障がい者転職を検討中の方必読!
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福祉・介護サービスを取り巻く経営環境が厳しさを増しています。物価高による光熱水費や食材費などの上昇に加え、人手不足を背景とした人件費・採用コストの増加が重なり、事業の継続が難しくなるケースが増えています。
2026年上半期には障害者福祉サービスの倒産が33件となり、上半期として2012年以降で最多を更新しました。介護分野でも、2025年の倒産は176件、休廃業・解散は653件と、それぞれ過去最多を更新しています。
今回は、障害福祉・介護事業所の倒産・休廃業の現状と背景、事業者が今後意識したいポイントを整理します。
1.障害福祉サービスの倒産は過去最多を更新
東京商工リサーチによると、2026年上半期(1~6月)の障害者福祉サービスの倒産は33件で、前年同期比26.9%増となりました。上半期としては3年連続で前年を上回り、2012年以降の15年間で最多です。
負債総額は284億4,200万円で、前年同期比1425.0%増となりました。ただし、この大幅な増加には大型倒産の影響があります。2026年6月には絆ホールディングスとグループ3社が会社更生法と破産を申請し、4社合計で268億7,500万円の負債が発生しました。
また、2026年上半期の倒産33件のうち、資本金1,000万円未満が27件で81.8%を占めています。小規模事業者ほど、急激なコスト上昇や利用者確保の難しさによる影響を受けやすい構造がうかがえます。
2.介護事業では「倒産」だけでなく休廃業も増加
介護分野でも厳しい状況が続いています。2025年の介護事業者の倒産は176件で、2年連続の過去最多となりました。
さらに注目したいのが、倒産以外で事業を停止する「休廃業・解散」です。2025年は653件となり、4年連続で過去最多を更新しました。
653件のうち、訪問介護が465件と約7割を占めています。訪問介護では、ヘルパー不足に加え、移動時間や交通費などの負担もあり、必要な人員を確保しながら採算を維持することが難しい事業者も少なくありません。
ここで重要なのは、「倒産」と「休廃業・解散」は同じではないという点です。倒産は法的整理などによって事業継続が困難になるケースですが、休廃業・解散には、経営者が将来の赤字や後継者問題などを見越して、倒産する前に事業を終了するケースも含まれます。
3.なぜ物価高と人件費高騰が経営を圧迫するのか
福祉・介護事業は、人がサービスを提供する「労働集約型」の側面が強い事業です。そのため、人材を確保するための賃金上昇は、事業所の収支に直接影響します。
さらに、電気・ガスなどの光熱水費、車両費、燃料費、食材費、消耗品費、設備費なども上昇しています。特に施設系サービスでは光熱水費や食費などの影響が大きく、訪問系サービスでは移動に伴う燃料費や車両維持費なども無視できません。
つまり、「人件費が上がる」「物価も上がる」「しかし収入は同じペースで増えない」という三重の負担が、事業所の利益を圧迫しています。
東京商工リサーチも、障害福祉サービスでは人手不足、人件費高騰、水道光熱費などの物価高が収益を圧迫していると分析しています。
4.福祉・介護は価格転嫁が難しい
一般企業であれば、原材料費や人件費が上昇した際に販売価格を引き上げる「価格転嫁」という対応があります。
しかし、障害福祉・介護サービスでは、利用者が支払うサービス費用や事業者に支払われる報酬の仕組みが制度によって定められているため、一般の商品・サービスのように事業者が自由に値上げすることはできません。
この「公定価格」という仕組みは、利用者が必要なサービスを一定のルールで利用できるという重要な役割を持つ一方、急激なコスト上昇が起きた際には事業者側に負担が集中しやすいという側面があります。
そのため、報酬改定や各種加算、処遇改善策が経営に与える影響は大きくなります。制度改正の内容を把握し、自法人が算定できる加算を適切に取得できているかを確認することも、経営管理の重要なポイントです。
5.コンプライアンス違反が事業継続を左右することも
経営環境が厳しいからといって、法令や指定基準を軽視することはできません。障害福祉分野では、不正受給、人員基準違反、運営基準違反などを背景として行政処分を受け、指定取消などに至るケースがあります。
東京商工リサーチによると、2026年上半期の障害者福祉サービスの倒産33件のうち、不正受給などのコンプライアンス違反を一因とする倒産が6件発生しました。
厚生労働省も2026年6月に、障害福祉分野の運営指導・監査の強化に関する資料を公表しています。事業者にとっては、適切な人員配置、記録、請求、個別支援計画、業務管理体制などを日常的に点検することが重要です。
6.小規模事業者ほど「資金繰り」の早期確認が重要
倒産を防ぐために重要なのは、赤字になってから対策を始めるのではなく、早い段階で経営状態を把握することです。
たとえば、月ごとの売上だけでなく、人件費、外注費、光熱水費、車両費、家賃、借入金返済などを確認し、「どの費用が増えているのか」を把握します。
特に注意したいのが、利益と資金繰りは同じではないという点です。帳簿上は利益が出ていても、入金より先に給与や仕入れ、社会保険料、税金などの支払いが集中すれば、手元資金が不足する可能性があります。
また、利用者数や稼働率、職員の離職率、採用単価なども定期的に確認しておくと、経営悪化の兆候を早く発見できます。
「売上が減ったから対応する」のではなく、「半年後、1年後も資金が回るか」という視点で資金繰りを確認することが大切です。
7.補助金・加算・生産性向上を組み合わせる
厳しい経営環境だからこそ、利用できる制度を漏れなく確認することが重要です。
処遇改善に関する加算や各種補助制度について、自法人が対象になるか、必要な手続きができているかを確認しましょう。自治体や国の制度は年度によって内容や申請期限が変わるため、最新情報を確認することが必要です。
同時に、記録・請求・勤怠管理などのICT化、介護テクノロジーや業務改善の導入も選択肢になります。目的は単純な「省人化」ではなく、職員が利用者への支援に集中できる時間を確保し、限られた人員でサービスの質を維持することです。
まとめ
障害福祉・介護分野では、物価高と人件費高騰、人手不足などが重なり、倒産や休廃業・解散が増えています。2026年上半期の障害者福祉サービスの倒産は33件で過去最多、2025年の介護事業者では倒産176件、休廃業・解散653件と、厳しい経営環境が数字にも表れています。
特に福祉・介護事業は公定価格のため、一般企業のようにコスト上昇分を自由に価格へ転嫁しにくいという特徴があります。そのため、収支管理、資金繰り、職員の確保・定着、加算や補助制度の活用、コンプライアンスの徹底を一体的に考える必要があります。
事業者にとって大切なのは、経営が苦しくなってから対応するのではなく、早い段階で「どこに負担が集中しているのか」を見える化することです。厚生労働省や自治体、業界団体などが発信する最新情報を確認しながら、持続可能な事業運営に向けて早めに対策を講じることが求められます。

