療育手帳と発達障害 取得要件から支援内容まで

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療育手帳は、知的障害のある人に交付される手帳で、様々な福祉サービスや支援を受けるための証明書です。

しかし発達障害(自閉スペクトラム症、ADHD、学習障害など)がある人は、必ずしも療育手帳を取得できるわけではありません。

療育手帳の対象は「知的障害」であり、知的障害を伴わない発達障害の場合は、原則として対象外です。ただし自閉スペクトラム症などで知的障害を併せ持つ場合は取得できます。

知的障害を伴わない発達障害の人は、精神障害者保健福祉手帳の対象となります。この混同が多く、「発達障害だから療育手帳がもらえる」と誤解している人も少なくありません。

この記事では療育手帳と発達障害の関係、取得要件、どちらの手帳が適切か、それぞれの手帳で受けられる支援について詳しく解説します。

目次

療育手帳とは

定義

療育手帳は、知的障害児・者に対して一貫した指導・相談を行うとともに、各種の援助措置を受けやすくするために交付される手帳です。

法的根拠

療育手帳は法律に基づく制度ではなく、厚生労働省の通知(昭和48年「療育手帳制度について」)に基づき、各都道府県・政令指定都市が独自に実施している制度です。そのため自治体により名称や基準が若干異なります。

名称の違い

  • 療育手帳(多くの自治体)
  • 愛の手帳(東京都)
  • みどりの手帳(埼玉県さいたま市)など

対象

知的障害
知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)に現れ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの。

重要なポイント
対象は「知的障害」であり、「発達障害」ではありません。

判定基準

知能指数(IQ)と日常生活能力(適応行動)を総合的に判断します。

知能指数(IQ)

  • 重度(最重度、重度): おおむねIQ35以下
  • 中度: おおむねIQ36から50
  • 軽度: おおむねIQ51から75(自治体により70まで)

適応行動
日常生活能力、社会生活能力。IQだけでなく、実際の生活での困難度も重視されます。

等級
A(重度)、B(中度・軽度)の2区分が基本ですが、自治体によりさらに細分化されています。

  • A1、A2、B1、B2(4区分)
  • 1度、2度、3度、4度(4区分)など

有効期間

再判定
児童は数年ごと(2年から5年)に再判定が必要です。成人後は基本的に無期限ですが、自治体により再判定が求められることもあります。

発達障害とは

定義

発達障害は、生まれつきの脳機能の発達の偏りにより、行動や認知に特徴が現れる障害の総称です。発達障害者支援法に定義されています。

主な発達障害

1. 自閉スペクトラム症(ASD: Autism Spectrum Disorder)

  • 社会的コミュニケーションの困難
  • 限定的・反復的な行動パターン、興味
  • 感覚過敏・鈍麻
  • 旧分類: 自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害

2. 注意欠如・多動症(ADHD: Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)

  • 不注意(注意散漫、忘れ物が多い)
  • 多動性(じっとしていられない)
  • 衝動性(考えずに行動)

3. 学習障害(LD: Learning Disabilities、限局性学習症/SLD)

  • 読字障害(ディスレクシア)
  • 書字障害(ディスグラフィア)
  • 算数障害(ディスカルキュリア)
  • 知的能力は正常なのに、特定の学習領域に困難

知的障害との関係

発達障害と知的障害は別の概念

知的障害を伴う発達障害
自閉スペクトラム症の約30から40パーセントは知的障害を伴います。この場合、療育手帳の対象になります。

知的障害を伴わない発達障害

  • アスペルガー症候群(IQ正常の自閉スペクトラム症)
  • ADHDの多く
  • 学習障害(定義上、知的障害は含まれない)

これらは知的障害がないため、療育手帳の対象になりません。

境界知能(IQ70から85)
知的障害とは診断されないが、知的機能がやや低い範囲。発達障害を伴うこともあります。自治体により療育手帳の対象になることもあります。

療育手帳と発達障害の関係

基本原則

療育手帳の対象: 知的障害
発達障害があっても、知的障害がなければ原則として療育手帳の対象にはなりません。

パターン別の整理

パターン1: 知的障害のみ(発達障害なし)
療育手帳の対象。精神障害者保健福祉手帳は通常対象外。

パターン2: 知的障害+発達障害(併存)
療育手帳の対象。精神障害者保健福祉手帳も取得できる場合がありますが、両方は取得できない(どちらか一方を選択)。

パターン3: 発達障害のみ(知的障害なし)
療育手帳の対象外。精神障害者保健福祉手帳の対象。

自治体による違い

一部の自治体では、知的障害を伴わない発達障害でも、生活上の困難が大きい場合に療育手帳を交付することがあります(まれ)。ただし多くの自治体では厳格に「知的障害」を要件としています。

診断名と手帳の対応

自閉スペクトラム症(ASD)

  • 知的障害あり → 療育手帳
  • 知的障害なし(アスペルガー症候群など) → 精神障害者保健福祉手帳

ADHD

  • ほとんどは知的障害なし → 精神障害者保健福祉手帳
  • まれに知的障害併存 → 療育手帳

学習障害(LD)

  • 定義上知的障害なし → 精神障害者保健福祉手帳
  • ただし学習障害単独では手帳取得が難しいこともある

精神障害者保健福祉手帳とは

定義

精神障害者保健福祉手帳は、一定の精神障害の状態にあることを認定し、精神障害者の自立と社会参加を促進するために交付される手帳です。

対象疾患

すべての精神疾患が対象です。

  • 統合失調症
  • 気分障害(うつ病、双極性障害)
  • てんかん
  • 発達障害(自閉スペクトラム症、ADHD、学習障害など)
  • 高次脳機能障害
  • 薬物・アルコール依存症
  • その他の精神疾患

重要
知的障害を伴わない発達障害は、精神障害者保健福祉手帳の対象です。

等級

1級、2級、3級の3段階。障害の程度により区分されます。

有効期間

2年間。2年ごとに更新が必要です。

申請時期

精神疾患による初診日から6ヶ月以上経過後。

発達障害での取得

自閉スペクトラム症、ADHD、学習障害
生活や就労に著しい制限がある場合、精神障害者保健福祉手帳を取得できます。

等級の目安

  • 2級: 日常生活が著しく制限される、就労が困難
  • 3級: 就労に著しい制限がある

どちらの手帳を取得すべきか

判断のフローチャート

ステップ1: 知的障害があるか?

YES(知的障害あり)
→ 療育手帳を申請

IQ検査を受け、知的障害の判定を受けます。

NO(知的障害なし、またはIQが境界域)
→ ステップ2へ

ステップ2: 発達障害があり、生活・就労に著しい制限があるか?

YES
→ 精神障害者保健福祉手帳を申請

初診日から6ヶ月以上経過していることが必要。

NO
→ 手帳の対象ではない可能性が高い。ただし将来的に取得を検討。

両方の要件を満たす場合

知的障害と発達障害を併せ持つ場合、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳の両方の要件を満たすことがあります。

原則: 一方のみ取得
両方を同時に所持することはできません。どちらか一方を選択します。

どちらを選ぶか

  • 児童期: 療育手帳が一般的(療育手当など児童向け支援が充実)
  • 成人期: 状況により選択。受けたい支援により判断。

自治体により対応が異なる
一部の自治体では両方所持できることもあります。確認が必要です。

療育手帳の申請方法

申請の流れ

1. 相談
市区町村の障害福祉担当窓口または児童相談所(18歳未満)、知的障害者更生相談所(18歳以上)に相談。

2. 申請
申請書を提出。必要書類(写真、診断書または医師の意見書など)を添付。自治体により異なります。

3. 判定
知能検査(WAIS、WISC、田中ビネーなど)と面接による判定。

児童(18歳未満)
児童相談所で判定。

成人(18歳以上)
知的障害者更生相談所で判定。

4. 結果通知と交付
判定結果が通知され、認定されれば手帳が交付されます。申請から交付まで1から2ヶ月程度。

必要書類

自治体により異なりますが、一般的には以下の通りです。

  • 申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • 診断書または医師の意見書(自治体により不要な場合もある)
  • 個人番号(マイナンバー)確認書類
  • 本人確認書類

費用

申請手数料は無料です。ただし診断書が必要な場合、診断書料(数千円)がかかります。

精神障害者保健福祉手帳の申請方法

申請の流れ

1. 市区町村の窓口で申請
障害福祉担当窓口に申請書類を提出。

2. 必要書類

  • 申請書
  • 診断書(精神障害者保健福祉手帳用)または障害年金証書の写し
  • 写真
  • 個人番号確認書類
  • 本人確認書類

3. 審査
都道府県または政令指定都市の精神保健福祉センターで審査。

4. 結果通知と交付
申請から交付まで2から3ヶ月程度。

診断書

作成時期
初診日から6ヶ月以上経過後。

作成者
精神科医、または発達障害の診断・治療を行っている医師。

診断書料
医療機関により異なりますが、5,000円から10,000円程度。

障害年金を受給している場合

障害年金の年金証書の写しを提出すれば、診断書は不要です。

療育手帳で受けられる支援

1. 税制上の優遇

所得税・住民税の障害者控除

  • 重度(A): 特別障害者控除
  • 中度・軽度(B): 障害者控除

相続税・贈与税の軽減
障害者控除、特定障害者扶養信託の非課税枠。

自動車税・自動車取得税の減免
要件を満たせば減免。

2. 公共交通機関の割引

鉄道、バス、航空、タクシー
本人と介護者が割引(5割引が多い)。自治体により無料パスなども。

有料道路の割引
ETC利用で5割引。

3. 公共施設等の利用料減免

博物館、美術館、動物園、水族館、映画館などで本人と介護者が無料または割引。

4. 障害福祉サービス

居宅介護、生活介護、就労移行支援、就労継続支援、グループホーム、短期入所など。手帳がなくても利用できる場合がありますが、手帳があるとスムーズです。

5. 特別児童扶養手当・障害児福祉手当

特別児童扶養手当
20歳未満の障害児を養育している保護者に支給。中度以上(IQ50以下程度)が対象。

障害児福祉手当
20歳未満の重度障害児本人に支給。重度(A)が対象。

特別障害者手当
20歳以上の重度障害者本人に支給。

6. 障害者雇用

障害者雇用枠での就職。企業の障害者雇用率の対象。

7. NHK受信料の減免

重度の場合、全額免除または半額免除。

8. 携帯電話料金の割引

各社で障害者割引プラン。

9. 自治体独自の支援

自治体により、交通費助成、医療費助成、手当などがあります。

精神障害者保健福祉手帳で受けられる支援

基本的に療育手帳と同様の支援が受けられますが、一部異なります。

療育手帳と同じ支援

  • 税制上の優遇(所得税、住民税、相続税など)
  • 障害福祉サービス
  • 障害者雇用
  • NHK受信料の減免
  • 携帯電話料金の割引
  • 自治体独自の支援

療育手帳より限定的な支援

公共交通機関の割引

  • 鉄道: JRは割引なし(一部私鉄は割引あり)
  • バス: 多くの自治体で割引
  • 航空: 割引あり
  • 有料道路: 精神障害者保健福祉手帳単独では割引なし(自治体により異なる)

公共施設の割引
多くの施設で割引がありますが、療育手帳より対応施設が少ないこともあります。

精神障害者保健福祉手帳独自の支援

自立支援医療(精神通院医療)
手帳とは別制度ですが、併用できます。精神科通院医療費の自己負担が1割になります。

発達障害で手帳を取得するメリット

知的障害を伴う場合(療育手帳)

経済的メリット
税制優遇、交通費割引、各種手当。

支援へのアクセス
障害福祉サービス、就労支援。

社会的理解
障害を証明する公的書類があることで、学校、職場での配慮を求めやすい。

知的障害を伴わない場合(精神障害者保健福祉手帳)

経済的メリット
税制優遇、自立支援医療。

就労支援
障害者雇用枠での就職。職場での合理的配慮。

社会的理解
診断だけでは配慮を得にくいが、手帳があると説得力が増す。

自己理解
公的に障害を認められることで、自己受容につながることもあります。

デメリット・懸念

スティグマ(偏見)
「障害者」と認めることへの抵抗感。周囲の目が気になる。

就職への影響
一般就労(クローズ就労)では手帳の開示は任意。不利にはなりません。

実際には限定的
手帳の開示は任意です。使いたい時だけ使えます。メリットの方が大きいことが多いです。

手帳取得の判断

取得を検討すべき場合

経済的負担が大きい
医療費、交通費などの負担軽減。

就労に困難がある
障害者雇用枠での就職を検討。

学校・職場で配慮が必要
手帳があると配慮を求めやすい。

福祉サービスを利用したい
就労移行支援、グループホームなど。

取得しない選択もある

生活に大きな支障がない
手帳なしでも生活できている。

スティグマが強い
心理的抵抗感が強い。

必要性を感じない
現時点では必要ないと判断。

いつでも申請できる
必要になったら申請すればよいので、焦る必要はありません。

よくある質問

Q1: 発達障害の診断を受けました。療育手帳はもらえますか?

A: 発達障害だけでは療育手帳の対象にはなりません。知的障害を伴う場合のみ対象です。IQ検査を受け、知的障害の判定を受ける必要があります。知的障害がない場合は、精神障害者保健福祉手帳の対象となります。

Q2: IQが75です。療育手帳の対象ですか?

A: IQ75は境界知能と呼ばれる範囲で、知的障害とは診断されないことが多いです。ただし自治体や適応行動の状況により、軽度知的障害として療育手帳が交付されることもあります。児童相談所または知的障害者更生相談所に相談してください。

Q3: アスペルガー症候群です。どちらの手帳が適切ですか?

A: アスペルガー症候群(高機能自閉症)は知的障害を伴わないため、療育手帳の対象ではありません。精神障害者保健福祉手帳の対象となります。生活や就労に著しい制限がある場合、申請を検討してください。

Q4: 療育手帳と精神障害者保健福祉手帳、どちらが良いですか?

A: 両方の要件を満たす場合(知的障害+発達障害)、どちらを選ぶかは状況により異なります。児童期は療育手帳が一般的です。成人期は、公共交通機関の割引を重視するなら療育手帳、更新の柔軟性(等級変更)を重視するなら精神障害者保健福祉手帳という選択もあります。自治体の障害福祉担当課に相談してください。

Q5: 手帳を持っていることは他人に知られますか?

A: いいえ。手帳の所持は個人情報として保護されます。自分から開示しない限り、他人に知られることはありません。使いたい時だけ使えます。

Q6: ADHDで手帳はもらえますか?

A: ADHDは通常、知的障害を伴わないため、療育手帳の対象ではありません。精神障害者保健福祉手帳の対象となります。生活や就労に著しい制限がある場合、初診日から6ヶ月以上経過後に申請できます。

Q7: 学習障害(LD)で手帳はもらえますか?

A: 学習障害は定義上、知的障害を含まないため、療育手帳の対象ではありません。精神障害者保健福祉手帳の対象となりますが、学習障害単独では手帳取得が難しいこともあります。他の発達障害を併存している場合は取得しやすくなります。

まとめ

療育手帳は知的障害のある人を対象とした手帳で、発達障害のみでは原則対象になりません。自閉スペクトラム症でも知的障害を伴う場合は療育手帳、伴わない場合は精神障害者保健福祉手帳が対象となります。

どちらを取得するかは知的障害の有無で判断し、原則として両方は所持できません。

手帳は任意ですが、税制優遇や就労支援など多くの支援を受けられます。取得を検討する際は、自治体の障害福祉窓口などに相談することが大切です。

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