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朝起きる、歯を磨く、着替える、食事をする、外に出る。誰もが「当たり前」にしていることが、自分にはできない。または、できるけれど異常な努力を要する。
この「当たり前ができない」苦しさは、周囲に理解されにくく、深い孤独感と自己嫌悪をもたらします。
本記事では、なぜ当たり前ができないのか、その医学的・心理的背景を理解し、この苦しみから少しでも楽になる方法、周囲の理解を得る方法、そして自分を守る視点について詳しく解説します。
「当たり前ができない」とは
まず、具体的にどのような状態なのかを理解しましょう。
よくあるパターン
起床・睡眠
朝、決まった時間に起きられない。目覚ましを何個かけても起きられない、または起きても布団から出られない。夜、適切な時間に眠れない。昼夜逆転している。
「朝起きる」という当たり前のことができず、一日が始まらない。
身の回りのこと
歯を磨く、顔を洗う、シャワーを浴びる、着替える、髪を整える。これらの基本的なセルフケアができない、または異常に時間がかかる。
何日も風呂に入れない、同じ服を着続ける、歯磨きをサボるなど。
食事
食事を作る、食べる、片付けるができない。何を食べればいいかわからない、食欲がない、食べること自体が面倒。
一日一食、またはまともに食べない日が続く。栄養バランスなど考えられない。
家事
部屋の掃除、洗濯、ゴミ出し、食器洗いなど、基本的な家事ができない。部屋が散らかり放題、ゴミが溜まる、洗濯物が山積み。
「片付ければいい」とわかっているのに、できない。
外出
外に出ることが困難。コンビニに行く、郵便を出す、役所に行くなど、簡単な外出すらハードルが高い。
人に会いたくない、外の刺激が怖い、家を出る気力がないなど。
コミュニケーション
電話をかける、メールを返信する、LINEに返事をする、挨拶をするなど、基本的なコミュニケーションができない。
電話が恐怖、メールを開けない、人と話せないなど。
時間管理
約束の時間に間に合わない、締め切りを守れない、予定を立てられない、時間の感覚がない。
遅刻が多い、予定をすっぽかす、計画が立てられないなど。
苦しみの深さ
「当たり前ができない」苦しみは、以下の層があります。
できないこと自体の困難生活が回らない、支障が出る、健康を害する。
周囲の無理解「そんなことも」できないのか、と言われる。「怠け」「甘え」と思われる。
自己嫌悪「こんな簡単なこともできない自分」を嫌悪し、責め続ける。「自分は欠陥人間だ」と思う。
孤立感誰にもわかってもらえない。説明しても理解されない。「自分だけが異常なのか」という孤独。
無力感「どうしようもない」「改善できない」という絶望的な無力感。
なぜ「当たり前」ができないのか
「当たり前」ができない背景には、明確な理由があります。
うつ病
うつ病の主要な症状として、意欲の低下、興味の喪失、疲労感、思考力の低下があります。
これらの症状により、「当たり前」の行動を起こすエネルギーが枯渇します。起きる、食べる、身支度をするという基本動作すら、莫大なエネルギーを要します。
うつ病は、脳の病気です。意志の問題ではありません。
ADHD
ADHD注意欠如多動症では、実行機能の障害があります。計画を立てる、優先順位をつける、タスクを開始する、集中を維持する、時間を管理するなどが困難です。
「やればいい」とわかっているのに、開始できない。始めても途中で別のことに気が散る。時間の感覚がない。
これは、怠けではなく、脳の機能の問題です。
自閉スペクトラム症
自閉スペクトラム症ASDでは、感覚過敏、変化への困難、社会的コミュニケーションの困難などがあります。
シャワーの水の感触が苦痛、服のタグが耐えられない、いつもと違う手順でパニックになる、電話の音が恐怖など。
感覚過敏や不安により、「当たり前」の行動が苦痛になります。
不安障害・パニック障害
不安障害やパニック障害では、過度な不安や恐怖が日常生活を妨げます。
外出への恐怖広場恐怖、人と会う恐怖社交不安、電話への恐怖、予期不安など。
不安が行動を妨げます。
PTSD・複雑性PTSD
トラウマ体験後のPTSDや複雑性PTSDでは、フラッシュバック、過覚醒、回避、解離、感情調整困難などの症状があります。
日常の刺激がフラッシュバックを引き起こす、常に緊張状態で疲弊している、解離して時間の感覚がない、感情が麻痺しているなど。
トラウマの影響が、日常生活を困難にします。
発達性協調運動障害
身体の協調運動が苦手で、着替える、料理する、字を書くなどの動作が困難です。
不器用さが、日常生活を困難にします。
慢性疲労症候群
原因不明の極度の疲労が続く病気です。休んでも回復せず、日常生活の基本動作すら困難になります。
線維筋痛症
全身の痛みと疲労を伴う病気です。動くこと自体が苦痛で、日常生活が困難になります。
その他の身体疾患
甲状腺機能低下症、貧血、糖尿病、心疾患など、さまざまな身体疾患が、疲労や意欲低下を引き起こし、日常生活を困難にします。
薬の副作用
精神科の薬、その他の薬の副作用として、眠気、倦怠感、意欲低下などが現れることがあります。
極度のストレス
過重労働、ハラスメント、介護、経済的困窮など、極度のストレスにさらされていると、心身が疲弊し、「当たり前」のことができなくなります。
バーンアウト燃え尽き症候群の状態です。
「当たり前」の基準を疑う
実は、「当たり前」の基準自体が、問題である場合もあります。
健康な人の基準
「当たり前」とされる基準は、健康で、障害がなく、ストレスも少ない人を前提にしています。
病気、障害、ストレスがある人にとって、その基準は「当たり前」ではありません。
個人差がある
人それぞれ、できることとできないことは違います。「当たり前」は、すべての人に等しく当てはまるものではありません。
できなくてもいい
「当たり前」ができなくても、生きていけます。完璧に日常生活をこなさなくても、何とかなります。
基準を下げる、諦める、手抜きをすることも、必要なスキルです。
少しでも楽になる方法
「当たり前」ができない状態で、少しでも楽になる方法があります。
医療機関を受診する
まず、医療機関を受診しましょう。うつ病、ADHD、不安障害、身体疾患など、診断を受けることで、原因がわかり、治療を受けられます。
薬物療法、心理療法、リハビリテーションなどにより、症状が改善することがあります。
ハードルを極限まで下げる
「完璧にやる」ことを諦め、ハードルを極限まで下げましょう。
歯を磨けないなら、口をゆすぐだけ。料理できないなら、コンビニ弁当や宅配。掃除できないなら、ゴミだけ捨てる。外出できないなら、玄関まで出るだけ。
0か100かではなく、1でも2でもいいという発想です。
小さな成功を認める
今日、ベッドから起きられた。それは成功です。シャワーを浴びられた。それも成功です。
「当たり前」の基準ではなく、自分の基準で、小さな成功を認めましょう。
ルーティンを作る
毎日同じ時間に同じことをするルーティンを作ると、考えずに行動できます。
朝起きたらまずカーテンを開ける、顔を洗う、コーヒーを飲むなど。シンプルなルーティンから始めましょう。
環境を整える
行動しやすい環境を整えましょう。
着替えを前日に用意する、食事は作り置きや冷凍食品を活用する、タイマーやアラームを使う、視覚的なリマインダーを置くなど。
ADHDの人には、視覚的な工夫が特に有効です。
他人の力を借りる
一人で全部やる必要はありません。家族、友人、ヘルパー、家事代行サービスなど、他人の力を借りましょう。
「甘え」ではなく、必要な支援です。
テクノロジーを活用する
スマートフォンのリマインダー、タスク管理アプリ、自動化できる家電(ロボット掃除機、食洗機など)を活用しましょう。
優先順位をつける
すべてをやる必要はありません。最低限必要なことだけに絞りましょう。
食べる、薬を飲む、最低限の衛生を保つ。それ以外は、できなくても死にません。
自分に優しくする
「できない自分」を責めるのではなく、「よく頑張っている」と認めましょう。
自己批判は状況を悪化させます。自己compassionが、回復を助けます。
周囲に理解してもらう
周囲に理解してもらうことも重要です。
診断名を伝える
うつ病、ADHD、PTSDなど、診断名があれば、それを伝えましょう。「病気だから」と説明できます。
診断名がある方が、理解されやすいです。
具体的に説明する
「当たり前ができない」という抽象的な表現ではなく、具体的に説明しましょう。
「朝起きるのに2時間かかる」「シャワーを浴びるのが恐怖」「電話の音でパニックになる」など。
本や記事を共有する
自分で説明するのが難しければ、病気や障害について説明している本や記事を共有しましょう。
第三者の説明の方が、受け入れられやすいこともあります。
必要な配慮を伝える
「こうしてほしい」という具体的な配慮を伝えましょう。
「朝の電話は避けてほしい」「予定は前日に確認してほしい」「急な変更は避けてほしい」など。
理解されないこともある
残念ながら、どれだけ説明しても理解されないこともあります。その場合、距離を取ることも必要です。
理解してくれる人を探しましょう。
利用できる支援
「当たり前」ができない時、利用できる支援があります。
訪問看護・訪問介護
精神科訪問看護、訪問介護ヘルパーなどのサービスを利用できます。自宅に来て、服薬管理、身の回りのケア、家事の支援などをしてくれます。
家事代行サービス
民間の家事代行サービスを利用することもできます。費用はかかりますが、掃除、洗濯、料理などを代行してもらえます。
配食サービス
自治体の配食サービス、民間の宅配弁当などを利用すれば、食事の準備の負担が減ります。
就労支援
働くことが「当たり前」にできない場合、就労移行支援、就労継続支援A型・B型などの支援があります。
生活保護
経済的に困窮している場合、生活保護を申請できます。生活費だけでなく、医療費、住宅費なども支援されます。
障害年金
精神疾患や発達障害で日常生活や労働に制限がある場合、障害年金を受給できる可能性があります。
自分を守る視点
「当たり前ができない」状態で、自分を守るための視点があります。
これは病気・障害の症状
「当たり前ができない」のは、怠けでも甘えでもなく、病気や障害の症状です。
自分を責める必要はありません。
努力の問題ではない
「もっと頑張れば」できるものではありません。努力では解決しない、医学的な問題です。
自分の価値とは別
「当たり前」ができることが、あなたの価値を決めるわけではありません。
できなくても、あなたには価値があります。
今の自分を受け入れる
今の自分を否定するのではなく、「今はこういう状態なんだ」と受け入れましょう。
受け入れることが、回復の第一歩です。
回復には時間がかかる
すぐに「当たり前」ができるようになるわけではありません。回復には、時間がかかります。
焦らず、少しずつ、自分のペースで進みましょう。
まとめ
「当たり前ができない」苦しさは、周囲に理解されにくく、深い自己嫌悪をもたらします。
しかし、その背景には、うつ病、ADHD、自閉スペクトラム症、不安障害、PTSD、身体疾患など、明確な医学的理由があります。
これは、怠けでも甘えでも意志の弱さでもなく、病気や障害の症状です。
医療機関を受診し、ハードルを下げ、小さな成功を認め、環境を整え、他人の力を借りることで、少しずつ楽になれます。
訪問看護、家事代行、配食サービス、就労支援、生活保護、障害年金など、利用できる支援もあります。
「当たり前」の基準に縛られる必要はありません。できなくても、生きていけます。あなたの価値は、「当たり前」ができるかどうかで決まりません。
自分を責めず、今の自分を受け入れ、自分のペースで、少しずつ進んでいきましょう。
あなたは一人ではありません。同じように苦しんでいる人、理解してくれる人、支援してくれる人がいます。
どうか、自分を大切にしてください。

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