はじめに:「続ける」ことの難しさと大切さ
就労継続支援B型事業所を利用している方、またはこれから利用する方の中には、「続けられるか不安」「過去に何度も挫折してきた」「また辞めてしまうのではないか」という不安を抱えている方が少なくありません。実際に、B型の利用を開始しても、数週間、数ヶ月で辞めてしまう方がいるのも事実です。体調の波、人間関係のトラブル、作業への不満、通所の負担、モチベーションの低下など、様々な理由で継続が難しくなることがあります。
特に、精神疾患や発達障害がある方にとって、「継続する」こと自体が大きな課題です。調子の良い日もあれば悪い日もあり、「毎日同じように通う」ことは想像以上に困難です。また、過去に学校や職場で挫折した経験がある方は、「またダメになるのではないか」という恐怖を抱えており、その恐怖自体が継続を妨げることもあります。家族からのプレッシャーや、自分自身への過度な期待も、負担となります。
しかし、「続ける」ことには、大きな意味があります。生活リズムが整う、社会とのつながりができる、自己肯定感が高まる、次のステップ(A型、一般就労)への準備ができる、そして何より、「続けられた」という成功体験が、人生を変える力になります。「完璧に続ける」必要はありません。休みながら、ペースを落としながら、自分なりの方法で「続ける」ことが大切です。
本記事では、B型を続けるための具体的なコツを、心構え、実践的な工夫、体調管理、人間関係、モチベーション維持、トラブル対処、そして「休むことも続けること」という視点から、詳しく解説していきます。「続けたい」と思っている方、何度も挫折してきた方、ご家族や支援者の方々にとって、実践的な情報となれば幸いです。
続けるための心構え
まず、「続ける」ための心の持ち方です。
1. 完璧を求めない
60%でOK
NGな考え方
- 「毎日、時間通りに通わなければ」
- 「作業を完璧にこなさなければ」
- 「休んではいけない」
OKな考え方
- 「週3日通えればOK」
- 「作業は60%できればOK」
- 「休んでもいい」
完璧を求めると、プレッシャーで潰れます。
2. 「続ける」=「毎日通う」ではない
柔軟な定義
様々な「続け方」
- 週1日でも続けている
- 月に数回でも続けている
- 休み休みでも続けている
「続ける」の定義を、柔軟に持ちましょう。
3. 比較しない
自分のペース
NGな考え方
- 「他の利用者は毎日来ているのに」
- 「○○さんは作業が早いのに」
OKな考え方
- 「人は人、自分は自分」
- 「自分のペースでいい」
他人と比較すると、苦しくなります。
4. 小さな成功を認める
積み重ね
認めるべき成功
- 「今日、通所できた」→ 成功
- 「作業を1時間できた」→ 成功
- 「今週、2日通えた」→ 成功
小さな成功を認めて、自分を褒めましょう。
5. 「失敗」を恐れない
やり直せる
失敗の定義を変える
- 「休んだ」→ 失敗ではなく、必要な休養
- 「作業でミスした」→ 失敗ではなく、学びの機会
- 「1週間休んだ」→ 失敗ではなく、体調管理
失敗を恐れると、身動きが取れなくなります。
6. 長期的な視点
焦らない
短期的視点(NG)
- 「1ヶ月で完璧に慣れなければ」
長期的視点(OK)
- 「1年かけて、少しずつ慣れていけばいい」
長期的な視点を持つことで、焦りが減ります。
7. 「辞める」という選択肢も残す
逃げ道がある安心感
重要な考え方
- 「いつでも辞められる」
- 「合わなければ、転所もできる」
逃げ道があることを確認すると、かえって続けやすくなります。
8. 目的を明確にする
なぜ続けるのか
目的の例
- 「生活リズムを整えるため」
- 「人とのつながりを持つため」
- 「将来、一般就労するための準備」
- 「少しでも収入を得るため」
目的が明確だと、モチベーションが保てます。
実践的な継続のコツ
具体的に、どうすれば続けやすくなるのでしょうか。
1. 無理のないペースで始める
小さく始める
最初のペース
- 週1日、午前のみ(2〜3時間)
- 週2日、午前のみ
- 週3日、午前のみ
徐々に増やす
- 慣れたら、週3日に増やす
- さらに慣れたら、午後も加える
最初から無理をしないことが、継続の秘訣です。
2. ルーティンを作る
習慣化
朝のルーティン
- 7:00 起床
- 7:15 洗顔
- 7:30 朝食
- 8:00 準備
- 8:30 出発
ルーティンを決めることで、考えずに行動できます。
前日の夜のルーティン
- 翌日の服を準備
- 持ち物をカバンに入れる
- 早めに就寝
3. 目標を細分化
大きな目標→小さな目標
大きな目標
「週5日、安定して通所する」
細分化
- ステップ1:今月、週1日通う
- ステップ2:来月、週2日通う
- ステップ3:再来月、週3日通う
- ステップ4:その次、週4日通う
- ステップ5:最終的に、週5日通う
小さな目標を一つずつクリアしていきます。
4. ご褒美システム
モチベーション
例
- 「今週、3日通えたら、好きなお菓子を買う」
- 「今月、休まず通えたら、欲しかった本を買う」
- 「3ヶ月続いたら、ちょっと豪華な外食」
ご褒美を設定すると、頑張れます。
5. 記録をつける
見える化
カレンダー記録
- 通所できた日:○
- 休んだ日:×
- 午前のみ:△
カレンダーに記録することで、視覚的に進捗が分かります。
日記
- 今日の気分
- 作業の内容
- 良かったこと
- 反省点
記録を振り返ることで、成長が実感できます。
6. 通所しやすい工夫
負担を減らす
送迎サービスの利用
- 自力通所が負担なら、送迎サービスを利用
通所経路の工夫
- 最短ルート
- 混雑を避けるルート
持ち物の準備
- 前日に準備
- 常にカバンに入れておく
7. 作業を選ぶ
自分に合った作業
選び方
- 体力に合った作業
- 興味がある作業
- ストレスが少ない作業
合わない作業を無理に続けると、嫌になります。
変更を申し出ましょう。
8. 休憩を有効活用
無理をしない
休憩のタイミング
- 疲れる前に休む
- 定期的に休む(1時間作業→10分休憩)
休憩の過ごし方
- 外の空気を吸う
- 軽いストレッチ
- 好きな音楽を聴く
- スマホを見る
休憩を取ることで、長く作業できます。
9. 柔軟性を持つ
調子に合わせる
調子が良い日
- 午後まで通所
- 難しい作業に挑戦
調子が悪い日
- 午前のみで帰る
- 簡単な作業にしてもらう
- 休む
調子に合わせて、柔軟に調整しましょう。
10. 家族のサポート
協力してもらう
サポート例
- 朝起こしてもらう
- 送り迎え
- 励ましの言葉
- 体調管理のサポート
家族に協力してもらうことで、続けやすくなります。
体調管理のコツ
体調を整えることが、継続の基本です。
1. 睡眠の確保
最優先
理想的な睡眠
- 7〜8時間
- 毎日同じ時間に寝る・起きる
- 質の良い睡眠
睡眠衛生
- 寝る1時間前:スマホ・PC を見ない
- カフェイン・アルコールを控える
- 寝室を暗く、静かに
2. 食事の管理
エネルギー
3食を規則正しく
- 朝食:必ず食べる
- 昼食:バランスよく
- 夕食:軽めに
栄養バランス
- 野菜、タンパク質、炭水化物
3. 適度な運動
体力維持
運動例
- 散歩・ウォーキング(30分)
- ラジオ体操
- ストレッチ
効果
- 体力がつく
- 睡眠の質が上がる
- ストレス解消
4. 薬の管理
服薬遵守
重要性
- 主治医の指示通りに服薬
- 勝手に中断しない
工夫
- お薬カレンダー
- アラーム設定
5. 定期的な通院
主治医と連携
通院の重要性
- 体調の報告
- 薬の調整
- 悩みの相談
通院を継続することで、体調が安定します。
6. ストレス管理
溜めない
ストレス解消法
- 趣味
- リラクゼーション(深呼吸、瞑想)
- 友人との会話
- 好きな音楽
- 入浴
ストレスを溜め込まないことが大切です。
7. 体調の波を受け入れる
波があって当然
良い時期
- 積極的に活動
悪い時期
- 無理をしない
- 休む
- ペースを落とす
波があることを受け入れ、柔軟に対応しましょう。
人間関係のコツ
人間関係は、継続に大きく影響します。
1. 無理に仲良くしない
距離感
重要な考え方
- 「友達を作らなければ」→ 必要ない
- 挨拶と最低限の会話でOK
無理に仲良くしようとすると、ストレスになります。
2. 苦手な人とは距離を取る
自己防衛
方法
- 必要最低限の関わり
- 作業場所を離してもらう
- スタッフに相談
苦手な人と無理に付き合う必要はありません。
3. スタッフを頼る
サポートを求める
相談内容
- 「作業が分からない」
- 「体調が悪い」
- 「人間関係で困っている」
スタッフは、サポートするために存在します。
遠慮なく頼りましょう。
4. 一人の時間を確保
リラックス
一人で過ごす
- 休憩時間
- 昼食時間
一人の時間があることで、気持ちが楽になります。
5. トラブルは早めに対処
放置しない
対処法
- スタッフに相談
- 相談支援専門員に相談
トラブルを放置すると、悪化します。
早めに対処しましょう。
モチベーション維持のコツ
モチベーションを保つ方法です。
1. 目標を持つ
やる気の源
短期目標
- 「今月、週3日通う」
- 「○○の作業ができるようになる」
長期目標
- 「1年後、A型に移行する」
- 「2年後、一般就労する」
目標があると、頑張れます。
2. 成長を実感する
振り返り
定期的に振り返る
- 「3ヶ月前:週1日だった → 今:週3日通えている」
- 「最初:袋詰めしかできなかった → 今:データ入力もできる」
成長を実感することで、モチベーションが上がります。
3. 楽しみを見つける
ポジティブな要素
楽しみの例
- 「○○さんとの会話が楽しい」
- 「作業が終わった時の達成感」
- 「工賃で好きなものを買う」
小さな楽しみを見つけましょう。
4. 変化をつける
マンネリ防止
変化の例
- 作業内容を変える
- 通所日を変える
- 新しいことに挑戦
同じことの繰り返しは、飽きます。
変化をつけましょう。
5. 仲間の存在
励まし合い
仲間の力
- 同じ目標を持つ仲間
- 互いに励まし合う
- 「自分だけじゃない」という安心感
仲間がいると、頑張れます。
6. 自分にプレッシャーをかけすぎない
楽に
NGな考え方
- 「絶対に続けなければ」
- 「休んだら終わり」
OKな考え方
- 「続けられればいいな」
- 「休んでもまた始めればいい」
プレッシャーをかけすぎると、潰れます。
トラブル対処のコツ
トラブルが起きた時、どう対処するかです。
1. 欠席・遅刻してしまった時
すぐに連絡
対処法
- すぐに事業所に連絡
- 理由を簡潔に説明
- 次回の出席を伝える
重要な考え方
- 「欠席・遅刻は悪いこと」ではない
- 連絡さえすればOK
2. 作業でミスをした時
正直に報告
対処法
- スタッフに報告
- 謝罪(簡潔に)
- 今後の対策を考える
重要な考え方
- ミスは誰でもする
- 隠さない
3. 人間関係のトラブル
早めに相談
対処法
- スタッフに相談
- 状況を具体的に説明
- 改善策を一緒に考える
重要な考え方
- 一人で抱え込まない
- 我慢しない
4. 体調を崩した時
無理をしない
対処法
- すぐに休む・早退する
- 主治医に相談
- 回復するまで休む
重要な考え方
- 健康が最優先
- 休むことは悪いことではない
5. モチベーションが下がった時
原因を考える
対処法
- なぜモチベーションが下がったのか考える
- スタッフ・相談支援専門員に相談
- 目標を見直す
- 一時的に休む
重要な考え方
- 波があって当然
- 下がったら、また上がる
6. 「辞めたい」と思った時
一度立ち止まる
対処法
- なぜ辞めたいのか考える
- スタッフ・相談支援専門員に相談
- 改善できることはないか検討
- 一時的に休んでみる
- それでもダメなら、転所を検討
重要な考え方
- 衝動的に辞めない
- 冷静に判断
「休む」ことも続けること
休むことと、続けることの関係を理解しましょう。
1. 休息は必要
燃え尽きない
重要な考え方
- 休まずに続けると、燃え尽きる
- 適度に休むことで、長く続けられる
2. 休んでも「続けている」
継続の定義
例
- 週5日通所していたが、体調を崩して1週間休んだ
- その後、週3日から再開
これは「続けている」と言えます。
3. 計画的な休み
予防
例
- 「月に1回、リフレッシュのために休む」
- 「体調が悪くなる前に、休む」
計画的に休むことで、無理なく続けられます。
4. 休み明けの不安
ハードルを下げる
休み明けのコツ
- 最初は短時間から
- 簡単な作業から
- 「完璧にできなくてもいい」
休み明けのハードルを下げることで、復帰しやすくなります。
5. 長期休養の場合
焦らない
長期休養後の復帰
- 週1日から再開
- 午前のみから再開
- 焦らず、徐々に戻す
長期休養後も、復帰できます。焦らないことが大切です。
続けている人の体験談
実際に長く続けている方々の声を紹介します。
体験談1:Aさん(30代、精神障害、3年継続中)
コツ: 「完璧を求めないこと。最初は週5日を目指していましたが、無理でした。週3日に減らしたら、楽になって、結果的に3年続いています。」
体験談2:Bさん(40代、発達障害、2年継続中)
コツ: 「作業を選んだこと。最初の袋詰め作業が合わず、1ヶ月で辞めそうになりました。データ入力に変更してもらったら、楽しくなって、今も続いています。」
体験談3:Cさん(50代、うつ病、5年継続中)
コツ: 「休むことを恐れないこと。調子が悪い時は、遠慮なく休みます。休んだ後、また行けばいい。そう考えることで、5年続きました。」
体験談4:Dさん(20代、ASD、1年継続中)
コツ: 「ルーティンを作ったこと。毎朝、同じ時間に起きて、同じ準備をして、同じ電車に乗ります。ルーティンがあると、考えずに行動できます。」
体験談5:Eさん(60代、身体障害、10年継続中)
コツ: 「仲間の存在。一緒に通っている友人がいます。『明日も会おうね』と言い合うことで、次の日も行こうと思えます。」
よくある質問
Q1 何度も挫折してきました。今度こそ続けられるでしょうか?
A 続けられます 過去の挫折は、今回の成功の糧です。今回は、無理のないペースで始め、完璧を求めず、サポートを活用しましょう。
Q2 どれくらい続けば、「成功」ですか?
A 定義は自由 1ヶ月続けば成功、1年続けば大成功。自分で定義を決めましょう。
Q3 休んだら、また行きづらくなります
A 休み明けのハードルを下げる 午前のみ、短時間から再開しましょう。「完璧にできなくてもいい」と自分に言い聞かせましょう。
Q4 家族が「毎日通え」とプレッシャーをかけます
A 相談支援専門員から説明を 相談支援専門員から、家族に「無理のないペースが大切」と説明してもらいましょう。
Q5 モチベーションが全く上がりません
A 小さな目標、楽しみを見つける 大きな目標ではなく、「今日行く」という小さな目標。作業の中の小さな楽しみを見つけましょう。
Q6 続けることに意味があるのでしょうか?
A 大きな意味があります 生活リズムが整う、社会とのつながりができる、自己肯定感が高まる。そして何より、「続けられた」という成功体験が、人生を変えます。
Q7 他の利用者と比較してしまいます
A 比較しない練習 他人と比較する癖があるなら、意識的に「人は人、自分は自分」と唱えましょう。
Q8 完璧主義で、60%で満足できません
A 認知行動療法 完璧主義は、カウンセリング(認知行動療法)で改善できます。主治医に相談しましょう。
Q9 「辞めたい」と毎日思います
A なぜ辞めたいか分析 何が原因で辞めたいのか、スタッフや相談支援専門員と一緒に分析しましょう。改善できることがあるかもしれません。
Q10 続けるのが辛すぎます
A 無理は禁物 続けることが辛すぎる場合、一度休む、ペースを大幅に落とす、転所を検討することも選択肢です。健康が最優先です。
まとめ:自分のペースで、長く続けよう
続けるための心構えは、完璧を求めず、続ける=毎日通うではないと理解し、比較せず、小さな成功を認め、失敗を恐れず、長期的な視点を持ち、辞めるという選択肢も残し、目的を明確にすることです。
実践的な継続のコツは、無理のないペースで始め、ルーティンを作り、目標を細分化し、ご褒美システムを導入し、記録をつけ、通所しやすい工夫をし、作業を選び、休憩を有効活用し、柔軟性を持ち、家族のサポートを受けることです。
体調管理は、睡眠の確保、食事の管理、適度な運動、薬の管理、定期的な通院、ストレス管理、体調の波を受け入れることが重要です。
人間関係のコツは、無理に仲良くせず、苦手な人とは距離を取り、スタッフを頼り、一人の時間を確保し、トラブルは早めに対処することです。
モチベーション維持のコツは、目標を持ち、成長を実感し、楽しみを見つけ、変化をつけ、仲間の存在を大切にし、自分にプレッシャーをかけすぎないことです。
トラブル対処は、欠席・遅刻したら連絡、ミスしたら報告、人間関係のトラブルは相談、体調を崩したら休む、モチベーションが下がったら原因を考える、辞めたいと思ったら一度立ち止まることです。
「休む」ことも続けることであり、休息は必要で、休んでも続けていると理解し、計画的に休み、休み明けのハードルを下げ、長期休養後も焦らず復帰することが大切です。
B型を続けることは、決して簡単ではありません。しかし、完璧を求めず、自分のペースで、休みながら、柔軟に、そして周囲のサポートを受けながら進めば、必ず続けられます。「続けられた」という成功体験は、あなたの人生を大きく変える力になります。焦らず、一歩ずつ、前に進んでいきましょう。応援しています。

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