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鍵を閉めたか何度も確認せずにいられない、汚れが気になって何度も手を洗ってしまう、特定の考えが頭から離れず苦しい、自分でもおかしいとわかっているのに止められないという状態が続いていませんか。
こうした状態は強迫性障害と呼ばれる疾患である可能性があります。この記事では、強迫性障害の症状と原因、治療法と日常生活での向き合い方について解説します。
強迫性障害とはどういう疾患か
強迫性障害は、自分では不合理だとわかっていても頭から離れない強迫観念と、その不安を打ち消すために繰り返さずにいられない強迫行為が続く疾患です。英語ではObsessive Compulsive DisorderといいOCDと略されることもあります。
強迫観念とは、繰り返し頭に浮かんでくる不快な考えやイメージ、衝動のことです。自分の意志でコントロールできず、振り払おうとしても繰り返し浮かんでくることが特徴です。
強迫行為とは、強迫観念によって生じた不安を和らげようとして繰り返す行動や心の中での作業です。強迫行為を行うことで一時的に不安は和らぎますが、根本的な解決にはならず再び不安が高まるという悪循環が続きます。
強迫性障害は意志の弱さや神経質な性格の問題ではなく、脳の機能に関わる疾患です。適切な治療によって症状を改善することができます。
強迫性障害の主な症状
汚染と洗浄
細菌やウイルス、汚れへの過剰な恐怖から、何度も手を洗う、特定のものに触れられない、触れた後に長時間洗浄を続けるといった行動が繰り返されます。
手洗いが何十分にも及ぶ、皮膚がただれるほど洗い続けるといった形で日常生活に深刻な影響が生じることがあります。汚染への恐怖から外出や人との接触を避けるようになることもあります。
確認行為
鍵を閉めたか、ガスを止めたか、電気を消したかといったことを何度も確認せずにいられない症状です。確認したと頭では理解していても不安が消えず、何十回も確認を繰り返すことがあります。
確認のために外出に何時間もかかる、一度外出した後に何度も引き返すといった形で生活への影響が大きくなります。
秩序と対称性へのこだわり
物の配置が完全に対称でないと強い不安を感じる、特定の順序や方法で物事を行わないと気が済まない、完璧に整っていないと強い不快感があるといった症状です。
物の配置を何時間もかけて整え直す、特定の儀式的な手順を踏まないと前に進めないといった形で日常生活に影響が生じます。
侵入思考と暴力的または性的なイメージ
自分が誰かを傷つけてしまうかもしれないという恐怖、自分の意志に反して誰かを傷つけるような行動をとってしまうのではないかという強迫的な恐怖が繰り返し浮かぶことがあります。
これらの考えは本人にとって非常に苦痛であり、実際にそうしたいという気持ちとは全く異なるものです。しかし考えが浮かぶこと自体を恐れて、刃物を遠ざける、特定の場所を避けるといった回避行動をとるようになることがあります。
宗教や道徳に反する考えが繰り返し浮かんでくることを恐れる宗教的な強迫も見られることがあります。
溜め込み
使わないものや価値のないものを捨てることができず、際限なく物を溜め込んでしまう症状です。捨てることで何か悪いことが起きるかもしれないという恐怖や、いつか必要になるかもしれないという強迫的な思考が溜め込みにつながります。
居住空間が物で埋め尽くされて日常生活が困難になるほどに進行することがあります。
純粋強迫
目に見える強迫行為はなく、頭の中で繰り返す確認や打ち消しの作業が中心となる状態を純粋強迫と呼ぶことがあります。
ある考えが真実かどうかを頭の中で何度も検証し続ける、不安な考えを打ち消すための別の考えを頭の中で繰り返すといった心理的な強迫行為が続きます。外からは症状が見えにくいため、周囲に理解されにくいことがあります。
強迫性障害の原因
強迫性障害の原因は単一ではなく複数の要因が関係していると考えられています。
脳内の神経伝達物質であるセロトニンの機能異常が関係していることが知られており、これが薬物療法においてSSRIが有効である根拠のひとつとなっています。また前頭前野と大脳基底核の回路の過活動が強迫症状と関連していることも示されています。
遺伝的な要因も関係しており、家族に強迫性障害の方がいる場合は発症しやすい傾向があることが知られています。
心理的な要因として、責任感が過剰に強い、完璧主義的な傾向がある、思考と行動を同一視する傾向があるといった認知的な特徴が強迫性障害の発症と維持に関係していることが知られています。
環境的な要因として、強いストレス、トラウマ的な体験、重大なライフイベントが発症のきっかけになることがあります。
強迫性障害の診断
強迫性障害の診断は精神科または心療内科において行われます。強迫観念と強迫行為が存在すること、症状に多くの時間が費やされていること、日常生活や社会生活に著しい支障が生じていることが診断の要件となります。
強迫性障害はうつ病や不安障害、統合失調症等の他の疾患と症状が重なることがあるため、正確な診断が重要です。また統合失調症における妄想と強迫観念は区別が必要であり、専門家による評価が不可欠です。
症状について正確に伝えることが正確な診断につながります。恥ずかしい、こんなことを言ったらおかしいと思われるかもしれないと感じて症状を隠してしまうことがありますが、医師には全ての症状を正直に伝えることが重要です。
強迫性障害の治療
強迫性障害は適切な治療によって症状を大幅に改善することができます。
薬物療法
SSRIと呼ばれる選択的セロトニン再取り込み阻害薬が強迫性障害の薬物療法の中心となります。フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラムといった薬が使用されます。
SSRIは強迫性障害に対してうつ病よりも高用量での使用が必要なことが多く、効果が安定するまでに数週間から数か月かかることがあります。効果を評価するには十分な用量で十分な期間継続することが重要です。
三環系抗うつ薬のクロミプラミンも強迫性障害に対して有効性が示されていますが、副作用の面からSSRIが第一選択となることが多くあります。
認知行動療法における曝露反応妨害法
強迫性障害の心理療法として最も効果が確立されているのが、曝露反応妨害法です。英語ではExposure and Response PreventionといいERPと略されます。
曝露とは不安を引き起こす状況や刺激にあえて向き合うことです。反応妨害とは強迫行為を行わずに不安に耐えることです。この二つを組み合わせることで、強迫行為をしなくても不安は自然に低下するという経験を積み重ね、強迫行為なしに不安に対処できる力をつけていきます。
最初は不安の低い状況から始め、段階的により困難な状況に取り組む階層化されたアプローチが基本です。強い不安を感じながらも強迫行為をしないで耐えることを繰り返すことで、徐々に不安への感受性が低下していきます。
曝露反応妨害法は自己流で行うことが難しいため、強迫性障害の治療経験がある専門家のもとで取り組むことが重要です。
薬物療法と認知行動療法の組み合わせ
薬物療法と認知行動療法を組み合わせることが、強迫性障害の治療において最も効果的とされています。薬物療法によって症状の強度を和らげながら、認知行動療法で症状に対処するスキルを身につけることで、相互に効果を高めることができます。
日常生活での工夫
強迫行為への参加を少しずつ減らす
強迫行為を急に完全にやめることは非常に難しく、無理にやめようとすることで不安が急激に高まることがあります。曝露反応妨害法の考え方に基づき、強迫行為の回数を少しずつ減らす、確認する時間を少しずつ短くするといった段階的なアプローチが現実的です。
安心を求めることを減らす
家族や友人に大丈夫かどうかを確認してもらう安心の確認要求は、一時的に不安を和らげますが長期的には強迫症状を維持します。安心の確認要求を少しずつ減らしていくことが、回復において重要なステップです。
家族への巻き込みに気づく
強迫性障害では家族が強迫行為に巻き込まれることが多くあります。家族が確認に付き合う、汚染を避けるために特定の行動をとる、儀式的な手順に協力するといった形で家族が巻き込まれることで、症状が維持されてしまうことがあります。
家族への巻き込みを減らすことが回復を助けますが、急に協力をやめることで症状が悪化することもあるため、専門家のサポートのもとで段階的に進めることが重要です。
生活リズムを整える
規則正しい生活リズムを保つことが症状の管理において助けになります。十分な睡眠、バランスのとれた食事、適度な運動といった基本的な生活習慣が、神経系の安定と症状への対処力を維持するうえで重要です。
ストレス管理
強いストレスは強迫症状を悪化させることがあります。自分にとって効果的なストレス解消法を持つこと、過剰な負担を避けることが症状の管理において助けになります。
家族や周囲の人ができること
強迫性障害のある方の家族や周囲の人にとって、強迫行為への巻き込みを避けながら本人を支えることは非常に難しいことです。
強迫行為を批判したり急かしたりすることは症状の悪化につながることがあります。一方で全ての強迫行為に付き合い続けることも症状の維持につながります。
家族自身も専門家に相談することで、本人への適切な関わり方についてのアドバイスを受けることができます。家族向けの心理教育プログラムも有効です。
専門家への相談の重要性
強迫性障害の症状は放置すると悪化しやすく、回避行動が広がるにつれて行動範囲が著しく制限されることがあります。症状が日常生活に支障をきたしていると感じたら、精神科または心療内科への受診を検討してください。
強迫性障害の治療経験がある専門家のもとで、薬物療法と曝露反応妨害法を組み合わせた治療に取り組むことが、症状の改善への最も確実な道となります。
恥ずかしさや自分がおかしいと思われるかもしれないという恐れから受診をためらう方も多くいますが、強迫性障害は非常に多くの人が経験する疾患であり、適切な治療によって改善できるものです。一人で抱え込まず専門家の力を借りることが回復への重要な一歩です。
まとめ
強迫性障害は、繰り返し浮かぶ強迫観念と不安を和らげるための強迫行為が続く疾患であり、汚染と洗浄、確認行為、秩序へのこだわり、侵入思考、溜め込みといった様々な症状があります。
脳内の神経伝達物質の機能異常と心理的な要因が複合的に関係しており、意志の問題ではありません。SSRIを中心とした薬物療法と曝露反応妨害法を組み合わせた認知行動療法が最も効果的な治療法とされています。
症状が日常生活に支障をきたしている場合は専門家への相談をためらわず、適切な治療を受けながら回復への道を歩んでください。


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