はじめに「満員で利用できない」という壁
就労継続支援B型事業所を探している方の中には、「希望する事業所に連絡したら、定員満員で利用できないと言われた」「見学に行って気に入った事業所があったのに、空きがないと断られた」「近くの事業所がどこも満員で、通える範囲に空きがない」という状況に直面している方が少なくありません。
特に、評判の良い事業所、通所しやすい立地の事業所、工賃が高い事業所、特定の作業内容(例:PC作業、農作業など)を提供している事業所は、人気が高く、常に満員状態になっていることがあります。また、地域によっては、B型事業所の数自体が少なく、選択肢が限られているために、満員問題がより深刻になっています。
「満員」と言われると、「もう利用できないのか」「諦めるしかないのか」「いつまで待てばいいのか分からない」という絶望感や焦りを感じる方も多いです。特に、家族や医療機関から「早く就労支援を利用するように」とプレッシャーをかけられている場合、満員という状況は大きなストレスになります。
しかし、「満員」は必ずしも「永遠に利用できない」ことを意味しません。多くの事業所では、定期的に利用者の入れ替わりがあり、数ヶ月待てば空きが出ることもあります。また、「満員だが、待機者リストに登録できる」「体験利用なら受け入れ可能」「系列の別事業所なら空きがある」など、様々な選択肢が存在します。さらに、満員の事業所にこだわらず、視野を広げることで、より自分に合った事業所が見つかることもあります。
本記事では、B型事業所の定員の仕組み、満員になりやすい事業所の特徴、満員と言われた時の対処法、待機中の過ごし方、満員を避けるための事業所の探し方、そして「満員」を前向きに捉える考え方について、詳しく解説していきます。希望する事業所が満員で困っている方、事業所探しで行き詰まっている方、ご家族や支援者の方々にとって、実践的な情報となれば幸いです。
B型事業所の定員の仕組み
まず、B型事業所の「定員」について理解しましょう。
定員とは
登録できる最大人数 定員とは、その事業所に登録できる利用者の最大人数です。
例:
- 定員20名の事業所 → 最大20名まで登録可能
定員と実際の通所者数は異なる
重要なポイント 定員が「20名」だからといって、毎日20名全員が通所しているわけではありません。
理由
- 利用者によって、通所日数が異なる
- Aさん:週5日通所
- Bさん:週3日通所
- Cさん:週1日通所
- 体調不良などで欠席する人がいる
実際の通所者数
例:
- 定員20名の事業所
- ある日の実際の通所者数:12〜15名程度
このように、定員よりも実際の通所者数は少ないことが多いです。
定員の種類
1. 1日あたりの定員
同時に受け入れ可能な人数 1日あたり、同時に何人まで受け入れられるかを示します。
例:
- 1日あたりの定員:15名
- ある日に15名が通所していたら、その日はこれ以上受け入れられない
2. 登録定員
登録できる最大人数 事業所に登録できる利用者の総数です。
通常、「定員」といえば、この「登録定員」を指します。
定員が決まる理由
法律上の基準
指定基準 B型事業所の定員は、厚生労働省の「指定基準」に基づいて設定されます。
- スタッフの人数
- 施設の広さ
- 設備
これらに応じて、適切な定員が決まります。
スタッフの人数
人員配置基準 利用者10名に対して、スタッフ1名以上の配置が必要です。
例:
- スタッフ2名 → 定員20名まで可能
施設の広さ
スペースの制約 作業スペース、休憩スペースなどの広さによって、受け入れられる人数が制限されます。
定員を超えての受け入れ
原則として不可 定員を超えて利用者を受け入れることは、原則としてできません。
ただし、以下の例外があります。
一時的な定員超過
短期間のみ
- 定員20名の事業所に、21名が登録
- ただし、実際に同時に通所するのは15名程度
このような場合、自治体の許可を得て、一時的に定員を超えて受け入れることがあります。
定員の変更
手続きが必要 事業所が定員を増やす場合、自治体への届け出や、場合によっては施設の改修、スタッフの増員などが必要です。
満員になりやすい事業所の特徴
どのような事業所が、満員になりやすいのでしょうか。
1. 立地が良い
通いやすい場所
- 駅から近い
- 住宅地の中心
- バス停から近い
- 平坦な道
通いやすい立地の事業所は、人気が高く、満員になりやすいです。
2. 工賃が高い
収入が魅力 工賃が平均より高い事業所は、人気があります。
例:
- 平均:月額1万6千円
- この事業所:月額3万円
3. 作業内容が魅力的
やりたい作業がある
- PC作業がある
- 農作業ができる
- 創作活動ができる
特定の作業内容を求めて、利用者が集中します。
4. 雰囲気が良い
評判が良い
- スタッフが優しい
- 利用者同士の仲が良い
- アットホーム
口コミで評判が広がり、人気が高まります。
5. 新しい事業所
きれい、設備が整っている 新しくできた事業所は、施設がきれいで設備が整っているため、人気があります。
6. 特定の障害に特化
専門的なサポート
- 精神障害専門
- 発達障害専門
- 高次脳機能障害専門
特定の障害に特化した専門的なサポートを提供する事業所は、該当する利用者が集中します。
7. 地域に事業所が少ない
選択肢が限られる 地域にB型事業所の数が少ない場合、限られた事業所に利用者が集中し、満員になりやすいです。
8. 定員が少ない
小規模事業所 定員10名以下の小規模事業所は、すぐに満員になります。
満員と言われた時の対処法
希望する事業所が満員だった場合、どうすればいいのでしょうか。
対処法1:待機者リストに登録する
空きが出たら連絡をもらう
仕組み
多くの事業所では、「待機者リスト(キャンセル待ちリスト)」を用意しています。
- 満員だが、利用を希望している人のリスト
- 空きが出たら、リストの順番に連絡
登録方法
「現在満員とのことですが、待機者リストに登録させていただけますか?」
と事業所に依頼しましょう。
注意点
- いつ空くか分からない
- 1ヶ月後かもしれないし、1年後かもしれない
- 「いつ頃空きそうですか?」と聞いてみるのも良い
- 連絡がない場合もある
- 定期的に自分から状況を確認する
- 「まだ空きは出ていませんか?」と問い合わせる
- 他の事業所も並行して探す
- 待機だけに頼らず、他の選択肢も検討
対処法2:体験利用だけでも受け入れてもらえるか確認
体験は可能なことも
仕組み
定員満員でも、「体験利用なら受け入れ可能」という事業所もあります。
- 正式な利用者としては登録できないが、数日間の体験は可能
- 体験している間に、空きが出るかもしれない
メリット
- 事業所の雰囲気を実際に確認できる
- スタッフに顔を覚えてもらえる
- 空きが出た時に、優先的に連絡をもらえる可能性
確認方法
「満員とのことですが、体験利用だけでも受け入れていただけませんか?」
対処法3:系列の別事業所を紹介してもらう
同じ法人の他事業所
仕組み
同じ法人が、複数のB型事業所を運営していることがあります。
- A事業所:満員
- B事業所(同じ法人):空きあり
メリット
- 同じ法人なので、運営方針やスタッフの質が似ている
- 信頼できる
確認方法
「満員とのことですが、系列の他の事業所で空きがあるところはありませんか?」
対処法4:通所日数を調整する
週1日から始める
仕組み
「週5日通所したい」という希望だと満員でも、「週1日だけ」なら受け入れ可能な場合があります。
- 実際の通所者数は、定員より少ない
- 週1日なら、調整できる可能性
メリット
- とりあえず利用を始められる
- 空きが出たら、日数を増やせる
確認方法
「週5日は難しいとのことですが、週1日だけなら可能でしょうか?」
対処法5:午前のみ、午後のみで通所
時間帯をずらす
仕組み
1日中の通所は満員でも、「午前のみ」または「午後のみ」なら可能な場合があります。
確認方法
「終日の通所は難しいとのことですが、午前だけなら可能でしょうか?」
対処法6:定員増員の予定を確認
今後の見通し
確認内容
「今後、定員を増やす予定はありますか?」
事業所によっては、施設の拡張やスタッフの増員により、定員を増やす計画があるかもしれません。
対処法7:他の事業所を探す
視野を広げる
重要な考え方
一つの事業所にこだわりすぎず、他の選択肢も検討しましょう。
- 満員の事業所がベストとは限らない
- 他の事業所の方が、自分に合っているかもしれない
探し方
- 相談支援専門員に相談
- 市区町村の障がい福祉担当窓口で情報収集
- インターネットで検索
- 少し遠い地域も視野に入れる
対処法8:他のサービスを利用する
B型以外の選択肢
B型が満員なら、他のサービスを利用する方法もあります。
代替サービス
- 地域活動支援センター
- B型より柔軟な利用
- 受給者証不要の場合も
- 空きがある可能性が高い
- 就労移行支援
- 一般就労を目指す訓練
- B型より定員に余裕があることも
- デイケア(精神科)
- 医療機関に併設
- B型が満員でも、デイケアは空いていることも
- 自立訓練(生活訓練)
- 生活能力の向上を目指す
- B型の前段階として利用
一時的に利用
B型が空くまでの間、一時的に他のサービスを利用する方法もあります。
対処法9:自治体に相談
行政のサポート
相談先
市区町村の障がい福祉担当窓口に、以下を相談しましょう。
- 「希望する事業所が満員で困っている」
- 「地域に空きのある事業所はないか」
- 「新しい事業所ができる予定はないか」
自治体ができること
- 他の事業所の情報提供
- 事業所への働きかけ(定員増員の検討依頼)
- 新規事業所の設置計画の情報
対処法10:粘り強く探し続ける
諦めない
- 今週満員でも、来週空くかもしれない
- 複数の事業所に問い合わせ続ける
- 定期的に状況を確認する
待機中の過ごし方
希望する事業所の空きを待っている間、どう過ごせばいいのでしょうか。
1. 他の事業所を体験利用してみる
選択肢を広げる 待っている間に、他の事業所を体験利用してみましょう。
- 意外と良い事業所が見つかるかもしれない
- 比較ができる
2. 代替サービスを利用する
空白期間を作らない B型が空くまでの間、他のサービス(地域活動支援センター、デイケアなど)を利用して、生活リズムを維持しましょう。
3. 在宅でできることを始める
スキルアップ
例
- PC スキルの習得
- オンライン講座
- YouTube動画
- 資格の勉強
- 簿記
- MOS(Microsoft Office Specialist)
- 趣味の充実
- 読書
- 創作活動
待機期間を、自己投資の時間にしましょう。
4. 生活リズムを整える
準備期間 B型に通所する準備として、生活リズムを整えましょう。
- 毎日同じ時間に起きる
- 外出の練習
- 体力をつける
5. 訪問看護などのサポートを活用
専門家のサポート 訪問看護、訪問介護などのサービスを利用して、生活のサポートを受けましょう。
6. 定期的に事業所に状況確認
忘れられないように 月に1回程度、事業所に連絡して、状況を確認しましょう。
「○○です。以前、待機リストに登録させていただきました。まだ空きは出ていませんでしょうか?」
定期的に連絡することで、事業所に覚えてもらえます。
7. 焦らない
時間がかかることもある 空きが出るまで、数ヶ月〜1年以上かかることもあります。
焦らず、今できることをコツコツと続けましょう。
満員を避けるための事業所の探し方
最初から満員を避けて、事業所を探す方法です。
1. 複数の事業所に同時に問い合わせる
効率的に 1つずつ問い合わせるのではなく、複数の事業所に同時に問い合わせましょう。
- 5〜10ヶ所に電話
- 「現在、空きはありますか?」と確認
- 空きがある事業所をリストアップ
2. 人気が集中しにくい条件を選ぶ
あえてマイナー路線
立地
- 駅から遠い事業所
- 住宅地から離れた事業所
作業内容
- 一般的な軽作業(袋詰めなど)
- 清掃作業
人気が集中しにくい条件の事業所は、空きがある可能性が高いです。
3. 新規オープンの事業所を狙う
開設直後 新しくオープンした事業所は、利用者が少なく、空きがあります。
情報収集
- 市区町村の障がい福祉担当窓口に聞く
- インターネットで「○○市 B型事業所 新規」と検索
4. 定員が大きい事業所を選ぶ
空きがある可能性 定員30名以上の大規模事業所は、定員10名以下の小規模事業所より、空きがある可能性が高いです。
5. 地域を広げる
視野を広げる 自宅から近い事業所だけでなく、少し遠い地域も視野に入れましょう。
- 隣の市区町村
- 電車で30分圏内
送迎サービスがあれば、遠くても通えます。
6. 相談支援専門員に「空きがある事業所」を聞く
専門家の情報 相談支援専門員は、地域の事業所の空き状況を把握していることが多いです。
「空きがある事業所を教えてください」と依頼しましょう。
7. 「満員」でも諦めず問い合わせる
タイミング ホームページに「満員」と書いてあっても、問い合わせてみると空いていることもあります。
- 情報が古い
- ちょうど空きが出た
諦めずに問い合わせましょう。
「満員」を前向きに捉える考え方
「満員」をネガティブに捉えすぎず、前向きに考える方法です。
1. 「人気がある=良い事業所」とは限らない
自分に合うかが重要 満員の事業所が、必ずしも自分に合っているとは限りません。
- 他の人には良くても、自分には合わないかもしれない
- 空いている事業所の方が、自分に合っているかもしれない
2. 「縁がなかった」と考える
運命 満員で利用できないのは、「縁がなかった」だけです。
- 別のもっと良い事業所との縁がある
- 今は時期ではなかった
3. 選択肢が広がる機会
新しい発見 満員だったからこそ、他の事業所を探し、新しい発見があるかもしれません。
- 「この事業所の方が良い」
- 「こんな作業があるとは知らなかった」
4. 焦らなくてもいい
時間をかける すぐにB型を利用しなければいけないわけではありません。
時間をかけて、じっくり良い事業所を探すのも良いです。
5. 「待つ」ことも選択肢
価値がある 本当に良い事業所なら、待つ価値があります。
- 数ヶ月待って、希望する事業所に入る
- 妥協して、合わない事業所に入る
どちらが良いか、考えましょう。
よくある質問
Q1 満員の事業所に、無理やり入ることはできませんか?
A できません 定員は法律で定められており、超過して受け入れることは原則できません。
Q2 待機リストに登録したら、いつ頃連絡が来ますか?
A 分かりません 事業所によって異なります。1ヶ月後かもしれないし、1年後かもしれません。定期的に自分から確認しましょう。
Q3 待機リストは、先着順ですか?
A 基本的には先着順 ただし、事業所によっては、緊急性が高い人を優先することもあります。
Q4 満員の事業所に、強く希望を伝えれば入れますか?
A 入れません どんなに強く希望しても、定員を超えて受け入れることはできません。
Q5 自治体に頼めば、事業所に空きを作ってもらえますか?
A できません 自治体にも、定員を超えて受け入れさせる権限はありません。
Q6 満員と言われましたが、本当は空いているのでは?
A 確認しましょう 稀に、情報が古かったり、誤解があったりすることもあります。「本当に満員ですか?」と再確認してみましょう。
Q7 どれくらいの期間、待つべきですか?
A 自分で判断 「この事業所なら半年待つ価値がある」と思えば待つ、「そこまで待てない」と思えば他を探す。自分で判断しましょう。
Q8 満員の事業所が多すぎて、通える範囲に空きがありません
A 自治体に相談 地域にB型事業所が不足している可能性があります。自治体に相談し、新規事業所の設置を要望しましょう。
Q9 待機中に、他の事業所に通い始めても良いですか?
A 良いです 待機中に他の事業所を利用して、希望する事業所に空きが出たら移る、という方法も可能です。
Q10 定員を増やしてもらうことはできませんか?
A 事業所次第 事業所が施設を拡張したり、スタッフを増員したりすれば、定員を増やすことは可能です。ただし、事業所の判断によります。
まとめ:満員は「終わり」ではない、選択肢は必ずある
B型事業所の定員は、登録できる最大人数を示し、定員と実際の通所者数は異なります。満員になりやすい事業所は、立地が良い、工賃が高い、作業内容が魅力的、雰囲気が良い、新しい、特定の障害に特化、地域に事業所が少ない、定員が少ない、などの特徴があります。
満員と言われた時の対処法は、待機者リストに登録する、体験利用だけでも受け入れてもらえるか確認する、系列の別事業所を紹介してもらう、通所日数を調整する、午前のみ・午後のみで通所する、定員増員の予定を確認する、他の事業所を探す、他のサービスを利用する、自治体に相談する、粘り強く探し続ける、などがあります。
待機中の過ごし方は、他の事業所を体験利用してみる、代替サービスを利用する、在宅でできることを始める、生活リズムを整える、訪問看護などのサポートを活用する、定期的に事業所に状況確認する、焦らない、ことです。
満員を避けるための事業所の探し方は、複数の事業所に同時に問い合わせる、人気が集中しにくい条件を選ぶ、新規オープンの事業所を狙う、定員が大きい事業所を選ぶ、地域を広げる、相談支援専門員に空きがある事業所を聞く、満員でも諦めず問い合わせる、ことです。
「満員」を前向きに捉える考え方は、人気がある=良い事業所とは限らない、縁がなかったと考える、選択肢が広がる機会と捉える、焦らなくてもいい、待つことも選択肢、と理解することです。
希望する事業所が満員でも、諦める必要はありません。待機リストに登録したり、他の事業所を探したり、様々な選択肢があります。「満員」は一時的な状況であり、「終わり」ではありません。柔軟に、粘り強く、自分に合った事業所を見つけてください。あなたを受け入れてくれる事業所が、必ずあります。応援しています。

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