受診に同行
診察に同行し、医師に症状を正確に伝える手助けをすることも有効です。本人が痛みで説明しきれない部分を補足したり、客観的な観察を伝えたりできます。
10. まとめ:群発頭痛と難病指定の現状
群発頭痛は、激烈な痛みを伴う深刻な疾患ですが、現在のところ日本の難病法に基づく指定難病には指定されていません。そのため、難病医療費助成制度の対象とはなっていないのが現状です。
しかし、群発頭痛患者が利用できる支援制度は存在します。高額療養費制度、医療費控除、傷病手当金、場合によっては障害年金など、様々な制度を活用することで、経済的負担を軽減できる可能性があります。
群発頭痛を指定難病にしようという動きは存在し、患者団体や医療関係者が活動を続けています。将来的に指定難病として認められる可能性はありますが、現時点では具体的なスケジュールは示されていません。
難病指定されていない現状でも、適切な治療、生活上の工夫、周囲の理解とサポートによって、群発頭痛と上手に付き合いながら生活の質を保つことは可能です。
群発頭痛に苦しんでいる方は、一人で抱え込まず、専門医を受診し、利用できる制度を活用し、周囲に理解とサポートを求めることが大切です。また、患者会などに参加することで、情報交換や精神的な支えを得ることもできます。
群発頭痛が広く認知され、適切な支援が受けられる社会になることを願い、患者の声を社会に届け続けることが重要です。

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