社会人が引きこもりになる原因の全体像

社会人引きこもりの増加と実態

社会人になってから引きこもりになる人は、想像以上に多く存在します。内閣府の調査によると、40歳から64歳の引きこもりは推計61万人以上とされ、15歳から39歳の推計54万人を上回っています。一度は社会に出た経験がある人が、様々な理由で引きこもり状態になる現象は、深刻な社会問題となっています。

社会人の引きこもりには特徴があります。学生時代は問題なく過ごせた、新卒で就職もできた、数年は働いていたという人が、あるきっかけで引きこもりになります。完全に家から出られない人もいれば、コンビニや病院には行けるという人もおり、程度は様々です。

年齢層も幅広く、20代の若手社会人から、30代、40代、50代以上の中高年まで、どの世代でも起こり得ます。特に中高年の引きこもりは、長期化しやすく、社会復帰のハードルも高くなります。

引きこもりになるきっかけは一つではなく、複数の要因が重なっていることが多いです。職場の問題、心身の健康問題、対人関係、経済的な問題、家族の問題など、様々な要因が複雑に絡み合っています。

また引きこもりは突然始まるのではなく、段階的に進行します。最初は仕事を休みがちになる、外出が減る、人と会わなくなる、趣味をやめる、昼夜逆転が始まるという変化が徐々に起き、気づいたときには完全な引きこもり状態になっていることが多いです。

職場環境が原因となるケース

社会人の引きこもりで最も多い原因の一つが、職場環境の問題です。まずパワーハラスメントが深刻な影響を与えます。上司からの暴言、人格否定、長時間の叱責、無視、仲間外れなどを受け続けると、心が深く傷つきます。職場がトラウマの場所になり、そこに戻れなくなり、やがて外出そのものができなくなります。

過重労働も大きな要因です。月100時間を超える残業、休日出勤の常態化、有給休暇が取れない、深夜までの労働などが続くと、心身が疲弊しきります。過労によるうつ病や適応障害を発症し、退職後も回復できずに引きこもりになることがあります。

職場いじめも引きこもりを招きます。同僚からの陰口、無視、嫌がらせ、孤立させられる、情報を教えてもらえないなどの経験は、対人恐怖を生み、人と関わることへの恐怖が外出を妨げます。

理不尽な扱いや不当な評価も影響します。頑張っても認められない、成果を横取りされる、不公平な扱いを受ける、理由なく降格や減給されるなどの経験が、働くことへの意欲を奪い、社会への不信感を生みます。

リストラや突然の解雇も大きなショックです。予期せぬ失業は、経済的な不安だけでなく、自己否定感や無力感を生み、次の一歩を踏み出す気力を奪います。

職場での重大なミスやトラブルもトラウマになります。大きな損失を出した、顧客に迷惑をかけた、責任を追及されたなどの経験が、自信を失わせ、再び働くことへの恐怖を生みます。

セクシャルハラスメントも深刻な原因です。性的な嫌がらせ、不適切な発言や接触などの経験は、心に深い傷を残し、人と関わることへの恐怖や嫌悪感を生みます。

精神疾患や健康問題が原因となるケース

心身の健康問題も、社会人が引きこもりになる大きな原因です。うつ病は最も多い背景疾患の一つです。職場のストレスでうつ病を発症し、意欲の低下、興味の喪失、疲労感、絶望感などの症状が現れます。休職や退職をしても症状が改善せず、外出する気力もなくなり、引きこもり状態になります。

適応障害も頻繁に見られます。特定のストレス源に対して過剰な反応が起き、不安、抑うつ、行動の変化などが現れます。職場という環境が適応障害の原因になり、そこから離れても回復に時間がかかり、引きこもりが長期化することがあります。

不安障害やパニック障害も引きこもりを招きます。通勤中にパニック発作を起こす、人混みが怖くなる、電車に乗れなくなる、外出すると強い不安に襲われるなどの症状が、外出を困難にします。回避行動が繰り返されるうちに、完全に家から出られなくなります。

社交不安障害も大きな要因です。人前で話すことへの恐怖、注目されることへの不安、評価されることへの恐れなどが強く、職場での会議やプレゼンテーションが苦痛になります。症状が悪化すると、人と会うこと自体が恐怖になり、引きこもります。

発達障害の特性も影響します。ADHDの注意欠如や衝動性、ASDのコミュニケーションの困難さや感覚過敏などが、職場での適応を妨げます。周囲から理解されず、叱責や孤立を経験し、二次的にうつ病や不安障害を発症して引きこもることがあります。

慢性疲労症候群や身体疾患も原因になります。原因不明の強い疲労、痛み、体調不良が続き、働けなくなります。周囲からは怠けと誤解され、孤立し、引きこもり状態になることがあります。

燃え尽き症候群も見逃せません。仕事に全力を注いできた人が、ある日突然燃え尽き、何もする気力がなくなります。目標や意味を失い、無気力状態が続き、引きこもりにつながります。

対人関係や性格が原因となるケース

個人の性格特性や対人関係のパターンも、引きこもりの原因になります。完璧主義の人は、自分に厳しく、高い基準を設定します。その基準に達しないと自分を許せず、失敗を極端に恐れます。一度失敗すると、完璧にできる自信がつくまで動けなくなり、引きこもります。

自己肯定感の低さも影響します。自分には価値がない、何をやってもダメだという思い込みが強いと、挑戦する気力が湧きません。失敗や批判を過度に恐れ、傷つくことを避けるために、人との関わりを断ちます。

対人恐怖や対人不安も大きな要因です。人と接することに強い不安や恐怖を感じる、視線が気になる、嫌われているのではないかと常に心配する、拒絶されることを極端に恐れるなどの傾向が、社会との接点を失わせます。

過去のいじめ体験も影響します。学生時代のいじめ経験がトラウマとして残り、社会人になっても人間関係に恐怖を感じます。職場で少しでも否定的な反応があると、過去の記憶が蘇り、引きこもります。

コミュニケーション能力への不安も原因です。人とうまく話せない、空気が読めない、会話が続かない、誤解されやすいなどの悩みが、対人関係を避ける理由になります。

愛着の問題も背景にあることがあります。幼少期の親子関係が不安定だった人は、他者との信頼関係を築くことが難しく、孤立しやすい傾向があります。

経済的問題や家族要因が原因となるケース

経済的な問題も引きこもりの原因になります。借金や経済的困窮が、外出を困難にすることがあります。返済に追われる、お金がなくて外出できない、経済的な理由で人と会えないという状況が、孤立を深めます。

失業後の経済不安も影響します。収入がない焦り、貯金が減る不安、再就職できるか心配などのストレスが、行動を止めてしまいます。

家族の問題も大きな要因です。家族の介護が必要になり、仕事を辞めざるを得なくなった人が、介護の負担と孤立から引きこもることがあります。特に親の介護をしているうちに、社会との接点が失われ、親が亡くなった後も引きこもり続けるケースがあります。

家族関係の葛藤も影響します。親との確執、過干渉や過保護、期待の重さ、兄弟姉妹との比較などが、自己肯定感を下げ、家に引きこもる原因になります。

また家族の経済的な余裕が、逆説的に引きこもりを長期化させることもあります。親が経済的に支えてくれる状況が、自立への動機を弱め、引きこもり状態を維持させてしまいます。

配偶者や恋人との別れ、離婚なども引きこもりのきっかけになります。大切な人との別離は、生きる意欲を奪い、外の世界との接点を失わせることがあります。

社会構造や時代背景が原因となるケース

社会全体の構造や時代の変化も、引きこもりを生む背景にあります。雇用の不安定化が大きな要因です。非正規雇用の増加、終身雇用の崩壊、リストラの常態化などが、キャリアへの不安を生み、一度失敗すると再起が難しいという恐怖を生みます。

過度な競争社会も影響します。成果主義、効率重視、常に結果を求められる環境が、人々を疲弊させます。競争に疲れた人、ついていけなくなった人が、社会から降りてしまいます。

SNSやインターネットの普及も複雑な影響を与えています。他人の成功が見えやすくなり、比較して劣等感を感じやすくなりました。一方で、家にいてもネットで娯楽や情報が得られるため、外出の必要性が減り、引きこもりやすい環境になっています。

孤立化しやすい社会構造も問題です。地域コミュニティの衰退、核家族化、近所付き合いの減少などが、困ったときに助けを求める場所がない状況を作っています。

新型コロナウイルスの影響も無視できません。リモートワークの普及、外出自粛、対面接触の減少などが、引きこもりのきっかけや長期化の要因になっています。在宅勤務から抜け出せなくなった人もいます。

働くことの意味や価値観の変化も影響します。仕事に人生の全てを捧げることへの疑問、ワークライフバランスの重視、働かない生き方の模索など、価値観の多様化が、従来の働き方への適応を難しくしています。

複合的な原因と個別性

社会人が引きこもりになる原因は、通常一つではありません。職場のストレス、精神疾患、対人関係の困難、家族の問題、経済的な不安など、複数の要因が重なって引きこもりが生じます。

また同じ原因でも、引きこもりになる人とならない人がいます。ストレス耐性、サポートネットワークの有無、性格特性、過去の経験など、個人の要因も大きく影響します。

きっかけは小さなことでも、それが引き金となって様々な問題が表面化し、引きこもりに至ることもあります。上司の一言、同僚の態度、小さなミス、体調不良など、本人にとって意味のある出来事がきっかけになります。

また長期化の原因も、当初の原因とは異なることがあります。最初は職場のストレスで引きこもったとしても、長期化するうちに対人恐怖が強まる、生活リズムが崩れる、自信がなくなるなど、新たな問題が加わり、社会復帰を難しくします。

原因を理解することは、対処の第一歩です。しかし原因探しに固執しすぎず、今できることに焦点を当てることも大切です。過去を責めるのではなく、未来に向けて一歩ずつ進むことが、回復への道です。

社会人の引きこもりには、個人の問題だけでなく、職場環境、社会構造、時代背景など、様々な要因が関係しています。原因を理解し、適切なサポートを受けることで、多くの人が社会復帰を果たしています。引きこもりは決して個人の弱さや怠けではなく、複雑な要因が絡み合った結果であり、回復可能な状態なのです。

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