指定難病とは?制度の仕組みと医療費助成を徹底解説

1. 指定難病制度の基本

指定難病とは、難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)に基づいて国が指定した病気のことです。令和6年4月現在、338疾患が指定難病として指定されています。

難病とは、原因が不明で、治療方法が確立していない希少な疾患であり、長期にわたる療養が必要となる病気を指します。患者数が少なく、研究が進みにくいため、国が主導して研究を推進し、患者の医療費負担を軽減する制度が設けられています。

指定難病に認定されると、医療費助成制度を利用できるほか、研究への協力を通じて、将来の治療法開発に貢献することにもなります。この制度は、難病患者とその家族の生活を支える重要な社会保障制度です。

この記事では、指定難病制度の仕組み、対象となる要件、医療費助成の内容、申請方法について、詳しく解説していきます。

2. 「難病」と「指定難病」の違い

まず、「難病」と「指定難病」という2つの用語の違いを理解することが重要です。

難病とは

難病は、より広い概念で、以下の4つの要件を満たす疾患を指します。

発病の機構が明らかでないこと、治療方法が確立していないこと、希少な疾患であること、長期の療養を必要とすることです。

これらの要件を満たす病気は、広義の「難病」と呼ばれます。世界中には数千種類の難病が存在すると言われています。

指定難病とは

指定難病は、難病の中でも、さらに以下の要件を満たし、国が指定した疾患です。

患者数が日本において一定の人数(人口の約0.1%程度)に達しないこと、客観的な診断基準が確立していることです。

この2つの要件を満たした難病が、厚生労働大臣によって「指定難病」として指定されます。指定難病に認定されると、医療費助成の対象となります。

つまり、すべての指定難病は難病ですが、すべての難病が指定難病とは限りません。指定難病は、難病の中でも特に国が支援を行う疾患として選ばれたものです。

3. 指定難病の要件

指定難病として指定されるためには、以下の要件を満たす必要があります。

基本的な要件

発病の機構が明らかでないこととは、病気の原因や発症のメカニズムが十分に解明されていないことを意味します。原因が不明であるため、根本的な治療法の開発が難しい状況にあります。

治療方法が確立していないこととは、病気を完治させる確実な治療法がないことを意味します。対症療法しかない、治療効果が限定的である、といった状況です。

希少な疾患であることとは、患者数が少ない病気であることを意味します。患者数が少ないため、医学研究が進みにくく、専門医も少ない傾向があります。

長期の療養を必要とすることとは、短期間で治癒する病気ではなく、長期間にわたって治療や療養が必要となることを意味します。多くの場合、生涯にわたる治療が必要です。

指定のための追加要件

基本的な難病の要件に加えて、指定難病となるためには以下の要件も必要です。

患者数の要件として、日本における患者数が人口の約0.1%程度、つまり約12万人以下であることが目安とされています。極めて稀な疾患が対象となります。

客観的な診断基準の存在として、医学的に確立された診断基準があることが必要です。診断基準が明確でないと、公平な医療費助成ができないためです。

4. 指定難病の疾患数と分類

令和6年4月現在、338疾患が指定難病として指定されています。

指定難病の例

指定難病には、様々な分野の疾患が含まれています。

神経・筋疾患として、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症、多発性硬化症、重症筋無力症、筋ジストロフィーなどがあります。

免疫系疾患として、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(一定の基準を満たす場合)、潰瘍性大腸炎、クローン病、ベーチェット病、強皮症などがあります。

代謝系疾患として、糖尿病性腎症(一定の基準を満たす場合)、原発性胆汁性胆管炎、ライソゾーム病、先天性代謝異常症などがあります。

循環器系疾患として、特発性拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、再生不良性貧血などがあります。

呼吸器系疾患として、特発性間質性肺炎、肺動脈性肺高血圧症、サルコイドーシスなどがあります。

腎・泌尿器系疾患として、IgA腎症、多発性嚢胞腎、ネフローゼ症候群などがあります。

血液系疾患として、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、血友病などがあります。

これらは一例であり、他にも多数の疾患が指定されています。

指定難病の追加と見直し

指定難病のリストは固定されたものではなく、医学の進歩や社会的ニーズに応じて、定期的に見直しが行われます。

新たな疾患が追加されたり、既存の疾患の診断基準が改定されたりすることがあります。厚生労働省の指定難病検討委員会で審議され、要件を満たす疾患が追加されていきます。

5. 医療費助成制度の仕組み

指定難病の患者が受けられる最も重要な支援が、医療費助成制度です。

医療費助成の対象

指定難病の医療費助成を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

指定難病と診断されていること、「重症度分類」で一定程度以上の病状であることです。

ただし、症状の程度が重症度分類を満たさない場合でも、指定難病に関連した医療費が月額33,330円を超える月が年間3回以上ある場合は、医療費助成の対象となります。これを「高額かつ長期」の基準と呼びます。

自己負担上限額

医療費助成が認定されると、指定難病の治療にかかる医療費の自己負担額に上限が設定されます。

自己負担上限額は、世帯の所得に応じて段階的に設定されています。

生活保護世帯の場合、自己負担上限額は月額0円です。

市町村民税非課税世帯(本人年収80万円以下)の場合、自己負担上限額は月額2,500円です。

市町村民税非課税世帯(本人年収80万円超)の場合、自己負担上限額は月額5,000円です。

市町村民税課税世帯(年収約370万円未満)の場合、一般の自己負担上限額は月額10,000円、「高額かつ長期」の場合は月額5,000円です。

市町村民税課税世帯(年収約370万円以上約810万円未満)の場合、一般の自己負担上限額は月額20,000円、「高額かつ長期」の場合は月額10,000円です。

市町村民税課税世帯(年収約810万円以上)の場合、一般の自己負担上限額は月額30,000円、「高額かつ長期」の場合は月額20,000円です。

この上限額を超えた医療費は、公費で負担されます。

対象となる医療費

医療費助成の対象となるのは、指定難病の治療にかかる医療費です。具体的には以下が含まれます。

診察費、検査費、投薬費、注射費、処置費、手術費、入院費などです。

ただし、指定難病以外の病気の治療費、入院時の食事療養費の半額、差額ベッド代、文書料などは対象外です。

指定医療機関での受診

医療費助成を受けるためには、都道府県が指定した「指定医療機関」で受診する必要があります。指定を受けていない医療機関で受診した場合は、助成の対象となりません。

ほとんどの大学病院や総合病院は指定医療機関となっていますが、受診前に確認することをお勧めします。

6. 医療費助成の申請方法

医療費助成を受けるためには、申請手続きが必要です。

申請の流れ

医師の診断を受けることが第一歩です。指定難病の診断基準を満たしているか、重症度分類に該当するかを、専門医に診断してもらいます。

臨床調査個人票の作成を依頼します。医師に「臨床調査個人票」(診断書)を作成してもらいます。これは指定難病ごとに定められた様式があり、診断基準と重症度を記載する公的な書類です。

必要書類の準備をします。臨床調査個人票のほか、住民票、市町村民税の課税証明書、健康保険証のコピー、マイナンバーに関する書類などが必要です。

保健所または都道府県への申請をします。必要書類を揃えて、お住まいの地域の保健所または都道府県の窓口に申請します。

審査が行われます。都道府県が設置する審査会で、申請内容の審査が行われます。審査には2か月から3か月程度かかることがあります。

認定証の交付を受けます。認定されると、「医療受給者証」が交付されます。この受給者証を医療機関に提示することで、医療費助成を受けられます。

必要書類

申請に必要な主な書類は以下の通りです。

特定医療費(指定難病)支給認定申請書、臨床調査個人票(医師が作成する診断書)、住民票または住民票記載事項証明書、市町村民税の課税証明書または非課税証明書、健康保険証のコピー、マイナンバーカードまたは通知カードのコピー、マイナンバーの利用に関する同意書などです。

自治体によって必要書類が若干異なることがあるため、事前に確認することをお勧めします。

臨床調査個人票の作成費用

臨床調査個人票は、指定医(難病指定医)が作成します。作成には費用がかかり、一般的に5,000円から10,000円程度です。

この費用は医療費助成の対象外で、自己負担となります。

申請のタイミング

医療費助成は、申請日から適用されます(遡及適用はありません)。診断を受けたら、できるだけ早く申請することが大切です。

また、医療受給者証には有効期限があります(通常1年間)。更新手続きを忘れないよう注意が必要です。

7. 医療受給者証の更新

医療受給者証は、通常1年ごとに更新が必要です。

更新手続き

有効期限の約3か月前に、都道府県または保健所から更新手続きの案内が届きます。

更新に必要な書類は、新規申請とほぼ同じです。臨床調査個人票、課税証明書などを改めて提出します。

病状に変化がない場合でも、更新時には改めて医師の診断を受け、臨床調査個人票を作成してもらう必要があります。

更新を忘れた場合

更新手続きを忘れ、有効期限が切れてしまった場合、医療費助成を受けられなくなります。再度申請することは可能ですが、遡って助成を受けることはできません。

有効期限の管理をしっかり行い、早めに更新手続きを行いましょう。

8. 指定難病以外の難病支援

指定難病に該当しない難病患者も、様々な支援制度を利用できる場合があります。

小児慢性特定疾病医療費助成制度

18歳未満(継続の場合は20歳未満)の子どもの慢性疾患に対して、医療費助成が行われる制度です。788疾患が対象となっています。

指定難病と重複する疾患もありますが、小児特有の疾患も多く含まれています。

障害者総合支援法

難病患者も、障害者総合支援法の対象となります。障害福祉サービス(ホームヘルプ、ショートステイ、就労支援など)を利用できます。

指定難病だけでなく、361疾患が対象となっています。

身体障害者手帳

難病によって一定の障害が残った場合、身体障害者手帳を取得できることがあります。手帳を取得すると、様々な福祉サービスや税制優遇を受けられます。

障害年金

難病によって日常生活や労働に制限がある場合、障害年金を受給できる可能性があります。受給要件を満たすかどうか、年金事務所や社会保険労務士に相談してみましょう。

難病相談支援センター

各都道府県に設置されている難病相談支援センターでは、医療や生活、就労などに関する相談に応じています。患者会の情報提供なども行っています。

9. 指定難病患者の生活支援

指定難病患者とその家族の生活を支えるため、医療費助成以外にも様々な支援があります。

就労支援

難病患者の就労を支援するため、各都道府県に難病患者就職サポーターが配置されています。ハローワークと連携して、就職相談や職場定着支援を行っています。

また、難病があっても働ける職場を見つけるための情報提供や、職場への病気の説明支援なども行われています。

在宅療養支援

在宅で療養する難病患者のため、訪問看護、訪問診療、訪問リハビリテーションなどのサービスがあります。医療保険や介護保険を利用して、これらのサービスを受けることができます。

難病患者への理解促進

難病に対する社会的理解を深めるため、国や自治体は啓発活動を行っています。職場や地域での理解が広がることで、患者が生活しやすい環境が整っていきます。

研究への協力

指定難病患者の診療情報は、個人が特定されない形で、難病研究に活用されます。これにより、将来的な治療法の開発につながります。

医療費助成を受けることは、同時に研究への協力という社会貢献の意味も持っています。

10. よくある質問

指定難病と診断されたら必ず医療費助成を受けられる?

指定難病と診断されても、重症度分類で一定の基準を満たさない場合は、医療費助成の対象とならないことがあります。ただし、「高額かつ長期」の基準(医療費が月額33,330円を超える月が年間3回以上)を満たせば、軽症でも助成対象となります。

医療費助成の申請をしなくても指定難病の治療は受けられる?

医療費助成を受けるかどうかは任意です。申請しなくても、通常の医療保険で治療を受けることができます。ただし、医療費が高額になる場合は、申請することで経済的負担が大きく軽減されます。

複数の指定難病を持っている場合は?

複数の指定難病を持っている場合でも、医療受給者証は1枚です。すべての指定難病の医療費が、1つの自己負担上限額の中で助成されます。

他の都道府県に引っ越した場合は?

引っ越し先の都道府県で、改めて申請手続きが必要です。転居前に手続き方法を確認しておくことをお勧めします。

医療費以外に経済的支援はある?

医療費助成以外にも、障害年金、障害者総合支援法によるサービス、税制優遇など、様々な支援制度があります。難病相談支援センターで相談できます。

治療法が見つかり治癒した場合は?

治癒した場合や、症状が軽快して重症度分類を満たさなくなった場合は、更新時に認定されないことがあります。ただし、再度悪化した場合は、再申請することができます。

11. まとめ:指定難病制度を理解して活用する

指定難病とは、難病の中でも国が医療費助成の対象として指定した338疾患(令和6年4月現在)のことです。原因不明で治療法が確立しておらず、希少で長期療養が必要な病気が対象となります。

指定難病と認定されると、世帯の所得に応じた自己負担上限額が設定され、医療費の負担が大きく軽減されます。月額2,500円から30,000円の範囲で上限が設定されています。

医療費助成を受けるためには、都道府県への申請が必要です。医師が作成する臨床調査個人票をはじめとする必要書類を準備し、保健所または都道府県の窓口に申請します。

医療受給者証は1年ごとに更新が必要です。更新を忘れないよう、有効期限を管理することが大切です。

指定難病に該当しない難病患者も、小児慢性特定疾病医療費助成制度、障害者総合支援法、障害年金など、様々な支援制度を利用できる可能性があります。

難病と診断されたら、まずは主治医に相談し、医療費助成の対象となるかを確認しましょう。また、お住まいの地域の保健所や難病相談支援センターでも、詳しい情報や相談支援を受けることができます。

指定難病制度は、難病患者とその家族の生活を支える重要な制度です。制度を正しく理解し、適切に活用することで、経済的負担を軽減し、安心して治療を受けることができます。一人で抱え込まず、利用できる制度や支援を積極的に活用していきましょう。

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