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知的障害は、発達期(おおむね18歳まで)に知的機能と適応行動の両方に制約がある状態です。
知能指数(IQ)がおおむね70以下で、日常生活や社会生活に必要なスキル(コミュニケーション、身の回りのこと、社会性など)に困難があります。
生まれつきまたは発達期に何らかの原因で脳の発達に問題が生じたことによって起こります。重症度は軽度から最重度まで幅広く、一人ひとりの状態は大きく異なります。
適切な支援と教育により、多くの人が自立した生活を送ることができます。知的障害は病気ではなく状態であり、その人の一部分にすぎません。
理解と支援があれば、地域社会の一員として充実した人生を送ることができます。この記事では知的障害の定義、原因、特徴、診断、支援、福祉サービスについて詳しく解説します。
知的障害とは
定義
知的障害は、発達期(おおむね18歳まで)に現れる知的機能の発達の遅れと、適応行動の困難さを特徴とする状態です。WHOの国際疾病分類(ICD-11)や米国精神医学会の診断基準(DSM-5)で定義されています。
3つの基準
知的障害の診断には以下の3つの基準すべてを満たす必要があります。
1. 知的機能の制約
知能検査で測定される知的機能が平均より有意に低い。一般的にIQ(知能指数)がおおむね70以下。推論、問題解決、計画、抽象的思考、判断、学習などの能力に制約がある。
2. 適応行動の制約
概念的スキル(言語、読み書き、数の概念、お金の管理、時間の理解など)、社会的スキル(対人関係、コミュニケーション、社会的判断、ルールの理解など)、実用的スキル(身の回りのこと、食事、着替え、移動、仕事、安全管理など)のいずれかの領域で、その年齢や文化圏で期待される水準に達していない。日常生活や社会生活に支障がある。
3. 発達期の発症
おおむね18歳までの発達期に症状が現れる。成人後に事故や病気で知的機能が低下した場合は知的障害ではなく、高次脳機能障害や認知症などとされる。
IQだけでは決まらない
知的障害の診断はIQだけで決まるわけではありません。適応行動の困難さが重要です。IQが70以下でも適応行動に問題がなければ知的障害とは診断されません。逆にIQが70以上でも適応行動に著しい困難があれば支援が必要と判断されることがあります。
病気ではなく状態
知的障害は病気ではなく、状態です。治療して治るものではありませんが、適切な支援と教育により能力を伸ばし、生活の質を高めることができます。
知的障害の程度
知的障害は重症度により分類されます。DSM-5では軽度、中等度、重度、最重度の4段階に分類されます。
軽度知的障害
IQ
おおむね50から70程度。
特徴
学習にやや遅れがあるが、日常会話は可能。小学校高学年から中学校程度の学力を獲得できることが多い。読み書き、簡単な計算ができる。抽象的な概念の理解はやや困難。社会的判断がやや未熟。
生活
適切な支援があれば自立した生活が可能。就労して働くことができる。結婚して家庭を持つ人もいる。見た目では分かりにくく、周囲に気づかれないこともある。
割合
知的障害全体の約85パーセントを占める。
中等度知的障害
IQ
おおむね35から50程度。
特徴
言葉によるコミュニケーションは可能だが、語彙が限られる。簡単な日常会話ができる。小学校低学年程度の学力。簡単な読み書き、数の理解。複雑な内容の理解は困難。身の回りのことはある程度自分でできる。
生活
日常生活には部分的な支援が必要。監督下であれば簡単な作業に従事できる。単純作業の仕事ができる。グループホームなどで支援を受けながら地域で生活できる。
割合
知的障害全体の約10パーセント。
重度知的障害
IQ
おおむね20から35程度。
特徴
言語発達が限られる。簡単な単語や短い文でのコミュニケーション。文字の読み書きは困難。指示理解は限定的。身の回りのことにも支援が必要。
生活
日常生活全般に継続的な支援が必要。監督下で簡単な作業はできることもある。施設やグループホームで生活することが多い。
割合
知的障害全体の約3から4パーセント。
最重度知的障害
IQ
おむね20未満。
特徴
言語によるコミュニケーションが非常に限られる。簡単な指示の理解も困難。身の回りのことはほぼ全介助。身体障害を併せ持つことが多い。
生活
日常生活のすべてに全面的な支援が必要。常時介護が必要。入所施設で生活することが多い。
割合
知的障害全体の約1から2パーセント。
境界知能
IQ
70から85程度。
定義
知的障害の診断基準は満たさないが、平均より知的機能が低い状態。グレーゾーンとも呼ばれる。正式な診断名ではない。
特徴
学習や仕事で困難を感じることがある。しかし支援制度の対象外となることが多い。見過ごされやすく、適切な支援を受けられないことが問題となっている。人口の約14パーセントが該当すると言われる。
知的障害の原因
知的障害の原因は多様で、約半数は原因不明です。
出生前の原因
染色体異常
ダウン症候群(21トリソミー)が最も多い。その他、18トリソミー、13トリソミーなど。
遺伝子異常
脆弱X症候群、フェニルケトン尿症、結節性硬化症など。
先天性代謝異常
生まれつき代謝に異常がある。早期発見・早期治療で予防可能なものもある。
胎内感染
妊娠中の母体の感染症。風疹、トキソプラズマ、サイトメガロウイルス、梅毒など。
胎内環境の問題
母体の栄養不良、アルコール摂取(胎児性アルコール症候群)、薬物、放射線被曝など。
脳の形成異常
脳の発達過程での異常。小頭症、水頭症など。
周産期の原因
早産・低出生体重
未熟児、極低出生体重児。
分娩時のトラブル
仮死、低酸素、頭蓋内出血など。
新生児黄疸
重症の核黄疸。
出生後の原因
感染症
髄膜炎、脳炎など脳に影響する感染症。
外傷
頭部外傷、虐待による脳損傷。
低酸素
溺水、窒息による脳への酸素不足。
中毒
鉛中毒など。
てんかん
難治性てんかんによる脳機能への影響。
栄養障害
重度の栄養失調、ネグレクト。
原因不明
約半数は明確な原因が特定できません。複数の要因が組み合わさっている可能性もあります。
知的障害の特徴
知的障害の特徴は一人ひとり大きく異なりますが、一般的な傾向として以下が挙げられます。
認知面の特徴
学習の遅れ
新しいことを学ぶのに時間がかかる。繰り返しの学習が必要。抽象的な概念の理解が難しい。
記憶の困難
覚えるのに時間がかかる。忘れやすい。短期記憶が弱いことが多い。
注意の困難
集中力が続かない。気が散りやすい。複数のことを同時に処理するのが苦手。
問題解決の困難
状況を判断して適切に対応するのが難しい。応用が効きにくい。新しい状況への適応が苦手。
般化の困難
一つの場面で学んだことを別の場面に応用するのが難しい。
言語・コミュニケーションの特徴
言語発達の遅れ
話し始めが遅い。語彙が少ない。複雑な文章の理解や表現が困難。
コミュニケーションの困難
自分の気持ちや考えをうまく伝えられない。相手の意図を理解するのが難しい。
読み書きの困難
文字の習得に時間がかかる。読解力が低い。
社会性の特徴
社会的ルールの理解困難
暗黙のルールが分かりにくい。場面に応じた行動が難しい。
対人関係の困難
友人関係を築きにくい。人の気持ちを読み取るのが苦手。
だまされやすい
悪意を見抜けない。利用されやすい。
生活面の特徴
身辺自立の遅れ
食事、着替え、排泄、清潔などの習得に時間がかかる。
金銭管理の困難
お金の価値が理解しにくい。計画的な使い方が難しい。
時間の理解困難
時間の概念の理解が難しい。時間管理が苦手。
安全管理の困難
危険の予測が難しい。自分の身を守ることが難しい。
行動面の特徴
行動のこだわり
同じ行動の繰り返し。変化への抵抗。
衝動性
思ったことをすぐ行動に移してしまう。結果を考えずに行動する。
感情のコントロール困難
感情の起伏が激しいことがある。かんしゃくを起こしやすい。
多動
じっとしていられない。落ち着きがない(併存するADHDによる場合も)。
併存障害
知的障害と併せて他の障害を持つことがあります。
自閉スペクトラム症(ASD)
知的障害の約30から40パーセントにASDが併存。
注意欠如・多動症(ADHD)
不注意、多動性、衝動性。
てんかん
知的障害の約20から30パーセントにてんかんが併存。重度ほど割合が高い。
脳性麻痺
身体障害との重複。
感覚障害
視覚障害、聴覚障害との重複。
精神疾患
うつ病、不安障害、統合失調症など。知的障害があると精神疾患のリスクが高まる。
知的障害の診断
診断のプロセス
乳幼児健診
1歳6ヶ月健診、3歳児健診などで発達の遅れに気づかれることが多い。
発達相談
保健センター、児童相談所、発達相談センターなどでの相談。
専門医の診察
小児科医、児童精神科医、小児神経科医などによる診察。
発達検査・知能検査
- 乳幼児期: 新版K式発達検査、遠城寺式乳幼児分析的発達検査など
- 児童期以降: 田中ビネー知能検査、WISC(ウェクスラー児童用知能検査)、WAIS(ウェクスラー成人用知能検査)など
適応行動の評価
Vineland-II適応行動尺度などを用いて日常生活スキルを評価。
総合的判断
知能検査の結果だけでなく、適応行動、生育歴、現在の生活状況などを総合的に評価して診断。
療育手帳(愛の手帳)
制度
知的障害のある人に交付される手帳。各都道府県・政令指定都市が独自に実施(法律に基づく制度ではない)。名称は自治体により異なる(療育手帳、愛の手帳、みどりの手帳など)。
判定
児童相談所(18歳未満)または知的障害者更生相談所(18歳以上)で判定。知能検査と適応行動の評価により総合的に判断。
等級
自治体により異なるが、多くは重度(A)と中軽度(B)の2区分、または4区分(A1、A2、B1、B2など)。
メリット
福祉サービスの利用、税制優遇、公共交通機関の割引、施設の割引など様々な支援を受けられる。
再判定
定期的に再判定が必要。成長に伴い程度が変わることがある。
知的障害のある人への支援
教育
早期療育
できるだけ早期から療育を開始。発達を促す。児童発達支援センター、児童発達支援事業所などで実施。
就学先の選択
- 通常の学級
- 通級指導教室(通常の学級に在籍しながら一部の時間特別な指導を受ける)
- 特別支援学級(小中学校内に設置された少人数の学級)
- 特別支援学校(知的障害、肢体不自由、病弱などの特別支援学校)
本人の状態、保護者の希望、地域の状況などを総合的に考慮して決定。
個別の教育支援計画
一人ひとりのニーズに応じた教育計画を作成。
特別支援教育
一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導と支援。
放課後等デイサービス
放課後や長期休暇中の居場所。療育的支援。
就労支援
特別支援学校高等部
職業教育、実習などを通じて就労に向けた力を育てる。
就労移行支援
一般就労を目指す人への訓練、求職活動支援。利用期間は原則2年間。
就労継続支援A型(雇用型)
雇用契約を結んで働く。最低賃金が保障される。比較的軽度の人が対象。
就労継続支援B型(非雇用型)
雇用契約なし。工賃が支払われる(平均月額1万6000円程度)。中等度から軽度の人が多く利用。
一般就労
企業などで働く。障害者雇用促進法により企業には一定割合の障害者雇用義務がある。ジョブコーチ(職場適応援助者)の支援を受けられる。
就労定着支援
就労後の職場への定着を支援。相談、職場訪問など。
生活支援
居住支援
- グループホーム: 共同生活の場。世話人の支援を受けながら地域で暮らす。
- 施設入所支援: 入所施設での生活。介護が必要な人。
- 一人暮らし: 自立生活援助などの支援を受けながら一人暮らし。
日中活動支援
生活介護(常時介護が必要な人の日中活動の場)、地域活動支援センターなど。
相談支援
相談支援事業所で計画相談支援、地域相談支援を受けられる。サービス等利用計画の作成。
移動支援
外出時の付き添い支援。
日常生活自立支援事業
金銭管理、書類の管理などの支援。社会福祉協議会が実施。
成年後見制度
判断能力が不十分な人の権利を守る制度。財産管理、契約などを代理・支援。
医療・健康管理
定期的な健康診断
健康状態のチェック。
かかりつけ医
日常的な健康管理。
専門医療
てんかん、精神疾患などの専門治療。
歯科治療
定期的な歯科検診。障害者歯科を行う歯科医院も。
家族への支援
情報提供
相談窓口
市区町村の障害福祉課、児童相談所、発達障害者支援センター、相談支援事業所など。
親の会
同じ立場の親同士の交流。情報交換、相互支援。全国手をつなぐ育成会連合会など。
レスパイトケア
短期入所(ショートステイ)
家族の休息、緊急時の一時的な預かり。
日中一時支援
日中の一時的な預かり。
訪問介護
自宅での介護サービス。
経済的支援
特別児童扶養手当
20歳未満の障害児を養育する保護者に支給。重度(1級)月額約53,700円、中度(2級)月額約35,760円(2024年度)。所得制限あり。
障害児福祉手当
20歳未満の重度障害児本人に支給。月額約15,220円(2024年度)。所得制限あり。
障害基礎年金
20歳以上で一定の障害がある人に支給。1級月額約81,000円、2級月額約65,000円(2024年度)。所得制限あり。
税制優遇
障害者控除(所得税、住民税)、相続税の障害者控除など。
医療費助成
自治体により重度障害者医療費助成、自立支援医療など。
社会の理解と配慮
理解を深める
知的障害は見えにくい
外見では分からないことが多い。理解されにくい。誤解されやすい。
一人ひとり違う
知的障害といってもその人の状態は様々。一括りにしない。個性を理解する。
できることとできないことがある
できないことだけに注目せず、できることを認める。
ゆっくり、分かりやすく
話すスピードをゆっくりに。簡単な言葉で。一度に多くのことを言わない。視覚的に示す(絵、写真、ジェスチャー)。
確認する
理解できたか確認する。分かったふりをしていることもある。
時間をかける
急がせない。考える時間、行動する時間を十分に与える。
合理的配慮
職場での配慮
指示は具体的に、視覚的に。作業手順を明示。繰り返し教える。できたことを褒める。静かな環境の提供。
学校での配慮
個別の指導計画。分かりやすい教材。繰り返しの学習。スモールステップ。
地域での配慮
ゆっくり話す。分かりやすく説明。見守る。困っていそうなら声をかける。
偏見をなくす
差別しない
障害の有無で人の価値は変わらない。一人の人間として尊重する。
決めつけない
何もできないと決めつけない。可能性を信じる。
子ども扱いしない
年齢相応の尊重。大人なら大人として接する。
本人抜きで決めない
本人の意思を尊重。本人が決める権利がある。
まとめ
知的障害は、発達期に知的機能と適応行動の両方に制約がある状態です。IQがおおむね70以下で、日常生活や社会生活に必要なスキルに困難があります。
重症度は軽度から最重度まで幅広く、約85パーセントは軽度です。軽度の人は適切な支援があれば自立した生活や就労が可能です。
原因は染色体異常、遺伝子異常、胎内環境、周産期のトラブル、出生後の感染症や外傷など多様ですが、約半数は原因不明です。
特徴として学習の遅れ、記憶や注意の困難、言語発達の遅れ、社会的ルールの理解困難、身辺自立の遅れなどがありますが、一人ひとり大きく異なります。
診断は知能検査と適応行動の評価により総合的に判断されます。療育手帳が交付され、様々な福祉サービスや支援を受けられます。
支援として早期療育、特別支援教育、就労支援、グループホームなどの居住支援、相談支援、経済的支援などがあります。適切な支援により多くの人が地域で自立した生活を送ることができます。
家族への支援も重要です。相談窓口、親の会、レスパイトケア、経済的支援などがあります。
社会の理解と配慮が何より大切です。ゆっくり分かりやすく話す、確認する、時間をかける、合理的配慮を提供する、偏見をなくす、一人の人間として尊重することが求められます。
知的障害は病気ではなく状態であり、その人の一部分にすぎません。適切な理解と支援があれば、知的障害のある人も地域社会の一員として充実した人生を送ることができます。一人ひとりの個性と可能性を信じ、共に生きる社会を築いていきましょう。

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